2009年7月31日金曜日

7月のこれ一本

今年ももう折り返し地点を越え、なんとも暑い日が続いているわけですが
という定型文から入ってみてもいいんじゃないでしょうか
そんなわけで、今月は飛び抜けてって作品はなかったですが、けっこう粒ぞろいに面白いのが多かった気がしますね
そんな中でも「ボビー・フィッシャー~」は、本当にチェスって楽しそうだなあと思わせてくれた上に、内容的にも面白かった一本

まあ、でも今月あえて選ぶなら、やはり「サン・ジャックへの道」です
この題材なら感動もの一本で通せる内容なんですが、あえてその方向へはいかずに随所でおかしくて笑えるポイントがちりばめられていて、それでいて良い話だなとも思える良作
夢の描き方には賛否あるとは思いますし、もうちょっと最後をゆっくり描いて欲しかった気もしますが、旅と同じで結末より道中を楽しむ映画なんで大きくマイナスにはならないですね

あまりフランス映画くささはないんですが、それでもちょっと匂うシーンがあるんで、そこをもっと自重して作られてれば万人受けする大作になった…というと大げさか
とりあえずオシャレでくっさいフランス映画がダメな人も、けっこうすんなり見れる内容だと思います

2009年7月30日木曜日

サン・ジャックへの道 (2005/仏)

監督:コリーヌ・セロー
出演:ミュリエル・ロバン / アルチュス・ド・パンゲルン / ジャン・ピエール・ダルッサン / パスカル・レジティミュス / マリー・ビュネル / マリー・クレメール / フロール・ヴァニエール・モロー / エーマン・サイディ / ニコラ・カザレ


莫大な遺産を残して母が死んだと知らされた実業家、教師、失業者の仲の悪い三人兄妹
その遺産を継ぐ条件は三人そろって聖地巡礼の旅に出ることだった

コメディといっても心があったまる感じのやつですね
あらすじだけみると、「どうせ長い旅の中で三人が仲良くなるんちゃんか」と予想できますが、実際は…という感じで
というか、そもそもこれ三人だけの話じゃなく、同じ巡礼の旅に参加するそれぞれのメンバーも合わさって、みんなの旅の話という構成になってます

とりあえず総勢で9人のキャラが序盤からどっと出るんですが、最初のキャラの描き方がすごい分かりやすくて、すぐにそれぞれの特徴をつかむことができます
しかも各々のキャラがホントに面白くて、めちゃくちゃな者同士を絡ませつつ、それでいてそれなりに映画としてまとめているのはいいですね
個人的にも一斉に集められたクセのある人たちが織りなす物語ってのは好きです

旅を続けていって、その過酷さゆえに限界を超えた所で自分を取り繕う仮面を脱いだ人たちの本音のぶつかりあいをおもしろおかしく描きながらも、その先にはさらけだした者たちの結びつきがあるというハートウォーミング
最初はメンバーの中で一番ダメダメだったと思ったら、実は旅を続けるうちにホントはもっとダメなやつがいた、とか
なんだかんだで本当は優しいんじゃないか、とか
見てて微笑ましくなります

で、結局の所、三人の旅の果てはどうなんだ、っていうと別に気持ち悪いくらいにベタベタ仲良し兄妹に落ち着くって感じではないんですね
んなちょっとやそっとじゃ人間の根底は変わりません
ただその根底を包む着飾った部分が大きく変わるという感じですかね
人間的には大きく変わったところはないけど、どこか以前とは違う…みたいな
いや、でも本当に三人だけの話じゃなく、あくまでも9人で一つの物語って感じですね

旅の情景はきれいというより、素朴で楽しいという印象
そして、そんな情景をバックに所々で差し挟まれる夢の中のイメージがシュールすぎてなんとも
はっきりいって作品的に夢の世界は浮いてるんだけど、でもまあギリギリありなんじゃないか、と

個人的評価:90点
オススメ度:旅を疑似体験してみればいいじゃない




サン・ジャックへの道 予告

2009年7月26日日曜日

仮面ライダー THE FIRST (2005/日)

監督:長石多可男
出演:黄川田将也 / 高野八誠 / 小嶺麗奈 / ウエンツ瑛士 / 小林涼子 / 津田寛治 / 板尾創路 / 宮内洋 / 風間トオル / 並樹史朗 / 北見敏之 / 石橋蓮司 / 本田博太郎 / 佐田真由美 / 辺土名一茶 / 天本英世


大学の研究員をしている本郷猛は、ある日、「ショッカー」と名乗る一団に拉致される
そして「ショッカー」によって組織の言うがままの改造人間にされ、悪事に手を染めていくのだった

なんか仮面ライダーディケイドで、おっさんが子供の頃にそろそろ仮面ライダーも卒業かと思いながら見てた青春、そんな仮面ライダーBlackが出ると聞いて今日はこれを
1号2号メインの話なんですが、雰囲気もダークでアクション部分もかっこよかったですね
ちゃんと主役級は今風のイケメン起用してるんで、性的な熱いまなざしを送りたい奥様方も安心です

顔を隠すためにマスクをかぶるって設定がけっこう面白いなあと思いましたね
だからバイクのフルフェイスのヘルメットみたく、うなじのあたりから後ろ髪がちゃんとはみだしてセクシーアピールですよ
ようするに、この映画のライダーは変身しません
ベルトの力で全身強化服みたいなのになって、あとはマスクをつけて終了
マスクも別に普通に自分で自在に外せます

内容的には、改造人間になったけど正気を取り戻した主人公が、自分を処分しようと襲いくる怪人を倒していくみたいな感じで
ただちょっと気になるところが多すぎて困る
ヒロインが主人公のことを好意的に感じてたけど、婚約者を殺した犯人だと勘違いして粘着、怪人に襲われた所を1号に助けられるが2号と勘違いして一文字隼人といい仲になりかけ、でも結局はすべての勘違いが解消して主人公といい仲に
という一連の流れがぶっちゃけウザすぎる
お前どんだけビッチなんだよ、と

