2012年12月31日月曜日

12月のこれ一本&2012年総括

2012年12月31日、大晦日ッスなあ
今年の年の瀬は仕事的にめちゃくちゃ多忙で疲労たまりまくり
そんな中でも休日をメインに映画を観に行ってた今月、12月分としてオススメしたいのは「最強のふたり」
まあ順当な感じがするかもしれませんが、これがホントに噂通りにおもしろいんだからしょうがない

で、続いて2012年に観た中で一本を選ぶと…
上述の「最強のふたり」の他、「キツツキと雨」「ドライヴ」「ジェーン・エア」とけっこう甲乙付けがたい印象深い作品が多いんですよね
ひじょうに迷いますが、あえて、ホントにあえて選ぶなら…「ドライヴ」ですね

個人的にあまりいっかい観た作品を繰り返し観たいとは思わないんですが、これはリピしてもいいと思わせてくれる
そういう意味では「ジェーン・エア」もそうなんですが…とか考え出すと一本に絞りきれなくなってくるのでやめます


そんなわけで今年もいろんな作品を楽しませていただきました
また、こんな感想ブログをのぞいてくれた人たちにも大いに感謝
今年も一年おせわになりました
来年もよろしくおねがいします

では、よいお年を

海洋天堂 (2010/中国)

監督:シュエ・シャオルー
出演:ジェット・リー / ウェン・ジャン / グイ・ルンメイ / ジュー・ユアンユアン / カオ・ユアンユアン / ドン・ヨン

海中に身を投げるふたりの男
ひとりは自閉症の21歳の男、もうひとりは末期ガンのその父親だった

養護施設に入れるには歳をとりすぎ、老人施設に入れるには若すぎる、妻はとうの昔に亡くしている、そんなケアしてくれる施設や身よりのない21歳の自閉症の息子を持つ末期ガンの父親
それでも死にきれなかった現実の中、自分の死後のことを憂う父親は息子を安心して任せられる場所を探す…
うん、まあ、ありきたりなテーマではあるんですが、「今まで子育てとか、自閉症の息子と向き合ってこなかった」という父親じゃなく、ずっとそんな息子と向き合ってきた父親っていう設定に重みがありますね

ずっとずっと自閉症の息子と暮らしてきたからこそ、残り時間がわずかになった今、その事の重大さと父親としての責任が重く重くのしかかる
ダメだと分かっていてもあせってしまう親の心と、そんな大人の都合をできようもない状態の息子の姿が痛々しいほどよく描かれてますね
なにはともあれ僕らのアクションスター、ジェット・リーさんが意外なほど役にマッチしてる
過剰なドラマ的演技臭はあまりなく、けっこうしっかり父親が実の息子に向ける愛情みたいな温かさが伝わってくる

とはいえ、しょうじき話的には平凡なよくある設定のドラマの域は出てない気がします
冒頭の海中に身を投げるふたりみたいな、もっとするどい、それこそかけたガラスで刺してくるようなトゲトゲしさが個人的には足りないかな、と
よく言えば超安定した作り、悪く言えばちょっとぬるい展開
基本的な自閉症の子供を持つ親のドラマとしては完成されてるものの、そこにこの作品だけのプラスアルファが「ジェット・リーさんが父親役」しかないってのがもったいない

観てて飽きることはないけど、鑑賞後は同じ系統の作品に完全に埋もれちゃって印象が薄くなっちゃうだろうな、って感じの一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:まあ、ドナルドさん的ではある




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2012年12月30日日曜日

汽車はふたたび故郷へ (2010/仏・グルジア・露)

監督:オタール・イオセリアーニ
出演:ダト・タリエラシュヴィリ / ビュル・オジエ / ピエール・エテックス / ファニー・ゴナン / タムナ・カルミゼ / ラシャ・シェヴァルナゼ / ニカ・エンデラゼ・ムスセリシュヴィリ / ギヴィ・サルチメリゼ / ニノ・チュヘイゼ

グルジアで生まれ育ち映画監督となったニコ
その映画性に対する周囲の反発や無理解に苦々しい思いをしつつも、映画を作り続ける

才能は認められながらも、あまりに自由奔放すぎる作品内容に反発も大きい若き映画監督
作りたい物がなかなか自由に作れない環境の中でも、それでも自分を貫いて映画制作を続ける…と言えばかなりシンプルなドラマなんですが…
この作品では劇中の主人公の作るものに対する共鳴と反感のストーリーを、まんまこの作品じたいにもあらわしてるんですよね
ようするにこの作品じたいが「観てる貴方に私の映画が理解できますか?」と問われてる感じ

しょうじきに言って、個人的には「理解できなかった」側、つまり劇中の主人公を苦しめた「バカども」側でした
こういう映画制作ドラマだからこそ世間一般の受けは悪いけど、カルト的な支持者も大勢いるっていう設定も「アリ」と思える
だけど、この主人公の作った作品を、それ単品だけで今、私が観たら「うわ、ひっでえオナニー映画だな」と言うかもしれない

