2012年11月27日火曜日

ロックアウト (2012/仏)

監督:スティーヴン・セイント・レジャー / ジェームズ・マザー
出演:ガイ・ピアース / マギー・グレイス / ヴィンセント・リーガン / ジョセフ・ギルガン / レニー・ジェームズ / ピーター・ストーメア

2079年、国家安全保障局とのいざこざに巻き込まれ殺人の濡れ衣を着せたれたCIAエージェントのスノーは宇宙に作られた重犯罪者収容施設MS-1送りが決定される
だが、そこで収監者の暴動がおき、スノーには汚名返上の機会として同施設を視察に訪れている大統領の娘の救出が命じられる

ようするに周りが敵だらけの限定空間からひとりだけで娘っこを助け出せよ、っていう感じなハリウッド的脳筋アクション
と思いきや、意外とストーリー面も「それなりに」作ってあるのがフランス映画っぽい…か?
とりあえずスタイリッシュで見栄え重視な作りにはなってる気がするけど、途中途中でそんなスタイリッシュに作るスタイルにじゃっかん息切れが見える荒削りさもご愛敬
「これを見せたい」「これを作りたい」「これをやりたい」という部分以外がけっこうテキトーになっちゃってる印象がしましたね

話的にはスノーがはめられた事件のエピソードと、大統領の娘の救出&MS-1がらみのエピソードという大まかにふたつの話が同時進行していき、単に「大統領の娘を罪人どもから助けるぜ!イエー!」ってだけじゃない
かといって本格的なサスペンスやらミステリーやらになってるわけじゃなく、アクションのオマケのストーリーとしては良い感じ、って程度
見どころはとにかくベラベラと軽口をたたく主人公ですね
ワンマンヒーローとしての強さは一応そなわってるんだけど、その軽いしゃべりで存在そのものが軽い主人公になってる
そこがおもしろいんですけどね

逆に言えば、あんまり主人公が破天荒でスタイリッシュな肉体的アクションをやってる印象が乏しいかな
アクションといえば狭い宇宙の閉鎖施設で、ずっと逃げながらドンパチやってる単調さで退屈感をおぼえずにいられない
それでも囚人のボスがロックされたドアを開けるのに技師をふたり連れてこさせるくだりとか、主人公のヒロインに対しても変わらない軽口っぷりとか、ありえねえだろって感じの脱出シーンとか、細かいところの演出は楽しいですね

そんな楽しいシーンと退屈なシーンのむらがけっこうある一本でした
テレビでやってるのを観てたら、その気はなかったのに最後まで観ちゃったよ的な立ち位置の作品…かな

個人的評価:75点
オススメ度:もっと格闘シーンがあるべき




ロックアウト 予告

2012年11月26日月曜日

綱引いちゃった! (2012/日)

監督:水田伸生
出演:井上真央 / 玉山鉄二 / 浅茅陽子 / 西田尚美 / 渡辺直美 / ソニン / 犬山イヌコ / 中鉢明子 / 石丸謙二郎 / 佐藤二朗 / 野間口徹 / 木南晴夏 / 綾田俊樹 / 大川ヒロキ / 和田正人 / 齋藤隆成 / 石塚英彦 / 笹野高史 / 風間杜夫 / 松坂慶子

大分市は低い知名度をなんとかしようと、PRをかねて広報の千晶に市民による女子綱引きチーム結成の命令がくだる
時に給食センター民営化問題も重なったことにより、チームに入り県大会優勝することを条件に現給食センター存続が市長により約束される

まあ、あれですね、よくあるその筋の素人の寄せ集めが色々と問題を乗り越えつつひとつになって強くなっていく系の映画です
もはや時をおいて挑戦するジャンルだけを変え、安易に笑って泣けるテンプレなストーリーとして確立しつつあるような内容
ゆえに内容として安定感はあるけど、よっぽどがんばらないとオリジナリティが感じられないのも事実ですね
で、この作品はというと・・・「あるていど」現実的なところは守ってファンタジーすぎないよう味付けはしてるけど、しょうじき新しいものはなかったかな

大分市市長がPRのために女子綱引きチーム結成を思いつき、広報の主人公である千晶にそのプロジェクトの役目が命じられる
いっこうにチームメンバーが集まらない中、千晶は給食センターで働くセンター閉鎖で行き場を失う面々に目を付け、県大会優勝で閉鎖撤回を条件にチーム参加をもちかける
でも相手は給食センターで働く団結したクセのある女性ばかり、しかも千晶は数合わせのためにメンバーに加わることになりキャプテン役までやらされることに
という序盤の流れは本当にテンポいいし、ちょこちょこ笑いを誘うシーンをタイミングよく入れてくるんでおもしろい

