2013年5月31日金曜日

5月のこれ一本

映画、だけではなく音楽、マンガ、ゲーム、食べ物…個人的な好みを共にできる人の方が圧倒的に少ない
そんな人と出会えたり、知り合えたりしたら最高にハッピーなんだろうけど、現実的に考えれば悲しいかなそれはとても難しいこと
いくら自分の好きなことを叫んでみても、独り言のようにむなしく響くだけということすらある
しかし、簡単ではないゆえにこの世は多様性のあるモノで華やかに彩られている、と考えるとちょっと素敵かもしれない

そんなどうでもいいことを思いつつ、今月は…しょうじきガツンと「これ!」と言えるものがないんですよね
それでもあえて選ぶなら「モネ・ゲーム」かな
6月はもっと素敵な作品に出会えるといいな
という感じでまた来月

2013年5月30日木曜日

SHINOBI (2005/日)

監督:下山天
出演:仲間由紀恵 / オダギリジョー / 黒谷友香 / 沢尻エリカ / 椎名桔平 / 升毅 / 虎牙光揮 / 坂口拓 / 木下ほうか / 伊藤俊 / りりィ / 寺田稔 / 石橋蓮司 / 北村和夫 / 永澤俊矢 / 松重豊

甲賀の忍である弦之介と伊賀の忍である朧は敵対する里同士でありながら、互いに愛し合っていた
しかし将軍家の世継ぎ問題から両里の争いへと発展し…

HEART UNDER BLADE、刃のある下心という変態チックな副題がついてるクセに、なんか変に中途半端な感じでマジメに作ってますね
そんなマジメさがダメな方向に作用しちゃってて、けっきょく身の丈以上のものを作ろうとして痛さがにじみ出ちゃってる
変態能力者忍者バトルとして、バカになりきって作ってくれた方がおもしろかったろうに
描きたい題材としては分かるけど、力量不足で全体的にしょぼい

甲賀と伊賀、宿敵同士の里の男女が恋に落ちるけど、そんな時にかぎってふたつの里の避けられない争いがおこる
王道なストーリーゆえにうまくやらないとこの上なく陳腐になってしまう諸刃の剣
果てしてこの作品では残念ながらうまくいってるとは言えない、かな
徳川の世になり、日本も平穏な時代を迎えつつある中、強大すぎる力を持つ甲賀と伊賀の忍者は危険な存在に他ならない
そこで将軍家の世継ぎを決める判断材料として両里を世継ぎ候補を擁立させる形で戦わせ、つまるところ共倒れを狙う
そんなつまらない理由のために愛する者同士、そして里同士が命をかけて戦う残酷さ、という題材はおもしろい

だけどとりあえずチープなVFXが目にとまり、さらに世界観を広げてるわりにこじんまりした争いがしょぼく、設定的にも深みがまったくない
それらが合わさってどうにも「なんだかなあ」なデキになってしまってますね
特に里の仲間同士の絆という部分の描き方が希薄すぎて、仲間を失っていく辛さが伝わってこない
それゆえに主人公とヒロインの対立する図式に重みが感じられなくなってますね

個性的な忍者たちと、それらが持つ変態能力は魅力的なんだけど説明不足&あっさり散っていく流れでバトルじたいの盛り上がりもイマイチ
なんともツッコミを入れたくなるシーンが次から次へと展開して、それらがバカっぽくて逆に素敵さをかもしだせばいいんですが、どうにもこうにも「あ痛たた・・・」という印象しかない
まさにザ・残念映画というにふさわしい一本でした

個人的評価:40点
オススメ度:ギリジョーさん、微妙になに言ってるか聞き取りづらいッスわ




SHINOBI 予告


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2013年5月27日月曜日

アンナ・カレーニナ (2012/英)

監督:ジョー・ライト
出演:キーラ・ナイトレイ / ジュード・ロウ / アーロン・ジョンソン / ケリー・マクドナルド / マシュー・マクファディン / ドンホール・グリーソン / ルース・ウィルソン / アリシア・ヴィキャンデル / オリビア・ウィリアムズ / エミリー・ワトソン / カーラ・デルヴィーニュ / ズザンネ・ロタール / アレクサンドラ・ローチ / タニシュタ・チャテルジー / デヴィッド・ウィルモット / ルーク・ニューベリー / バフィ・デイヴィス / エロス・ヴラホス / ホリデイ・グレインジャー / アントニー・バーン / ミシェル・ドッカリー / ケネス・コラード / ヘラ・ヒルマー / ジェームズ・ノースコート / シャーリー・ヘンダーソン