そういったちょっと小難しい部分を抜きにすれば、けっこう作り的にはおもしろい
弾圧、暴力、政治的問題、商業的問題、色々と重苦しい問題を抱える主人公ですが、ホントにそんな重たい部分は微塵も感じさせない演出で、かといって軽すぎずに自分の映画作りを貫く力強さもあるのがいい
そんな映画として理解はできなかったけど、観てる分にはじゅうぶん楽しめたそんな一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:時代背景やらなんやらを把握しないとアレかもしれんね




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2012年12月28日金曜日

犬のおまわりさん (2011/日)

監督:有馬顕
出演:中尾明慶 / 川原和久 / 中村ゆり / ひぐち君 / 山田ルイ53世 / 伊藤裕子 / 螢雪次朗

田舎町の新人警官、愛沢は交番に届けられた子犬を飼い主が見つかるまで保護することに
もとから犬好きな愛沢であったが、実際に自分の手で育てる難しさを痛感する

年末の仕事に追われて疲弊してる中、TVドラマ感覚で楽しめる作品を探してたどり着いたのがコレ
動物ものだし、そう小難しいようなイメージもなかったので鑑賞したわけですが…まあ、みごとに深みもなにもない内容でしたね
出てくるキャラ、特に主人公の設定はじゃっかん光るものを感じるんですが、けっきょくよくあるTVドラマのワンエピソードって感じ

犬好きのおまわりさんが四苦八苦しながら子犬の面倒をみて、ついでに人間的にちょっと成長する系の掃いて捨てるほどあるストーリー
迷い犬チョボと愛沢の物語を同時に描いていくのはいいんだけど、どうにも愛沢サイドの話が弱い
この愛沢っていう主人公は設定的にはおもしろくて、いわゆるこういうドラマでありがちな「超愛犬家」「犬嫌い」「犬と無縁の暮らしをしてきた」みたいなタイプとは違う
「犬好き」だけど見たり触れたりする「犬の可愛い側面」だけが好きなだけで、飼ったり世話したりするのはノーサンキューな男
そんな動物ドラマにとってある意味で最悪な設定をもつ主人公なのに、そこをうまくいかしきれてないのが残念でならないわあ

犬のチョボ関連の展開はまあ安定して作られてるけど、どうにも主人公の成長過程が端折りすぎな気がしないでもない
「おまえいつのまに犬との暮らしの経験値かせいでたんだよ」と言わざるえない
みどころは可愛い犬たちの姿と「TVドラマ版マメシバ一郎(シリーズ2期)」に登場した、ゴールデンレトリーバーのライラが(マメシバ一郎との関連性はない、出演犬として)出てくることくらい

愛らしい子犬たちを堪能する癒し作品としてだけ、と割り切って観るのがいいかもしんない一本でした




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2012年12月24日月曜日

君へのメロディー (2010/日)

監督:横井健司
出演:佐藤永典 / 岡本玲 / 佐々木喜英 / 渋江譲二 / 落合恭子 / 貴山侑哉 / 江口のりこ / 霧島れいか / 小木茂光

窓の外をずっと見つめるある病室の記憶喪失の女性、紺野ユウに付き添って外に出るトキヤ
ユウが退院したあとも彼女のことが気になったトキヤは、おなじ記憶障害をもつ者どうしで働いているユウのペンションを訪れ…

気取らないにもほどがある、いまどきパロディものやコントでしかお目にかかれないような青春描写
だけど、全体的に不思議な「なにかある」空気が冷たく流れていて、暑苦しさはない
このストレートに感情を表に出す男と男、男と女の青い春っぷりを許容できるか否かが楽しめる境目かもしれません
恋愛のあれこれでうじうじしてるダチ公を怒鳴ってぶん殴って、殴り合うやりとりとかイヤじゃなければ楽しめるでしょう

記憶喪失のユウといっかいこっきりの散歩を楽しんだトキヤくんは、なんか気になっちゃって退院した彼女をストーキングする日々を送りついには職場に潜り込むことに成功
高校時代の親友との恋愛相談あり、記憶を取り戻すことの善し悪しあり、甘酸っぱいロマンスありで、ある意味でリア充ライフを満喫だぜ
という感じで、観てると分かると思いますが「なんか微妙に引っかかる」んですよね
話の全容が見えれば単純なんだけど、その引っかかりと演出的な見せ方がうまく作用している

「あー、そういうことね」というおもしろさはあるけど、さすがにもういちど最初から観てみようという気が起きない
そんな点がじゃっかん残念で、個人的にはもうちょいトリッキーな展開でもよかったかな
こういう見せ方だったからこそおもしろい、そのことだけにつきる一本でした
サブキャラのサイドストーリーを膨らませて、さらに本編にからめてくる展開とかだったら個人的に超好みなものになったかもしれません