そこから物語はチームメンバーの抱えるプライベートな問題にシフトしていって、なかなかにチームとしてまとまりがうまれない
コミカルなだけじゃない、ふだんの笑顔の裏にある母の顔と苦悩を重たくなりすぎない感じで描いていく様も話の展開に良いスパイスになっていいですね
そこに真面目くんな千晶といっけんふざけてばかりの他メンバーの溝、実は熱血で良キャラなコーチという存在も加わってわりと中だるみせずに話は進んできます

でも、ね・・・
これは私が男だからかもしれませんが、どうにもおばちゃん軍団の不真面目な部分に好感がもてないんですよね
努力を表面にださないし、実は裏では・・・ってのもあるでしょうけど、同じ仲間である千晶に対してもっと「やる気あるところ」を見せてもいいんじゃねえッスかね
交流会とかやって千晶は千晶でメンバーに歩み寄ろうと努力はしてるわけだし、さ

あとは個々の抱えるドラマを描くのはいいけど、なんか浅い上に中途半端な印象が強い
とりあえず「要素として入れとけ」みたいな安易なドラマとしか感じられないんですよね
それからあんまりにあっさりしてて盛り上がらないクライマックス
ファンタジーすぎないことで「そう簡単にいくもんかよ」という部分を描きたかったのか知らんけど、観てる人はたぶんもっともっとファンタジーを求めてると思うんですよ
それは大会の結果うんぬんじゃなくて、「けっきょく出てくる人、みんな良い人なんじゃん」的な部分でね

そんな感じでけっしてつまらない内容じゃないんだけど、どうにもザ・普通からは抜け出せなかったみたいな一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:ドーン



綱引いちゃった! 予告

2012年11月25日日曜日

カラスの親指 (2012/日)

監督:伊藤匡史
出演:阿部寛 / 村上ショージ / 石原さとみ / 能年玲奈 / 小柳友 / ベンガル / ユースケ・サンタマリア / 戸次重幸 / なだぎ武 / 古坂大魔王 / ノガミ / 上田耕一 / 鶴見辰吾

詐欺師コンビのタケとテツは競馬場でひと仕事おえ、家に戻るが火事騒ぎになっていた
その火事から過去の苦い思い出を脳裏によぎらせたタケは逃げるようにその場を去るのだった

衝撃のラストには、衝撃のウラがある。
そして予告編をみるかぎり「なんか普通に観てると騙される要素があるっぽい」という印象を植え付けられます
うーん、でも、まあオチじたいはいいんだけど、どうにもそこに至る本編の演出がイマイチかなあ
しょうじき「これオチにつながる重要なとこだよ」ってのがみえみえすぎるんですよね
作り手の観てる側を騙そうとするテクが稚拙すぎるというか、あからさまに怪しいとこが分かりやすいし、かといってそれがミスリードになってると思えるほど緻密に作られてる感じがしないから困る

タケとテツの住むアパートが火事になり、そのことからタケは闇金業者に利用された忌まわしい過去を思い出す
そして、また別の仕事をしている最中、スリ少女とであってひょんなことからその姉&彼氏と共同生活をおくることになる
そこにタケの過去の悪夢が再び現在に影をおとしはじめ…って感じのお話
個人的に好きなジャンルである騙し系の映画で、ちりばめられた伏線を回収していくことで裏がみえてくる感じの作品
だけど、とりあえず「観てて気持ち良く騙されたい」という欲求は満たされなかったかなあ

総じてコミカルに描かれていて、ネタ的にはおもしろおかしいんですが、そのコメディ要素のことごとくが「わざとらしすぎる」から笑えない
もっとこのネタなら笑いを引き出す見せ方とかタイミングとかあるはずなんですが、なんというかマジメな人間がマジメに作ったテンプレっぽいコメディシーンが多い、かな
それゆえにどうにも中途半端で微妙なおもしろさになってる感じ

クライマックスのアルバトロス作戦もそうで、「ああ、これミスリードだな。いや、でも分かっててもどきどきするわあ」という盛り上がりがない
観てても先が読めすぎるくらい安心安全なマジメすぎる作りになってて面白味がない
そこからオチの流れになっても「ああ、そうだろうね」としか思えない
かといって作品じたいがつまらないか、と言えばそうでもなくて、そうすんごいおもしろいってもんじゃないんだけど「まあ、普通かな」といった印象

もっとくだけた感じでバカ騒ぎなノリのスピード感があれば、作品としてもっともっと魅力あふれる楽しいものになった気がする一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:要所要所、かなり運任せな計画だよね




