2012年12月31日月曜日

12月のこれ一本&2012年総括

2012年12月31日、大晦日ッスなあ
今年の年の瀬は仕事的にめちゃくちゃ多忙で疲労たまりまくり
そんな中でも休日をメインに映画を観に行ってた今月、12月分としてオススメしたいのは「最強のふたり」
まあ順当な感じがするかもしれませんが、これがホントに噂通りにおもしろいんだからしょうがない

で、続いて2012年に観た中で一本を選ぶと…
上述の「最強のふたり」の他、「キツツキと雨」「ドライヴ」「ジェーン・エア」とけっこう甲乙付けがたい印象深い作品が多いんですよね
ひじょうに迷いますが、あえて、ホントにあえて選ぶなら…「ドライヴ」ですね

個人的にあまりいっかい観た作品を繰り返し観たいとは思わないんですが、これはリピしてもいいと思わせてくれる
そういう意味では「ジェーン・エア」もそうなんですが…とか考え出すと一本に絞りきれなくなってくるのでやめます


そんなわけで今年もいろんな作品を楽しませていただきました
また、こんな感想ブログをのぞいてくれた人たちにも大いに感謝
今年も一年おせわになりました
来年もよろしくおねがいします

では、よいお年を

海洋天堂 (2010/中国)

監督:シュエ・シャオルー
出演:ジェット・リー / ウェン・ジャン / グイ・ルンメイ / ジュー・ユアンユアン / カオ・ユアンユアン / ドン・ヨン

海中に身を投げるふたりの男
ひとりは自閉症の21歳の男、もうひとりは末期ガンのその父親だった

養護施設に入れるには歳をとりすぎ、老人施設に入れるには若すぎる、妻はとうの昔に亡くしている、そんなケアしてくれる施設や身よりのない21歳の自閉症の息子を持つ末期ガンの父親
それでも死にきれなかった現実の中、自分の死後のことを憂う父親は息子を安心して任せられる場所を探す…
うん、まあ、ありきたりなテーマではあるんですが、「今まで子育てとか、自閉症の息子と向き合ってこなかった」という父親じゃなく、ずっとそんな息子と向き合ってきた父親っていう設定に重みがありますね

ずっとずっと自閉症の息子と暮らしてきたからこそ、残り時間がわずかになった今、その事の重大さと父親としての責任が重く重くのしかかる
ダメだと分かっていてもあせってしまう親の心と、そんな大人の都合をできようもない状態の息子の姿が痛々しいほどよく描かれてますね
なにはともあれ僕らのアクションスター、ジェット・リーさんが意外なほど役にマッチしてる
過剰なドラマ的演技臭はあまりなく、けっこうしっかり父親が実の息子に向ける愛情みたいな温かさが伝わってくる

とはいえ、しょうじき話的には平凡なよくある設定のドラマの域は出てない気がします
冒頭の海中に身を投げるふたりみたいな、もっとするどい、それこそかけたガラスで刺してくるようなトゲトゲしさが個人的には足りないかな、と
よく言えば超安定した作り、悪く言えばちょっとぬるい展開
基本的な自閉症の子供を持つ親のドラマとしては完成されてるものの、そこにこの作品だけのプラスアルファが「ジェット・リーさんが父親役」しかないってのがもったいない

観てて飽きることはないけど、鑑賞後は同じ系統の作品に完全に埋もれちゃって印象が薄くなっちゃうだろうな、って感じの一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:まあ、ドナルドさん的ではある




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2012年12月30日日曜日

汽車はふたたび故郷へ (2010/仏・グルジア・露)

監督:オタール・イオセリアーニ
出演:ダト・タリエラシュヴィリ / ビュル・オジエ / ピエール・エテックス / ファニー・ゴナン / タムナ・カルミゼ / ラシャ・シェヴァルナゼ / ニカ・エンデラゼ・ムスセリシュヴィリ / ギヴィ・サルチメリゼ / ニノ・チュヘイゼ

グルジアで生まれ育ち映画監督となったニコ
その映画性に対する周囲の反発や無理解に苦々しい思いをしつつも、映画を作り続ける

才能は認められながらも、あまりに自由奔放すぎる作品内容に反発も大きい若き映画監督
作りたい物がなかなか自由に作れない環境の中でも、それでも自分を貫いて映画制作を続ける…と言えばかなりシンプルなドラマなんですが…
この作品では劇中の主人公の作るものに対する共鳴と反感のストーリーを、まんまこの作品じたいにもあらわしてるんですよね
ようするにこの作品じたいが「観てる貴方に私の映画が理解できますか?」と問われてる感じ

しょうじきに言って、個人的には「理解できなかった」側、つまり劇中の主人公を苦しめた「バカども」側でした
こういう映画制作ドラマだからこそ世間一般の受けは悪いけど、カルト的な支持者も大勢いるっていう設定も「アリ」と思える
だけど、この主人公の作った作品を、それ単品だけで今、私が観たら「うわ、ひっでえオナニー映画だな」と言うかもしれない

そういったちょっと小難しい部分を抜きにすれば、けっこう作り的にはおもしろい
弾圧、暴力、政治的問題、商業的問題、色々と重苦しい問題を抱える主人公ですが、ホントにそんな重たい部分は微塵も感じさせない演出で、かといって軽すぎずに自分の映画作りを貫く力強さもあるのがいい
そんな映画として理解はできなかったけど、観てる分にはじゅうぶん楽しめたそんな一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:時代背景やらなんやらを把握しないとアレかもしれんね




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2012年12月28日金曜日

犬のおまわりさん (2011/日)

監督:有馬顕
出演:中尾明慶 / 川原和久 / 中村ゆり / ひぐち君 / 山田ルイ53世 / 伊藤裕子 / 螢雪次朗

田舎町の新人警官、愛沢は交番に届けられた子犬を飼い主が見つかるまで保護することに
もとから犬好きな愛沢であったが、実際に自分の手で育てる難しさを痛感する

年末の仕事に追われて疲弊してる中、TVドラマ感覚で楽しめる作品を探してたどり着いたのがコレ
動物ものだし、そう小難しいようなイメージもなかったので鑑賞したわけですが…まあ、みごとに深みもなにもない内容でしたね
出てくるキャラ、特に主人公の設定はじゃっかん光るものを感じるんですが、けっきょくよくあるTVドラマのワンエピソードって感じ

犬好きのおまわりさんが四苦八苦しながら子犬の面倒をみて、ついでに人間的にちょっと成長する系の掃いて捨てるほどあるストーリー
迷い犬チョボと愛沢の物語を同時に描いていくのはいいんだけど、どうにも愛沢サイドの話が弱い
この愛沢っていう主人公は設定的にはおもしろくて、いわゆるこういうドラマでありがちな「超愛犬家」「犬嫌い」「犬と無縁の暮らしをしてきた」みたいなタイプとは違う
「犬好き」だけど見たり触れたりする「犬の可愛い側面」だけが好きなだけで、飼ったり世話したりするのはノーサンキューな男
そんな動物ドラマにとってある意味で最悪な設定をもつ主人公なのに、そこをうまくいかしきれてないのが残念でならないわあ

犬のチョボ関連の展開はまあ安定して作られてるけど、どうにも主人公の成長過程が端折りすぎな気がしないでもない
「おまえいつのまに犬との暮らしの経験値かせいでたんだよ」と言わざるえない
みどころは可愛い犬たちの姿と「TVドラマ版マメシバ一郎(シリーズ2期)」に登場した、ゴールデンレトリーバーのライラが(マメシバ一郎との関連性はない、出演犬として)出てくることくらい

愛らしい子犬たちを堪能する癒し作品としてだけ、と割り切って観るのがいいかもしんない一本でした




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2012年12月24日月曜日

君へのメロディー (2010/日)

監督:横井健司
出演:佐藤永典 / 岡本玲 / 佐々木喜英 / 渋江譲二 / 落合恭子 / 貴山侑哉 / 江口のりこ / 霧島れいか / 小木茂光

窓の外をずっと見つめるある病室の記憶喪失の女性、紺野ユウに付き添って外に出るトキヤ
ユウが退院したあとも彼女のことが気になったトキヤは、おなじ記憶障害をもつ者どうしで働いているユウのペンションを訪れ…

気取らないにもほどがある、いまどきパロディものやコントでしかお目にかかれないような青春描写
だけど、全体的に不思議な「なにかある」空気が冷たく流れていて、暑苦しさはない
このストレートに感情を表に出す男と男、男と女の青い春っぷりを許容できるか否かが楽しめる境目かもしれません
恋愛のあれこれでうじうじしてるダチ公を怒鳴ってぶん殴って、殴り合うやりとりとかイヤじゃなければ楽しめるでしょう

記憶喪失のユウといっかいこっきりの散歩を楽しんだトキヤくんは、なんか気になっちゃって退院した彼女をストーキングする日々を送りついには職場に潜り込むことに成功
高校時代の親友との恋愛相談あり、記憶を取り戻すことの善し悪しあり、甘酸っぱいロマンスありで、ある意味でリア充ライフを満喫だぜ
という感じで、観てると分かると思いますが「なんか微妙に引っかかる」んですよね
話の全容が見えれば単純なんだけど、その引っかかりと演出的な見せ方がうまく作用している

「あー、そういうことね」というおもしろさはあるけど、さすがにもういちど最初から観てみようという気が起きない
そんな点がじゃっかん残念で、個人的にはもうちょいトリッキーな展開でもよかったかな
こういう見せ方だったからこそおもしろい、そのことだけにつきる一本でした
サブキャラのサイドストーリーを膨らませて、さらに本編にからめてくる展開とかだったら個人的に超好みなものになったかもしれません

個人的評価:75点
オススメ度:やだ、あの男の人、職場まで追いかけてきた…キモイ…。と思わないのか




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2012年12月23日日曜日

レ・ミゼラブル (2012/英)

監督:トム・フーパー
出演:ヒュー・ジャックマン / ラッセル・クロウ / アン・ハサウェイ / アマンダ・セイフライド / エディ・レッドメイン / ヘレナ・ボナム=カーター / サシャ・バロン・コーエン / サマンサ・バークス / アーロン・トヴェイト / イザベル・アレン

20年の刑期を終えて仮釈放になった男ジャン・バルジャンは、ある司祭との出会いで新しい生き方を見いだす
時はたち、市長の身となった彼は些細なことから身を堕とした女性と出会い、その娘コゼットを託される

さすがににわかな私でもそのタイトルくらいは知ってる「レ・ミゼラブル」
まあ、なんだ、でもタイトルだけでその内容とかまったく知らなかったんですけどね
なんとなく不幸な少女がいろいろな試練めいた人生を送りながら、最終的には幸せになるって感じの話かと思ってた…んだけど、これってジャン・バルジャンがメインの話だったのね
とにもかくにも主演のジャックマンさんが力入れて演じて歌って、ホントにある意味でジャックマン映画といってもいいんじゃないですかね

パン1つ盗んだだけ(脱獄したせいもあるけど)で20年の刑を課せられ、しかも仮釈放となっても定期的に出頭しなければならず、一生それが続き身分証明的にもそのレッテルがつきまといまっとうな仕事にもつけないジャン・バルジャン
刑期を終えて自由な身になっても罵られ蔑まされ世間からつまはじきにされる生活の中、ある司祭との出会いからすさんだ生き方を恥じる
それまでの自分に別れを告げて新たな生き方をすることで、市長という身分にまでなった彼は半ば自分のせいで身を堕とした女性から娘のことを託され、少女を立派に育て上げることに強い使命感を抱く
しかし、仮釈放の身で逃げ出した彼にジャベール警部の執拗な追跡が続く…みたいなお話
恨み憎しみを棄て、愛することを生きる術として誓うジャン・バルジャンだけど、やっぱりいろいろとままならない現実に時に肉体を、時に心をすり減らして、それでもなお自分を貫いていく生き様が痛々しカッコイイわけで