さらに本筋と平行して、重い病気で入院していて自暴自棄ぎみな少年と、そんな彼にけなげにつくす少女の物語が病院を舞台に展開するんですが、これももう男も女もどっちも見るに堪えないほどウザすぎる
少女が少年にプレゼントをもっていったものの、かまうなって感じで拒否られると「わたし、かわいそう」みたいなこと言っちゃうし
少年もさんざん冷たくしておきながら、唐突に少女に文字通り泣き尽くし
で、そんな寒い三文芝居が本編とどうからんでくるかといえば、もうどうでもいい展開で泣ける
言わんとしてることは分かるけど、少年と少女の話を主人公にからませないとエピソード的に生きてこないんじゃないですか、と言いたくなるくらいに本筋と独立しすぎた上に無駄に長々と引っぱってる話なんですね

メインの話もまたひどくて、どう見ても最初から一本の映画として広げた風呂敷をたたむ気がない投げっぱなし
しょうじきリメイク1号2号の造形とアクションだけしか見るところがない内容でした

個人的評価:30点
オススメ度:THE 中途半端




仮面ライダー THE FIRST 予告

2009年7月24日金曜日

DRAGONBALL EVOLUTION (2009/米)

監督:ジェームズ・ウォン
出演:ジャスティン・チャットウィン / チョウ・ユンファ / エミー・ロッサム / ジェームズ・マースターズ / パク・ジュンヒョン / 田村英里子 / ランダル・ダク・キム / ジェイミー・チャン / アーニー・ハドソン / ルイス・アリエッタ / テキサス・バトル / 関めぐみ


2000年前、ナメック星よりやってきた魔王ピッコロにより地球は危機に陥った
かろうじてピッコロを封印したものの、永き月日が経過した現代、魔王は再び目覚めるのだった

そら買うわ
あえて本編DVDがおまけでついてる謎仕様のBD版とか予約して買うわ
そんなわけで、みんな大好きドラゴンボール映画の最新作だよ!
世の中のクソ映画の中にはどうにもならないクソ作品と、それを超越して逆に楽しい素敵作品がある
このドラゴンボールは素敵です
「うっわ、バカ映画だなあ」と見れば幸せになれるくらいには面白いですよ

感想とか細かいことはどうでもいいんだよ
とりあえず素敵ポイントをまとめてみましょう

・ピッコロが実写マリオのクッパっぽい
・ピッコロの側近がインチキくのいち
・ブルマの本名はブルマ・ブリーフ
・「気」の英訳は「キ」
・亀仙人登場時に痛いオタクファッション
・悟空は基本、スケベ心で強くなる
・なぜピッコロが復活したのか問題はスルー
・誕生祝いをせっせと準備してくれた祖父になにも言わずに女の所へ行く悟空
・ヤムチャとブルマがなんのフラグもなく、いきなりいい仲に
・場面がいきなり現実世界からファンタジー世界っぽい描写になる
・仲間たちが大ピンチでも着替えを優先する悟空
・神龍を呼ぶポーズがバカっぽい
・ピッコロ弱すぎワロタ
・エンディングで油断してるとクソ歌が流れてくる

まあ、他にもあったようななかったような気もしないでもないけど、こんな感じで

どっちにしろこの映画はそんなに宣伝に力入れるもんじゃないだろ、と
ライトな映画好きが宣伝しまくってるから、ってうっかり見ると映画嫌いになるんじゃないか
前評判からしてアレだったけど、中身もやっぱりアレなんで、アレ好きな人は楽しめると思いますよ

個人的評価:60点
オススメ度:ドラゴンボールではなく、1つのバカ映画として見ましょう




DRAGONBALL EVOLUTION 予告

2009年7月22日水曜日

ナイン (2005/英・独・仏・ルーマニア)

監督:スティーブン・R・モンロー
出演:デニス・ホッパー / ケリー・ブルック / イポリット・ジラルド / スージー・エイミー / モーヴェン・クリスティ / ピーター・キャパルディ / アシュリー・ウォルターズ / ラファエロ・デグルットラ / ジュリアンヌ・デイヴィス


出口のふさがれた建物に、各地から拉致されてきた共通点のない9人の男女
そしてどこからともなく「生き残った一人に500万ドルを与える」という声が響いた

もう今さらなんの目新しさもない、というかどこかで見たことあるような設定を惜しげもなく前面にだした一本
内容的にもこういった限定空間パニック群像劇のテンプレと呼べるような感じ
最初は冷静に対処しようとしているけど、小さな小競り合いや室温の上昇、食べ物の配給方法などの積み重ねで鬱憤がたまっていき、やがて爆発みたいなね

この作品はとにかく分かりやすく出来ているのは好印象ですね
登場人物を見れば、服装や態度なんかで「こいつ、こういうキャラか」っていうのが分かりやすすぎるほど分かる
だから9人とか登場人物把握できないよ、とか思ってても一目見ればすぐに覚えられます
分かりやすいって大事だね

それはともかく、とにかくテンプレすぎるほどテンプレな話運びなんで、最初の犠牲者が出る後半部分までが退屈すぎる
じょじょに精神的に追いやられていくのを静かに見せていって、後半の爆発力につなげるって手法は分かるけど、それでも見てるこっちに「なら、こんなのどうだ」みたいなサプライズがないのが痛い
テンプレ展開ゆえに大きくおかしい方向にいくこともないけど、かくだん驚きもないと