カラスの親指 予告

2012年11月22日木曜日

コブラ (1986/米)

監督:ジョージ・P・コスマトス
出演:シルヴェスター・スタローン / ブリジット・ニールセン / ブライアン・トンプソン

必要以上に群れず、悪人に対しては殺すこともためらわないコブレッティ警部、通称コブラ
最近、世間を騒がす連続殺人事件を捜査することになり…

スタローンのスタローンによるスタローンのためのスタ公映画ですね
シンプルアクション映画シリーズ「ザ・スタローン」
敵も味方もストーリーも設定もすべてはスタ公をみせるためだけにある潔さ
おもしろい?楽しい?んなこたぁどうでもいい、そんなことよりスタろうぜ!
という作品でした

世間では、ある反社会派の異常犯罪者集団のメンバーによる事件が多発していた
まっとうな捜査ではいよいよお手上げ状態というところまで追い込まれた警察
そこで協調性は皆無ながら有能、ただしやりすぎ感も否めないコブレッティ警部に捜査をまかせることに
そんな中、犯罪者たちの主犯格の犯行現場にぐうぜん通りすがってしまった女性
その後、あせる組織に執拗に命を狙われるはめになり、そこにコブラが助けに入る…という流れはあるものの、まあ、ストーリーとかどうでもいい
銃撃戦、カースタント、この手のアクション映画としてのスタンダードを踏襲してるテンプレ展開だけど、これはあくまでスタ公が主演のスター映画なんだから割り切りましょう
 
犯人グループが目撃者である女を追うほどにどんどん墓穴を掘って、ことが大きくなっていって収集がつかなくなっていく様を冷ややかに見守りつつ、「ああ、やっぱスタ公はいかすわー」と楽しむのがマナーです
はい、スタ公になんの思い入れもない人にとっては普通にクソB級映画でしかないでしょう
というかスタ公に興味ない人がこの作品を手に取ることの方が希有かもしれんけどね

個人的評価:70点
オススメ度:この映画にも「エクスペンダブルズ2」の元ネタになってるシーンがあるのね




コブラ 予告


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2012年11月19日月曜日

任侠ヘルパー (2012/日)

監督:西谷弘
出演:草なぎ剛 / 安田成美 / 夏帆 / 風間俊介 / 黒木メイサ / 堺正章 / 杉本哲太 / 宇崎竜童 / 香川照之 / 草村礼子 / 大森絢音 / 秋元黎 / りりィ / 品川徹 / 室井響 / 茂内麻緒 / 信太真妃 / 田中悠太

コンビニでバイト中に強盗にあい、これに対処する時に警察と騒動を起こしてしまった元暴力団に身を置いていた彦一
刑務所の中で再会した件の強盗老人からある町の組を紹介された彦一は、出所して行く当てもないことからその町を訪れるのだった

TVドラマ版は未見
ネットでの評判がけっこう良いってんで、まったくノーチェックだったけど鑑賞することに
こんなご時世、ネットでの口コミが上々でもそれを素直に鵜呑みにできるもんじゃないし、出演者の熱狂的ファンたちによって印象操作されてる作品もある
しょうじき、この作品も「そんな言うほどのもんじゃないんだろうな」といった感じで観たんですが…いや、ホントすんませんでした
これ、めちゃくちゃおもしろかったです

かたぎになったものの背中にしょった彫り物からヤクザとして偏見の目で見られる彦一
しょせんは日陰でしか生きていけないと悟り、刑務所で紹介された極鵬会に身を置くことになる
小さな事務所をあてがわれ、老人相手の闇金&自己破産した老人を組の運営する劣悪な介護施設へ入れ、生活保護の金をかすめとる仕事をまかされる
というお話で、ここに町で対立する正義の弁護士出の新人議員と極鵬会、ヤクザの娘として育ったことから極道嫌いになった女の要介護母親、弱きを助け強きをくじく任侠道をつらぬこうとしてもままならない主人公のドラマが展開していきます

しょうじき映画というより元々TVドラマ作品ってことから、かなりTVドラマっぽいデキになってますね
だけど、そんなことなんか気にならないほどおもしろい内容でしたね
なにより主人公のキャラがすばらしい
TVドラマ、スペシャルドラマまであったというんだから、主人公的にはけっこう成長した後の話になると思うんですよね
でも、この映画版で描かれてる彦一という主人公はホントに完璧超人じゃない人間くささがあるんですよ
シリーズを重ねることで英雄視しがちな主人公像だけど、この彦一は強い部分はもちろんあるんですが、強すぎないからいい
むしろ肉体的にも精神的にも弱い部分が多くあるのが魅力的にあらわれてますね
どんなことがおこってもこの主人公ならなんとかしてくれるだろ、という安心感を安易に抱かせないからおもしろい