コゼットを立派に育てるお父ちゃん的な養育パートより、時代や運命に節目節目で試練とも言える選択をせまられ続ける様を描いてる感じですね
なんというかシーンごとの盛り上がりとしての歌と映像は見応え十分ですが、作品全体としてのシーンとシーンのつなぎ目がちょっと甘い気がしないでもない
悪く言えば見どころというシーンをポン、ポン、ポンと置いてるだけみたいな
そういう意味で一本のストーリーを流れるように描く映画というより、ひとつひとつのシーンに全力を傾けた映像作品に近いかも

だけど、そんな描き方がけっして悪いってわけでもなく、ホントにそれぞれのシーンの映像センスと役者さんたちの演技と歌が力強くていい
ジャックマンさんが出てない部分の弱さとラッセルさんの歌うとこがじゃっかん微妙な感じだけど、総じてミュージカルとしては楽しめる
そんな感じで元のミュージカル版を知らない身としてはけっこう楽しめたけど、知ってる&ファンの人はいったいどういう印象をもつのかな、とちょっと気になった一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:感情むき出しで歌われるとグッとくるわあ




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2012年12月21日金曜日

ライトノベルの楽しい書き方 (2010/日)

監督:大森研一
出演:須藤茉麻 / 佐藤永典 / 竹達彩奈 / 能登有沙 / 國府田マリ子 / 鈴木拡樹 / 五十嵐令子

海洋生物オタクの風変わりな高校生、八雲は従姉妹の代わりに売れっ子ライトノベル作家の姫宮美桜の原稿を受け取りにいくことに
しかしそこは同級生の文武両道でお金持ち、人を寄せ付けない堅物キャラな美少女、流鏑馬剣の住む屋敷で…

なんかまんまラノベでありそうな内容だな、と思ったら実際ラノベ原作だった
現代的萌えラブコメあるあるを具現化したような王道ストーリーっぷりは潔さはあるけど、しょうじき「王道」という言葉を言い訳にしてどこかでみた内容のシーンを切り貼りしてるだけな気もしないでもない
作品の基本的な作りの荒削りっぷり&キャストの不安定な演技力を生暖かく微笑ましく見守る、ということを楽しむくらいの心構えで挑んだ方がいいかもしれません

他人を寄せ付けない雰囲気をもつ堅物キャラのヒロイン
しかし実際は乙女チックなところがあり、また萌え萌えなライトノベルを書く作家である…という真実を知ってしまった主人公は成り行き上、新作のために恋人を演じる恋愛シミュレーションの相手にされてしまう
恋人ごっこをしてるうちに…という、まあよくある話

とりあえずどのシーンを切り取っても「なんか見たことある」ものばかり
良く言えば「王道」なんでしょうが、目新しさがいっさいないストーリーはおもしろいものじゃない
だけどそんなどっかで見たシーンの切り貼りの結果としての作品はつまらないってほどでもない
むしろ切り貼り編集はうまくまとまってると思う
繰り広げられる王道展開に「あるある」とゆるいツッコミをいれつつ、ぼんやり観るのに最適な一本でした

個人的評価:60点
オススメ度:いきなり作家に一ヶ月の猶予を与えて〆切的に大丈夫なのか





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2012年12月17日月曜日

フランケンウィニー (2012/米)

監督:ティム・バートン
出演:キャサリン・オハラ / マーティン・ショート / マーティン・ランドー /チャーリー・ターハン / アッティカス・シェイファー / ウィノナ・ライダー

友だちと言えば愛犬のスパーキーだけで、いつも屋根裏部屋にこもりがちな少年ヴィクター
ある日、事故でスパーキーを失い悲しみにくれる日々を過ごす中、彼は生物の筋肉が電気に反応することをヒントに愛犬を蘇らせる実験を行う…

白黒(3D)ワンダーランド、うん、まさにそんな感じでしたね
とにもかくにも、このキャラを受け入れられるか否かが、この作品を楽しめるかどうかの大きな分かれ目になるかもしれません
個人的には予告をみた時より実際の本編でキャラが動いてる姿は魅力的に感じました
演出的にもおちゃらけた所も控えめで、予告から受ける印象よりしっかり作ってあるかな、と
ただ、ラストをむかえたとき「え?終わり?」ってくらいあっさりしすぎてるのは、ちょっと物足りないかな

死んだ犬を蘇らせ、しかしさすがにそのことは秘密裏にして過ごす主人公
だけどあっさりその秘密はクラスメイトにバレ、口止め料の代わりにその実験を再現してみせるハメに
まあ、でもそんな口止めがいつまでも続くわけなく、その実験の事実を知った他のクラスメイトたちは…って感じのストーリー
しょうじき愛犬とご主人様の絆ドラマ、生命の重さに通じるドラマみたいな要素は薄い
アミューズメント施設のパレード、もしくはジェットコースターよろしくスピーディにはしゃぎ回ってる様子を映してるだけな印象が強い

ドラマ性が薄いってのは子供にも分かりやすいシンプルさでいいんだろうけど、ちょっと気になるのが笑いどころについて
ベタでありきたりでシンプルだけど、お手軽に笑えるポイントが意外と少ない
簡単に言えば「家族で観て子供といっしょに笑える」というシーンがあんまりないかな、と
実際、何組か小さい子連れで観にきてたひとがいましたが、二カ所くらいでしか笑ってなかった

クライマックスからラストにかけてもスピーディな展開でいいんだけど、いかんせん早すぎて「え?え?」って感じで余韻もなにもないまま終わります
それゆえになんとも鑑賞後の物足りない感が否めない一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:そこはもっと死体を実験に使う倫理観みたいのを…いや、まあいいか




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2012年12月16日日曜日

グッモーエビアン! (2012/日)

監督:山本透
出演:麻生久美子 / 大泉洋 / 三吉彩花 / 能年玲奈 / 竹村哲 / MAH / 塚地武雅 / 小池栄子 / 土屋アンナ

未婚の母アキとその娘ハツキのもとに届くヤグからの一通のハガキ
それからしばらくして、ふらりと現れたヤグによりはちゃめちゃな三人の生活がはじまる

基本は現実的に生きるハツキが、自由奔放なヤグと接するうちに心のささくれが大きくなっていく様子をコミカルに時にシリアスに描いていく作品
変わらない安定した家族の暮らしの中に破天荒な要素が加わったことで、楽しいながらも不安定になる苛立ちやらなんやらって感じの家族ものの王道
しょうじきストーリーだけみれば古くささしかないんだけど、キャスティングの妙や丁寧でうまい演出のおかげで「古くさい、だからこそいい!」という印象になってますね

けっして裕福じゃないまでも堅実に楽しく暮らすアキとハツキ
ヤグがそのふたりの中に加わったことで、なんだかんだヤグを受け入れて楽しく日々を暮らす母親のアキ
だけど、しっかりもののアキはウザキャラで好き勝手やってるようにしかみえないヤグの存在にじょじょに苛立ちがつのっていく
ベースはハツキの私生活や学校生活のドラマになっていて、「楽しいんだけど、なんかなっとくいかない」もどかしさが色濃くなっていく様子を描いてます
で、まあ、いよいよそのたまりたまったものがアレでナニして、けっきょくは家族っていいもんだなあ、というストーリーですわ

とりあえずヤグのウザキャラやしっかり者の娘、芯の強い母親、それぞれのキャスティングがかなりはまってて画的には超ド安定
そこから「昭和ドラマかよ」ってくらいベタなストーリーが進行するんですが、見送りのために二人乗りするシーンの顛末とか、ハツキを追って飛び出すヤグのシーンの顛末とか、微妙に外してくる演出が良いスパイスになっておもしろい
なにより作品としての安定感が抜群で、終盤の展開とかみごとに家族ドラマでロックな描写が心地いい

ただちょっと気になるのが、個人的に嫌韓ってわけじゃないけど、じゃっかん韓国推しが不自然なシーンがちょこちょこはさまれるのが・・・ね
なんかそこら辺だけ急に観てて冷めるのは否めない
ロックでパンクな登場人物や世界観に合ってないかな、と
インドやら多国籍っぽい要素はマッチしてるんだけどね

まあ、なにはともあれカレーがめちゃくちゃ食いたくなる、超安定な家族ドラマな一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:青春だねえ。ロックだねえ



グッモーエビアン! 予告

2012年12月14日金曜日

トロール・ハンター (2010/ノルウェー)

監督:アンドレ・ウーヴレダル
出演:オットー・イェスパーセン / グレン・エルランド・トスタード / ヨハンナ・モールク / トマス・アルフ・ラーセン / ウルミラ・ベルグ・ドマース / ハンス・モルテン・ハンセン

トマスたち学生3人組はある密猟者ハンス追う映像作品を撮ろうとしていた
あまりにも怪しい行動をとるハンスは、実はおとぎ話の中の存在と思われているトロールを狩る者だった

まあ、なんでしょう、ノルウェーって国がどんなんだか知識はないですが、こういう映画を撮るのか
というくらい「なんともいえない」感じの型に入ってるようで入ってないようなのが素敵です
作りとしてはハンディカメラによるドキュメンタリー風で、最近ではすっかりひとつのジャンルになってる気がしないでもない系統なんですが、作品としての味がちょっと独特
最初こそ探検隊シリーズみたいなノリかな、と思ってたんですがだんだんとその世界…つーかハンスさんの魅力の虜になっていきましたね

トロール・ハンターの朝は早い
みたいな感じでハンターであるハンスさんの仕事っぷりを追ううちに、トロールの生態や種類、政府の対応というのがドキュメンタリータッチで描かれてます
トロールという存在はけっこうあっさりと受け入れられ、そっからは普通に特殊生物を撮ってるていどの落ち着きがある
ちょっと珍しい野生動物とハンターのアニマル番組っぽい感じ

そして観つづけていけば分かりますが、どんどんハンターであるハンスさんが前に前に出てきて、最後には「こりゃ完全に英雄ハンター、ハンスさんの話じゃねえか」と思える内容になります
それよりも気になるのが「トロールという存在と政府の関係」という点
けっこうハンスさんはこの仕事に嫌気がさしてきていて、学生の映画作りに対して積極的にトロールに関することを暴露してくれます
だけど設定上では政府によって隠匿されている存在であるトロール
それなのに「いや、秘密だし。おまえら撮影とかやめろよな」と語る関係者のほとんどが、なんとも最終的には学生たちの目の前でふつうに隠し事をしゃべりはじめるし、そう強行に撮影の邪魔はしない
うん、よく今まで隠し通してこれたもんだと言わざるえない

あえて型にはめるなら「マジメにバカやってるB級映画」って感じなので、ちょっと変なB級作品を好む人には大好物な一本かもしれません

個人的評価:80点
オススメ度:トマスくんの怪我は応急処置ですましていいレベルじゃないだろ




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2012年12月11日火曜日

少年と自転車 (2011/ベルギー・仏・伊)

監督:ジャン・ピエール・ダルデンヌ / リュック・ダルデンヌ
出演:セシル・ドゥ・フランス / トマ・ドレ / ジェレミー・レニエ / ファブリツィオ・ロンギオーヌ / オリヴィエ・グルメ / バティスト・ソルニン / サミュエル・ド・リック / シャルル・ジャド

少年シリルは父親と暮らしていたアパートに電話をかけるがつながらない
もうそこに父親はいない、そのことになっとくできない少年はアパートを直接おとずれ、そこで騒ぎを起こす中でひとりの女性と出会う

リアルクソガ…活発な子供の様をまっしょうめんから描ききってますね
しょうじきリアルな子供の無邪気で理不尽な行動とか大嫌いなんですが、この作品はあまりにその部分を包み隠さずに撮ってることから、逆に「すっげー、分かるわあ」という子供の頃の自分を思い出して楽しめた
というかこの子供の演技力はすごい
そもそも演技なのか、ってくらい子供の生き様をダイレクトに観る側に伝えてくる