それでも死者が出る後半からが分かっていても面白い
というかマジキチキャラ祭りがはじまります
まさにナイス狂気空間
けっこう「え?お前死ぬんかよ!」とか意外な展開もあって、いつのまにか楽しんで見てましたね
そして、まさかこの手の作品のクライマックスで殺人鬼ものが見れるとは思いもよらなかった
まあ、でも一言いわせてもらえば「ちゃんと撃った銃弾の数をかぞえてた俺に謝れ!」ってね
ほかにもけっこう伏線はってる感じはしたけど回収してないポイントもあったような気がしないでもない

あとはオチも意外っちゃあ意外かもしれんけど、どうにも「イケルシニバナ」もこんなラストだった気がして仕方なかった
個人的に予想してた、最初に気を失った所に戻っての夢オチじゃなかっただけ許せるかもしれません

個人的評価:60点
オススメ度:暇つぶしに最適




ナイン 予告

2009年7月21日火曜日

主人公は僕だった (2006/米)

監督:マーク・フォースター
出演:ウィル・フェレル / マギー・ギレンホール / ダスティン・ホフマン / クイーン・ラティファ / エマ・トンプソン / デニーズ・ヒューズ / トニー・ヘイル / トム・ハルス / リンダ・ハント


国税局の役員ハロルドは、歩数、歯を磨く回数など常に定めた数値をもとに日常生活を送っていた
ある日、そんな彼をとりまく行動のナレーションがどこからともなく聞こえるようになり…

またまたなんとも感想を書きづらい映画だなあ、と
しょうじきネタバレしていっちゃうと、この作品の面白さの半分以上がなくなる気がしないでもない
なんの予備知識もなく見ていって、劇中でちりばめられてるヒント的なことに見てる側が気づいて「あれ?実は…」って感じで推理しながら見るのが楽しい作品

そういった脚本のギミック的な所以外の作風としてはいたって普通
ようするにお堅い人が柔らかくなっていって世界を見る目が変わって、幸せに満ちていくみたいなありふれた作風
それでも脚本が面白いし、退屈しそうな画づらが続くと思ったら突拍子もないカンフル剤を打ち込んできてくれるんで、見始めたら最後まであっという間に視聴できましたね

主人公が彼の行動を読み上げるナレーションの謎を追っていくうちに、自分自身の物語の結末を知ることになるんだけど、それを知ってなお他人を思いやれる優しさと強さはすごい
主人公以外の登場人物たちもそれぞれキャラ的に浮いてなくて、ありえないくらいファンタジーな設定なのに舞台とマッチしてますね
ただ、劇中で結末はすごいすごいとはやし立てておいて、実際にそのシーンを見るとそうでもないと感じるのはどうかと
なんかすっごいラストが待ってるんじゃねえの、ってドキドキして見てたら見事に肩すかしをくらいました

あとは作品を通して伝えたいことってのはなんとなく感じるんだけど、なんか微妙にぼやけてるっていうかはっきり伝わってこない感がしないでもなかったですね
散漫というかなんというか、ラストに向かって「これが伝えたかったんだよ!」という風なドーンとくるものがないっていうか
さりげなく語るのもいいけど、時には大きな声で叫んでもいいんだよ

個人的評価:70点
オススメ度:僕の人生は喜劇じゃないことだけは確か




主人公は僕だった 予告

※この予告ははげしくネタバレ、というか作品の9割はこの予告で語られてます
これから見ようと思う人は、この予告を見ない方が絶対に楽しめます

2009年7月19日日曜日

キングダム 見えざる敵 (2007/米)

監督:ピーター・バーグ
出演:ジェイミー・フォックス / クリス・クーパー / ジェニファー・ガーナー / ジェイソン・ベイトマン / アシュラフ・バルフム / アリ・スリマン / ジェレミー・ピーブン / ダニー・ヒューストン / リチャード・ジェンキンズ / ティム・マッグロウ / カイル・チャンドラー / フランシス・フィッシャー / オマル・ベルドゥニ / アシュレイ・スコット


サウジアラビアの壁に囲まれ、警備が常駐して安全を保証された米国人居住地区で大規模テロが発生した
FBI捜査官フルーリーはテロに巻き込まれた仲間のためにも捜査を開始する

またサウジ系のテロと戦うアメリカンヒーローものか
とか思いつつみたわけですが、めちゃめちゃ面白いじゃないっすか
サウジアラビアとアメリカという国同士の政治的、経済的な関係によって両国は国家レベルでの良い関係を保っている
でも、実際に動く人々は主義主張はことなれど、なにより祖国のために戦ってるわけですよ
ラストのネタバレにつながるから、あんまり詳しくは言わないですが、そんなアンバランスな上に立ってる祖国を愛する人々を描くとか全然アメリカンヒーローものじゃなかったですね
むしろ争いを否定するかのような内容とも言えなくないかも知れません

話的には、サウジ側は自国のメンツのためにもアメリカの捜査協力なんか必要ないってスタンスで、アメリカのお偉いさんからも両国の関係のためにも空気読んで捜査なんかすんなボケと言われる主人公
しかし己を貫いて、なんとかサウジに渡るんですね
そしてその先では同じサウジアラビア人のテロリストを裁いてでも、自分を貫くサウジの男が待ってるわけです
さらに両国のなあなあな関係をよく思わないテロリストも自分たちの正義を貫くために行動を起こすわけで
まあ、映画的にはテロリストとか悪いからぶっころせーみたいなノリ…というか演出?ですが

しょうじき内容の大半は地道に捜査していって、ちょっとずつ証拠を集めていって敵の正体を探っていくのがメイン
地味といえば地味だけど、アメリカ人的に敵地に乗り込んでいつ狙われるか分からない状況での捜査と、地元の有志との協力連携と摩擦を織り交ぜてあって飽きない内容になってます
限られた滞在期間で捜査するって条件もあるんで、画面から感じる緊張感もほどよくあっていいですね