ただあまりにTVドラマすぎて、ちょっとヤクザのとる行動が全体的に甘い気がするし、なんとなく演出も平坦な気がしないでもない
ここはちょっと大げさになりすぎるくらいに盛り上げる、というような部分が弱いかな
それでも良い話を描く演出なんかは本当に「あー、いい話だわあ」とジーンとできるし、総じてみればかなりおもしろい作品なのでじわじわと口コミで評判が広まってほしい、そんな一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:ぜひシリーズ化してほしい




任侠ヘルパー 予告

2012年11月18日日曜日

ふがいない僕は空を見た (2012/日)

監督:タナダユキ
出演:永山絢斗 / 田畑智子 / 原田美枝子 / 窪田正孝 / 三浦貴大 / 小篠恵奈 / 田中美晴 / 銀粉蝶 / 梶原阿貴 / 吉田羊 / 藤原よしこ / 山中崇 / 山本浩司

コスプレをして人妻の里美とお金で肉体関係をむすぶ高校生の卓己
ある日、同級生で片思いの女の子から告白された彼は、里美との縁を切ろうとするが…

コスプレ人妻との情事をからめた青春恋愛ドラマっぽい内容なんだろうな、と思ってけっこう軽い気持ちで観たんですが、なんともズッシリドスンとくるちょっと重い話でした
しょうじき個人的にこの作品の内容を適切に完全に理解できた、とは胸をはって言えません
生きることというか、人生というか、「それでも」と言い続けることができるか否かとか、そんな感じのことを描いているのかなあ
とか鑑賞後にぼんやりした頭で公式サイトをのぞいてみてそこに答えが書いてあったわ
「性」と「生」…うん、確かにそんな作品でしたね

里美の演じる「あんず」と卓己の演じる「むらまさ」によるコスプレ情事
里美は卓己に金を払い関係を続けるが、一方的に別れ話を突きつけられる
卓己に両思いの彼女ができたことが原因であったが、彼は「こんな関係を続けるわけには」という正論で別れを告げる
そんな肉体の欲におぼれる卓己の話、そしてそこからこの非日常にすがる里美の話が重ねられていく
そこからさらに次々といろんな人の話がオムニバスっぽく描かれていく

単純に「あんず」と「むらまささま」のあれこれって話だけかと思ってたんだけど、卓己の友だち福田くん自身&周りの人たちのエピソードやら、卓己の母ちゃんのエピソードとかいろんな話がつまってます
最初は卓己サイドのドラマが薄くって物足りないと感じたけど、観ていくうちにそんなことは気にならないくらいおもしろくなっていきます
とりあえず「完全な人間なんていない」って感じで「矛盾する気持ちを抱える生の人間」をシンプルに難しくなりすぎずに描いてると思う

ただ、これは個人的な理解力の問題かもしれないけど、ちょっとまとまりが弱いかな、と
エピソードが重ねられていくのはいいんだけど、「いったいどうつながるんだ」という不安が観てる間にわきあがりました
けっきょくのところ、私の頭ではぼんやりとしか各エピソードがつながらなかった
「なるほど、そういう話だったのか」というスッキリしたまとまりを感じられず…っていうのはやっぱり完全に理解できてないからなんだろうなあ

哲学ドラマというか青春ドラマというか、確かにおもしろいんだけど、もっと賢い人が観たら相当たのしめる作品なんじゃないかな、と思える一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:むらまささまはそんなこと言わない




ふがいない僕は空を見た 予告

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q (2012/日)

監督:庵野秀明
出演:緒方恵美 / 林原めぐみ / 宮村優子

ネタバレ全力回避ってことであらすじも書かない方向で
とりあえずはざっくりとした感想と印象のみにします

というかもうしょうじき言って「おいてけぼり」としかいいようがない
「なにも分からない、ということが分かった」状態ですわ
公式の設定バレとかヒントをもとに仲間うちで推理して分かってほしい、んですかね
だがあえて言うなら、「作中で説明してないものはないと同じ」じゃないッスかね
表現してたものがおもしろいから裏設定も気になる、っていうよりなんかよく分からないから裏設定が気になるって感じ

最初はその展開に「ハハ、そうきたか」とついていく気まんまんだったんだけど、中盤までくると「うーん?」とイヤな予感が浮き上がってきます
で、けっきょく「うーん・・・」って感じで終わる
観てる側を巻き込んでシンジくんとシンクロさせようって意図は成功してる
だけど、まあ、はっきり言っておもしろくない