個人的評価:75点
オススメ度:やだ、あの男の人、職場まで追いかけてきた…キモイ…。と思わないのか




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2012年12月23日日曜日

レ・ミゼラブル (2012/英)

監督:トム・フーパー
出演:ヒュー・ジャックマン / ラッセル・クロウ / アン・ハサウェイ / アマンダ・セイフライド / エディ・レッドメイン / ヘレナ・ボナム=カーター / サシャ・バロン・コーエン / サマンサ・バークス / アーロン・トヴェイト / イザベル・アレン

20年の刑期を終えて仮釈放になった男ジャン・バルジャンは、ある司祭との出会いで新しい生き方を見いだす
時はたち、市長の身となった彼は些細なことから身を堕とした女性と出会い、その娘コゼットを託される

さすがににわかな私でもそのタイトルくらいは知ってる「レ・ミゼラブル」
まあ、なんだ、でもタイトルだけでその内容とかまったく知らなかったんですけどね
なんとなく不幸な少女がいろいろな試練めいた人生を送りながら、最終的には幸せになるって感じの話かと思ってた…んだけど、これってジャン・バルジャンがメインの話だったのね
とにもかくにも主演のジャックマンさんが力入れて演じて歌って、ホントにある意味でジャックマン映画といってもいいんじゃないですかね

パン1つ盗んだだけ(脱獄したせいもあるけど)で20年の刑を課せられ、しかも仮釈放となっても定期的に出頭しなければならず、一生それが続き身分証明的にもそのレッテルがつきまといまっとうな仕事にもつけないジャン・バルジャン
刑期を終えて自由な身になっても罵られ蔑まされ世間からつまはじきにされる生活の中、ある司祭との出会いからすさんだ生き方を恥じる
それまでの自分に別れを告げて新たな生き方をすることで、市長という身分にまでなった彼は半ば自分のせいで身を堕とした女性から娘のことを託され、少女を立派に育て上げることに強い使命感を抱く
しかし、仮釈放の身で逃げ出した彼にジャベール警部の執拗な追跡が続く…みたいなお話
恨み憎しみを棄て、愛することを生きる術として誓うジャン・バルジャンだけど、やっぱりいろいろとままならない現実に時に肉体を、時に心をすり減らして、それでもなお自分を貫いていく生き様が痛々しカッコイイわけで

コゼットを立派に育てるお父ちゃん的な養育パートより、時代や運命に節目節目で試練とも言える選択をせまられ続ける様を描いてる感じですね
なんというかシーンごとの盛り上がりとしての歌と映像は見応え十分ですが、作品全体としてのシーンとシーンのつなぎ目がちょっと甘い気がしないでもない
悪く言えば見どころというシーンをポン、ポン、ポンと置いてるだけみたいな
そういう意味で一本のストーリーを流れるように描く映画というより、ひとつひとつのシーンに全力を傾けた映像作品に近いかも

だけど、そんな描き方がけっして悪いってわけでもなく、ホントにそれぞれのシーンの映像センスと役者さんたちの演技と歌が力強くていい
ジャックマンさんが出てない部分の弱さとラッセルさんの歌うとこがじゃっかん微妙な感じだけど、総じてミュージカルとしては楽しめる
そんな感じで元のミュージカル版を知らない身としてはけっこう楽しめたけど、知ってる&ファンの人はいったいどういう印象をもつのかな、とちょっと気になった一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:感情むき出しで歌われるとグッとくるわあ




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2012年12月21日金曜日

ライトノベルの楽しい書き方 (2010/日)

監督:大森研一
出演:須藤茉麻 / 佐藤永典 / 竹達彩奈 / 能登有沙 / 國府田マリ子 / 鈴木拡樹 / 五十嵐令子

海洋生物オタクの風変わりな高校生、八雲は従姉妹の代わりに売れっ子ライトノベル作家の姫宮美桜の原稿を受け取りにいくことに
しかしそこは同級生の文武両道でお金持ち、人を寄せ付けない堅物キャラな美少女、流鏑馬剣の住む屋敷で…

なんかまんまラノベでありそうな内容だな、と思ったら実際ラノベ原作だった
現代的萌えラブコメあるあるを具現化したような王道ストーリーっぷりは潔さはあるけど、しょうじき「王道」という言葉を言い訳にしてどこかでみた内容のシーンを切り貼りしてるだけな気もしないでもない
作品の基本的な作りの荒削りっぷり&キャストの不安定な演技力を生暖かく微笑ましく見守る、ということを楽しむくらいの心構えで挑んだ方がいいかもしれません

他人を寄せ付けない雰囲気をもつ堅物キャラのヒロイン
しかし実際は乙女チックなところがあり、また萌え萌えなライトノベルを書く作家である…という真実を知ってしまった主人公は成り行き上、新作のために恋人を演じる恋愛シミュレーションの相手にされてしまう
恋人ごっこをしてるうちに…という、まあよくある話

