2011年2月28日月曜日

2月のこれ一本

「ジョニー・マッド・ドッグ」、とりあえずいちばん印象に残る作品といえばこれ
正論がまったく意味をなさない力強い戦場描写は、それだけで一本の映画として成り立つから不思議
狂犬の行く末をじっくり観てあげましょう

と、前置きなくたまには用件だけ書いてみる
だって、ほら、いろいろ疲労がアレでナニな日々が…いや、言うまい

2011年2月27日日曜日

GAMER (2009/米)

監督:ネヴェルダイン / テイラー
出演:ジェラード・バトラー / アンバー・ヴァレッタ / マイケル・C・ホール / ローガン・ラーマン / キーラ・セジウィック / アリソン・ローマン / テリー・クルーズ / クリス・リュダクリス・ブリッジス / アーロン・ヨー / ラムジー・ムーア / ジョナサン・チェイス / ダン・キャラハン / ブリジット・フレミング / ジョニー・ウィトワース / マイケル・ウェストン / マイロ・ヴィンティミリア / ゾーイ・ベル / ジョン・レグイザモ / ノエル・グリエミ / キース・デヴィッド / ミミ・マイケルズ / エフレン・ラミレス


画面の向こうの生身の死刑囚を操って、銃撃戦を繰り広げるゲーム「スレイヤーズ」
30ゲーム生き残れば自由になれるシステムの中、死刑囚であるケーブルは残り3ゲームを戦えばクリアというところまできていたのだった

ゲーム感覚の殺し合い、という作品は少なくないですが、この映画では実際に戦ってる者には意識はあっても体の自由はなく、あくまで姿の見えないプレイヤーの操作しだいってところがあります
サード・パーソン・シューティング・ゲームにおいて、キャラが生身の人間で武器も戦場も本物って感じ
まんま「ゲーム感覚」ってのを題材にした内容ですね

画面の前の人が現実世界の生身の人間をコントロールして遊ぶ新しいコミュケーションの場「ソサエティ」、その延長線上で死刑囚を使って本物の銃撃戦を行う「スレイヤーズ」というシステムが定着した世界
「スレイヤーズ」内で30ゲームで自由になれる中、もうちょっとのところまできた死刑囚のケーブルに、敵とも味方ともわからない女性がコンタクトをとってくる・・・
「ソサエティ」システムを作った天才キャッスル、それを快く思わないハッカー集団「ヒューマンズ」、ただ不毛な戦いにおもむくしかないケーブル、そして中の人であるプレイヤー、思った以上に設定と世界観を作り込んである感じでしたね

だけど、なんというか作品そのものもゲーム感覚で、設定だけを見せてるだけのかなり表面的なところしか描いてない印象が強い
ホントに上っ面だけは設定武装でよく見えるけど、まったくといっていいほど中身がスッカスカ
やりたいことは分かるけど、「俺はこういうのがやりたい」という思惑だけ見えちゃってて肝心の内容がともなってない感じ
例えば実際に戦ってるキャラとそのプレイヤーの関係とか、もっと掘り下げればおもしろくなるだろうに、それをかなり端折ってる
戦場にいる人は意思もあるし感覚もある・・・ようするに、操作してるプレイヤーが気がついてない戦場の雰囲気や流れが見えてるのに、体は自分で動かせないもどかしさ
そこら辺とか個人的にはおもしろいな、と思ったのにそんなに掘り下げないで終わってるのが残念ですね

そんな上っ面だけな内容ながら、いちおはキチンと広げた風呂敷を大ざっぱに畳んでるのは好印象
「スレイヤーズ」内だけのストーリーで終わらないところはよかった
この内容だったら変に力を入れずに、スタイリッシュバカアクションに特化した方が完成度はあがった気がしないでもないのがもったいない
ミュージカルシーンとか、素敵なおバカポイントがあるんですが、そのノリで全編やればよかったのに
中途半端にシリアス路線でしたね

あとはプレイヤー側の人間が、なんともステレオタイプな感じなキャラでちょっと新鮮味がなかった気がする、全体的にちょっと微妙に残念な作品でした

個人的評価:70点
オススメ度:考えたとおりになるってのはある意味で不便だね




GAMER 予告



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2011年2月25日金曜日

孤高のメス (2010/日)

監督:成島出
出演:堤真一 / 夏川結衣 / 吉沢悠 / 中越典子 / 松重豊 / 成宮寛貴 / 矢島健一 / 平田満 / 隆大介 / 徳井優 / 本田大輔 / 安藤玉恵 / でんでん / 菅原大吉 / 斎藤歩 / 堀部圭亮 / みのすけ / 遠山俊也 / 太賀 / 建蔵 / 菜葉菜 / 石井あみ / 日向明子 / 山下容莉枝 / 宮田早苗 / 余貴美子 / 生瀬勝久 / 柄本明