父と離れて施設で暮らすシリルはその現実や大人の理屈を理解できず、父親を追い求めて行き場のない感情を爆発させる日々を過ごしていた
やがてやっと現実を突きつけられ、飲み込まされる中、ある女性に週末里親になってくれと頼み込むシリル
それを了承したサマンサとの暮らしの中、父を追い求める感情の灯火を消せないまま、新たな生活がはじまる
という感じの話で、まあ、なんというかとにかく主人公のシリルくんがわがままなんだわ
本当に無邪気なままで「おまえ、そんなこと言える立場か?」と大人なら思ってしまうことを迷うことなく言い放つ

最初はさすがに「このガキ…!」とか思ってたけど、この作品が描くところの少年の話という部分が分かってくるにしたがって、 「そういや自分も子供の頃、こんなんだったっけかな」と作品に共感していきました
その言動、行動がどれだけ周りの大人に迷惑をかけているか、大人の理屈を理解できてない子供ゆえの無邪気さが痛々しい
痛々しいけど、それゆえに画面から目が離せない魅力がこの作品にはありましたね

父親、サマンサ、兄貴分の悪ガキ、迷惑をかけた大人たち…そんな少年をとりまく人たちについては最低限の描写になってるのもいい
じゃっかんサマンサの聖母っぷりがファンタジーに感じて、そこはちょっと理由が知りたいなとも思ったけど、ホントにブレずにメインは「シリルという少年」に置かれている
自分の感情すら持てあまし、もやもやした「それ」を押し殺し、時にはぶちまけるシリルくんの様を観る、この一点だけなのにおもしろいから不思議
「むかし(子供のころ)自分がやった(言った)ことも、今おもえばすっげえ迷惑かけてたんだな」と再認識もできる一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:シリルくんには幸せになってほしい。マジで




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2012年12月9日日曜日

最強のふたり (2011/仏)

監督:エリック・トレダノ / オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリューゼ / オマール・シー / アンヌ・ル・ニイ / オドレイ・フルーロ / クロチルド・モレ / アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ / グレゴワール・エステルマン

失業手当の書類が目当てで、採用される見込みのない介護の仕事の面接にきたドリス
しかし、その破天荒な様子を気に入った雇い主のフィリップは彼を自分の世話係として試験採用する

首から下が麻痺している身体障害者で大富豪のフィリップと、スラム出身の行くあてのない粗暴なドリス
あまりに違いすぎる身分、見た目、年齢、考え方、そんなふたりのギャップと絆を描く物語・・・というと、そう目新しい要素でもないんですが、ホントに最初から最後までスクリーンから目が離せなかったくらい集中して楽しめました
すかしてるだけじゃない、くずしてるだけでもない絶妙なバランスでシーンが展開していって、深みもあるけどほどよい雑味もあるメリハリがめちゃくちゃよく描けてる

自分でも気むずかしいことを自覚してるフィリップが雇ったのは、あきらかに介護や世話係なんかとはほど遠い世界にいるとしか思えない粗暴な男ドリス
だけどあまりに遠慮なく接してくるドリスと暮らしてるうちに、フィリップにも変化があらわれ・・・
と、身分違いのギャップものとしてはオーソドックスな作りで、まあ、ようするに互いに刺激しあって「生きてる」ことを実感なんたら~みたいな内容
ちょっと手の掛かる子供みたいなドリスと、その面倒な相手をしながらもどこか楽しそうなフィリップ、ふたりの日々を観てるだけで、それだけで本当におもしろいから不思議です

とりあえずオープニングから最強
「スカイフォール」のオープニングもよかったけど、この作品の出だしもかなりいい
そこから淀みない曲を奏でるようにテンポよく話が進んでいき、本当に観ててイヤな気持ちにならない日々の描写がすばらしい
深刻すぎず、無理な感動の方向にももっていかない気持ちいいふたりの関係、本当に最強の日常映画かもしれません

ふたりではめをはずしたり、本音でおしゃべりしたり、遊んだりラストまでそう特別なことはない
特別なことはないんだけど、このラストシーンには何とも言えない感情のわきあがりがある
鑑賞後、思わず満面の笑みで「なにこれ・・・なにこれ!」と言葉にならない心地よい感情の高まりに気分最高になった一本でした

個人的評価:100点
オススメ度:最強の笑顔だぜ


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2012年12月6日木曜日

阪急電車 片道15分の奇跡 (2011/日)

監督:三宅喜重
出演:中谷美紀 / 戸田恵梨香 / 宮本信子 / 南果歩 / 谷村美月 / 有村架純 / 芦田愛菜 / 小柳友 / 勝地涼 / 玉山鉄二

それぞれ自分の中に悩みを抱えた老若男女
阪急今津線で交差した人生が波紋のように広がり、他人どうしをつなげていく

ちょっといい話のオムニバス、小さな幸福の連鎖、実はみんな何かしらのつながりがある…というおもしろ要素を中途半端にかいつまんでるな、ってのが第一印象
最初に情報過多なくらいに各キャラのプロローグを圧縮して描き、そこからほんわかのんびり分かりやすくエピソードを広げていく作りはいい
すんなりと話に入っていける点だけは評価できるけど、しょうじきそんだけの作品かなあ

片道15分の電車というシチュエーションを軸とした完全独立オムニバスにするなり、おばあちゃんを軸にする心温まるおせっかいストーリーにするなり、幸福のバトンをつないでいく展開にするなり、どれかにしぼって作った方がまとまりがあってよかった気がしないでもない
なんというか、「ちょっといい話を作りたいんだけど、アイディアない?」というテーマによせられたショートストーリーを何も考えずにゴチャっと寄せ集めただけな印象が強いんですよね
で、それじゃさすがにアレだってんで、エピソードとキャラ同士の接点やつながりをテキトーにつけてみました…みたいな

思った以上にロマンス要素が多くて、特に中盤の作風ぶちこわしじゃねえのって感じの軽すぎるテレビドラマ的ロマンス展開はひどい
作品の入り口であるおばあちゃんと寝取られ女のエピソードまでは雰囲気もいいし、すっごいおもしろいんだけど、それ以降はしょうじき個人的に退屈な話しかなかったかな
特に少女関連の話とか、なんかクライマックス用のいちおし展開として力入ったのがくるとおもってたのに…
なんかけっこうライトな日常ストーリーな一本でした

個人的評価:60点
オススメ度:割れ物をゴミ箱につっこむな




阪急電車 片道15分の奇跡 予告


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2012年12月4日火曜日

人生の特等席 (2012/米)

監督:ロバート・ロレンツ
出演:クリント・イーストウッド / エイミー・アダムス / ジャスティン・ティンバーレイク / ジョン・グッドマン / ロバート・パトリック / マシュー・リラード / ジョー・マッシンギル

メジャーリーグの老齢ベテランスカウトマン、ガスは目が見えなくなりつつあることを隠して仕事についていた
古い友人ピートはその変調に薄々気づき、ガスの娘ミッキーに側にいてやれないかと持ちかける

近年は作品を重ねるごとにおじいちゃんになってく気がしないでもないクリント主演作品
ベースボールを題材に老いた頑固親父とその娘の絆をなんたら、というありふれたお話ではあるんですが、思った以上にライトでベースボールよりのウェイトが大きい
どっちかといえば老いを題材にした親娘のベースボールストーリーの方がしっくりくるかもしれんね
しんみり感動ものっていうよりスッキリさわやか系な印象をうけました

スカウトという仕事も時代が変わってパソコンのひとつも使えないガスは、コンピュータをばりばり活用するライバルに押され気味
そんな中で契約期間の終了も近いことから「そろそろ引退」という周りの声もささやかれはじめる
さらにそこにきて商売道具である目も歳からくる病で使い物にならなくなりつつあった
という状況の中、幼い頃に距離をおいたことで仲は良好とはいえない娘がそれでも心配してガスの側にもどってくる
基本はガスの目の病と娘との距離感を描いてはいるんだけど、娘の仕事やら恋愛エピソードもあります
というか途中から普通に目の病の深刻さとか大きく扱われなくなってきて、「ああ、そういえば目が悪かったって設定だったね」くらいの描写に
難病&親娘の絆みたいのを期待してると肩すかしくらうかもね

ちょっと距離が縮まったかと思ったらささいなことでまた開き、を繰り返しながら徐々に娘であるミッキーサイドに物語はシフトしていってる感じかな
個人的にはジジイパワーで「まだまだ若いモンには負けねえ」みたいなのが好きなんで、ミッキーのロマンスシーンとかちょっと長すぎると言わざるえない
もっとガスを、ジジイの荒くれっぷりを見せてくれよ、と
それでも頑固親父と似た者娘のちょっとしたボタンの掛け違いからくる大きな溝とか、単純に性格からくる問題だけじゃない理由が設定されてるのはおもしろかった

あと、ラストあたりの都合良すぎる展開が、あまりにファンタジーな気がして引っかかりはするけど、まあ気持ちよく終わるためにはしかたなかったのかな
総じて浅すぎるわけでもないけど、それほど深い内容じゃない感じな気軽に観れる一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:良い人キャラと悪い人キャラの見た目が露骨すぎるだろ



人生の特等席 予告

2012年12月3日月曜日

ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 (2012/英・加・スウェーデン)

監督:ジェームズ・ワトキンス
出演:ダニエル・ラドクリフ / キアラン・ハインズ / ジャネット・マクティア / リズ・ホワイト / ソフィー・スタッキー / ロジャー・アラム

ある田舎町の館に遺書を探す仕事で訪れたアーサー
もう誰も住んでいないはずの館でひとりの女を目撃したことにより、町で奇妙な事件が起こりはじめる

なんというか「これ古典ホラー映画のリメイク?」ってくらい古くさい作品でしたね
作中の時代設定的なアンティーク感と半廃墟化した洋館というコンボ、そして全体的な雰囲気にそぐわない主人公のキレイな見た目を楽しむ内容かもしれん
すっごいつまらない、ってわけじゃないけど今これを撮るんだったらもっと何かしらドラマ的な深みか、ホラー的なグロさ、もしくはミステリー的なひねった謎があった方がいいんじゃなかろうか感は否めない
そのくらい古くさい

仕事で怪しげな館にきたものの、地元の人たちは非協力的というかむしろ「さっさと帰れ」ってくらいにアーサーを拒絶する
そんな中でアーサーが無人のはずの館で黒衣の女をチラッと見かけたのをきっかけに町では子供が死に、また館では次々に怪奇現象としか思えないことが起こりはじめる
そんな「なにが起こってるんだ?」という部分が肝なんでしょうが、しょうじき町の住人たちは詳細まで事情を知ってる風なのがアレすぎる
主人公に対し「いいから帰れよ」という態度一辺倒じゃなくて、きちんと事情を説明すればそれですむ問題なんじゃねえのと言わざるえない

基本、館になんか怪しい気配がするってんで主人公が探索すると、チラッと姿を見せて消えるの繰り返し
遺書を探すために館にある膨大な文書に目を通すうちに、なんとなく館の主の事情がつかめてきて、たまに町に戻ると惨事がおこっとーる・・・みたいな
どんどん館での怪現象はエスカレートしていくんですが、けっこうなところにくるまで主人公がビビらずに探索する姿はどうかと思うわ
精神的にそんなタフかよ、と

あとは根本的に主人公をビビらせる意味なくね?という気もしないでもない
ようするに女の姿すらチラ見させればいいんだしさ
なんというか観てるとだんだん「これリング以降の劣化Jホラー作品臭もするな」みたいな印象も強くなってくるし、ホントになんで今さらこれを撮ろうと思ったのかなあ
目にする機会があれば観て損はしないだろうけど、あえて能動的に観る作品じゃない気がする一本でした

個人的評価:65点
おすすめ度:こっち見んな



ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 予告

2012年12月2日日曜日

007 スカイフォール (2012/英・米)