ただ、ね…
いよいよもって敵のアジトが分かるというクライマックス手前のシーンはどうかと
それまで散々捜査してきて見えてきた全体像につながるピースとか関係ないんですけど
それでアジトにたどりつけるとか、それまでの苦労はなんだったんですかと問いたい
まあ、テロリストを刺激した結果だってのは分かるけど、そこはほら、もっと頭脳戦にできなかったものかと
あまりにパワープレイすぎる

それでもクライマックスは盛り上がります
まるでそれまでの地味さを全部チャラにするような派手なアクション
なんか戦争物のFPSゲームみたいな画ですが、ホントにそんな感じをおぼえます
だけど、あまりに主人公補正ききすぎて「戦闘のエキスパートって感じでもないのに、なんで無事でいられるんだよ」と思わざるえない
そしてラスト手前の男同士の友情を表すシーン…いいわあ
こういういい大人が恥ずかしげもなく友情にあつくなれるシーンは大好きです

こうして見ると、結局はアメリカ万歳映画なんですが、ラストのオチでそうでもないことが分かります
ああ、これが言いたかったゆえのこういう作風だったのね…と
そういうこともふまえて映画的な文法としてのつかみ、なかだるみ回避、盛り上がるクライマックスとよくできた内容でした
じゃっかんのパワープレイが気になりますが

個人的評価:80点
オススメ度:主人公チームの一人の扱いがちょっと不遇じゃないか




キングダム 見えざる敵 予告

黄金の七人 (1965/伊)

監督:マルコ・ヴィカリオ
出演:フィリップ・ルロワ / ロッサナ・ポデスタ / ガストーネ・モスキン / ガブリエル・ティンティ / ホセ・スアレス


教授と呼ばれる男とその愛人、そして6人の男たち
彼らはスイス銀行の大金庫に保管された金塊強奪作戦を開始する

夏休みに入ったお子様達はなんであんなにも空気が読めない痛い行動を平気でできるんでしょうか
ということはどうでもよくて、今日もそんな疲弊した精神を癒す作業な訳ですが
いやあ、予想以上に面白かったですね
はー、やっぱりいい映画見ると平穏が戻るわあ

冒頭からいきなり作戦決行されて、総勢8人ものキャラがいきなり動き出すんで把握できるのか心配になります
だけど実際は教授と愛人以外は6人で一束扱いなんで、そうそうキャラを把握しなくても見ていられます
というか、これといった人物紹介もないんで、初見で全員をキチンと把握できる人の方がすごいんじゃないでしょうか

で、いきなりクライマックス的な強奪作戦に入るもんだから、ちょっと落ち着いた所で仲間たちの過去話とか時間を戻して説明してくれるもんだとばかり思ってたんですが、普通にそのまま物語は進んでいきます
大金庫にたどり着くまでの作戦もルパン的なとんでも展開な所もあり、さらに随所で作戦を進める上でのアクシデントがちりばめてあって、まったく飽きずに見ていられます
途中でアマチュア無線に仲間たちの無線連絡を傍受されてしまうあたりとか、まるで「バンク・ジョブ」みたい…というか、あっちがこの作品に触発された感じなんでしょうか

この映画も「バンク・ジョブ」みたいに強奪作戦は前半で終わり、そっから先が第二部スタートみたいな感じで別雰囲気の良い感じの内容になってます
ここからが教授のキャラが生き生きとしてきて見てて面白いですね
7tもの金塊をどうやって仲間たちで分けるのか、仲間同士でだましあいが始まるわけです
単純な自分にしてみれば「えー、そうくるのかよ」みたいな二転三転があって、個人的には前半より後半の方が面白い

クライマックスもここまできてそれかよ、な意外な感じだった
ちゃんと物語の流れ的にもよくできているし、なにより見てて楽しい
最近の映画のどうでもいいトンデモ設定を、なんとか現実的にみせるために色々と科学的根拠とか心理とか裏設定でガチガチに固めて似非リアリティをだす作品なんてクソ食らえですね
この作品はとにかく細かいことなんかどうでもよくて、ただただ楽しさを貫き通した所がいい
そんなのありえない?無理がある?んなこたあ、どうでもいいのよこの際
ホントに見てて気持ちいいほど楽しい一本でした

古い映画だからこそ、今ではあれこれがんじがらめになって手を出しづらくなったことをやってくれるから面白い

個人的評価:90点
オススメ度:一台の車に8人乗れるそんな時代

2009年7月17日金曜日

皇帝ペンギン (2005/仏)

監督:リュック・ジャケ
出演:シャルル・ベルラン / ロマーヌ・ボーランジェ / ジュール・シトリュック


氷点下40度以下になる南極の冬
そこで生きる皇帝ペンギンたちのたどる道程を描く

いやはやとうとう夏ですよ
近所の活発なお子様たちも長い夏休みに突入して、そりゃ朝からわめきますよ
そんな落ち込んだ精神で変な衝動にかられないためにも、心を落ち着かせるためにペンギンで癒されようぜ
という感じで視聴してみました

でもねえ…なんなんでしょうね、この見ててイライラする感じは
てっきりドキュメンタリーかと思ったらそうじゃないんですよね、これ
なんていったらいいか、ドキュメンタリーとして撮った大自然と皇帝ペンギンの動きにむりやり人間目線の物語をのっけたような違和感
美しい自然、目を見張るペンギンたちの行動…画的にはすっごいよくでいてるんですが、そこにねっとりとした詩的な人間目線のナレーションが入るとすべてが台無しに