母の死をきっかけに、看護師として苦悩していた時代の母の日記を読む息子
そこには母をはじめ市民病院の多くの人々に大きな影響を与えたひとりの医師の存在が書かれていたのだった

田舎町の市民病院
設備も悪く、スタッフの質も悪い
重度の患者や手術ミス患者はすぐに大学病院に移され、死亡率ゼロという名目だけを守っている
そこに市民病院を改革しようと市長が呼び寄せた腕のいい医師、当麻
当麻はなにより患者第一で病院の都合や利益なんて考えてない熱い心の持ち主だった
ね、なんというか、まあ、ありきたりですね
しかし、世の中にはこういうありきたりなストーリーでも楽しめる映画があるから不思議です

とりあえず当麻医師のキャラがいい
凄腕ってほどじゃない腕前と、クールで腕はいいけど独善的で協調性がない・・・という感じではなく、物静かだけどユーモアもあり協調性があるマジメな男ってのがおもしろい
劇中で流れる演歌、それをキャラとして現したような人ですね
ひどく生真面目なんだけどガチガチなタイプでもない、そんな所に魅力があるキャラ

そんな当麻医師が腕を振るうにつれて周りのスタッフも影響されて生き生きしてきて、同時にそんな外様の成功を疎ましく思う古参連中が暗躍、そして医師生命をかけた大手術が舞い込んでくる・・・そんな流れですね
ホントにストーリーはド演歌ってくらいにベッタベタで、昭和臭がぷんぷんする感じ
そういう意味で目新しい刺激はないけど、全体的に丁寧に描かれている上に、けっこう発せられる言葉の重みがあるのが印象的かもしれません
「医者であり続ける方が難しい」とかシンプルだけど、すごいずっしりと心に響きましたね

気になる点は前半の当麻医師の良キャラっぷりが、じゃっかん終盤の駆け足展開で消されてるような感じで、しかもスタッフ同士のつながりや確執がちょっと深み足らずな気がします
余分なところを端折った「察する楽しさ」はあるけど、ちょっと底の浅い感じは否めないかもしれません

ジーンとくる作品というより、うんうんとしみじみ楽しむ、そんな映画でした

個人的評価:80点
オススメ度:演歌ドクター当麻




孤高のメス 予告



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2011年2月24日木曜日

ヒア アフター (2010/米)

監督:クリント・イーストウッド
出演:マット・デイモン / セシル・ドゥ・フランス / フランキー・マクラレン / ジョージ・マクラレン / ジェイ・モーア / ブライス・ダラス・ハワード / マルト・ケラー / ティエリー・ヌーヴィック / デレク・ジャコビ / ミレーヌ・ジャンパノイ / ステファン・フレイス / リンゼイ・マーシャル / スティーヴン・R・シリッパ / ジェニファー・ルイス / ローラン・バトー / トム・ベアード / ジョージ・コスティガン




大津波事故により臨死体験をしたマリーは、そのことを機に死後の世界について考えるようになる
そして霊能力者としての自身を呪う男ジョージ、そして心に傷を負った少年マーカスの運命も動き始め・・・

霊能力者としての自分の力がイヤになってるところに、同じく臨死体験した女性や、いたいけな少年とふれ合うことで前向きになんたらかんたらって単純な話かと思ったら、そうでもなかった
基本、マリー、ジョージ、マーカスの三人のストーリーが別々に平行して進んでいく感じの作品でしたね
ようするに別々の三つの話が徐々に絡み合っていって一本の作品を編み上げていく、みたいな

とりあえず出だしの大津波からのマリー編のプロローグ、そしてジョージとマーカスのプロローグまでは集中して楽しめました
だけど、そこからがあまりにゆったりまったりなスローペースで各人物の話が展開していくんですが、あまりにゆっくりすぎてしょうじき眠気との戦いになりましたね
つまらなくはないけど、それぞれ独立してる話を淡々と描かれても観てる方の集中力が続かない
丁寧に描きすぎてることと、あまりにトリック的な演出がないストレートな物語運びが単調かもしれません

三人の主人公の話が別々に平行して進むのはいいんですが、もっと序盤から「知らず知らずの内に運命が交錯していた」とか、「思い返してみたら実はあれは伏線でキャラ同士を結びつけていた」みたいなトリッキーなところが皆無すぎる
個々のエピソードはおもしろい、確かにおもしろいんだけど、せっかくなんだからもっと序盤から絡みを入れてほしかった気がしないでもない
そんなじらしプレイゆえに三人の道が交錯した時のおもしろさがでる、と言えばそうなんだけど、そこに行き着くまでの道中が眠いのも事実なわけで