とりあえずどのシーンを切り取っても「なんか見たことある」ものばかり
良く言えば「王道」なんでしょうが、目新しさがいっさいないストーリーはおもしろいものじゃない
だけどそんなどっかで見たシーンの切り貼りの結果としての作品はつまらないってほどでもない
むしろ切り貼り編集はうまくまとまってると思う
繰り広げられる王道展開に「あるある」とゆるいツッコミをいれつつ、ぼんやり観るのに最適な一本でした

個人的評価:60点
オススメ度:いきなり作家に一ヶ月の猶予を与えて〆切的に大丈夫なのか





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2012年12月17日月曜日

フランケンウィニー (2012/米)

監督:ティム・バートン
出演:キャサリン・オハラ / マーティン・ショート / マーティン・ランドー /チャーリー・ターハン / アッティカス・シェイファー / ウィノナ・ライダー

友だちと言えば愛犬のスパーキーだけで、いつも屋根裏部屋にこもりがちな少年ヴィクター
ある日、事故でスパーキーを失い悲しみにくれる日々を過ごす中、彼は生物の筋肉が電気に反応することをヒントに愛犬を蘇らせる実験を行う…

白黒(3D)ワンダーランド、うん、まさにそんな感じでしたね
とにもかくにも、このキャラを受け入れられるか否かが、この作品を楽しめるかどうかの大きな分かれ目になるかもしれません
個人的には予告をみた時より実際の本編でキャラが動いてる姿は魅力的に感じました
演出的にもおちゃらけた所も控えめで、予告から受ける印象よりしっかり作ってあるかな、と
ただ、ラストをむかえたとき「え?終わり?」ってくらいあっさりしすぎてるのは、ちょっと物足りないかな

死んだ犬を蘇らせ、しかしさすがにそのことは秘密裏にして過ごす主人公
だけどあっさりその秘密はクラスメイトにバレ、口止め料の代わりにその実験を再現してみせるハメに
まあ、でもそんな口止めがいつまでも続くわけなく、その実験の事実を知った他のクラスメイトたちは…って感じのストーリー
しょうじき愛犬とご主人様の絆ドラマ、生命の重さに通じるドラマみたいな要素は薄い
アミューズメント施設のパレード、もしくはジェットコースターよろしくスピーディにはしゃぎ回ってる様子を映してるだけな印象が強い

ドラマ性が薄いってのは子供にも分かりやすいシンプルさでいいんだろうけど、ちょっと気になるのが笑いどころについて
ベタでありきたりでシンプルだけど、お手軽に笑えるポイントが意外と少ない
簡単に言えば「家族で観て子供といっしょに笑える」というシーンがあんまりないかな、と
実際、何組か小さい子連れで観にきてたひとがいましたが、二カ所くらいでしか笑ってなかった

クライマックスからラストにかけてもスピーディな展開でいいんだけど、いかんせん早すぎて「え?え?」って感じで余韻もなにもないまま終わります
それゆえになんとも鑑賞後の物足りない感が否めない一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:そこはもっと死体を実験に使う倫理観みたいのを…いや、まあいいか




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2012年12月16日日曜日

グッモーエビアン! (2012/日)

監督:山本透
出演:麻生久美子 / 大泉洋 / 三吉彩花 / 能年玲奈 / 竹村哲 / MAH / 塚地武雅 / 小池栄子 / 土屋アンナ

未婚の母アキとその娘ハツキのもとに届くヤグからの一通のハガキ
それからしばらくして、ふらりと現れたヤグによりはちゃめちゃな三人の生活がはじまる

基本は現実的に生きるハツキが、自由奔放なヤグと接するうちに心のささくれが大きくなっていく様子をコミカルに時にシリアスに描いていく作品
変わらない安定した家族の暮らしの中に破天荒な要素が加わったことで、楽しいながらも不安定になる苛立ちやらなんやらって感じの家族ものの王道
しょうじきストーリーだけみれば古くささしかないんだけど、キャスティングの妙や丁寧でうまい演出のおかげで「古くさい、だからこそいい!」という印象になってますね

けっして裕福じゃないまでも堅実に楽しく暮らすアキとハツキ
ヤグがそのふたりの中に加わったことで、なんだかんだヤグを受け入れて楽しく日々を暮らす母親のアキ
だけど、しっかりもののアキはウザキャラで好き勝手やってるようにしかみえないヤグの存在にじょじょに苛立ちがつのっていく
ベースはハツキの私生活や学校生活のドラマになっていて、「楽しいんだけど、なんかなっとくいかない」もどかしさが色濃くなっていく様子を描いてます
で、まあ、いよいよそのたまりたまったものがアレでナニして、けっきょくは家族っていいもんだなあ、というストーリーですわ