監督:サム・メンデス
出演:ダニエル・クレイグ / ハビエル・バルデム / レイフ・ファインズ / ナオミ・ハリス / ベレニス・マーロウ / アルバート・フィニー / ベン・ウィショウ / ジュディ・デンチ / ヘレン・マックロリー / ニコラス・ウッドソン / ロリー・キニア

MI6の諜報員007ことジェームズ・ボンドはある極秘ファイルを追っていたが、仲間に誤射され谷底に落ちる
その仲間に発砲許可を出した上司Mに疑念を抱きつつ、ファイルを奪ったテロリストによりMI6施設爆破事件を知りイギリスへ戻るのだった

鑑賞後すぐには「これかなり最高レベルでおもしろい」と思って90点つけたけど、ちょっと時間がたって冷静になってみたらそうでもないかもしれん
なんというか全体的に微妙に浅いんですよね
いろんな要素があって、それぞれのシーンの意味合いとかはよくできてるんですが、そのひとつひとつのシーンに対する中身がちょっと浅い気がしてきました

ファイル奪還ミッションの失敗はMが自分に任せてくれず、バディに狙撃許可をだしたからだと引っかかりをおぼえ、死の淵から生還しつつも現地から戻らずにいたボンド
しかしMI6本部の爆破事件という大ニュースを知り、そうも言ってられないとMのもとに戻る
そこで改めてテロリストの追跡をはじめようとするが、その前に復帰に際して肉体的精神的な部分での適正試験を受けることになる
という序盤の流れで、冒頭のアクションでヒーローとしての派手なボンドアクションを展開しつつ、復帰試験では年を重ねたヒーローとしての老いを描く

そこから現場に復帰してやっと本題に入ります
敵の首領が登場するといっきに物語が動き出しておもしろくなる
今までのような英雄的なボンド、老いや古くささと世代交代、リタイアした先の現代を生きる術、過去のしがらみ…いろんな要素を混ぜ合わせ「ジェームズ・ボンドの復活」に集約していく作品ですね
ひとつひとつのシーンがなにを描きたいのか分かりやすく描かれていて、人間ドラマ的な要素も強いけどそう複雑じゃない

いろんなものをちょっとずつ合わせ、ひとつの主題に集約する作りはよくできてるしおもしろい
鑑賞後はホントに「おもしろかったー!」ってなります
けど、なんとも腹持ちがよろしくない
なんかしばらくたってみると「もっと掘り下げたほうがいいんじゃね」という部分が目に付きます
なんというかこの敵だと劣化「ダークナイト」にしか見えなくなってくる
平均的にはおもしろい器用貧乏って感じの一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:やっぱりスーツでビシッと紳士的に決めてくれる姿が一番かっこいい





007 スカイフォール 予告

2012年11月27日火曜日

ロックアウト (2012/仏)

監督:スティーヴン・セイント・レジャー / ジェームズ・マザー
出演:ガイ・ピアース / マギー・グレイス / ヴィンセント・リーガン / ジョセフ・ギルガン / レニー・ジェームズ / ピーター・ストーメア

2079年、国家安全保障局とのいざこざに巻き込まれ殺人の濡れ衣を着せたれたCIAエージェントのスノーは宇宙に作られた重犯罪者収容施設MS-1送りが決定される
だが、そこで収監者の暴動がおき、スノーには汚名返上の機会として同施設を視察に訪れている大統領の娘の救出が命じられる

ようするに周りが敵だらけの限定空間からひとりだけで娘っこを助け出せよ、っていう感じなハリウッド的脳筋アクション
と思いきや、意外とストーリー面も「それなりに」作ってあるのがフランス映画っぽい…か?
とりあえずスタイリッシュで見栄え重視な作りにはなってる気がするけど、途中途中でそんなスタイリッシュに作るスタイルにじゃっかん息切れが見える荒削りさもご愛敬
「これを見せたい」「これを作りたい」「これをやりたい」という部分以外がけっこうテキトーになっちゃってる印象がしましたね

話的にはスノーがはめられた事件のエピソードと、大統領の娘の救出&MS-1がらみのエピソードという大まかにふたつの話が同時進行していき、単に「大統領の娘を罪人どもから助けるぜ!イエー!」ってだけじゃない
かといって本格的なサスペンスやらミステリーやらになってるわけじゃなく、アクションのオマケのストーリーとしては良い感じ、って程度
見どころはとにかくベラベラと軽口をたたく主人公ですね
ワンマンヒーローとしての強さは一応そなわってるんだけど、その軽いしゃべりで存在そのものが軽い主人公になってる
そこがおもしろいんですけどね

逆に言えば、あんまり主人公が破天荒でスタイリッシュな肉体的アクションをやってる印象が乏しいかな
アクションといえば狭い宇宙の閉鎖施設で、ずっと逃げながらドンパチやってる単調さで退屈感をおぼえずにいられない
それでも囚人のボスがロックされたドアを開けるのに技師をふたり連れてこさせるくだりとか、主人公のヒロインに対しても変わらない軽口っぷりとか、ありえねえだろって感じの脱出シーンとか、細かいところの演出は楽しいですね

そんな楽しいシーンと退屈なシーンのむらがけっこうある一本でした
テレビでやってるのを観てたら、その気はなかったのに最後まで観ちゃったよ的な立ち位置の作品…かな

個人的評価:75点
オススメ度:もっと格闘シーンがあるべき




ロックアウト 予告

2012年11月26日月曜日

綱引いちゃった! (2012/日)

監督:水田伸生
出演:井上真央 / 玉山鉄二 / 浅茅陽子 / 西田尚美 / 渡辺直美 / ソニン / 犬山イヌコ / 中鉢明子 / 石丸謙二郎 / 佐藤二朗 / 野間口徹 / 木南晴夏 / 綾田俊樹 / 大川ヒロキ / 和田正人 / 齋藤隆成 / 石塚英彦 / 笹野高史 / 風間杜夫 / 松坂慶子

大分市は低い知名度をなんとかしようと、PRをかねて広報の千晶に市民による女子綱引きチーム結成の命令がくだる
時に給食センター民営化問題も重なったことにより、チームに入り県大会優勝することを条件に現給食センター存続が市長により約束される

まあ、あれですね、よくあるその筋の素人の寄せ集めが色々と問題を乗り越えつつひとつになって強くなっていく系の映画です
もはや時をおいて挑戦するジャンルだけを変え、安易に笑って泣けるテンプレなストーリーとして確立しつつあるような内容
ゆえに内容として安定感はあるけど、よっぽどがんばらないとオリジナリティが感じられないのも事実ですね
で、この作品はというと・・・「あるていど」現実的なところは守ってファンタジーすぎないよう味付けはしてるけど、しょうじき新しいものはなかったかな

大分市市長がPRのために女子綱引きチーム結成を思いつき、広報の主人公である千晶にそのプロジェクトの役目が命じられる
いっこうにチームメンバーが集まらない中、千晶は給食センターで働くセンター閉鎖で行き場を失う面々に目を付け、県大会優勝で閉鎖撤回を条件にチーム参加をもちかける
でも相手は給食センターで働く団結したクセのある女性ばかり、しかも千晶は数合わせのためにメンバーに加わることになりキャプテン役までやらされることに
という序盤の流れは本当にテンポいいし、ちょこちょこ笑いを誘うシーンをタイミングよく入れてくるんでおもしろい

そこから物語はチームメンバーの抱えるプライベートな問題にシフトしていって、なかなかにチームとしてまとまりがうまれない
コミカルなだけじゃない、ふだんの笑顔の裏にある母の顔と苦悩を重たくなりすぎない感じで描いていく様も話の展開に良いスパイスになっていいですね
そこに真面目くんな千晶といっけんふざけてばかりの他メンバーの溝、実は熱血で良キャラなコーチという存在も加わってわりと中だるみせずに話は進んできます

でも、ね・・・
これは私が男だからかもしれませんが、どうにもおばちゃん軍団の不真面目な部分に好感がもてないんですよね
努力を表面にださないし、実は裏では・・・ってのもあるでしょうけど、同じ仲間である千晶に対してもっと「やる気あるところ」を見せてもいいんじゃねえッスかね
交流会とかやって千晶は千晶でメンバーに歩み寄ろうと努力はしてるわけだし、さ

あとは個々の抱えるドラマを描くのはいいけど、なんか浅い上に中途半端な印象が強い
とりあえず「要素として入れとけ」みたいな安易なドラマとしか感じられないんですよね
それからあんまりにあっさりしてて盛り上がらないクライマックス
ファンタジーすぎないことで「そう簡単にいくもんかよ」という部分を描きたかったのか知らんけど、観てる人はたぶんもっともっとファンタジーを求めてると思うんですよ
それは大会の結果うんぬんじゃなくて、「けっきょく出てくる人、みんな良い人なんじゃん」的な部分でね

そんな感じでけっしてつまらない内容じゃないんだけど、どうにもザ・普通からは抜け出せなかったみたいな一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:ドーン



綱引いちゃった! 予告

2012年11月25日日曜日

カラスの親指 (2012/日)

監督:伊藤匡史
出演:阿部寛 / 村上ショージ / 石原さとみ / 能年玲奈 / 小柳友 / ベンガル / ユースケ・サンタマリア / 戸次重幸 / なだぎ武 / 古坂大魔王 / ノガミ / 上田耕一 / 鶴見辰吾

詐欺師コンビのタケとテツは競馬場でひと仕事おえ、家に戻るが火事騒ぎになっていた
その火事から過去の苦い思い出を脳裏によぎらせたタケは逃げるようにその場を去るのだった

衝撃のラストには、衝撃のウラがある。
そして予告編をみるかぎり「なんか普通に観てると騙される要素があるっぽい」という印象を植え付けられます
うーん、でも、まあオチじたいはいいんだけど、どうにもそこに至る本編の演出がイマイチかなあ
しょうじき「これオチにつながる重要なとこだよ」ってのがみえみえすぎるんですよね
作り手の観てる側を騙そうとするテクが稚拙すぎるというか、あからさまに怪しいとこが分かりやすいし、かといってそれがミスリードになってると思えるほど緻密に作られてる感じがしないから困る

タケとテツの住むアパートが火事になり、そのことからタケは闇金業者に利用された忌まわしい過去を思い出す
そして、また別の仕事をしている最中、スリ少女とであってひょんなことからその姉&彼氏と共同生活をおくることになる
そこにタケの過去の悪夢が再び現在に影をおとしはじめ…って感じのお話
個人的に好きなジャンルである騙し系の映画で、ちりばめられた伏線を回収していくことで裏がみえてくる感じの作品
だけど、とりあえず「観てて気持ち良く騙されたい」という欲求は満たされなかったかなあ

総じてコミカルに描かれていて、ネタ的にはおもしろおかしいんですが、そのコメディ要素のことごとくが「わざとらしすぎる」から笑えない
もっとこのネタなら笑いを引き出す見せ方とかタイミングとかあるはずなんですが、なんというかマジメな人間がマジメに作ったテンプレっぽいコメディシーンが多い、かな
それゆえにどうにも中途半端で微妙なおもしろさになってる感じ

クライマックスのアルバトロス作戦もそうで、「ああ、これミスリードだな。いや、でも分かっててもどきどきするわあ」という盛り上がりがない
観てても先が読めすぎるくらい安心安全なマジメすぎる作りになってて面白味がない
そこからオチの流れになっても「ああ、そうだろうね」としか思えない
かといって作品じたいがつまらないか、と言えばそうでもなくて、そうすんごいおもしろいってもんじゃないんだけど「まあ、普通かな」といった印象

もっとくだけた感じでバカ騒ぎなノリのスピード感があれば、作品としてもっともっと魅力あふれる楽しいものになった気がする一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:要所要所、かなり運任せな計画だよね