とりあえずラストまで観たあとで、三人のたどってきた道を振り返りながら「ああ、よかったなあ」と感じられるスルメ的な作品であることは間違いないと思う
「つまりどういうことだよ?」ってのを観終わった後に振り返ることで楽しさがわいてくる系の作品
ちょっとまったりしすぎな感はあるけど、ひどい内容ではない
まどろっこしい映画、って個人的に感じた一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:マーカス少年編が個人的によかった




ヒア アフター 予告

2011年2月20日日曜日

ジョニー・マッド・ドッグ (2008/仏)

監督:ジャン・ステファーヌ・ソヴェール
出演:クリストファー・ミニー / デイジー・ヴィクトリア・ヴァンディ / ダグベ・トゥウェ / バリー・チェルノ / モハメッド・セセイ / レオ・ボイエネ・コト / プリンス・コティ / ナサニエル・J・カペユ / エリック・コール / プリンス・ドブラ






アフリカで反政府活動グループの少年兵部隊長をやっているジョニー
略奪、虐殺、強姦を繰り返しつつ、少年兵たちは大統領のいる街に攻め込むのだった

反政府組織のリーダーである大将の命令のもと、少年兵を率いるジョニーによる戦場体験もの
まあ、なんというかインパクトがかなり強烈で、冒頭からいっきにその雰囲気に心を鷲掴みされます
ミリタリー系の知識はないし、この映画で描かれてる戦場描写がリアルかどうか判断できないけど、生ぐさいっぽい意味での「リアルだな」と感じる作品ですね
なんともいえないパンチのきいた魅力のある作風

内容はホントに少年兵たちによるゲリラ占拠戦闘で、それに巻き込まれる一般人の少女の姿も同時に描いていくだけ
一般人の少女と出会って自分たちの行いに疑問を抱いたり、正義とか悪とか、理想と現実とか、生きることと殺すこととか、そういった葛藤や反戦チックな説教描写はいっさいありません
ドラマチックなことはなく、ただ戦争をふっかける少年たちの残酷であどけなくて、なんともやるせない姿を現実的に描写してるだけなんですね

あまりに淡々と戦場のシーンを描いていくだけなので、そういう意味ではなんらかの心温まるエピソードを期待してるとがっくりくるかもしれません
淡々としてるとはいえドキュメンタリー風ってわけでもなく、けっこうエンターテインメントはしてます
ドン、と目の前に物語が無造作に投げ出され、それをどう感じるかは観てる人にまかせる的な雰囲気ですかね
それでいて小難しい内容じゃないし、わりと「どう感じてほしいか」という制作側の意図は分かりやすいのでダラっと観てても楽しめます

余分な演出がない、シンプルで素材の味で勝負してる料理みたいな一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:死にたくなければ生まれてくるな




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2011年2月18日金曜日

ヤギと男と男と壁と (2009/米・英)

監督:グラント・ヘスロフ
出演:ジョージ・クルーニー / ユアン・マクレガー / ジェフ・ブリッジズ / ケヴィン・スペイシー / スティーブン・ラング / ロバート・パトリック / ワリード・ズエイター / スティーブン・ルート / グレン・モーシャワー / ニック・オファーマン / ティム・グリフィン / レベッカ・メイダー / ジェイコブ・ブラウン / トッド・ラ・トゥレット / ブラッド・グランバーグ




記者のビルが取材した男は自らを超能力スパイだったと名乗る
失恋の果て、イラクにいたビルはそこで超能力スパイのエースであるリンと出会い…

なんか最近、どうもこってこてのコメディ分が足りないな、ってことで鑑賞
名だたる渋い俳優さんたちが大まじめな演技でバカなことをやる渋いトーンのハチャメチャコメディですね
やってることも言ってることもバカ丸だしなんですが、それを真剣にやってる姿を見て楽しもうという内容

彼女を職場の上司に寝取られた記者が、傷心状態のヤケでいまだ戦争中のイラクに乗り込んでジャーナリストとして一発あててやろうと意気込む
で、そんなイラクでかつて取材した自称超能力スパイから聞いていていた、凄腕超能力者のリンと出会い、取材対象として行動をともにする、という展開
まあ、なんというかなにからつっこんでいいやら、って感じでボケにボケを重ねてくる流れの中で、しかも本人はいたってまじめな上に主人公の記者もツッコミ役というより、ボケにまじめに対応するからおもしろい
ツッコミ役は観てる側の人に任せるということなんだろうけど、ボケまたボケの重ねっぷりにもうどうでもよくなってきます