1870年代のロシア、兄の不倫の尻拭いのためモスクワにやってきた夫と子のある身のアンナ
彼女はそこでヴロンスキーという若者と出会い・・・

古典作品で今までもいくどとなく映像化されている、らしいですね
まあ、そこはそこ、にわかな自分はこれが初鑑賞
で、思ったことは「これ、アンナ・カレーニナを知ってること前提で作ってない?」という点でした
アンナ自身はいいんですが、その他の要素が物語の進行上で必要最小限の部分しか描かれていないような気がしないでもない
初アンナな自分にとってなんか不親切な作りというか、説明不足な感じが否めませんでした

兄の不倫からはじまり、リョーヴィンの失恋、その恋心の対象だったキティもヴロンスキーをおもっていたもののアンナに横からとられる形になり・・・と序盤からじゃっかん複雑な展開
だけど劇中劇風の演出で、ちょいコミカル&軽快な印象のため、そう難しいものを観てる印象がないのはいいですね
それぞれの恋模様(禁断&純愛)の描かれ方や対比っぽい感じもおもしろい

でもちょっと序盤のアンナ+ヴロンスキーのイチャイチャっぷりがくどくて長いかなあ
さすがに観てて飽きがくるレベル
あとは話が進むにつれて、どんどんアンナの一人称視点が目立ってきて、それはそれで悪くはないんですが・・・
なんともアンナ以外の要素、夫や周りの人物の設定、社交界の設定とかが説明不足になってないですかね
特に夫の立場、リョーヴィンのエピソード、社交界のルールあたりが分かりづらい

劇中劇の演出や全体的に気楽に鑑賞できるライトな感じで作ってるのはいいけど、重厚な作品として本格的なものを期待してるとアレかもしれませんね
しょうじき個人的にはその劇中劇演出しか印象に残ってない一本です

個人的評価:65点
オススメ度:不貞の深刻さが伝わってこないわあ




アンナ・カレーニナ 予告

2013年5月26日日曜日

約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯 (2012/日)

監督:齊藤潤一
出演:仲代達矢 / 樹木希林 / 天野鎮雄 / 山本太郎

名張毒ぶどう酒事件の重要参考人として逮捕されて51年の奥西勝
現在も名古屋拘置所で死刑囚の身で過ごす彼のこれまでを再現する

ドラマはドラマだけどよくテレビなんかである、ドキュメンタリーものの再現ドラマみたいな作りですね
役者さんたちのドラマにプラスして、実際の過去および現在の映像をまじえて描いてます
しょうじきいって、この作品を観たからといって奥西さんを無罪と信じるに至る・・・というほど個人的なかたよった考えになるってのはなしの方向で
あくまで冤罪ではないのか?という疑惑がある事件を扱ったものとして鑑賞するにつとめました

冤罪もの、しかも逮捕後50年をすぎても拘置所に入れられている現実というのは想像を絶すること
自分みたいな者があれこれ言うほど軽いものではない
それでも奥西さんにとっての拘置所での朝と昼、そして夜の感じ方には心に刺さるものがある
死刑執行は事前に知らされるものではなく、死刑囚として拘置所に入れられてずっと朝はその執行におびえる
昼ご飯が配膳されればその日の命は約束されたことを意味する
そして、夜はずっと朝がこなければいいと眠る日々・・・
これに対して感じるところをうまく言葉にできません

さらにこの作品では再審請求に関する関連人物たちにもスポットをあててます
メインは弁護士と支援する人権団体ですが、それに加えて奥西さんの母親の描写もある
さらに事件のあった村の住民たちの証言の書き換え問題、奥西家の家族や代々の墓に対する住民の仕打ち、再審をめぐる弁護士の明暗・・・明言はされていないものの、疑念のある点としてよく描かれてますね

特に奥西さんにとって有利に動いた裁判官と不利に動いた裁判官のその後とか、ね
この作品から得た情報だけで決定的だ、と言えるものではないけど、冤罪かも?という題材を扱った作品としてはよくできてます
とにもかくにも、こういう事件があるということを知り、自分なりの判断のひとつにするには良い一本かもしれません
いや、ホントにこの作品から得られたものだけで考えを決めつけるのは早急です、と最後に言わざるえない