ペンギンたちがどう思ってるとか、そんなとってつけたようなドラマとかいらんだろと
もっと画に自信をもって、最小限のナレーションでドキュメンタリーにする気はなかったのかと
「どう?ねえ?すごいでしょ?この大自然!ほらほら、見て、ペンギンってこんなことするんだよ?」と、いちいち耳元でささやかれるくらいにウザイわ
あとはペンギンたちに話の軸をおいてるんで、ペンギンの捕食するものはエサ扱い、襲ってくる天敵は化け物扱いとかどうよ?
化け物によってペンギンの命が奪われた、ってお前、ペンギンどももさんざん小魚ファミリーをエサとして食い漁ってたんじゃねえの、と

ホントにもう、あざとい選曲とナレーションで、見てるこっちの感情を強制的に操作しようとしているのが見え見えすぎてイヤになる
でも画的にはキレイだなあ、すごいなあ、と思う所があるだけにこういう余計な要素が、ね…
しょうじきテレビの動物ドキュメンタリー見てた方が何倍もましでした

個人的評価:20点
オススメ度:ペンギンはそんなこと言わない




皇帝ペンギン 予告

2009年7月15日水曜日

キングスパイダーVSメカデストラクター (2005/米)

監督:ジェフ・リロイ
出演:ウォーレン・マックロー / コービン・ティムブルック / スター・ハンセン / グレゴール・コリンズ / マット・エメリー / ランダル・マローン


あやまって野に放たれてしまった軍の蜘蛛型生物兵器「クリーピーズ」
ロサンゼルスに落とされた核で一掃されたかと思われたが、今度はラスベガスに現れた

どうひいき目に見ても、ってゆーかぁ明らかにクソ映画なんですケド!超うける!
世間的にはどうやらドラクエ9はヤバイみたいですが、まだまだ甘い。甘すぎるぜボーイ
ホントのクソが転じてどれだけ素敵になるか、もっと視野を広げるんだ

といった所でゲームの評価が変わるわけもないんですが、なんとなくクソ映画が見たい気持ちを抑えきれずにこの作品を視聴
いや、別にボク病んでるわけじゃないよ
だって、ほら、クソ映画大好きなんだもん
それはそれとして、内容的には巨大蜘蛛と軍の巨大ロボがラスベガスの街を派手にぶっ壊しながらバトルする特撮ものですね

クソ映画に内容とかそんな細かいことはどうでもいいんですよ
とりあえず素敵ポイントを書いていきます
子蜘蛛に占拠され、軍の戦闘機の爆発で半壊したカジノの中、支配人がいきなり椅子の上に立って「みなさん楽しんでいただいてると思いますが」とか言っちゃう
さらに子蜘蛛に襲われパニック気味になった生存者の一人が「こんなB級パニック映画みたいな~」とか言っちゃう
プラズマ砲戦車が巨大蜘蛛を撃つが、建物の鏡面構造を利用され反射で撃ち返される→それでもしつこく撃ち続け、結局自爆
巨大蜘蛛を前にした巨大ロボ、メカデストラクターは無駄に吠える→蜘蛛も吠え返す→メカデストラクターさらに吠え返す
戦闘中に仲間のパイロットが怪我をしたメカデストラクターのコックピット内、意識を失った仲間が錯乱状態で目を覚ましたのでもう一人が殴りつける→仲間死亡
子蜘蛛に襲われてる同僚をバズーカで撃つ兵士→焼けただれてる同僚にむかって兵士が一言「大丈夫か?」

素敵すぎる
これ以外にも細かい素敵ポイントがあるんで、みんな見ればいいさ
まあ、その他の内容に関しては「見ててかったるかった」くらいの印象しかないんですけどね!
そして、実はこれロサンゼルス壊滅まで描いた前作の続編です
ホントにアメリカの映画に対する懐は広いと言わざるえない

個人的評価:40点
オススメ度:ブルーマンとか初めて知ったいい年こいたおっさんがここに




キングスパイダーVSメカデストラクター 予告

2009年7月12日日曜日

まごころを君に (1968/米)

監督:ラルフ・ネルソン
出演:クリフ・ロバートソン / クレア・ブルーム / リリア・スカラ / レオン・ジャニー / ルース・ホワイト


30歳を越える知的障害者の男、チャーリー
ある日、彼は障害を克服できるという実験的な脳神経手術を受けることになる

別題で「アルジャーノンに花束を」といわれる映画ですね
なんかちょっと前に色々と話題になったりで名前だけは知ってましたが、映画としては初見
なんか知的障害者とネズミの話だったような気がするなあ、というくらいの前知識で

これきっつい内容だわ
知的障害者でおっさんというだけでも見てて苦しいところがあるけど、鈍いことを知っててシャレにならない意地悪をしてくる職場の同僚とか、結局は自分たちのことしか考えてない研究室の人たちとか、あまりに主人公周りの人間にいい人がいなすぎる
それだけでも陰鬱な気分になるのに、手術で知能レベルが一気に上昇していったらいったで、からかえなくなった職場の上司が…だったり、ホントに嫌な気分になりっぱなしで困る

主人公の住んでるアパートの管理人のおばちゃんはキャラ的によく分からなかったですね
ネズミのアルジャーノンが主人公の部屋にいると話た途端に急に柔和な感じで人当たりがよくなるとか意味が分からない
自分もペットを飼ってるからってだけで、あそこまで優しくなれるもんかね

で、物語の中盤で主人公が研究所の自分の担当の女性にコクってふられて、なんか意味不明なイメージ映像が流れるんですが、ここら辺から作品についていけなくなりました
婚約者もいて、バッサリと主人公を斬り捨てた女研究員が、イメージ映像の後ではあっさりと主人公受け入れるし
もうしょうじき眠気と戦いながら見てました
だから見逃したのかもしれませんが、なんで主人公が手術が実は失敗だったと気づいたのか理解できませんでしたね