盛り上がるアクション、燃える展開でごまかしつつなら許せるんだけど、今作はびっくりするくらいアクションシーンが少なかった気がする
観てる間はなんとかついていこうと必死で退屈はしないんだけど、鑑賞後の脱力感がなんとも、ね
私のようなファンていどの気概では楽しめないのかもしれません
もっと情熱的で自分で深く掘り下げようと努力できる気力に満ちた人向けなのかな
まあ、とりあえずあの頃のオタクとしての熱情をなくしたおっさん的にはきつい作品かもしれん

あと、個人的に、あくまで個人的に、ですがエヴァ(ヱヴァ)熱がじゃっかん冷めた気がする一本でした

個人的評価:50点
オススメ度:やりだけにやりなおす



ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 予告

2012年11月14日水曜日

おろち (2008/日)

監督:鶴田法男
出演:木村佳乃 / 中越典子 / 谷村美月 / 山本太郎 / 嶋田久作

昭和25年、ずっと人の人生を見つめ続ける少女「おろち」
ある嵐の夜、おろちは雨宿りのために訪れた門前家での美しい母親と姉妹に出会い興味をもつのだった

ホラーというか怪奇ものって感じですかね
原作は未読ですが、昭和の怪奇っぽいおどろおどろしさはよく出てると思います
主人公は門前家の母と姉妹の女性たちのあれこれを見つめ続け、必要以上に家庭に介入しない形式になってて、最近ドラマでもやった「家族八景」の七瀬っぽいポジションかな

豪華な館で使用人とともに暮らす時の銀幕スターである母親の葵と、その娘の一草と理沙姉妹
一見、なに不自由なく暮らしている家族だけど、葵は自分の「ある変化」にひどくおびえている
しかも館には家族以外は誰も近づけさせない「上の部屋」という謎の場所もある・・・
明らかにこの家族は「なにかしらの闇」を抱えており、おろちが見つめ続ける形式で物語は進んでいきます

まあ、なんとなく「こういうことが起こってるんだろうな」ってのは分かるんで、そんなに複雑で頭を悩ませる話じゃない
だけどおろちが中盤で血を流してからの展開が、けっこう良い感じのスパイスになっていて、ストーリーを単調にさせないようになってますね
佳子が門前家に入ることで話に深みがでてておもしろい

真相がいよいよ見えてくると「うーん、まあ、そういう話か」と真新しさは感じないのは否めないけど、古典的なものを手堅く描いてる丁寧さはある
オチもちょっとひねってきてるし、決してつまらないってわけじゃないんだけど、もう一歩、もうひと味、あとちょっとだけ「何か」が足りない気がしないでもない
「うわあ、そうなのかあ。そうくるのかあ」という驚きより、「ああ、そうきたのね」という感じ

むかし懐かしい怪奇ものを楽しみたい人には満足のできる一本だと思います

個人的評価:75点
オススメ度:ほかの話も観てみたいし、原作を読みたくなる



おろち 予告


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2012年11月12日月曜日

黄金を抱いて翔べ (2012/日)

監督:井筒和幸
出演:妻夫木聡 / 浅野忠信 / チャンミン / 西田敏行 / 桐谷健太 / 溝端淳平 / 青木崇高 / 中村ゆり / 田口トモロヲ / 鶴見辰吾 / 徳井優 / でんでん

銀行から黄金を盗み出す計画をたてる北川と組むことになる幸田
北川と幸田は計画を実行するための各知識を持つエキスパートを仲間に入れるも、様々なアクシデントから左翼の過激派や北朝鮮のスパイがからんできて・・・

まあ、なんとも濃い作品ですね
原作は未読なんで断定はできないですが、可能なかぎりぎゅうぎゅうに詰め込んで作ってる印象はあります
ただ作品としてのバランスをとるためにだいぶ設定がこぼれ落ちてる気がするのも確か
とりあえずは強奪計画がはじまる前までは間違いなくおもしろかった

とりあえず前置きとかなしにいきなり「そんなことより黄金を盗もうぜ」という計画がはじまります
まあ、そこら辺は演出的にじょじょに観てるうちにバックボーンが見えてくるんだろう、って感じで気にはならない
というかそうこうしてるうちに「北だ」「公安だ」「過激派だ」とどんどん本来の強奪計画以外の風呂敷が広がっていくし、銃撃も人死にも普通に展開する
素人なリアクションの野田に対し、明らかに場慣れしてる北川、幸田、モモのキャラクターの怪しい魅力も手伝って、強奪計画が実際にはじまるまでは本当におもしろい