個人的評価:80点
オススメ度:基本はホントに再現ドラマチックなので注意



約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯 予告

2013年5月24日金曜日

7セカンズ (2005/ルーマニア・スイス・英)

監督:サイモン・フェローズ
出演:ウェズリー・スナイプス / ドゥービー・オパレイ / タムジン・アウスウェイト / ジョージナ・ライランス / ピート・リー・ウィルソン / サージ・ソリック

ジャックたち強盗団は警備会社より莫大なカジノの売上金と謎のケースを強奪
計画は順調であったが、身内の裏切り者の罠により獲物を横取りされたあげく仲間も殺されてしまう

どっかで見た気がするアクションを切り張りし、ドヤ顔で「ここを見ろ!」と作ってる側はキメてるつもり
だけど実際には、観てる側からすれば「うわ、ダサっ」というシーンの連続という成果が実ってない残念な作品ですね
確かに派手なんだけど、どうにもこうにもチープさが拭えないガッカリ感が漂います
これといって決定的につまらない、という点はないのに結果として面白くない、ある意味で変な魅力(?)のある映画かもしれません

莫大な金の奪取に成功した主人公一味、だけど金といっしょにいただいたいわくありげなケースがトラブルの元凶になっていく、と
とりあえず主人公が切り札であるケースを持ち逃げしたことにより、いろんなグループから狙われることになるカオスっぷりがおもしろい
主人公一味を裏切ったグループ、カジノの売上金の持ち主のマフィア、ケースの持ち主の一派、地元警察におまけにNATO軍・・・そんな事態の複雑さがどう転ぶか気になる中盤までは確かに楽しめます

まあ、でも結局のところは複雑な要素の風呂敷を派手に広げて、華麗に折り畳んでいくような作品ではないんですよね
コンパクトに広げた風呂敷をパワープレイで折り畳む、そんな小粒なサスペンスアクション
それでも風呂敷を無駄に広げまくって放置されるよりはマシかもしれません
とりあえずアクション映画としては十分に及第点なデキ、なんだけどどっかで見たような&ダサイ演出と小さくまとまりすぎた感があいまって「つまらなくはないのに面白くない」感じになってるかな

暇でしょうがない時、たまたまテレビでやってれば観てもいいかなって感じの作品ですね

個人的評価:60点
オススメ度:どう描いても主人公は普通に極悪な犯罪者ですから




7セカンズ 予告


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2013年5月20日月曜日

クロユリ団地 (2013/日)

監督:中田秀夫
出演:前田敦子 / 成宮寛貴 / 勝村政信 / 西田尚美 / 田中奏生 / 並樹史朗 / 筒井真理子 / 諏訪太朗 / 柳憂怜 / 青山草太 / 佐藤めぐみ / 岩松了 / 朝加真由美 / 高橋昌也 / 手塚理美

クロユリ団地に引っ越してきた二宮一家
介護学校に通う娘の明日香は団地に「出る」という噂を耳にし、また隣の部屋から不審な物音も聞こえ・・・

かねてから映画が上映されると知っていたので、現在(2013年5月)放送中のテレビドラマ版も観てます
仕事先でもドラマ版を観てる同僚がいるので、内容はアレながらちょっとは楽しみにしてこの劇場版を鑑賞したんですが・・・
うーん、わざわざ劇場作品にする意味があったのか?と言わざるえない
主演のふたりだけのパワーでどうこうしようって作品か、これ

隣人である老人の孤独死、それにもっと早く気づけなかったのかと自分を責める主人公
すると悪霊のたぐいなのか、主人公に老人の霊としか思えないモノがまとわりつき始める・・・
しょうじき言って予告編とテレビドラマ版を観ずに、いっさいの前情報なしで鑑賞するのが一番たのしめるでしょうね
それでもすっごいおもしろいって感じの作品じゃないと思いますが

とりあえず予告編の作り方がヘタすぎる
素直に前田敦子と成宮寛貴のW主演という部分と、中田監督ってことだけでおしておけばいいのに
あとはテレビドラマ版をわざわざ公開前に作ったのも謎すぎるわ
あえてネタバレするけど、ミノルくんの存在じたいをあまり大っぴらにしないでおいた方が、いくらかはこの劇場版は楽しめたでしょうね