それでもクライマックスは楽しめ…というか、再び陰鬱モードに
やっと人並みに生活できるようになって、人並み以上の知能を得た主人公
ゆえに急速に知能が回復したのと同じだけ急速に知能が後退しつつある現実と向き合う描写が痛々しい
以前の知的障害者の暮らしをしていた頃なら、バカにされても嫌みを言われてもそれを理解できずに世界は常にハッピーだったけど、なまじ理解できる能力を得てしまったために残酷な現実を真っ正面から受け止めなければならないという…
しかも頭がよくなりすぎた主人公は、自分の知能後退は避けられないという説を完成させてしまう

いやあ、欝だわ
内容的には古いだけあって、きょうび目新しさを感じない所もあるけど、おもいっきり気分を落ち込ますにはいいですね
というか、感動作品だと思って見たらこれだよ、って感じで精神ダメージを受けました

個人的評価:50点
オススメ度:「アルジャーノンに~」より「まごころを~」の方が断然あってる

2009年7月11日土曜日

ボビー・フィッシャーを探して (1993/米)

監督:スティーブン・ザイリアン
出演:マックス・ポメランツ / ジョー・マンテーニャ / ジョーン・アレン / ベン・キングスレー / ローレンス・フィッシュバーン / マイケル・ナイレンバーグ / ロバート・スティーブンズ / デヴィッド・ペイマー / ハル・スカーディノ / ヴァセック・シメック / ウィリアム・H・メイシー / ダン・ヘダヤ / ローラ・リニー / アンソニー・ヒールド / トニー・シャルーブ


アメリカ人として初の世界チャンピオンになったボビー・フィッシャーは、その輝かしい栄光を捨てて姿を消した
ある日、そんな彼の再現かと呼ばれる7歳の少年がチェスに目覚めた

なんの興味もなかった世界に飛び込んでみたら、実はかなり素質がある天才くんでした
少年マンガ誌には必ずひとつはこういうのがあるよね、ってくらいにありきたりではあるけどいつの時代にも通用するストーリー
個人的にもこういうのは好きですね

なにより主人公の男の子が素直でホントに良い子だから精神衛生上とても安心して見られました
最初は楽しんでプレイしてても、勝利の美酒にのぼせてクソガキ化するんだろうなあ…
そんな危惧もありましたが、そうでもなかったんでホッとしましたね
というか、むしろ主人公周りの大人たちがクソ成分を引き受けてくれたのがよかった
誰もリアルクソガキ演技なんか見たくないって、監督、ちゃんと分かってるじゃない

ようするにいきなりすごい素質を開花させた息子に、本人そっちのけでのぼせ上がってる父親と、ひたすらシビアに勝つことを教え込むコーチのクソ成分の二段構え
そんながんじがらめなチェス生活になりながらも、ちゃんと素直なままな主人公はホントに良い子ですね
そんな汚い大人とも最後はきちんと歩み寄って分かり合えるし、見てて気持ちいい
イヤな感情を最後まで引きずらせない作りは好印象

そして、ラストの一戦はホントに気持ちよくって楽しかった
賭けチェスで本能のままのプレイを教えてくれた男と、理詰めのように繊細なプレイを教えてくれたコーチ、それぞれの教えをミックスさせて自分なりの楽しいチェスをやってる姿は微笑ましくっていいわあ
難を言えば、ちょっとライバルの子をうまくいかしきれてない感がするのがちょっと…な気もしますが、まあ、それほどでもないですしね

ジャッキー映画を見た後に、なんかカンフーしたくなった子供時代以来、久しぶりに映画に影響されてチェスとかやってみたくなりましたね

個人的評価:80点
オススメ度:後味スッキリ

2009年7月10日金曜日

幸せのちから (2006/米)

監督:ガブリエレ・ムッチーノ
出演:ウィル・スミス / タンディ・ニュートン / ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス / ダン・カステラネタ / タカヨ・フィッシャー / ケヴィン・ウエスト / ドミニク・ポーヴ / ジェームズ・カレン / ブライアン・ハウ / カート・フラー / ジョージ・チェン


医療器機のセールスをしながら妻と小さな子供を養っているクリス
仕事はうまくいかず、金銭的にも余裕がなくなった時、このままではいけないと思ったクリスは

メリケンのサラリーマン映画ってのも珍しいようなそうでもないような
どん底生活からひたすらアグレッシブに前だけを向いて成功を掴もうとする男の話は嫌いじゃないぜ
ほら、人は自分にない部分に憧れるじゃない

貧乏生活から一念発起して、身分不相応にもみえる一流企業で雇ってもらえるようにがんばってみようぜ!って感じの話ですね
とにかく主人公のクリスさんの前向きで行動的なところがいいですね
展開的にも三歩進んで二歩下がるみたいに、けっして平坦ではない厳しい道のりをそれでもちょっとずつ夢に向かって近づいていく男の生き様
暴力的で衝動的で根拠がなくて慈愛に満ちてるわけでもない父親、最近では珍しい母性の話ではなく父性の物語ですね

まあ、でも色々とアクシデントを乗り越えつつ、どうせ最後は報われて成功するんだろ?という見え見えなほど先が読めてしまうので、緊張感はそんなにないです
それでも、なんとなく弱い人間を応援してしまいたくなる心理で「がんばれがんばれ」とパワーをもらったり送ったりして楽しめました
憧れのロマンティックな恋模様をのぞんでロマンス映画を見る若者と、夢のように仕事に成功する苦労人のサラリーマン映画を見るおっさんって感じで

で、物語も後半になって、そろそろビッグウエーブにのって夢を掴んでいくのかと思いきや…
いきなり再び生活環境がどん底、というか最底辺近くまで落ちていくのは意外だった
むしろ話的にまとめにはいってキレイに終わるもんだと思ってただけに、「洞穴」で一夜を過ごすシーンはもうなんというか、ね…
それはそれでありなんですけど、最後のオチがちょっと弱い気がしました
ラスト近くはとにかく私生活部分の落ちっぷりがメインで描かれており、そんな逆境でも仕事に熱く立ち向かって逆転勝利を掴んで欲しかった
でも実際はそんな逆境を乗り越えるシーンなどなく、ただ底辺生活を送ってたらいつのまにか夢を掴んでました、みたいなね