とりあえずヤグのウザキャラやしっかり者の娘、芯の強い母親、それぞれのキャスティングがかなりはまってて画的には超ド安定
そこから「昭和ドラマかよ」ってくらいベタなストーリーが進行するんですが、見送りのために二人乗りするシーンの顛末とか、ハツキを追って飛び出すヤグのシーンの顛末とか、微妙に外してくる演出が良いスパイスになっておもしろい
なにより作品としての安定感が抜群で、終盤の展開とかみごとに家族ドラマでロックな描写が心地いい

ただちょっと気になるのが、個人的に嫌韓ってわけじゃないけど、じゃっかん韓国推しが不自然なシーンがちょこちょこはさまれるのが・・・ね
なんかそこら辺だけ急に観てて冷めるのは否めない
ロックでパンクな登場人物や世界観に合ってないかな、と
インドやら多国籍っぽい要素はマッチしてるんだけどね

まあ、なにはともあれカレーがめちゃくちゃ食いたくなる、超安定な家族ドラマな一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:青春だねえ。ロックだねえ



グッモーエビアン! 予告

2012年12月14日金曜日

トロール・ハンター (2010/ノルウェー)

監督:アンドレ・ウーヴレダル
出演:オットー・イェスパーセン / グレン・エルランド・トスタード / ヨハンナ・モールク / トマス・アルフ・ラーセン / ウルミラ・ベルグ・ドマース / ハンス・モルテン・ハンセン

トマスたち学生3人組はある密猟者ハンス追う映像作品を撮ろうとしていた
あまりにも怪しい行動をとるハンスは、実はおとぎ話の中の存在と思われているトロールを狩る者だった

まあ、なんでしょう、ノルウェーって国がどんなんだか知識はないですが、こういう映画を撮るのか
というくらい「なんともいえない」感じの型に入ってるようで入ってないようなのが素敵です
作りとしてはハンディカメラによるドキュメンタリー風で、最近ではすっかりひとつのジャンルになってる気がしないでもない系統なんですが、作品としての味がちょっと独特
最初こそ探検隊シリーズみたいなノリかな、と思ってたんですがだんだんとその世界…つーかハンスさんの魅力の虜になっていきましたね

トロール・ハンターの朝は早い
みたいな感じでハンターであるハンスさんの仕事っぷりを追ううちに、トロールの生態や種類、政府の対応というのがドキュメンタリータッチで描かれてます
トロールという存在はけっこうあっさりと受け入れられ、そっからは普通に特殊生物を撮ってるていどの落ち着きがある
ちょっと珍しい野生動物とハンターのアニマル番組っぽい感じ

そして観つづけていけば分かりますが、どんどんハンターであるハンスさんが前に前に出てきて、最後には「こりゃ完全に英雄ハンター、ハンスさんの話じゃねえか」と思える内容になります
それよりも気になるのが「トロールという存在と政府の関係」という点
けっこうハンスさんはこの仕事に嫌気がさしてきていて、学生の映画作りに対して積極的にトロールに関することを暴露してくれます
だけど設定上では政府によって隠匿されている存在であるトロール
それなのに「いや、秘密だし。おまえら撮影とかやめろよな」と語る関係者のほとんどが、なんとも最終的には学生たちの目の前でふつうに隠し事をしゃべりはじめるし、そう強行に撮影の邪魔はしない
うん、よく今まで隠し通してこれたもんだと言わざるえない

あえて型にはめるなら「マジメにバカやってるB級映画」って感じなので、ちょっと変なB級作品を好む人には大好物な一本かもしれません

個人的評価:80点
オススメ度:トマスくんの怪我は応急処置ですましていいレベルじゃないだろ




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2012年12月11日火曜日

少年と自転車 (2011/ベルギー・仏・伊)

監督:ジャン・ピエール・ダルデンヌ / リュック・ダルデンヌ
出演:セシル・ドゥ・フランス / トマ・ドレ / ジェレミー・レニエ / ファブリツィオ・ロンギオーヌ / オリヴィエ・グルメ / バティスト・ソルニン / サミュエル・ド・リック / シャルル・ジャド

少年シリルは父親と暮らしていたアパートに電話をかけるがつながらない
もうそこに父親はいない、そのことになっとくできない少年はアパートを直接おとずれ、そこで騒ぎを起こす中でひとりの女性と出会う

リアルクソガ…活発な子供の様をまっしょうめんから描ききってますね
しょうじきリアルな子供の無邪気で理不尽な行動とか大嫌いなんですが、この作品はあまりにその部分を包み隠さずに撮ってることから、逆に「すっげー、分かるわあ」という子供の頃の自分を思い出して楽しめた
というかこの子供の演技力はすごい
そもそも演技なのか、ってくらい子供の生き様をダイレクトに観る側に伝えてくる