カラスの親指 予告

2012年11月22日木曜日

コブラ (1986/米)

監督:ジョージ・P・コスマトス
出演:シルヴェスター・スタローン / ブリジット・ニールセン / ブライアン・トンプソン

必要以上に群れず、悪人に対しては殺すこともためらわないコブレッティ警部、通称コブラ
最近、世間を騒がす連続殺人事件を捜査することになり…

スタローンのスタローンによるスタローンのためのスタ公映画ですね
シンプルアクション映画シリーズ「ザ・スタローン」
敵も味方もストーリーも設定もすべてはスタ公をみせるためだけにある潔さ
おもしろい?楽しい?んなこたぁどうでもいい、そんなことよりスタろうぜ!
という作品でした

世間では、ある反社会派の異常犯罪者集団のメンバーによる事件が多発していた
まっとうな捜査ではいよいよお手上げ状態というところまで追い込まれた警察
そこで協調性は皆無ながら有能、ただしやりすぎ感も否めないコブレッティ警部に捜査をまかせることに
そんな中、犯罪者たちの主犯格の犯行現場にぐうぜん通りすがってしまった女性
その後、あせる組織に執拗に命を狙われるはめになり、そこにコブラが助けに入る…という流れはあるものの、まあ、ストーリーとかどうでもいい
銃撃戦、カースタント、この手のアクション映画としてのスタンダードを踏襲してるテンプレ展開だけど、これはあくまでスタ公が主演のスター映画なんだから割り切りましょう
 
犯人グループが目撃者である女を追うほどにどんどん墓穴を掘って、ことが大きくなっていって収集がつかなくなっていく様を冷ややかに見守りつつ、「ああ、やっぱスタ公はいかすわー」と楽しむのがマナーです
はい、スタ公になんの思い入れもない人にとっては普通にクソB級映画でしかないでしょう
というかスタ公に興味ない人がこの作品を手に取ることの方が希有かもしれんけどね

個人的評価:70点
オススメ度:この映画にも「エクスペンダブルズ2」の元ネタになってるシーンがあるのね




コブラ 予告


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2012年11月19日月曜日

任侠ヘルパー (2012/日)

監督:西谷弘
出演:草なぎ剛 / 安田成美 / 夏帆 / 風間俊介 / 黒木メイサ / 堺正章 / 杉本哲太 / 宇崎竜童 / 香川照之 / 草村礼子 / 大森絢音 / 秋元黎 / りりィ / 品川徹 / 室井響 / 茂内麻緒 / 信太真妃 / 田中悠太

コンビニでバイト中に強盗にあい、これに対処する時に警察と騒動を起こしてしまった元暴力団に身を置いていた彦一
刑務所の中で再会した件の強盗老人からある町の組を紹介された彦一は、出所して行く当てもないことからその町を訪れるのだった

TVドラマ版は未見
ネットでの評判がけっこう良いってんで、まったくノーチェックだったけど鑑賞することに
こんなご時世、ネットでの口コミが上々でもそれを素直に鵜呑みにできるもんじゃないし、出演者の熱狂的ファンたちによって印象操作されてる作品もある
しょうじき、この作品も「そんな言うほどのもんじゃないんだろうな」といった感じで観たんですが…いや、ホントすんませんでした
これ、めちゃくちゃおもしろかったです

かたぎになったものの背中にしょった彫り物からヤクザとして偏見の目で見られる彦一
しょせんは日陰でしか生きていけないと悟り、刑務所で紹介された極鵬会に身を置くことになる
小さな事務所をあてがわれ、老人相手の闇金&自己破産した老人を組の運営する劣悪な介護施設へ入れ、生活保護の金をかすめとる仕事をまかされる
というお話で、ここに町で対立する正義の弁護士出の新人議員と極鵬会、ヤクザの娘として育ったことから極道嫌いになった女の要介護母親、弱きを助け強きをくじく任侠道をつらぬこうとしてもままならない主人公のドラマが展開していきます

しょうじき映画というより元々TVドラマ作品ってことから、かなりTVドラマっぽいデキになってますね
だけど、そんなことなんか気にならないほどおもしろい内容でしたね
なにより主人公のキャラがすばらしい
TVドラマ、スペシャルドラマまであったというんだから、主人公的にはけっこう成長した後の話になると思うんですよね
でも、この映画版で描かれてる彦一という主人公はホントに完璧超人じゃない人間くささがあるんですよ
シリーズを重ねることで英雄視しがちな主人公像だけど、この彦一は強い部分はもちろんあるんですが、強すぎないからいい
むしろ肉体的にも精神的にも弱い部分が多くあるのが魅力的にあらわれてますね
どんなことがおこってもこの主人公ならなんとかしてくれるだろ、という安心感を安易に抱かせないからおもしろい

ただあまりにTVドラマすぎて、ちょっとヤクザのとる行動が全体的に甘い気がするし、なんとなく演出も平坦な気がしないでもない
ここはちょっと大げさになりすぎるくらいに盛り上げる、というような部分が弱いかな
それでも良い話を描く演出なんかは本当に「あー、いい話だわあ」とジーンとできるし、総じてみればかなりおもしろい作品なのでじわじわと口コミで評判が広まってほしい、そんな一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:ぜひシリーズ化してほしい




任侠ヘルパー 予告

2012年11月18日日曜日

ふがいない僕は空を見た (2012/日)

監督:タナダユキ
出演:永山絢斗 / 田畑智子 / 原田美枝子 / 窪田正孝 / 三浦貴大 / 小篠恵奈 / 田中美晴 / 銀粉蝶 / 梶原阿貴 / 吉田羊 / 藤原よしこ / 山中崇 / 山本浩司

コスプレをして人妻の里美とお金で肉体関係をむすぶ高校生の卓己
ある日、同級生で片思いの女の子から告白された彼は、里美との縁を切ろうとするが…

コスプレ人妻との情事をからめた青春恋愛ドラマっぽい内容なんだろうな、と思ってけっこう軽い気持ちで観たんですが、なんともズッシリドスンとくるちょっと重い話でした
しょうじき個人的にこの作品の内容を適切に完全に理解できた、とは胸をはって言えません
生きることというか、人生というか、「それでも」と言い続けることができるか否かとか、そんな感じのことを描いているのかなあ
とか鑑賞後にぼんやりした頭で公式サイトをのぞいてみてそこに答えが書いてあったわ
「性」と「生」…うん、確かにそんな作品でしたね

里美の演じる「あんず」と卓己の演じる「むらまさ」によるコスプレ情事
里美は卓己に金を払い関係を続けるが、一方的に別れ話を突きつけられる
卓己に両思いの彼女ができたことが原因であったが、彼は「こんな関係を続けるわけには」という正論で別れを告げる
そんな肉体の欲におぼれる卓己の話、そしてそこからこの非日常にすがる里美の話が重ねられていく
そこからさらに次々といろんな人の話がオムニバスっぽく描かれていく

単純に「あんず」と「むらまささま」のあれこれって話だけかと思ってたんだけど、卓己の友だち福田くん自身&周りの人たちのエピソードやら、卓己の母ちゃんのエピソードとかいろんな話がつまってます
最初は卓己サイドのドラマが薄くって物足りないと感じたけど、観ていくうちにそんなことは気にならないくらいおもしろくなっていきます
とりあえず「完全な人間なんていない」って感じで「矛盾する気持ちを抱える生の人間」をシンプルに難しくなりすぎずに描いてると思う

ただ、これは個人的な理解力の問題かもしれないけど、ちょっとまとまりが弱いかな、と
エピソードが重ねられていくのはいいんだけど、「いったいどうつながるんだ」という不安が観てる間にわきあがりました
けっきょくのところ、私の頭ではぼんやりとしか各エピソードがつながらなかった
「なるほど、そういう話だったのか」というスッキリしたまとまりを感じられず…っていうのはやっぱり完全に理解できてないからなんだろうなあ

哲学ドラマというか青春ドラマというか、確かにおもしろいんだけど、もっと賢い人が観たら相当たのしめる作品なんじゃないかな、と思える一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:むらまささまはそんなこと言わない




ふがいない僕は空を見た 予告

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q (2012/日)

監督:庵野秀明
出演:緒方恵美 / 林原めぐみ / 宮村優子

ネタバレ全力回避ってことであらすじも書かない方向で
とりあえずはざっくりとした感想と印象のみにします

というかもうしょうじき言って「おいてけぼり」としかいいようがない
「なにも分からない、ということが分かった」状態ですわ
公式の設定バレとかヒントをもとに仲間うちで推理して分かってほしい、んですかね
だがあえて言うなら、「作中で説明してないものはないと同じ」じゃないッスかね
表現してたものがおもしろいから裏設定も気になる、っていうよりなんかよく分からないから裏設定が気になるって感じ

最初はその展開に「ハハ、そうきたか」とついていく気まんまんだったんだけど、中盤までくると「うーん?」とイヤな予感が浮き上がってきます
で、けっきょく「うーん・・・」って感じで終わる
観てる側を巻き込んでシンジくんとシンクロさせようって意図は成功してる
だけど、まあ、はっきり言っておもしろくない

盛り上がるアクション、燃える展開でごまかしつつなら許せるんだけど、今作はびっくりするくらいアクションシーンが少なかった気がする
観てる間はなんとかついていこうと必死で退屈はしないんだけど、鑑賞後の脱力感がなんとも、ね
私のようなファンていどの気概では楽しめないのかもしれません
もっと情熱的で自分で深く掘り下げようと努力できる気力に満ちた人向けなのかな
まあ、とりあえずあの頃のオタクとしての熱情をなくしたおっさん的にはきつい作品かもしれん

あと、個人的に、あくまで個人的に、ですがエヴァ(ヱヴァ)熱がじゃっかん冷めた気がする一本でした

個人的評価:50点
オススメ度:やりだけにやりなおす



ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 予告

2012年11月14日水曜日

おろち (2008/日)

監督:鶴田法男
出演:木村佳乃 / 中越典子 / 谷村美月 / 山本太郎 / 嶋田久作

昭和25年、ずっと人の人生を見つめ続ける少女「おろち」
ある嵐の夜、おろちは雨宿りのために訪れた門前家での美しい母親と姉妹に出会い興味をもつのだった

ホラーというか怪奇ものって感じですかね
原作は未読ですが、昭和の怪奇っぽいおどろおどろしさはよく出てると思います
主人公は門前家の母と姉妹の女性たちのあれこれを見つめ続け、必要以上に家庭に介入しない形式になってて、最近ドラマでもやった「家族八景」の七瀬っぽいポジションかな

豪華な館で使用人とともに暮らす時の銀幕スターである母親の葵と、その娘の一草と理沙姉妹
一見、なに不自由なく暮らしている家族だけど、葵は自分の「ある変化」にひどくおびえている
しかも館には家族以外は誰も近づけさせない「上の部屋」という謎の場所もある・・・
明らかにこの家族は「なにかしらの闇」を抱えており、おろちが見つめ続ける形式で物語は進んでいきます

まあ、なんとなく「こういうことが起こってるんだろうな」ってのは分かるんで、そんなに複雑で頭を悩ませる話じゃない
だけどおろちが中盤で血を流してからの展開が、けっこう良い感じのスパイスになっていて、ストーリーを単調にさせないようになってますね
佳子が門前家に入ることで話に深みがでてておもしろい

真相がいよいよ見えてくると「うーん、まあ、そういう話か」と真新しさは感じないのは否めないけど、古典的なものを手堅く描いてる丁寧さはある
オチもちょっとひねってきてるし、決してつまらないってわけじゃないんだけど、もう一歩、もうひと味、あとちょっとだけ「何か」が足りない気がしないでもない
「うわあ、そうなのかあ。そうくるのかあ」という驚きより、「ああ、そうきたのね」という感じ

むかし懐かしい怪奇ものを楽しみたい人には満足のできる一本だと思います

個人的評価:75点
オススメ度:ほかの話も観てみたいし、原作を読みたくなる



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2012年11月12日月曜日

黄金を抱いて翔べ (2012/日)