ジェダイ戦士、新地球軍、遠隔視、ヤギ実験、スーパー兵士、そんなことを真剣に語るリンことジョージの姿が素敵すぎてまぶしすぎて、マジキラキラ眼力
話の展開も「なんでもありかよ」みたいな統一感のない行きあたりばったりな流れで、それが逆に楽しくてしかたない
「ようするになんなんだよ」というツッコミをいれざるえないが、それがいい

でも楽しいのは終盤までで、なんかラストをまとめようと物語が動き出した途端につまらなくなります
リンがはっちゃけなくなってからが特にアレで、ホントにそれまでの勢いがみじんもなくなるから困る
なんというか、いい話にしようか、ぶっとんだハチャメチャ路線で逃げきるか、作品のラストの方向性がかなり中途半端でどっちつかず

終わりよければすべてよし、なら逆だったら微妙さが漂ってしまい、それまでのおもしろかったことすべてが微妙に思えてしまう・・・そんなちょっと残念な一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:ちょっと隣の部屋にいってくる




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2011年2月17日木曜日

あしたのジョー (2011/日)

監督:曽利文彦
出演:山下智久 / 伊勢谷友介 / 香里奈 / 香川照之 / 勝矢 / モロ師岡 / 西田尚美 / 杉本哲太 / 倍賞美津子 / 津川雅彦








ドヤ街のゴロツキの矢吹丈は、ヤクザとの喧嘩で少年院行きとなる
そこで同じ囚人のプロボクサー力石徹と出会ったことで、矢吹はボクシングに目覚めるのだった

オサレなアイドルによる原作レイプ映画、これもそんな感じの作品なんだろうなあ、と思ってたけど、それほど悪い内容じゃなくてびっくり
そこら辺のテキトーな作りで名作を台無しにすることによる批判を意識してか、けっこう中身は丁寧に作ってある感じでしたね
まあ、とりあえずは「悪くはない」といった印象

原作はうっすらとしか覚えてないですが、丈がボクサーになるまでの展開がけっこうテンポよく描かれてます
その後もラストの力石戦まで丁寧に作られてるので、内容的には飽きさせることなく十分に楽しめました
とにかく力石の存在感がすごいものがあって、初登場した時点でいっきに画面が引き締まります
というか力石が出てるシーンは全編通して締まる感じで、マジで力石映画といってもいいかもしれません

逆に言えば丈の存在感があまりにアレすぎる
いちおは主人公ですが、話が進むにつれてどんどん力石に立場を奪われていき、後半にはびっくりするほど存在感が薄くなります
同じ感じで段平のおっちゃんも強烈なキャラで、かなり印象が強く残る・・・だからこそ、いっそう丈の影が薄くなる一方に
ぶっちゃけ丈の表面的な軽薄さはよく出てるけど、隠してる芯の強さがあまりよくでてない気がしないでもない

肝心のボクシングシーンはけっこう迫力があって、じゃっかんストップモーションとか、観客のキャラのうざさが鼻につくシーンがあるけど、総じて楽しめましたね
試合の演出はまあいいとして、それ以上にあまりに普通のボクシングの試合的な殴りあいシーンがなかったのがちょっと・・・
ノーガード戦法はまあ、ウリのひとつだからいいとして、さすがに「それだけかよ」っぽさが気になります
どんだけクロスカンターなんだよ、とツッコミをいれざるえない

まあ、そんな感じでちょっと主人公があまりにキャラが弱い、というか力石の印象が強烈すぎる作品
最後のダラっとした空気も力石でちゃんと締めていってるし、なんとも力石さんにおんぶにだっこな内容でした

個人的評価:75点
オススメ度:「やど」の逆読みだったのね




あしたのジョー 予告

2011年2月13日日曜日

ザ・タウン (2010/米)

監督:ベン・アフレック
出演:ベン・アフレック / レベッカ・ホール / ジェレミー・レナー / ジョン・ハム / ブレイク・ライヴリー / タイタス・ウェリバー / スレイン / ピート・ポスルスウェイト / クリス・クーパー







銀行強盗にあった上、人質として誘拐されたクレア
そんなクレアが同じ町に住んでいると知った強盗チームのダグは、念のために彼女の尾行を開始する

被害者と加害者の禁断のロマンス、だけど正体がバレて愛のピンチ・・・みたいなちょっと甘ったるい作品だったらやだなあ、と思ってたけどそんなにスイートじゃなかったので楽しめましたね
傷つけた相手に自分の正体を隠して接近するうちに恋愛感情が芽生え、仲間との付き合いの間でうんぬんって漢字のわりとよくある内容
よくある内容なんだけど、よくあるからこそ堅実にありふれないような工夫がされてるのがよかった