で、メインである銀行パートになった途端にいっきにテンションがダウンするんですよね
ちょい役に有名どころを起用するのはいいけど、しょうじき銀行パートのコントっぽさは作風を壊してるんじゃないかなあ
あんまり盛り上がらないクライマックスを、そこまでの盛り上がりで無理矢理おさえこむ感じで乗り切ってる感がする

あと北川と幸田の関係だったり、そもそも幸田という人物像だったり、物語のバックボーンが見えないまま終わってる気がする
自分の行間を読む能力の甘さが問題なのかもしれないですが「そもそもなんで黄金盗むの?」と疑問を抱かざるえない
作品的にはぼんやり観てる分には十分におもしろい
だけど、よくよく考えたら足りない物がけっこうあるな、と思う一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:人が死んでるのに冷静すぎるキャラと世間



黄金を抱いて翔べ 予告

2012年11月11日日曜日

悪の教典 (2012/日)

監督:三池崇史
出演:伊藤英明 / 二階堂ふみ / 染谷将太 / 林遣都 / 浅香航大 / 山田孝之 / 吹越満

カンニング問題に先生によるセクハラ、性との親の過剰反応なイジメの訴え、いろいろな問題を抱える学校で人気のたよれる先生の蓮実
しかし、そんな蓮実の闇の部分が徐々に浮き彫りになってきて…

まあ、アレだ、安定の三池監督作品だったわ
なんとなく「告白」とか「冷たい熱帯魚」みたいな感じなのかなって心構えで観たんですが、そんな作風な内容ではなかったですね
最初はごく普通(?)なインモラルでダークな雰囲気なんですが、主人公のゲスっぷりが加速してくるにつれて、三池さんが良くも悪くもいつもの調子で斜め上方向に飛ばしてきます
そこら辺が合わない人はダメかもしれん
要B級クソ映画耐性

学校の抱える問題に対し、表面上はその人の立場にたって頼れる良い先生な応対をする蓮実先生
しかし、裏では非情な手段により問題を起こす人物を排除していく
とりあえずは良キャスティングと言わざるえない主人公、伊藤英明でもってるところが大きいですね
表面的な良い先生というキャラがホントにうまく描けてると思う
そして途中経過をだいぶすっ飛ばして描かれる裏の顔、これがまたいい
「なんでそうなったのか」とかそういった主人公に対する考察はマジで無意味で、蓮実っていうゲスを観察する作品として割り切るのが吉でしょう

作風も蓮実の相棒について描く過去シーン辺りから「あ?」って感じでおかしくなってきて、どんどんそれまでの雰囲気からズレてくるんですよね
そこを「三池監督らしい」ととるか「うっわ、なにこれ」ととるか、そこが最大の分岐点になるかも
残念ながら後者の思いをいだいた人は最後まで楽しめないでしょう
要するにホントに「告白」っぽいノリを期待してる人にはオススメできない作品ですね

個人的にはこの作品の三池監督らしさは許容範囲で楽しめたんだけど、それでも終盤の殺し方の単調さはちょっと飽きるものがあった
まあ、最後の最後のオチで「え?ここからさらに?」って変な意味での終わり方に意表をつかれて楽しかったですが
とにもかくにも多くを求めちゃダメ、マジになっちゃなおダメって一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:to die





悪の教典 予告

2012年11月9日金曜日

キャノンボール (1981/米)

監督:ハル・ニーダム
出演:バート・レイノルズ / ドム・デルイーズ / ジャッキー・チェン / マイケル・ホイ / ロジャー・ムーア / ディーン・マーティン / サミー・デイヴィスJr. / ピーター・フォンダ / ジャック・イーラム / ファラ・フォーセット / エイドリアン・バーボー / バート・コンビー / リック・アヴィルス / ウォーレン・ベリンジャー / ロバート・テシア


アメリカ横断5000kmの公道レース「キャノンボール」
ひとくせもふたくせもある出場者たちが警察の目をかいくぐり、制限速度なんのそので走り抜ける

昔はお正月休みとか夏休みにTVでやる定番映画だった気がしないでもない作品
当時、子供だった自分はもちろんジャッキー・チェン&マイケル・ホイが目当てでした
そんなわけで「キャノンボール」といえば吹き替え版という印象なんですが、どうにも大人の都合なのかDVD化してないのかな

ストーリーもくそもない当時としてはスターを集めたはちゃめちゃレース、ってな感じのお祭り映画ですね
細かいことは気にしちゃいけない、そこにお目当ての役者さんが出てたら応援したらいいじゃない
たとえタイムカードスタイルの同時スタートレースじゃないのに、なぜか一番でゴールした人が優勝みたいな感じになっててもいいじゃないか
冒頭で警察を手玉にとって暴走してるけど、本編ではちゃんと律儀に警察にマークされたら車を止めたっていいじゃないか
そもそもレースっぽい緊張感のある内容っていうより、なんかロードムービーっぽいゆるさが強くてもいいじゃないか