途中で大企業のお偉いさんと微妙に仲良くなったりして、この路線で逆転勝利な展開かと思ったのに、そこら辺の仕事パートの伏線が回収しきれてないのも気になる
あとはどうせだったら主人公は熱く前向きなだけのキャラづけに徹底してほしかったかなあ
ところどころで「え?そんなキャラなの?」って行動があって困惑します
まあ、リアルな人間の感情からすれば当然な行動でも、ほらそこはファンタジーにいってもいいんじゃないの

そんな感じで面白かったけど、なんか小骨がひっかかる…そんな映画でしたね

個人的評価:70点
オススメ度:世の中、金やで




幸せのちから 予告

2009年7月7日火曜日

崖の上のポニョ (2008/日)

監督:宮崎駿
出演:奈良柚莉愛 / 土井洋輝 / 山口智子 / 天海祐希 / 所ジョージ / 長嶋一茂 / 矢野顕子 / 柊瑠美 / 吉行和子 / 奈良岡朋子 / 羽鳥慎一 / つるの剛士


海の中もへっちゃらなあやしいおっさんの船から逃げ出した人面魚
地上で男の子と出会った奇形ぎみの人面魚はポニョと名付けられて男の子に囲われる身になる

悪意がまったくないとは言わないけど、こんなあらすじが正直なところ
ポニョ周りの裏設定とか色々あるみたいだけど、そんなの知らんがな
本編の中でおさめられない設定を、事前に調べて知ってるでしょ?みたいなスタイルは許しません
まあ、なんとなく本編を見進めていけば匂わすような所があったかもしれませんが、まったく記憶に残ってない

いつものように宮崎駿のオナニー世界を見せつけられて、最後に「で?」っていいたくなる内容でしたね
かなり視聴する対象年齢を落としてる感じですが、特に絶体絶命的なピンチがない…というかあっても緊張感がないんで、幼稚園児くらいまでならうけるんじゃないでしょうか
いいおっさんが見たしょうじきな感想としては「ああ、やっぱり駿マジロリコンだなあ」としか

なんて大作相手に毒づいても怖い人を敵に回すだけなんで、ちゃんといいなと思った所も書いていきますよ
とりあえず声の出演陣がそんなに違和感がなかったのはいいですね
まーた芸能人パワーを利用してえげつなく作品売り出そうとしてるな、と思ったけど見ててそう悪い印象はなかった
あとは子供がメインの作品だけどリアルクソガキ演出がひかえめで、ちゃんとファンタジー風の良い子ちゃんばかりなので精神的に楽でした
そして、作品世界的にかなりクライシスなことになってるけど、そう思わせない演出と物語の運び方は感心しましたね
ひどいことになってるんだけど、悲観的にならないシュールさは好きです

ということで、宮崎駿さんはもう一度だけでいいから、ドキドキワクワクでスカッとする活劇系の作品をつくってもらいたいなあ、といつも思うんですね
こんな商業的成功を姑息に狙う的な意味での「トトロの夢をもう一度…!」みたいなの作ってないでさ

ちなみにこの作品に対する毒を吐いてる部分はぜんぶ嘘ですから
みんなみようね!

個人的評価:30点
オススメ度:半魚人とか露骨なこと言うな




崖の上のポニョ 予告

2009年7月5日日曜日

ルナシー (2005/チェコ)

監督:ヤン・シュヴァンクマイエル
出演:パヴェル・リシュカ / アンナ・ガイスレロヴァー / ヤン・トジースカ / ヤロスラフ・ドゥシェク


ある青年が遠い地で死んだ母親の葬儀を終えて帰途につく
精神的に不安定になり、悪夢を見る青年のもとに一人の中年の侯爵が現れる

エドガー・アラン・ポーに感銘を受けたところがあると冒頭で語ってる通り、なんともいえないダークで狂気と悪意を見せつけられる映画ですね
ホラーといっても怪人や化け物が出てきて血や死人があふれるのではなく、かといって心霊現象や奇怪な出来事に右往左往するでもなく、ほんとに古典的なマジキチ型のホラーですね
奇人達とこっちの精神を浸食してくるような美術的描写で、じわじわと精神にうったえる感じのホラー
それは計算しつくされて洗練されたものではなく、粗野で荒っぽくて古くささを感じつつ何かを暗示してるようでそうでもないような描写がいいですね

侯爵と出会ってしまったがゆえにマジキチドリームワールドへ足をつっこんでしまった青年といっしょに頭で考えずにただありのままにイカレた展開を楽しめれば勝ちです
なんでそうなるの?それに意味はあるの?という野暮なツッコミをする人には向かないし、実際に見進めていけば、そんなツッコミなど無用だとすぐに分かると思います
随所に挿入される肉片たちの動きとか、侯爵のイッちゃった表情とか個人的には楽しくてしょうがなかった
けっこうこういう理屈抜きのマジキチ映画も好きかもしれんね

全体的にコミカルに描かれてるんで、そう重苦しい雰囲気はないしアホっぽい部分も多いけど笑えない
なんともいえず不気味ですね
などと抽象的なことしか書けないけど、自分の力量じゃ文章にするとまったく良さが伝わらないような気がするんで、こんなことしか言えないんですが
まあ、そのものずばりでポーの恐怖系短編をどれか一つ読んでもらえれば、そんな感じの内容と言えるかも知れません