被害者のクレアと加害者のダグ、家族とも言える強盗仲間のジェム、着実に包囲網を狭めてくるFBI、ダグたちのボス、ロマンス要素よりクライムアクション要素の方が強い印象ですね
ロマンス要素にしてもあまりこってりしてなくて、物語の進行上最小限に必要なシーンだけって感じで、そういった男女のあれこれをムードある曲をバックにねっとり描く作品ではありません
それでいて犯罪者の身ながらクレアと出会ったことで「自分を変えたい」と本気になったダグの葛藤もしつこすぎない描き方で個人的には好き
全体的にあっさりテイストなんですが、スタイリッシュクライムアクションというより、大人のビターチョコみたいな印象の映画かな、と

とにかく過剰な演出が極力抑えられてる感じで、ドラマ部分の感情の起伏とか、アクション部分の銃撃戦の派手さとかホントに加減がちょうどいいあんばいに仕上がってます
退屈はけっしてしない、しかもクドすぎて食傷気味にもならないバランスがいい
特に楽曲による過剰演出がないのはホントによかった
BGMはBGMにすぎず、よけいな強制的な感情の底上げをねらってこないのはおもしろいですね
銃撃戦のシーンとか特にそう感じます

とはいえ名作、大作、感動作といった感じの作品ではなくて、ただ堅実にありふれた内容をそう感じさせないように作りましたって感じの武骨な映画ですね
しょうじき地味さは隠せないし、ヒロインの精神状態の描き方が浅すぎな気もするとか細かい粗はあります
なんともいえない名作一歩手前みたいな、そんな一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:人はみんなここかあの世で再会できる




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2011年2月10日木曜日

ジーン・ワルツ (2011/日)

監督:大谷健太郎
出演:菅野美穂 / 田辺誠一 / 大森南朋 / 南果歩 / 白石美帆 / 桐谷美玲 / 須賀貴匡 / 濱田マリ / 大杉漣 / 西村雅彦 / 片瀬那奈 / 風吹ジュン / 浅丘ルリ子







医局を離れ町の小さな産婦人科病院にこだわる曽根崎理恵
彼女は4人の妊婦を看ながら、あることを計画していた

そりゃ医療ミステリーとか、医療サスペンスものだと決めつけていた自分もアレですが、どうすんのこれ
ごくごく普通すぎる医療ドラマ、しかもやっすいテレビドラマなみにチープすぎる内容すぎじゃないですかね
いや、なんというか、ある意味で素敵ポイントを楽しむクソB級映画みたいな作品かもしれません

体制の外から医療を変えてみせるぜ、という医療ドラマのよくある典型的な主人公が、体制の中から変えてみせるぜ、ってライバルキャラとなんだかんだありつつ患者と接する
ほのぼの人情派なヒロインが患者をしかりたしなめ、勇気づけながら命を産む産婦人科の仕事をうんぬん、みたいな内容
おもしろいのは、このヒロインに明らかに影があって、なんか裏の顔がありそうな雰囲気があるところくらい
そんな裏の顔がいつ発動するのか、いつくるのか、ってのをドキドキしながら見守っていたら、いつの間にかクライマックスでコントが始まっていた
というのがしょうじきな感想ですね

ノーミステリー、ノーサスペンス、ノードラマ、びっくりするくらい大きなことは起こらないし、なにか大変なことになってはいるんだろうけど、それがぜんぜん伝わってこない緊張感のなさ
もうめんどくさいからネタバレしつつ書くけど、クライマックスで台風がマリアクリニックを襲うんですね
そこに妊婦3人同時に破水、台風のために交通機関がマヒして患者を診る人手が足りない、さらに倒木によって診察室がめちゃくちゃ・・・これらが同時に起こります
あまりにひどい同時アクシデントに「これコントだろ」としか言いようがない
それだけで終わらず、歩行補助器みたいなのに寄りかかって登場する院長、患者たちの急変、あげくに停電、もうなんというか逆に笑いがこみあげるわ

医療ものなのに手術シーンの迫力もなく、緊迫するドラマかと思ったらところどころにコントがはさまり、そのくせにラストは感動を強要するようなこれみよがしなシーンをいれてくる
自分が男だからかもしれませんが、こんな命のドラマとか失笑以外のなにものでもないと言わざるえない