というか昔に観た時には気づかなかったけどロジャー・ムーアとかふっつうに007ネタ全開で出てたのね
しかも、かなり三枚目などっちかというとお笑い担当というネタキャラっぷりがいろんな意味ですごい
本人はこういう役でも受けるってことは、それなりに遊び心&広い心の持ち主なんかな
まあ、そんなことよりやっぱり個人的には終盤のとってつけたようなジャッキーのアクションシーンをはじめ、ジャッキーチームの活躍が楽しかったのでよし

ただ一本の映画作品としてはレースとしての迫力も、アクションとしての盛り上がりもないクソB級映画といったポジションですけどね
こう、カーアクションシーンを強化したジェイソン・ステイサム主演あたりでリメイクしてくれないかなあ
お祭り映画として今やってもおもしろいと思うんですが、どうっすか

個人的評価:70点
オススメ度:なんだかんだ主人公チームってずっとデブが運転してたよね




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2012年11月6日火曜日

リンカーン/秘密の書 (2012/米)

監督:ティムール・ベクマンベトフ
出演:ベンジャミン・ウォーカー / ドミニク・クーパー / アンソニー・マッキー / メアリー・エリザベス・ウィンステッド / ルーファス・シーウェル / マートン・ソーカス / ジミ・シンプソン / ジョゼフ・マウル / ロビン・マクリーヴィー / エリン・ワッソン

幼い時期に母を失ったリンカーンは父の死を機に仇である男への復讐をくわだてる
しかし頭を銃で打ち抜いて確かに殺したと思った男は化け物の形相で立ち上がり…

 「昼は大統領、夜はハンター」というコピーは分かりやすいけど、実際には大統領は昔、表の顔とは別にハンターという夜の顔があった…って感じ
個人的に3D作品に対する印象は「3D作品なんて一本ためしに観てみれば十分」というスタンスだったんですが、この映画はけっこう3D演出にまじめに取り組んでる感じがしましたね
スタイリッシュなアクションを魅せる手法としての3D表現はけっこう見応えがあります

おっかさんを殺した仇、ヴァンパイアども許さねえし!俺、ヴァンパイアハンター王になるし!って感じでハンターの師匠のもとで修行開始
修行を終えたリンカーンは昼はバイトと弁護士になるための勉強、夜は師匠の指定したヴァンパイアを討ち滅ぼす生活をはじめる
なんてストーリーはぶっちゃけおまけ
こういうアクションシーンが撮りたい、という気持ちが先にあって話はそこにつなぐためだけにある印象が強いですね
場面の転換もけっこうぶつ切り

リンカーンの表の顔としての大統領になるまでの話は「すでにみんな知っている」という前提で作られてる感じで、大統領までの道のりのショートカットっぷりは半端ない
ただのヴァンパイアハンターが主人公がインパクトが弱いってんで、なら主人公はリンカーンにしようぜ風な制作側の思惑を邪推せざるえない
そのくせ大統領としての表の顔を描くシーンはホントに退屈でしかたないですが

しかし、アクションパートになればいっきに画面が引き締まります
アクション部分に限らず、3D表現の方法をやっと研究してきたか、と
手前に迫るものが飛び出して見えなくね?みたいな安易な表現とは違いました
大ざっぱに言うなら通常の画の手前と奥にもう一枚の画を置ける、みたいな
埃や血しぶきの置き方は地味に良い

それだけにドラマ部分をもっとがんばるか、いっそのことドラマ部分を捨ててスタイリッシュアクションだけの内容に特化してくれれば個人的に完璧な一本になったかもしれません

個人的評価:85点
オススメ度: 友、恋人、復讐心、師匠の忠告を無視しすぎだろ




リンカーン/秘密の書 予告

2012年11月4日日曜日

のぼうの城 (2011/日)

監督:犬童一心 / 樋口真嗣
出演:野村萬斎 / 榮倉奈々 / 成宮寛貴 / 山口智充 / 上地雄輔 / 山田孝之 / 平岳大 / 西村雅彦 / 平泉成 / 夏八木勲 / 中原丈雄 / 鈴木保奈美 / 前田吟 / 中尾明慶 / 尾野真千子 / ピエール瀧 / 芦田愛菜 / 和田聰宏 / ちすん / 米原幸佑 / 中村靖日 / 市村正親 / 佐藤浩市

豊臣と北条の決戦がせまる中、忍城の成田家当主の氏長は小田原城へ入ることになる
父の病気も重なって忍城の当主代行する長親はでくのぼうをもじってのぼう様と呼ばれる変わり者で、そこに石田三成ひきいる2万の軍勢がせまっていた