父と離れて施設で暮らすシリルはその現実や大人の理屈を理解できず、父親を追い求めて行き場のない感情を爆発させる日々を過ごしていた
やがてやっと現実を突きつけられ、飲み込まされる中、ある女性に週末里親になってくれと頼み込むシリル
それを了承したサマンサとの暮らしの中、父を追い求める感情の灯火を消せないまま、新たな生活がはじまる
という感じの話で、まあ、なんというかとにかく主人公のシリルくんがわがままなんだわ
本当に無邪気なままで「おまえ、そんなこと言える立場か?」と大人なら思ってしまうことを迷うことなく言い放つ

最初はさすがに「このガキ…!」とか思ってたけど、この作品が描くところの少年の話という部分が分かってくるにしたがって、 「そういや自分も子供の頃、こんなんだったっけかな」と作品に共感していきました
その言動、行動がどれだけ周りの大人に迷惑をかけているか、大人の理屈を理解できてない子供ゆえの無邪気さが痛々しい
痛々しいけど、それゆえに画面から目が離せない魅力がこの作品にはありましたね

父親、サマンサ、兄貴分の悪ガキ、迷惑をかけた大人たち…そんな少年をとりまく人たちについては最低限の描写になってるのもいい
じゃっかんサマンサの聖母っぷりがファンタジーに感じて、そこはちょっと理由が知りたいなとも思ったけど、ホントにブレずにメインは「シリルという少年」に置かれている
自分の感情すら持てあまし、もやもやした「それ」を押し殺し、時にはぶちまけるシリルくんの様を観る、この一点だけなのにおもしろいから不思議
「むかし(子供のころ)自分がやった(言った)ことも、今おもえばすっげえ迷惑かけてたんだな」と再認識もできる一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:シリルくんには幸せになってほしい。マジで




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2012年12月9日日曜日

最強のふたり (2011/仏)

監督:エリック・トレダノ / オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリューゼ / オマール・シー / アンヌ・ル・ニイ / オドレイ・フルーロ / クロチルド・モレ / アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ / グレゴワール・エステルマン

失業手当の書類が目当てで、採用される見込みのない介護の仕事の面接にきたドリス
しかし、その破天荒な様子を気に入った雇い主のフィリップは彼を自分の世話係として試験採用する

首から下が麻痺している身体障害者で大富豪のフィリップと、スラム出身の行くあてのない粗暴なドリス
あまりに違いすぎる身分、見た目、年齢、考え方、そんなふたりのギャップと絆を描く物語・・・というと、そう目新しい要素でもないんですが、ホントに最初から最後までスクリーンから目が離せなかったくらい集中して楽しめました
すかしてるだけじゃない、くずしてるだけでもない絶妙なバランスでシーンが展開していって、深みもあるけどほどよい雑味もあるメリハリがめちゃくちゃよく描けてる

自分でも気むずかしいことを自覚してるフィリップが雇ったのは、あきらかに介護や世話係なんかとはほど遠い世界にいるとしか思えない粗暴な男ドリス
だけどあまりに遠慮なく接してくるドリスと暮らしてるうちに、フィリップにも変化があらわれ・・・
と、身分違いのギャップものとしてはオーソドックスな作りで、まあ、ようするに互いに刺激しあって「生きてる」ことを実感なんたら~みたいな内容
ちょっと手の掛かる子供みたいなドリスと、その面倒な相手をしながらもどこか楽しそうなフィリップ、ふたりの日々を観てるだけで、それだけで本当におもしろいから不思議です

とりあえずオープニングから最強
「スカイフォール」のオープニングもよかったけど、この作品の出だしもかなりいい
そこから淀みない曲を奏でるようにテンポよく話が進んでいき、本当に観ててイヤな気持ちにならない日々の描写がすばらしい
深刻すぎず、無理な感動の方向にももっていかない気持ちいいふたりの関係、本当に最強の日常映画かもしれません

ふたりではめをはずしたり、本音でおしゃべりしたり、遊んだりラストまでそう特別なことはない
特別なことはないんだけど、このラストシーンには何とも言えない感情のわきあがりがある
鑑賞後、思わず満面の笑みで「なにこれ・・・なにこれ!」と言葉にならない心地よい感情の高まりに気分最高になった一本でした

個人的評価:100点
オススメ度:最強の笑顔だぜ


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2012年12月6日木曜日

阪急電車 片道15分の奇跡 (2011/日)

監督:三宅喜重
出演:中谷美紀 / 戸田恵梨香 / 宮本信子 / 南果歩 / 谷村美月 / 有村架純 / 芦田愛菜 / 小柳友 / 勝地涼 / 玉山鉄二

それぞれ自分の中に悩みを抱えた老若男女
阪急今津線で交差した人生が波紋のように広がり、他人どうしをつなげていく

ちょっといい話のオムニバス、小さな幸福の連鎖、実はみんな何かしらのつながりがある…というおもしろ要素を中途半端にかいつまんでるな、ってのが第一印象
最初に情報過多なくらいに各キャラのプロローグを圧縮して描き、そこからほんわかのんびり分かりやすくエピソードを広げていく作りはいい
すんなりと話に入っていける点だけは評価できるけど、しょうじきそんだけの作品かなあ