監督:井筒和幸
出演:妻夫木聡 / 浅野忠信 / チャンミン / 西田敏行 / 桐谷健太 / 溝端淳平 / 青木崇高 / 中村ゆり / 田口トモロヲ / 鶴見辰吾 / 徳井優 / でんでん

銀行から黄金を盗み出す計画をたてる北川と組むことになる幸田
北川と幸田は計画を実行するための各知識を持つエキスパートを仲間に入れるも、様々なアクシデントから左翼の過激派や北朝鮮のスパイがからんできて・・・

まあ、なんとも濃い作品ですね
原作は未読なんで断定はできないですが、可能なかぎりぎゅうぎゅうに詰め込んで作ってる印象はあります
ただ作品としてのバランスをとるためにだいぶ設定がこぼれ落ちてる気がするのも確か
とりあえずは強奪計画がはじまる前までは間違いなくおもしろかった

とりあえず前置きとかなしにいきなり「そんなことより黄金を盗もうぜ」という計画がはじまります
まあ、そこら辺は演出的にじょじょに観てるうちにバックボーンが見えてくるんだろう、って感じで気にはならない
というかそうこうしてるうちに「北だ」「公安だ」「過激派だ」とどんどん本来の強奪計画以外の風呂敷が広がっていくし、銃撃も人死にも普通に展開する
素人なリアクションの野田に対し、明らかに場慣れしてる北川、幸田、モモのキャラクターの怪しい魅力も手伝って、強奪計画が実際にはじまるまでは本当におもしろい

で、メインである銀行パートになった途端にいっきにテンションがダウンするんですよね
ちょい役に有名どころを起用するのはいいけど、しょうじき銀行パートのコントっぽさは作風を壊してるんじゃないかなあ
あんまり盛り上がらないクライマックスを、そこまでの盛り上がりで無理矢理おさえこむ感じで乗り切ってる感がする

あと北川と幸田の関係だったり、そもそも幸田という人物像だったり、物語のバックボーンが見えないまま終わってる気がする
自分の行間を読む能力の甘さが問題なのかもしれないですが「そもそもなんで黄金盗むの?」と疑問を抱かざるえない
作品的にはぼんやり観てる分には十分におもしろい
だけど、よくよく考えたら足りない物がけっこうあるな、と思う一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:人が死んでるのに冷静すぎるキャラと世間



黄金を抱いて翔べ 予告

2012年11月11日日曜日

悪の教典 (2012/日)

監督:三池崇史
出演:伊藤英明 / 二階堂ふみ / 染谷将太 / 林遣都 / 浅香航大 / 山田孝之 / 吹越満

カンニング問題に先生によるセクハラ、性との親の過剰反応なイジメの訴え、いろいろな問題を抱える学校で人気のたよれる先生の蓮実
しかし、そんな蓮実の闇の部分が徐々に浮き彫りになってきて…

まあ、アレだ、安定の三池監督作品だったわ
なんとなく「告白」とか「冷たい熱帯魚」みたいな感じなのかなって心構えで観たんですが、そんな作風な内容ではなかったですね
最初はごく普通(?)なインモラルでダークな雰囲気なんですが、主人公のゲスっぷりが加速してくるにつれて、三池さんが良くも悪くもいつもの調子で斜め上方向に飛ばしてきます
そこら辺が合わない人はダメかもしれん
要B級クソ映画耐性

学校の抱える問題に対し、表面上はその人の立場にたって頼れる良い先生な応対をする蓮実先生
しかし、裏では非情な手段により問題を起こす人物を排除していく
とりあえずは良キャスティングと言わざるえない主人公、伊藤英明でもってるところが大きいですね
表面的な良い先生というキャラがホントにうまく描けてると思う
そして途中経過をだいぶすっ飛ばして描かれる裏の顔、これがまたいい
「なんでそうなったのか」とかそういった主人公に対する考察はマジで無意味で、蓮実っていうゲスを観察する作品として割り切るのが吉でしょう

作風も蓮実の相棒について描く過去シーン辺りから「あ?」って感じでおかしくなってきて、どんどんそれまでの雰囲気からズレてくるんですよね
そこを「三池監督らしい」ととるか「うっわ、なにこれ」ととるか、そこが最大の分岐点になるかも
残念ながら後者の思いをいだいた人は最後まで楽しめないでしょう
要するにホントに「告白」っぽいノリを期待してる人にはオススメできない作品ですね

個人的にはこの作品の三池監督らしさは許容範囲で楽しめたんだけど、それでも終盤の殺し方の単調さはちょっと飽きるものがあった
まあ、最後の最後のオチで「え?ここからさらに?」って変な意味での終わり方に意表をつかれて楽しかったですが
とにもかくにも多くを求めちゃダメ、マジになっちゃなおダメって一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:to die





悪の教典 予告

2012年11月9日金曜日

キャノンボール (1981/米)

監督:ハル・ニーダム
出演:バート・レイノルズ / ドム・デルイーズ / ジャッキー・チェン / マイケル・ホイ / ロジャー・ムーア / ディーン・マーティン / サミー・デイヴィスJr. / ピーター・フォンダ / ジャック・イーラム / ファラ・フォーセット / エイドリアン・バーボー / バート・コンビー / リック・アヴィルス / ウォーレン・ベリンジャー / ロバート・テシア


アメリカ横断5000kmの公道レース「キャノンボール」
ひとくせもふたくせもある出場者たちが警察の目をかいくぐり、制限速度なんのそので走り抜ける

昔はお正月休みとか夏休みにTVでやる定番映画だった気がしないでもない作品
当時、子供だった自分はもちろんジャッキー・チェン&マイケル・ホイが目当てでした
そんなわけで「キャノンボール」といえば吹き替え版という印象なんですが、どうにも大人の都合なのかDVD化してないのかな

ストーリーもくそもない当時としてはスターを集めたはちゃめちゃレース、ってな感じのお祭り映画ですね
細かいことは気にしちゃいけない、そこにお目当ての役者さんが出てたら応援したらいいじゃない
たとえタイムカードスタイルの同時スタートレースじゃないのに、なぜか一番でゴールした人が優勝みたいな感じになっててもいいじゃないか
冒頭で警察を手玉にとって暴走してるけど、本編ではちゃんと律儀に警察にマークされたら車を止めたっていいじゃないか
そもそもレースっぽい緊張感のある内容っていうより、なんかロードムービーっぽいゆるさが強くてもいいじゃないか

というか昔に観た時には気づかなかったけどロジャー・ムーアとかふっつうに007ネタ全開で出てたのね
しかも、かなり三枚目などっちかというとお笑い担当というネタキャラっぷりがいろんな意味ですごい
本人はこういう役でも受けるってことは、それなりに遊び心&広い心の持ち主なんかな
まあ、そんなことよりやっぱり個人的には終盤のとってつけたようなジャッキーのアクションシーンをはじめ、ジャッキーチームの活躍が楽しかったのでよし

ただ一本の映画作品としてはレースとしての迫力も、アクションとしての盛り上がりもないクソB級映画といったポジションですけどね
こう、カーアクションシーンを強化したジェイソン・ステイサム主演あたりでリメイクしてくれないかなあ
お祭り映画として今やってもおもしろいと思うんですが、どうっすか

個人的評価:70点
オススメ度:なんだかんだ主人公チームってずっとデブが運転してたよね




キャノンボール デジタル・リマスター版 [DVD]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2010-12-17)
売り上げランキング: 6393

2012年11月6日火曜日

リンカーン/秘密の書 (2012/米)

監督:ティムール・ベクマンベトフ
出演:ベンジャミン・ウォーカー / ドミニク・クーパー / アンソニー・マッキー / メアリー・エリザベス・ウィンステッド / ルーファス・シーウェル / マートン・ソーカス / ジミ・シンプソン / ジョゼフ・マウル / ロビン・マクリーヴィー / エリン・ワッソン

幼い時期に母を失ったリンカーンは父の死を機に仇である男への復讐をくわだてる
しかし頭を銃で打ち抜いて確かに殺したと思った男は化け物の形相で立ち上がり…

 「昼は大統領、夜はハンター」というコピーは分かりやすいけど、実際には大統領は昔、表の顔とは別にハンターという夜の顔があった…って感じ
個人的に3D作品に対する印象は「3D作品なんて一本ためしに観てみれば十分」というスタンスだったんですが、この映画はけっこう3D演出にまじめに取り組んでる感じがしましたね
スタイリッシュなアクションを魅せる手法としての3D表現はけっこう見応えがあります

おっかさんを殺した仇、ヴァンパイアども許さねえし!俺、ヴァンパイアハンター王になるし!って感じでハンターの師匠のもとで修行開始
修行を終えたリンカーンは昼はバイトと弁護士になるための勉強、夜は師匠の指定したヴァンパイアを討ち滅ぼす生活をはじめる
なんてストーリーはぶっちゃけおまけ
こういうアクションシーンが撮りたい、という気持ちが先にあって話はそこにつなぐためだけにある印象が強いですね
場面の転換もけっこうぶつ切り

リンカーンの表の顔としての大統領になるまでの話は「すでにみんな知っている」という前提で作られてる感じで、大統領までの道のりのショートカットっぷりは半端ない
ただのヴァンパイアハンターが主人公がインパクトが弱いってんで、なら主人公はリンカーンにしようぜ風な制作側の思惑を邪推せざるえない
そのくせ大統領としての表の顔を描くシーンはホントに退屈でしかたないですが

しかし、アクションパートになればいっきに画面が引き締まります
アクション部分に限らず、3D表現の方法をやっと研究してきたか、と
手前に迫るものが飛び出して見えなくね?みたいな安易な表現とは違いました
大ざっぱに言うなら通常の画の手前と奥にもう一枚の画を置ける、みたいな
埃や血しぶきの置き方は地味に良い

それだけにドラマ部分をもっとがんばるか、いっそのことドラマ部分を捨ててスタイリッシュアクションだけの内容に特化してくれれば個人的に完璧な一本になったかもしれません

個人的評価:85点
オススメ度: 友、恋人、復讐心、師匠の忠告を無視しすぎだろ




リンカーン/秘密の書 予告

2012年11月4日日曜日

のぼうの城 (2011/日)

監督:犬童一心 / 樋口真嗣
出演:野村萬斎 / 榮倉奈々 / 成宮寛貴 / 山口智充 / 上地雄輔 / 山田孝之 / 平岳大 / 西村雅彦 / 平泉成 / 夏八木勲 / 中原丈雄 / 鈴木保奈美 / 前田吟 / 中尾明慶 / 尾野真千子 / ピエール瀧 / 芦田愛菜 / 和田聰宏 / ちすん / 米原幸佑 / 中村靖日 / 市村正親 / 佐藤浩市

豊臣と北条の決戦がせまる中、忍城の成田家当主の氏長は小田原城へ入ることになる
父の病気も重なって忍城の当主代行する長親はでくのぼうをもじってのぼう様と呼ばれる変わり者で、そこに石田三成ひきいる2万の軍勢がせまっていた

歴史ドラマをかみ砕いてかみ砕いてかみ砕いた、離乳食時代劇といった感じの雰囲気でしたね
しょうじきちょっとは時代劇の要素があるだろ、と期待して観にいく人には物足らないかもしれない
悪く言えば時代劇としての渋さと重さがない表面だけの印象が強い
とにかく「楽しければいいじゃない」というノリに特化してるんで、大衆娯楽ものを観にいく感覚で鑑賞するのが正しいかもしれません

いっけん何の取り柄もないまさにでくの坊な領主&その兵500の城に対し、時の一大勢力の2万の兵が攻めいってくる
この危機を前に主人公はどう対抗するのか、って感じの日本人が大好きな弱い立場の軍勢の逆転物語を描きます
才能を隠したでくの坊男VSエリート智将の奇策と戦略による知恵比べ、みたいのを予想してたけどそうでもなかったですね
のぼう様はけっこう感情で動くし、三成はなんか小者だし
言うほどとんでもない奇策っぽい展開は感じなかったかな