ラストの展開も個人的にはけっこう好きで、最後まで緊張して見ていられましたね
ただ、なんか知らないですけど自分がいいなと思う映画は基本的に地味です
この作品もえっらい地味で、本当に派手なゴアシーンとかグロシーンはないんで
どっちかといえば自分で恐怖を想像して楽しむのが正しいような気がしますね

個人的評価:70点
オススメ度:侯爵のいいキャラっぷりを堪能しましょう




ルナシー 予告

2009年7月3日金曜日

ゾンゲリア (1981/米)

監督:ゲイリー・シャーマン
出演:ジェームズ・ファレンティノ / メロディ・アンダーソン / ジャック・アルバートソン / デニス・レッドフィールド / リサ・ブラント / クリストファー・オールポート / ロバート・イングランド / マイケル・パタキ


小さな田舎町で狂気じみた殺人事件がおこる
へんぴで平和な小さな町で何が起こっているのか、シェリフのダンが捜査に乗り出すのだが

油断した
もうクソB級のオブ・ザ・デッド映画を見ようとしたつもりが、普通に面白い内容に楽しんでしまいましたね
地味に話は進むんですが、時折はさまれる狂気のシーンやグロイ死体のシーンとゆるやかな作風のギャップがたまりませんね
なんというか、クソ映画っぽい気がしないでもないけど、ヒマだから見はじめた深夜映画が思いの外に楽しくて最後まで見ちゃった爽快感みたいな

これゾンビ映画といえばゾンビ映画なんですが、あからさまにゾンビっぽいのが人を襲うんじゃなくて、とにかく静かな恐怖を味わう系です
いったい町で何が起こっているのか、正気と狂気の狭間でグラグラ揺れる様子を楽しむのがいいんじゃないかと
しょうじき、見終わるまで制作年とか気にしてなかったんで、「古い作品なんだろうけど、なんか新しいな」と思ってみてましたね
しかも、まさか81年の映画だなんて思いもしませんでした
さすがにもっと新しいと予想してたんで

内容的には、町で次々と殺人事件が起きて、それを主人公のシェリフが調べていくうちに町に予想以上にやばい暗部があると思い始める、って感じで
ここら辺は見てても主人公と一緒になって、謎を追いつつ楽しめます
そして、やっぱり死体のグロさはインパクトあるかと
この時代にここまで死体再現するとかすごい気がしないでもない

それでもやっぱり難はちょっとあって、さすがにご都合主義としか思えない展開がちらほらあるのは、ね
そして事件の真相があんまりにもB級すぎて困るような困らないような
さらにラストのオチも「うん、まあ、そうだろうね」とインパクトはあまりないですね
いや、この映画の公開当時に見てれば斬新だったかもしれませんが、今となっては「ああ、あるよね。そういうの」な感じで

なんとも途中までは新しいような気がしないでもないけど、ラストはやっぱり多い日も安心なそんな作品でした

個人的評価:70点
オススメ度:ぜったいに邦題で損してる映画




ゾンゲリア 予告

スターシップ・トゥルーパーズ (1997/米)

監督:ポール・バーホーベン
出演:キャスパー・ヴァン・ディーン / ディナ・メイヤー / デニーズ・リチャーズ / ジェイク・ビジー / ニール・パトリック・ハリス / クランシー・ブラウン / セス・ギリアム / パトリック・マルドーン / マイケル・アイアンサイド / エイミー・スマート


「バグ」と呼ばれる凶暴な昆虫がすむ惑星から攻撃をしかけられ、戦争状態に突入した未来の地球
高校を卒業したリコは恋人を追って軍隊に入隊するのだが

有名作品ほど実は見てない率が高い法則
ということで、たまには過去の名作も見てみたくなるじゃない
しょうじき、こういうSF映画って未来的な戦闘機でドンパチやるか、なんか力に目覚めたヒーローがスタイリッシュアクションするか、戦闘力のない主人公が戦争に巻き込まれてたくましく成長していくってのが定石だと思ってました
で、この映画もそんな類なんだろうなあ、と見てたら全然違うじゃないッスか

高校生が軍人になって、しかも歩兵部隊のいわば代わりならいくらでもいる軍の歯車としてやっていくとか、SFと戦争ものをうまく融合しつつ純粋に娯楽に特化した良作ですね
しかも主人公の高校時代とか、最初は「おい、こいつ主人公かよ。存在感ねえなあ」って感じだったけど、入隊して訓練を受け、実戦に出て経験を積んでいくうちにみるみる顔つきからなにから変わってきて驚いた
最後の方とかマジでかっこよくなってて、最初とは別人としか思えない

そんな丁寧に描いてる部分もいいですし、話の展開的にもテンポがよくて次々に戦場が変わってエピソードがぽんぽん進んでは流れていくんで飽きませんね
なにより、内容が肩肘張らずに見れるというかB級というか、ぶっちゃけバカ映画の部類に入るほど頭で考えるんじゃなく感覚で見る作風が素敵
そのシーンに意味はあるのか?なんて考えちゃダメで、あくまでノリを楽しむ内容ですね
個人的に特によかったなと思うのは、登場人物が戦死していく際に、必要以上に死による悲しみ演出で引っぱらない所は好印象
しょうじきたまに他の映画である、もういいよって思うほどグダグダねちねちクヨクヨと登場人物の死を引っぱる演出は好きじゃないんで

ということで、じゃっかんグロイシーンが多いんで万人受けじゃないのは確かな気がしますが、世間的に評価されてるのも納得できる内容でした
あとは今でこそ続編あるの分かってるからいいけど、ちょっとこの作品単体だとストーリーの投げっぱなしが気になる…かな
まあでもこう世間の評価と自分の評価が合致すると、自分もまだまだ正常な趣向の持ち主なんだなあ、と再確認できますね

個人的評価:80点
オススメ度:良心の呵責や悲劇ドラマの少なめなデストロイ戦争映画もいいね




スターシップ・トゥルーパーズ 予告