片道15分の電車というシチュエーションを軸とした完全独立オムニバスにするなり、おばあちゃんを軸にする心温まるおせっかいストーリーにするなり、幸福のバトンをつないでいく展開にするなり、どれかにしぼって作った方がまとまりがあってよかった気がしないでもない
なんというか、「ちょっといい話を作りたいんだけど、アイディアない?」というテーマによせられたショートストーリーを何も考えずにゴチャっと寄せ集めただけな印象が強いんですよね
で、それじゃさすがにアレだってんで、エピソードとキャラ同士の接点やつながりをテキトーにつけてみました…みたいな

思った以上にロマンス要素が多くて、特に中盤の作風ぶちこわしじゃねえのって感じの軽すぎるテレビドラマ的ロマンス展開はひどい
作品の入り口であるおばあちゃんと寝取られ女のエピソードまでは雰囲気もいいし、すっごいおもしろいんだけど、それ以降はしょうじき個人的に退屈な話しかなかったかな
特に少女関連の話とか、なんかクライマックス用のいちおし展開として力入ったのがくるとおもってたのに…
なんかけっこうライトな日常ストーリーな一本でした

個人的評価:60点
オススメ度:割れ物をゴミ箱につっこむな




阪急電車 片道15分の奇跡 予告


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2012年12月4日火曜日

人生の特等席 (2012/米)

監督:ロバート・ロレンツ
出演:クリント・イーストウッド / エイミー・アダムス / ジャスティン・ティンバーレイク / ジョン・グッドマン / ロバート・パトリック / マシュー・リラード / ジョー・マッシンギル

メジャーリーグの老齢ベテランスカウトマン、ガスは目が見えなくなりつつあることを隠して仕事についていた
古い友人ピートはその変調に薄々気づき、ガスの娘ミッキーに側にいてやれないかと持ちかける

近年は作品を重ねるごとにおじいちゃんになってく気がしないでもないクリント主演作品
ベースボールを題材に老いた頑固親父とその娘の絆をなんたら、というありふれたお話ではあるんですが、思った以上にライトでベースボールよりのウェイトが大きい
どっちかといえば老いを題材にした親娘のベースボールストーリーの方がしっくりくるかもしれんね
しんみり感動ものっていうよりスッキリさわやか系な印象をうけました

スカウトという仕事も時代が変わってパソコンのひとつも使えないガスは、コンピュータをばりばり活用するライバルに押され気味
そんな中で契約期間の終了も近いことから「そろそろ引退」という周りの声もささやかれはじめる
さらにそこにきて商売道具である目も歳からくる病で使い物にならなくなりつつあった
という状況の中、幼い頃に距離をおいたことで仲は良好とはいえない娘がそれでも心配してガスの側にもどってくる
基本はガスの目の病と娘との距離感を描いてはいるんだけど、娘の仕事やら恋愛エピソードもあります
というか途中から普通に目の病の深刻さとか大きく扱われなくなってきて、「ああ、そういえば目が悪かったって設定だったね」くらいの描写に
難病&親娘の絆みたいのを期待してると肩すかしくらうかもね

ちょっと距離が縮まったかと思ったらささいなことでまた開き、を繰り返しながら徐々に娘であるミッキーサイドに物語はシフトしていってる感じかな
個人的にはジジイパワーで「まだまだ若いモンには負けねえ」みたいなのが好きなんで、ミッキーのロマンスシーンとかちょっと長すぎると言わざるえない
もっとガスを、ジジイの荒くれっぷりを見せてくれよ、と
それでも頑固親父と似た者娘のちょっとしたボタンの掛け違いからくる大きな溝とか、単純に性格からくる問題だけじゃない理由が設定されてるのはおもしろかった

あと、ラストあたりの都合良すぎる展開が、あまりにファンタジーな気がして引っかかりはするけど、まあ気持ちよく終わるためにはしかたなかったのかな
総じて浅すぎるわけでもないけど、それほど深い内容じゃない感じな気軽に観れる一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:良い人キャラと悪い人キャラの見た目が露骨すぎるだろ



人生の特等席 予告

2012年12月3日月曜日

ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 (2012/英・加・スウェーデン)

監督:ジェームズ・ワトキンス
出演:ダニエル・ラドクリフ / キアラン・ハインズ / ジャネット・マクティア / リズ・ホワイト / ソフィー・スタッキー / ロジャー・アラム