総じておもしろいんだけど、なんか単純に話がおもしろいだけな気がしないでもない
野村萬斎は野村萬斎だし、佐藤浩市は佐藤浩市、山口智充は山口智充、とそれぞれのキャストが本人にしか見えない
名のある有名人がわんさと出てる派手さ、分かりやすくて感情移入しやすい作りとしての楽しさは十分ですが、ここで笑って、ここで盛り上がってというのが見え見えでドラマとしての深みはないかなあ

まあ、なんというか「原作っておもしろそうだね」と思えるお話としてのおもしろさはある
軽い気持ちでサクッと映画を楽しみたいならあり
ただじっくりと時代劇大作を観るぞ、とはりきってみると肩すかしをくらう・・・そんな一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:佐藤浩市さんが全体的になにしゃべってるか聞き取りづらかったは私だけかな



のぼうの城 予告

2012年11月1日木曜日

タイガーランド (2000/米)

監督:ジョエル・シュマッカー
出演:コリン・ファレル / マシュー・デイヴィス / クリフトン・コリンズJr. / トーマス・ギアリー / シェイ・ウィガム / ラッセル・リチャードソン / コール・ハウザー / ニック・サーシー / アフェモ・オミラミ

1971年、泥沼化するベトナム戦争の中、ルイジアナ州のある基地で訓練を受けるボズ二等兵
軍の規律を乱してばかりの彼は訓練の中で様々な事情を抱える兵士たちと出会い…

軍隊特有の厳しい規律と理不尽な上官の言動、「軍」という独特の世界に熱にうかされたように盲従する兵士たち
「でもそれおかしくね?」と言えちゃうはみだしものが主人公ですね
軍隊という世界の中で日常的にふるまうボズさんに惹かれる者あり、また反発する者ありな訓令兵たちのドラマ
生と死が隣り合わせの戦場で命をかけた友情と絆の感動物語、みたいなありがちなお涙ちょうだい戦争ものとはちょっと違っておもしろかった

ベトナム行きの最終訓練所「タイガーランド」へ移る前に、その過酷な訓練の前訓練がおこなわれていた
ことあるごとに規律を乱すボズは能力はあるのに戦争や人殺しに否定的で、訓練においてもやる気がまったくない
上官たちは軍から追い出すという選択こそボズの思うつぼだということを分かっており、厳しい罰は与えるしかできない
そんな中でボズの組み込まれた小隊の面々は彼に振り回されながらも、不思議と惹かれ押し殺していた本音を吐露する者も多い
兵士たちの「軍にはいったんだから仕方ない」という奥に隠されたドラマをなんたら…という作品でもあります

でも本質はボズという兵士の物語でしょうね
頭が良くて軍のルールの裏側まで精通してるのに、なんだかんだで自分から軍を抜ける勇気がない
自分をだませば十分に優秀な兵士になれるのに、そうする勇気がない
なにより他人を切り捨てる勇気がない
いい加減な言動や行動に隠れた芯が強く、自分をしっかり持った強い人間としての心意気…という周りの評価の反面、作品を観てボズというキャラを追っていれば「そんなやつじゃない」と分かる
勇気がなくてブレブレで弱い、どうにもこうにも人間くさい存在が良い味だしてます

別段、感動もしないし銃撃戦に燃えることもない、でも主人公の人間くささがあらわになってくるのを観てるだけでおもしろい、そんな一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:タイガーランドだけで1年とか、そんな長期的な訓練してたんか




タイガーランド 予告


タイガーランド 特別編 [DVD]
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント (2004-05-28)
売り上げランキング: 85408

2012年10月30日火曜日

10月のこれ一本

こたつはじめました
とか職場で言ったら普通に「はえーよ」というツッコミが…
いやいや、早くないっしょ
朝晩かなり寒いじゃんよ
アレか、朝起きてもおはよう言う相手がいないし、夜帰ってきても家は真っ暗なロンリーウルフなんざ寒くて当然ってか

まあ、そんなことより今月は「エクスペンダブルズ2」ですよ
チケットを購入するときにどれだけの人が正確にタイトルを言えたか気になるわあ
嘘、まったく気にならん
だいいち、こたつがあればそのまま眠れるんだぜ?
ガチ寝したら健康に悪そうだけどね
とにかく、冷えに冷え切って帰宅したところであったかいこたつに入ったときの幸福感エブリデイ楽しめるとか最高だろうが、あ?

そんなわけで11月、なんか知らんけど気になる映画がいっぱい公開されて鑑賞スケジュール考えるだけでわくわくしますね
ホント、こたつは麻薬的な魅力に満ちてるわあ

2012年10月29日月曜日

アルゴ (2012/米)

監督:ベン・アフレック
出演:ベン・アフレック / ブライアン・クランストン / アラン・アーキン / ジョン・グッドマン / ヴィクター・ガーバー / テイト・ドノヴァン / クレア・デュヴァル / スクート・マクネイリー / ロリー・コクレイン / クリストファー・デナム / ケリー・ビシェ / カイル・チャンドラー / クリス・メッシーナ / ジェリコ・イヴァネク / タイタス・ウェリヴァー / キース・ザラバッカ / ボブ・ガントン / リチャード・カインド / リチャード・ディレイン / オミッド・アブタヒ / ペイジ・レオン / シェイラ・ヴァンド / マット・ノーラン / J・R・カシア / ロブ・ブラウンスタイン / デヴィッド・サリヴァン / ジョン・ボイド / スコット・アンソニー・リート / マイケル・パークス / エイドリアン・バーボー / リンゼイ・ギンター / テイラー・シリング

1969年イランの米大使館が政治的理由から暴徒とかした現地市民に占拠されてしまう
からくも逃げのびてカナダ大使館に逃げ込んだ6人の職員を救うべく、CIAはトニーに策をろうするよう命じる

映画撮影とか言っちゃって人質を救出しようぜ!イエー!
というノリかと思ったらそうでもなかった
けっこうミッションがうまくいくかいかないか緊張感のあるシリアスな展開が続きます
かといって重苦しいだけの内容じゃなく、作戦が作戦だけにふざけたことを大マジメに取り組むコミカルさもありますね
ド派手なエンターテインメントとは違ってドンパチアクションもないし、なんか地味なんだけどグッと作品に引き込まれる魅力は十分にありました

人質を救出する案を模索するもCIA内部では決定的な作戦が浮かばない
そんな中で悩んだすえにトニーは異国の地で撮られるSF映画に目を付け、最悪な中でも最善の映画クルーとして人質を国外脱出させるハリウッド作戦を立案する
まずは米国内でもホントに映画を作るようにスタッフを雇い、オフィスを借り、脚本を買い、マスコミを利用するんすが、その様子がけっこうおもしろい
偽映画という嘘のために下地を作っていくんだけど、映画作りじたいが嘘とハッタリな世界という描写がいいんですよね
しょうじきそっちの路線で偽映画作りメインの作品とかもう一本作れるんじゃねえの、と
まあ、そこはそれとしてあまり映画作りの描写にこだわりすぎず、人質救出の展開にシフトしていくバランスはよくできてますが

映画で人質救出というトンデモ作戦を国内でなっとくさせ、なんとか現地入りしていよいよ作戦開始ってなっても命がけの人質たちにとっては「はあ?!」なわけで
そんな一筋縄ではいかないアクシデントやらなんやらで作戦はそううまくいかない
基本は、バレそう!?→ギリギリセーフ→次のアクシデントという感じなんですが、重苦しすぎず軽すぎずでほどよい緊張感が最後まで続いて良い塩梅

敵側にもキレ者の人物がいて、だましだまされつつ最後は主人公と一騎打ち…なんて少年マンガなエンターテインメントなノリがあってもいいかな、とちょっと思うところはあるけど、さすがにそこまでやると軽くなりすぎるかな
というかホントにドンパチなしでここまでエンターテインメント性を高めたのはすごいと思う
さすがにご都合主義がすぎるかな、と思わざるえない点がなくもないけど細かいことは気にしない方向で
ただ滑走路に武装したパトカーが乱入して、しかも飛行機の下をちょろちょろ走り回ってるのにも関わらずノーリアクションなのはどうか、とちょっと思ったわ

観る前に思ってたようなバカ騒ぎものじゃなかったけど、これはこれで十分におもしろい一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:アルゴくそ食らえ




アルゴ 予告

2012年10月28日日曜日

009 RE:CYBORG (2012/日)

監督:神山健治
出演:宮野真守 / 小野大輔 / 斎藤千和 / 大川透 / 増岡太郎 / 吉野裕行 / 杉山紀彰 / 丹沢晃之 / 玉川砂記子 / 勝部演之

全世界同時多発テロがおこる中、ゼロゼロナンバーのサイボーグ戦士たちにギルモア博士より小勇がかかる
そんな中、この事件の唯一の共通点である「彼の声」を聞いた009こと島村ジョーは…

つかみは「何が始まるんだ」という期待感がふくらみまくるんだけど、観ているうちに徐々にちょっと嫌な予感がしてきます
ことの真相が分かった時点で「うーん?」な感じになってオチで「はあ?!」という作品
個人的に原作は読んだことのない、アニメをちょっと観たことあるけどサイボーグ戦士たちのキャラをちょっと知ってるていどの知識です
そのていどの前知識でこの映画版を観た印象として「サイボーグ009ってこういう感じの内容なのかな」と違和感がなくもない

序盤から爆破テロを引き起こそうとするダークな感じの主人公、島村ジョー
各国にちりぢりになり、それゆえにそれぞれが属する国との関わりから立場のことなる正義をもつことになるゼロゼロナンバーの戦士たち
サイボーグ戦士どうしでの疑心暗鬼、対立も起きようとしていた…みたいなじっとりじめじめ系な重苦しい序盤の流れ
まあ、仲間同士であれこれ対立するようなしないようなって図式も今じゃ珍しい展開でもないし、ダークなヒーローものとして観れば問題ない、んだけど…
それでもちょっと怪しいからっていきなりギルモア博士がジョーに銃を向けるのは「え?」って思わざるえない

博士でいい年のじいちゃんキャラなくせに、付き合いの長い相手に怪しいからっていきなり銃を向けるか?
というか博士もふくめてゼロゼロナンバー側のキャラたちの絆とかそういうのって、そんなにうっすらしたものだったのかな、と
そして、そんな疑問よりもっと引っかかるのが事件の真相
いや、まあ、わかるけどさ、もっとシンプルに「すべてを利用して自己満足な目的を果たそうとする悪人」みたいなラスボスという共通敵がいてもよかったんじゃないかな
その上でこの真相とテーマを乗っけて描いてくれた方がすんなり受け入れられるかも

ちょっと描くのに難易度が高いことをやろうとして、「難しいことを簡潔に表現する」ことができずに誰かに伝える力の弱いオナニー作品になっちゃってるかな
「おまえの中ではうまくまとまってるんだろうな。おまえの中ではな」と言わざるえない
サイボーグ009作品としても、けっきょく一同が会することないし…というか途中で消えちゃうキャラもいるし、別に設定として009である必要なくね?と
オチもちょっと前のJRPGにありがちな「人には失望した。滅べ」「そんな悪い人間ばかりじゃねえ」「よし分かった。チャンスをやろう」 みたいな感じだし、もうなにがなにやらだし…

アクションは見応えじゅうぶんで、それだけでも楽しいっちゃあ楽しい
しかしながら俗に言う「エヴァ以降のアニメ」の悪い部分が出ちゃってる気がしないでもない一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:やったか?!はやってないフラグだってお母さんさんざん言ったでしょ!