歴史ドラマをかみ砕いてかみ砕いてかみ砕いた、離乳食時代劇といった感じの雰囲気でしたね
しょうじきちょっとは時代劇の要素があるだろ、と期待して観にいく人には物足らないかもしれない
悪く言えば時代劇としての渋さと重さがない表面だけの印象が強い
とにかく「楽しければいいじゃない」というノリに特化してるんで、大衆娯楽ものを観にいく感覚で鑑賞するのが正しいかもしれません

いっけん何の取り柄もないまさにでくの坊な領主&その兵500の城に対し、時の一大勢力の2万の兵が攻めいってくる
この危機を前に主人公はどう対抗するのか、って感じの日本人が大好きな弱い立場の軍勢の逆転物語を描きます
才能を隠したでくの坊男VSエリート智将の奇策と戦略による知恵比べ、みたいのを予想してたけどそうでもなかったですね
のぼう様はけっこう感情で動くし、三成はなんか小者だし
言うほどとんでもない奇策っぽい展開は感じなかったかな

総じておもしろいんだけど、なんか単純に話がおもしろいだけな気がしないでもない
野村萬斎は野村萬斎だし、佐藤浩市は佐藤浩市、山口智充は山口智充、とそれぞれのキャストが本人にしか見えない
名のある有名人がわんさと出てる派手さ、分かりやすくて感情移入しやすい作りとしての楽しさは十分ですが、ここで笑って、ここで盛り上がってというのが見え見えでドラマとしての深みはないかなあ

まあ、なんというか「原作っておもしろそうだね」と思えるお話としてのおもしろさはある
軽い気持ちでサクッと映画を楽しみたいならあり
ただじっくりと時代劇大作を観るぞ、とはりきってみると肩すかしをくらう・・・そんな一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:佐藤浩市さんが全体的になにしゃべってるか聞き取りづらかったは私だけかな



のぼうの城 予告

2012年11月1日木曜日

タイガーランド (2000/米)

監督:ジョエル・シュマッカー
出演:コリン・ファレル / マシュー・デイヴィス / クリフトン・コリンズJr. / トーマス・ギアリー / シェイ・ウィガム / ラッセル・リチャードソン / コール・ハウザー / ニック・サーシー / アフェモ・オミラミ

1971年、泥沼化するベトナム戦争の中、ルイジアナ州のある基地で訓練を受けるボズ二等兵
軍の規律を乱してばかりの彼は訓練の中で様々な事情を抱える兵士たちと出会い…

軍隊特有の厳しい規律と理不尽な上官の言動、「軍」という独特の世界に熱にうかされたように盲従する兵士たち
「でもそれおかしくね?」と言えちゃうはみだしものが主人公ですね
軍隊という世界の中で日常的にふるまうボズさんに惹かれる者あり、また反発する者ありな訓令兵たちのドラマ
生と死が隣り合わせの戦場で命をかけた友情と絆の感動物語、みたいなありがちなお涙ちょうだい戦争ものとはちょっと違っておもしろかった

ベトナム行きの最終訓練所「タイガーランド」へ移る前に、その過酷な訓練の前訓練がおこなわれていた
ことあるごとに規律を乱すボズは能力はあるのに戦争や人殺しに否定的で、訓練においてもやる気がまったくない
上官たちは軍から追い出すという選択こそボズの思うつぼだということを分かっており、厳しい罰は与えるしかできない
そんな中でボズの組み込まれた小隊の面々は彼に振り回されながらも、不思議と惹かれ押し殺していた本音を吐露する者も多い
兵士たちの「軍にはいったんだから仕方ない」という奥に隠されたドラマをなんたら…という作品でもあります

でも本質はボズという兵士の物語でしょうね
頭が良くて軍のルールの裏側まで精通してるのに、なんだかんだで自分から軍を抜ける勇気がない
自分をだませば十分に優秀な兵士になれるのに、そうする勇気がない
なにより他人を切り捨てる勇気がない
いい加減な言動や行動に隠れた芯が強く、自分をしっかり持った強い人間としての心意気…という周りの評価の反面、作品を観てボズというキャラを追っていれば「そんなやつじゃない」と分かる
勇気がなくてブレブレで弱い、どうにもこうにも人間くさい存在が良い味だしてます

別段、感動もしないし銃撃戦に燃えることもない、でも主人公の人間くささがあらわになってくるのを観てるだけでおもしろい、そんな一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:タイガーランドだけで1年とか、そんな長期的な訓練してたんか




タイガーランド 予告


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