ある田舎町の館に遺書を探す仕事で訪れたアーサー
もう誰も住んでいないはずの館でひとりの女を目撃したことにより、町で奇妙な事件が起こりはじめる

なんというか「これ古典ホラー映画のリメイク?」ってくらい古くさい作品でしたね
作中の時代設定的なアンティーク感と半廃墟化した洋館というコンボ、そして全体的な雰囲気にそぐわない主人公のキレイな見た目を楽しむ内容かもしれん
すっごいつまらない、ってわけじゃないけど今これを撮るんだったらもっと何かしらドラマ的な深みか、ホラー的なグロさ、もしくはミステリー的なひねった謎があった方がいいんじゃなかろうか感は否めない
そのくらい古くさい

仕事で怪しげな館にきたものの、地元の人たちは非協力的というかむしろ「さっさと帰れ」ってくらいにアーサーを拒絶する
そんな中でアーサーが無人のはずの館で黒衣の女をチラッと見かけたのをきっかけに町では子供が死に、また館では次々に怪奇現象としか思えないことが起こりはじめる
そんな「なにが起こってるんだ?」という部分が肝なんでしょうが、しょうじき町の住人たちは詳細まで事情を知ってる風なのがアレすぎる
主人公に対し「いいから帰れよ」という態度一辺倒じゃなくて、きちんと事情を説明すればそれですむ問題なんじゃねえのと言わざるえない

基本、館になんか怪しい気配がするってんで主人公が探索すると、チラッと姿を見せて消えるの繰り返し
遺書を探すために館にある膨大な文書に目を通すうちに、なんとなく館の主の事情がつかめてきて、たまに町に戻ると惨事がおこっとーる・・・みたいな
どんどん館での怪現象はエスカレートしていくんですが、けっこうなところにくるまで主人公がビビらずに探索する姿はどうかと思うわ
精神的にそんなタフかよ、と

あとは根本的に主人公をビビらせる意味なくね?という気もしないでもない
ようするに女の姿すらチラ見させればいいんだしさ
なんというか観てるとだんだん「これリング以降の劣化Jホラー作品臭もするな」みたいな印象も強くなってくるし、ホントになんで今さらこれを撮ろうと思ったのかなあ
目にする機会があれば観て損はしないだろうけど、あえて能動的に観る作品じゃない気がする一本でした

個人的評価:65点
おすすめ度:こっち見んな



ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 予告

2012年12月2日日曜日

007 スカイフォール (2012/英・米)

監督:サム・メンデス
出演:ダニエル・クレイグ / ハビエル・バルデム / レイフ・ファインズ / ナオミ・ハリス / ベレニス・マーロウ / アルバート・フィニー / ベン・ウィショウ / ジュディ・デンチ / ヘレン・マックロリー / ニコラス・ウッドソン / ロリー・キニア

MI6の諜報員007ことジェームズ・ボンドはある極秘ファイルを追っていたが、仲間に誤射され谷底に落ちる
その仲間に発砲許可を出した上司Mに疑念を抱きつつ、ファイルを奪ったテロリストによりMI6施設爆破事件を知りイギリスへ戻るのだった

鑑賞後すぐには「これかなり最高レベルでおもしろい」と思って90点つけたけど、ちょっと時間がたって冷静になってみたらそうでもないかもしれん
なんというか全体的に微妙に浅いんですよね
いろんな要素があって、それぞれのシーンの意味合いとかはよくできてるんですが、そのひとつひとつのシーンに対する中身がちょっと浅い気がしてきました

ファイル奪還ミッションの失敗はMが自分に任せてくれず、バディに狙撃許可をだしたからだと引っかかりをおぼえ、死の淵から生還しつつも現地から戻らずにいたボンド
しかしMI6本部の爆破事件という大ニュースを知り、そうも言ってられないとMのもとに戻る
そこで改めてテロリストの追跡をはじめようとするが、その前に復帰に際して肉体的精神的な部分での適正試験を受けることになる
という序盤の流れで、冒頭のアクションでヒーローとしての派手なボンドアクションを展開しつつ、復帰試験では年を重ねたヒーローとしての老いを描く

そこから現場に復帰してやっと本題に入ります
敵の首領が登場するといっきに物語が動き出しておもしろくなる
今までのような英雄的なボンド、老いや古くささと世代交代、リタイアした先の現代を生きる術、過去のしがらみ…いろんな要素を混ぜ合わせ「ジェームズ・ボンドの復活」に集約していく作品ですね
ひとつひとつのシーンがなにを描きたいのか分かりやすく描かれていて、人間ドラマ的な要素も強いけどそう複雑じゃない

いろんなものをちょっとずつ合わせ、ひとつの主題に集約する作りはよくできてるしおもしろい
鑑賞後はホントに「おもしろかったー!」ってなります
けど、なんとも腹持ちがよろしくない
なんかしばらくたってみると「もっと掘り下げたほうがいいんじゃね」という部分が目に付きます
なんというかこの敵だと劣化「ダークナイト」にしか見えなくなってくる
平均的にはおもしろい器用貧乏って感じの一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:やっぱりスーツでビシッと紳士的に決めてくれる姿が一番かっこいい





007 スカイフォール 予告