009 RE:CYBORG 予告

2012年10月27日土曜日

ジンジャーデッドマン (2005/米)

監督:チャールズ・バンド
出演:ゲイリー・ビューシイ / ラリー・セダー / ロビン・シドニー / ライアン・ロック / マーガレット・ブライ / ジョナサン・チェイス / ジェームズ・スナイダー

強盗に父と兄を殺された過去を持つサラ
犯人が死刑となる中、アル中になってしまった母ときりもりするパン屋にジンジャーブレッドの粉が届けられ…

うわ、なんか久しぶりに観た気がするわ、こんなクソ映画
このパッケージからして覚悟はしてたつもりだけど、予想以上にひどかった
出だしの過去話で力尽き、あとは現場で酒呑みながら脚本書いて、その場で行き当たりばったりに撮影したんじゃねえのっていぶかしむくらいのデキ
ひらきなおって、もっとコメディよりにしてくれれば救いもあろうが、結果、ホラーとしてもコメディとしてもどっちつかずな中途半端なものになっちゃってますね
クソ映画すぎて逆に笑える、という要素がないのよ、これ

過去、目の前で兄と父を殺されたサラさん
数年後、アル中の母をかかえて細々とパン屋をきりもりしてるところに怪しい人物からジンジャーブレッドの粉が配達される
まあ、業者なんだろうと受け取ってパンを作り始めると、作業中に従業員がうっかり腕をちょっと切ってしまい、粉に血が「偶然」混ざってしまう
普段はどうか知らないけど、サラさんはこの日なんか気分が良かったのか巨大な人型のジンジャーブレッド、ジンジャーブレッドマンを作る
気づかずオーブンに成形したジンジャーブレッドマンを入れて焼いていると「偶然」停電がおき、さらに「偶然」電気トラブルでオーブンがスパークしてしまう
で、死刑になった因縁の強盗犯の魂の宿ったジンジャーデッドマン誕生というわけですが、いやいや、偶然の要素が多すぎだろ

いちお最初に粉を届けたのが強盗犯の母親で復讐が目的らしい…んだけど、ネタバレしちゃうけどラストでこの母親が自分で焼いた複数のジンジャーブレッドマンをサラのところに届けるんですが、うん、その、なんだ、原料を届けるより最初から自分で焼いた方が普通に確実だよね
本編中でも他にも話の展開が穴だらけでいちいちツッコミ入れるのもめんどう

ラストもひどいもので「押すなよ!ぜったい押すなよ!」的なノリでジンジャーデッドマンみずから死にポジションに移動する姿が切なくなるわ
精一杯やった上でのバカ映画、ひらきなおったクソ映画、そのどっちかに分類される雑な作りならB級脳的に楽しめるんだけど、これは単に作りが雑なだけでB級ものの魅力がまったくない
観てて苦痛になる系のクソ映画じゃないけど、まったくおもしろくない一本でした

個人的評価:10点
オススメ度:これで続編があるとか信じられんわ。人気あるのか?これ




ジンジャーデッドマン 予告


ジンジャーデッドマン [DVD]
エプコット (2012-07-27)
売り上げランキング: 117551

2012年10月25日木曜日

バーレスク (2010/米)

監督:スティーヴン・アンティン
出演:シェール / クリスティーナ・アギレラ / エリック・ディーン / キャム・ギガンデット / ジュリアン・ハフ / アラン・カミング / ピーター・ギャラガー / クリステン・ベル / スタンリー・トゥッチ / デヴィッド・ウォルトン

田舎を飛び出してロスにやってきた少女アリ
仕事を探す中、偶然おとずれたクラブで繰り広げられる官能的な歌と踊りに感銘を受け…

前から気になってはいたけどなんとなく観てなかった作品
おとなのミュージカルドラマみたいな印象で観たわけですが、うん、とりあえず序盤は昔の名作ものっぽい雰囲気のある「どこか懐かし新しい」感じでおもしろかった
でも、最後まで観た後の感想としては「こんなもんかなあ」といった良くもなく悪くもないニュートラルな印象しかありませんでしたね

田舎から飛び出てきたポジティブ&アグレッシブな元気っ娘のアリは、ひとめ見て感銘を受けたクラブのショーに出たくて支配人に猛アタック
まったく相手にされないが、めげずに勝手にウェートレスとして押しかけ労働をはじめる
そうこうしてるうちにバーテンのジャックとも友だちとして仲良くなり、ようやくチャンスが巡ってくる…みたいなショー・クラブでのサクセスストーリーがメイン
最初にクラブに足を踏み入れた時に主人公の目にしたショーとか、そこから序盤のきらびやかな歌とダンスのミュージカルシーンはホントに楽しい

しかし、どうにもサクセスストーリーが軌道にのってくる中盤あたりからおかしくなります
そこまでは現代によみがえった古き良き時代の名作映画みたいなどこか懐かしくておもしろい展開だったのに、後半はなんかいろんなドラマを詰め込みすぎたせいかどうも視点が定まらない上に、けっきょくのところ中途半端な感じで終わっちゃってる
サクセスストーリー、婚約者のいるジャックとの関係、クラブのライバルとの関係、主人公とマダムの疑似母娘な関係、クラブの抱える金銭面の問題、そこに支配人のマダムのドラマが中途半端にからんできて、どんどんミュージカルというよりちょっとどろどろしたドラマがメインになってくるんですね

ちょっとどろどろした展開があっても次には歌と踊りでスカッと気持ちよくなれる、後半そういうところがない
なによりラストのドラマの締めくくり方が「なんかよく分からんけど全部うまくいった」としかいいようがない
とりあえずクラブの存続うんぬんを解決する手段は歌と踊りというファンタジーな要素であってほしかった
そして個人的に一番アレだった点は最後の曲のあまりに盛り上がらなさ
そこまでの展開がイマイチだったとしても作品をしめる最後の一曲で「うおおお!」と高揚するものがあればよかったのに、なんなんですかね…どうもグッとこない

そんな感じで出だしは最高だけど、ちょっと途中からの流れが個人的に肌に合わなかった一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:主人公の過去を掘り下げなさすぎ




バーレスク 予告


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2012年10月22日月曜日

エクスペンダブルズ2 (2012/米)

監督:サイモン・ウェスト
出演:シルヴェスター・スタローン / ジェイソン・ステイサム / ジェット・リー / ドルフ・ラングレン / チャック・ノリス / テリー・クルーズ / ランディ・クートゥア / リアム・ヘムズワース / ジャン=クロード・ヴァン・ダム / スコット・アドキンス / ユー・ナン / ブルース・ウィリス / アーノルド・シュワルツェネッガー

バーニー率いる傭兵部隊に墜落した輸送機の積み荷を確保する仕事が持ちかけられる
無事に仕事が片づいたかと思ったところに謎の武装集団が立ちふさがり・・・

ああ、祭だ
細かいことなんざどうでもいい
ストーリーなんて邪魔くさいものはどっか放り投げておけ
シュワちゃん戻ってきたー!ヴァン・ダム蹴り出たー!出撃、チャック・ノリス!
ただただ、心の中で叫べばいいのさ
そんな映画でしたね

まあ、いちおそれなりなストーリーはあるんだけど、おまけ程度です
要するにスタローン軍団&ゲストVSヴァン・ダムな内容
まあ、ヴァン・ダム側にもっと悪役スターが欲しかった気もするけど、今回はスタローン側の出演陣がすごすぎるからこれ以上ごちゃごちゃしない今回くらいのキャストで十分かもしれません
だいたいの人はスタローン側のキャストの活躍を観たい、というか往年のアクションスターの共演&活躍を観たいってだけでしょうしね
そういう意味ではヴァン・ダムってヒールとしてピッタリかも

序盤からもったいぶらないアクションフルコース攻めでテンションがいっきに上がりますね
でもアクション映画としてすごいのはこの序盤だけかも
あとはスターたちの個人技を楽しむものになってます
キャストがキャストだけに、もうそれだけでホント十分すぎるくらい面白いですが
さらに、今作では登場するスターたちの過去有名作をネタにしたシーンがいくつかあって楽しかったわあ

この映画を観ようって人は大丈夫だと思いますが、前作を観てなかったり、出演者たちの過去有名作品をいっさい知らない、ヴァン・ダムを知らないって人には普通のドンパチやってるだけのバカ映画にしか思えないかもしれませんね
アクション映画の小ネタを拾えて、出演者にそれなりに思い入れがある人にとっては最高の祭映画でしょう
じゃっかんアクション要素が各キャラに分散しすぎて、アクション映画というジャンルとしては弱い気がしますが、そこは祭と割り切っていけばいいじゃない

次作ではゲスト枠をぜひ悪役側に使ってもらいたいですね

個人的評価:95点
オススメ度:戻りすぎワロタwww



エクスペンダブルズ2 予告

2012年10月21日日曜日

スーパー・チューズデー 正義を売った日 (2011/米)

監督:ジョージ・クルーニー
出演:ライアン・ゴスリング / ジョージ・クルーニー / フィリップ・シーモア・ホフマン / ポール・ジアマッティ / マリサ・トメイ / ジェフリー・ライト / エバン・レイチェル・ウッド / マックス・ミンゲラ / ジェニファー・エール / グレゴリー・イッツェン / マイケル・マンテル

民主党予備選、候補者であるモリスの選挙参謀を務める若きキレ者スティーヴン
選挙も大事な局面をむかえる中、スティーヴンのもとに対立候補の選挙参謀から内密な話があると持ちかけられ…


政治に詳しくない、しかもアメリカの選挙とかなじみがない、そんな私でも十分に楽しめた作品
タイトルから政治の世界の裏舞台で陰謀劇がうんぬんみたいなのを想像しますが、というか観る前までそんな作品かと思ってたけど、実際は人間ドラマ的な意味合いの方が強いかな
主人公がどっかで見た顔だな、と思って調べたら「ドライヴ」の人だったんですね
一見ひとが良さそうだけど奥底に眠るどす暗い部分がある、そんな主人公にピッタリのキャスティング
「ドライヴ」の時の怪しい魅力がまんまこの作品でも出てるんで、この役者さん本来の持ち味なんでしょうかね

モリス知事のブレーンであるポールを師と仰ぎ、選挙参謀のナンバー2としてオハイオ州での民主党予備選での戦いに余念がないスティーヴン
そんな中、通常では考えられないライバル候補の参謀から接触の連絡があり、怪しいとは思いつつも会うことに
モリスへの忠誠心と師であり友と想うポールへの気持ちは揺るぎないものの、その密会を機に優勢であった自陣の選挙戦に次々と不安材料があらわれはじめる…
と、表の顔であり光であるモリスに対する裏の顔で影として暗躍する主人公たちブレーンのダークな政治劇、というのが序盤の展開

しょうじき序盤だけ観ていると選挙戦を舞台にドロドロした裏側の駆け引き、みたいな黒い政治劇な印象が強いですが、それも徐々に変化してきます
その変化である部分、単純なドロドロした選挙の実情っぽい裏舞台を描く物語ってだけじゃないところがおもしろい
選挙戦から主人公の話へとシフトしていき、人間ドラマとしてのドロドロした部分が浮き彫りになっていくのを楽しむ作品かもしれません

若いながらもキレ者であらゆるものを利用して戦う主人公
その能力で問題をひとつひとつつぶしていく、んだけど…みたいなね
モリスのゆずれない正義心、ポールの貫く信条、悪く言えば汚い選挙戦の中でも「まっすぐなゆずれない部分」を描くことがいいスパイスになってますね
こいつはこういうキャラだ、という見せ方が生きてくる展開というか
しょうじき作品を総じてみれば佳作な感じは否めなくて、無理して観るほどじゃないけど観て損はしない、そんな一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:映画的というよりTVドラマ的おもしろさかも




スーパー・チューズデー 正義を売った日 予告


スーパー・チューズデー ~正義を売った日~ [DVD]
松竹 (2012-09-08)
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