ひどい映画を観る心づもりで鑑賞したわけじゃなかった分、あんまりな内容に精神力を奪われた一本でした

個人的評価:20点
オススメ度:リアルビッチ演技やめろ




ジーン・ワルツ 予告

2011年2月9日水曜日

エグザム (2009/英)

監督:スチュアート・ヘイゼルダイン
出演:ルーク・マブリー / ジェンマ・チャン / ジミ・ミストリー / ジョン・ロイド・フィリンガム / チュク・イウジ / ナタリー・コックス / ポリアンナ・マッキントッシュ / アダル・ベック / コリン・サーモン / クリス・ケアリー






ある会社の就職試験の最終テストとして小部屋に集められた8人の男女
制限時間80分、白紙の紙だけを手元に集った面々は質問と答えを探す

限定空間に閉じこめられた人たちが頭脳バトルみたいなあれこれ、というと低予算上等な新進気鋭の日本人監督がよくチャレンジする題材かと思ってました
こういうシチュエーションものも外国の俳優さんが演じると胡散臭さがじゃっかん薄れるから不思議ですね
とりあえず個人的に大好物な部類に入るんで、こういう作品はもっと増えてほしいものです
それこそVSシリーズとかOTDシリーズなみに

部屋の中に8人の受験者、そして警備員
ルールは3つ、警備員と監視カメラの向こうにいる監督官に話しかけない、与えられた用紙を損なわない、部屋から出ない
しかし制限時間の80分を与えられただけで、用紙には質問らしきものは書いてない
おい、これどうするよ、って感じのお話
どうにかすれば用紙に質問が浮き出るのか、それとも出題者の裏をよんで柔軟な発想から答えを導くのか、非常にシンプルな状況からどんどん煮詰まっていく様子を楽しむ作品ですね
そしてじょじょに作品の背景や、それぞれの登場人物の本心が暴かれてゆく…みたいな

詳しくかくとどうあがいてもネタバレになるのでアレですが、とりあえず序盤の展開はけっこう退屈かもしれません
なかなか状況が煮詰まるようで煮詰まらない、じゃっかんテンポの遅さが気になります
それに比べて終盤はテンポが早すぎて、なんでいきなり駆け足になるんだと思わざるえない
作品全体のスピード配分がちょっとおかしいかな、と
そして、このオチを観たら「うん、まあ、そうなんだ」という微妙なものを感じるかもしれません

でも、この作品は観終わってからちょっと評価が変動します
「そういう状況」というシチュエーションと質問と答え
それについてちょっと振り返って考えていくと、わりとおもしろい
答えだけを考えると「ぶっちゃけ、なんでもよくね?」って感じなんですが、もちろん「なんでもいい」わけがないと思い至る
そう思えるとちょっと面白い見方ができるかな、と
まあ、なんとも変な言い回ししかできないですが、そんな感じで

作品の作りじたいは微妙でラストもスカッとしないけど、ちょっとおもしろい感覚を味わえた一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:ホワイトさんマジ鬼畜




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2011年2月8日火曜日

ゾンビランド (2009/米)

監督:ルーベン・フライシャー
出演:ウディ・ハレルソン / ジェシー・アイゼンバーグ / アビゲイル・ブレスリン / エマ・ストーン / アンバー・ハード / ビル・マーレイ








人がゾンビ化するウイルスが蔓延し、ゾンビがあふれかえった世界
独自のルールを守る童貞野郎が故郷を目指して旅を続けていた

公開当時、けっこう評判だったけど近場でやってなかったのを悔しい思いでスルーした作品ですね
コメディに特化したゾンビエンターテインメント映画で、冒頭からして小気味のいい演出でみせてくれます
印象的にテーマパーク風の様々なシチュエーション下でのコミカルゾンビアクション・・・って思ってたんですが、実際はなんともいえないロードムービーチックな作風でしたね

主人公のオタクっぽい男がゾンビのあふれる世界で、故郷を目指して旅を続ける途中で仲間と出会い、一緒にゾンビのいないと噂される場所へ向かう、みたいな話
しょうじき序盤のゾンビが出てくるシーンは楽しかったし、おもしろかったですが、徐々に内容が仲間内でのコミカルドラマに変わっていってしまって途端に楽しくはあるけどおもしろくない感じに
コメディの質的にもライトなファミリー向けな笑いみたいな雰囲気で、爆笑というよりクスクス系な楽しいシーンが多いですね