ストーリーじたいはテレビドラマ版で似たような話があったし、W主人公周りの設定も話ありきで後付けした感がありありしてるガッカリさ
唯一の見所はミノルくん役の子の演技、というか存在感ですね
ほー、はまり役のいい子みつけてきたなあ、ということ以外はこれといって特になにもない一本でした

個人的評価:40点
オススメ度:テレビドラマ版に出てきたキャラとの連携もありゃしないし、投げっぱなしだし・・・



クロユリ団地 予告

中学生円山 (2012/日)

監督:宮藤官九郎
出演:草なぎ剛 / 平岡拓真 / 遠藤賢司 / ヤン・イクチュン / 鍋本凪々美 / 刈谷友衣子 / YOU / 原史奈 / 家納ジュンコ / 三宅弘城 / 皆川猿時 / 宍戸美和公 / 少路勇介 / 野波麻帆 / 田口トモロヲ / 岩松了 / 坂井真紀 / 仲村トオル

団地に家族と住み、常に妄想にひたりつつ自分のチンコをなめるトレーニングにいそしむ中学2年生の円山
ある日、上の階に越してきた下井というシングルファーザーの男に「とどいた?」と問われ・・・

団地を舞台にした住人たちのキャラクター祭なコメディ・・・なんだけど、それだけじゃない
そんな「それだけじゃない」要素がどうにも個人的に合わなかったですね
「アヒルと鴨のコインロッカー」という作品は個人的にかなり好みなんですが、この「中学生~」はちょっと受け付けない
笑いのツボも個人差があるだろうけど、全体的にすべりまくってる上に、ストーリー展開がカオスすぎて拒絶反応をおこさざるえない

団地という舞台で、そこに住んでる人たちは噂は好きだけどお互いのことを知らないし、あまり深く知ろうともしない
そんな住人たちの姿がじょじょに見えてくる一方、主人公の円山少年の妄想はどんどんエスカレートしていく
現実が明らかになるに比例して妄想の世界も広がっていって、そのふたつの世界観を楽しめた中盤はおもしろい
だけど個人的に円山少年と下井さんが本格的にからんでくるまでの序盤のほとんどと、現実が妄想を上回るカオスな終盤の展開がどうにもダメですね
つまりは中盤以外、楽しめませんでした

円山少年の自主トレの話をメインに、さまざまなキャラたちの様子がぶつ切りで描かれていく様子から、これがどうつながっていくのかという期待感は持てるんで退屈はしません
でもどんどん話はカオスになる一方で、ところどころクスリと笑えるポイントはあるけど、総じてなんかイマイチ感が・・・
マジメに観るべき内容じゃない、ということを理解しつつも作品じたいについていけませんでした

なんというかこんな展開になるような内容だったら、個人的には最後まで妄想話でバカ騒ぎするだけな方が楽しめたかなあ
現実と妄想、そのふたつのギャップというか同時に広がっていく世界みたいなの、そこら辺をもっと楽しみたかった
なんとも個人的に、あくまで個人的に残念な一本でした

個人的評価:65点
オススメ度:そりゃ男の子なら試すだろ



中学生円山 予告

2013年5月19日日曜日

モネ・ゲーム (2012/米)

監督:マイケル・ホフマン
出演:コリン・ファース / キャメロン・ディアス / アラン・リックマン / トム・コートネイ / スタンリー・トゥッチ / アンナ・スケラーン / 伊川東吾 / ジェラード・ホラン

メディア王シャバンダーのお抱え美術鑑定人ディーン
彼はシャバンダーに恨みをもつようになり、贋作を用いて一泡吹かせるある計画を実行する

コメディ映画が好きでよく観る人ほど楽しめる作品、といっても過言じゃないかもしれませんね、コレ
「これはこういうタイプのコメディか」「こいつはこういうキャラか」と先入観をバリバリ持って観ると良いでしょう
バカ騒ぎ系ではあるけど、そこまで行きすぎてない良バランスで、観ながら笑いのポイントでツッコミを入れるのがホントに楽しくて仕方ない