ホントに楽しいけどおもしろくない、というのがしっくりくる内容で、みんなでわいわい観る分には最適ですが一人でじっくりって感じではないかなあ、と
ゾンビの描写とか全編通じて丁寧に作ってあるのでまったく飽きはしないんですが、いま一歩、なんか突き抜けたものがないような
それぞれのキャラも個性豊かでいい味だしてはいるけど、ホントになにかはじけ足りてないな、という感じが強いです

最後まできっちり楽しめることは楽しめるんですが、って感じに「ですが・・・」とつけたくなる微妙さが残念だった一本でしたね

個人的評価:70点
オススメ度:ゾンビ映画なのにゾンビ分が物足りない




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2011年2月6日日曜日

ウォール・ストリート (2010/米)

監督:オリヴァー・ストーン
出演:マイケル・ダグラス / シャイア・ラブーフ / ジョシュ・ブローリン / キャリー・マリガン / イーライ・ウォーラック / スーザン・サランドン / フランク・ランジェラ / ジョン・ベッドフォード・ロイド / ヴァネッサ・フェルリト / オースティン・ペンドルドン / シルヴィア・マイルズ





かつてのウォールストリートの顔であったゴードン・ゲッコーが刑務所から出所する
そのゴードンの娘と付き合っていた投資会社のジェイクだったが、彼の勤める会社に対する悪意のある噂が流れはじめやがて株価が暴落していくのだった

かつてのキングの復活、そして若い野心家の対立、そんなベタな内容かと思っていたらそうでもなかった
陰謀と金の冷たさ、父と娘そして男と女の温かさ、そんな混ざり合わない奇妙な空気感がいっしょになったもどかしさが全編通して描かれてます
話じたいも「これどう転ぶんだ?」というどんな感じの内容かつかめないもどかしさに包まれていて、それでいてそんなもどかしさがじょじょに楽しくなってくる

自分の勤めていた会社が誰かの罠にかかったと理解したジェイクが、その犯人に自分の証券マンとしてのスキルを利用して復讐するために黒幕と思われる男のもとにあえて潜り込む
一方、付き合っている娘の親が有名なかつてのウォールストリートの顔役だったゴードンだと知りアドバイスを受けるとともに、最悪な親娘関係の状態な仲をとりまとめられないかと苦悩する
そんな感じの内容
経済関係パートと人間関係パートにわかれており、冷酷なマネーゲーム描写だけでもなくホットなヒューマンドラマだけでもない、悪く言えばどっちつかずな微妙さが漂います
そんな微妙なところを「良い意味での」微妙さと感じられればおもしろいと思えるでしょう
逆にいえば「どうしようもなく中途半端」と思えるのも理解できますね
個人的には、そんな微妙さがなんかもどかしかゆい感じで、新手の焦らしプレイ感覚で楽しめましたが

わりとゴードンさんの出番は少なくて、あまり活躍はしません
しかしその存在感は強烈で、なんか良い感じのドラマ展開になってる時でも「いや、でもなんか怪しいよな」みたいな裏の顔がありそうな雰囲気で緊張感がありますね
「良い話なんだけど、絶対に裏があるよな…。え?ないの?ホント?」みたいなセルフ疑心暗鬼が楽しい
いろんな意味で王道なストーリー運びじゃない感じで、登場人物が人間くさいのも個人的にはよかったかな、と
色と役が定められた記号みたいなキャラじゃなく、もっとどろどろした内面をもった人間として描かれてますね
それでいてリアル路線かと思えば重くなりすぎないファンタジーっぽいライトな雰囲気もあるという、なんていったらいいかわからない点がおもしろい

バリバリな経済ドラマ、欲望にまみれたマネーゲーム、裏切りうずまく陰謀劇、そんな内容を想像してた人にとってはちょっと物足りない作品かもしれません

個人的評価:85点
オススメ度:バイ、マイ、ブック!




ウォールストリート 予告

2011年2月4日金曜日

ハゲタカ (2009/日)

監督:大友啓史
出演:大森南朋 / 玉山鉄二 / 柴田恭兵 / 中尾彬 / 松田龍平 / 栗山千明 / 高良健吾 / 遠藤憲一 / 嶋田久作 / 小市慢太郎 / グレゴリー・ペッカー / 脇崎智史 / 志賀廣太郎







アカマ自動車が劉一華による買収の危機におちいる
それを救おうとする芝野は、かつて幾多の派手な企業買収でハゲタカと呼ばれ日本を騒がせた男・鷲津にコンタクトをとるのだが…

日本を舞台に外資系ファンドによる企業買収と再生を描いたマネーゲームドラマ、その映画版ですね
とりあえずというか、なんというか、完全にドラマ版の最終回を引き継いだストーリーになっていて、人物やら設定やらいっさい説明ないままに話が展開します
ドラマを追ってきた身としては回りくどい説明がなくて、いきなり本編楽しめるのはいいんですが、やっぱり一本の映画作品としては成り立ってない感が強い

ドラマ版を簡略して書くと、人情味があって正義感の強い企業再生担当の芝野、外資系企業から日本を買い叩くためにやってきた鷲津の対立を描いた作品
ふたりは対立しているうちに、芝野も鷲津もつまるところ日本企業を再生したいという願いは一緒だけど手法が違うということが分かってきて、その中で冷徹なイメージだった鷲津も実は根は熱い奴だと見えてくる
頭脳と金と人情が錯綜するマネーゲームを、難しい単語が飛び出しながらも内容はかなり分かりやすく描いていて、経済のことを知らなくてもドラマとして楽しめるものでした

で、この映画版ではけっこうありがちな、成長した鷲津対かつての鷲津のような冷徹な男という図式をメインに、アカマ自動車の取り合いを描いてます
いわゆる若造が強気な策略で先輩を追いつめるんだけど系の内容ですね
若造の劉の描き方、ドラマ版でのキャラの扱いがよくできていて、鷲津の策略対劉の策略は観ていて楽しい
しかし、それもあくまでドラマ的な楽しさで、作品の構成しかり映画的な楽しさではない気がしてなりませんが

あとは序盤の鷲津の堕落っぷりの説明が貧弱なのと、クライマックスの逆転劇があっさりしすぎている上に、丁寧に描きすぎたゆえに逆転の爽快感がない感じに
そこからの劉の内面の描写はよかったけど、ちょっとラストはバタバタだったかなあ、と
特にアメリカを買い叩くという所が、どうも軽い感じになってる気がしてならない
どうせならドラマであと4話くらいかけてじっくりやればよかったんじゃなかろうかと

そんな感じでドラマの続きのドラマ作品としてはおもしろい、けど映画としては微妙な一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:買い叩く




ハゲタカ 予告



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東宝 (2010-01-15)
売り上げランキング: 2796

2011年2月3日木曜日

GANTZ (2011/日)

監督:佐藤信介
出演:二宮和也 / 松山ケンイチ / 吉高由里子 / 本郷奏多 / 夏菜 / 綾野剛 / 水沢奈子 / 千阪健介 / 白石隼也 / 伊藤歩 / 田口トモロヲ / 山田孝之 / 落合扶樹 / 土平ドンペイ / 若葉竜也







駅のホームで偶然に幼なじみの加藤と出会った玄野
そこで線路に落ちた人を助ける加藤の道連れに死んだと確信した玄野だが、次の瞬間には見知らぬアパートの一室にいたのだった

原作は途中まで読んだけど、なんとなくついていけなくなってやめた派
でもとりあえず知ってる作品が映画化されれば、ここはにわかファンとして観るしかないってわけで鑑賞したわけですね
まあ、最初から分かりきってはいるんですが、前編ってことで完全に未完の状態でつづく的なしめになってるわけで
個人的にはあまり好きじゃない作品分割商法

原作と比べてうんぬんなんて野暮は言ってもしかたないんで、ここでは書きませんが、全体的に話のテンポはいいしアクションシーンが主体になってるので退屈することはないと思いますね
勘違いヒーロー気質な玄野くんと、正統派ヒーロー気質の加藤くん、ふたりとその他の仲間が突如として課せられた星人狩りに戸惑いながらもバラバラのチームワークで挑む、という内容

日常シーンは端的に描き、最低限の人物描写のみにして足早に対星人戦闘を描いてます
テンポはひじょうにいいですが、やはりドラマ性がかなり薄くなり、各キャラが「こいつはこういう奴です」という最低限の記号的な描かれ方しかしてない感じは強い
そのことがウリであるアクションパートの特に後半に響いてきて、どんどん作品自体が上滑りはじめます
最後にはびっくりするくらいに中身のない印象が強くなって、ホントに上っ面の形だけの状態になってしまってる気がします

特に「好きです」のシーンとか、個人的に唐突すぎて失笑ものでした
だからといってすっごいつまらない映画、というわけでもなく、ホントにパッと見だけはよくできてるんですね
うまく組み上げられた表面的には悪くないはりぼて映画というか、そんな感じ
けっこう急ぎ足で話を展開してるせい、なのかな

とりあえず前編ってことで、わりと後編に対する期待値が上がる運びにはなっていて、しかもつづきは3ヶ月後には観られるらしいんで、ちょっと気にならざるえない

個人的評価:60点
オススメ度:アイドル映画




GANTZ 予告