話的には主人公のディーンがモネの贋作を用い、田舎娘であるヒロインを利用しつつ上司のシャバンダーを騙してやろうっていう感じ
計画じたいはシンプルでスマート、かなり容易に進む・・・かと思いきやというドタバタ劇ですね
とにもかくにもキャラクターの描写が秀逸
ある人物AがBのことを「あいつは~だ」と称する、けど実際はその逆だったりその通りだったりする中、観てる側は登場人物同士のイメージに振り回されることになるのがおもしろい

主人公のキャラがかなり良くって、どんどんそのなんともいえない良キャラっぷりに引き込まれていきます
そこに周りのキャラがまた負けじと笑いのアピールをしてきて、それをも主人公を引き立てる感じになってる
じゃっかんラストのオチ、ディーンとPJの関係の顛末に「もっとハッピーにしてくれても」と思わないでもないのがアレだけど、全体的にバランスがよくて誰もが楽しめるコメディといった一本でした
大笑いというより小さく細かい笑いの連続ものですね

個人的評価:90点
オススメ度:日本人キャラもナイス



モネ・ゲーム 予告

ビル・カニンガム&ニューヨーク (2010/米・仏)

監督:リチャード・プレス
出演:ビル・カニンガム / アナ・ウィンター / トム・ウルフ / エディッタ・シャーマン / カルメン・デロリフィチェ

80歳を越えるニューヨークの老フォトグラファー、ビル
幅広い層にとって彼は有名であったが、そのプライベートは意外と知られていなかった

ファッション、という点についてはホントに人それぞれの価値観であろうから、ここで個人的にどうこう語ってもしかたなし
それでも写し出されたものの中には「いいなあ」と個人的に思うものも多分にあり、見てるだけでもじゅうぶんに楽しいですね
一方で理解できない面や拒絶感をおぼえる面もあるのも確かで、ファッション映画という点では評価は難しいかも

しかし、メインとなるのはファッションを追い求める人間としてのビル・カニンガムの描写で、彼がどう生きて感じて動いて撮っているかがこの映画の主だった部分ですね
とにかくどんな場所でも誰に対しても自然体で、ファッション業界にいる人物として個人的に想像するような偏った変人じゃなかった印象
どこにいっても楽しそうにカメラを構える姿は魅力的といわざるえなくて、ゆえに周りから愛されるのもうなずけます

破れを補修したポンチョ姿でカメラを構え、街をうろつきながらゲリラ的に写真を撮る
そんな姿は明らかに「普通」からははみ出してるんだけど、嫌な気分にさせられない・・・どころか積極的にコンタクトをとりたいような雰囲気をもってますね
もちろん仕事の部分ではいろいろとこだわりがあり、追い求めるものに妥協をしない姿勢は職人気質で見てて心地よい

そんな感じで個人的には老いてなお、って感じな人物にスポットをあてた作品が好きなんで楽しめましたね
だけどファッションものとして観るなら肩すかしをくらうだろうし、ビルというキャラ以上のドキュメンタリー作品としてプラスアルファな部分があんまりないかな、とも
ファッション界の老兵、そのドキュメンタリーというものに興味があれば、まあ、観て損はないかと思います

個人的評価:75点
オススメ度:目の付けどころが



ビル・カニンガム&ニューヨーク 予告

2013年5月17日金曜日

パプリカ (2006/日)

監督:今敏
出演:林原めぐみ / 古谷徹 / 江守徹 / 堀勝之祐 / 大塚明夫 / 山寺宏一 / 田中秀幸 / こおろぎさとみ / 阪口大助 / 岩田光央 / 愛河里花子 / 筒井康隆

夢を共有できる機械DCミニは精神療法に利用されていた
しかし、その機械が盗まれたことにより、それが持つ危険性があらわになり…

「夢」をテーマにするというと、多分に作り手の世界観が強烈にあらわれて、しょうじき観てる側からすると理解が困難な監督のオナニー作品になっちゃうんですよね
でもこの作品は独特な世界観を持ちながらも分かりやすくできてておもしろかった
画面としての表面上は夢の世界のカオスを描きながら、内容的には「なるほど」と理解できる
単純に「夢の世界」というファンタジックなものを描きたかったってだけじゃない魅力がありました

DCミニという機械を使い夢を共有することで、その対象人物のもつ精神的な問題点を探って診断する技術が完成されつつあった
しかし、ある日、その機械が盗まれる事態が発生し、そして夢を強引に共有し浸食するテロまがいの事件がおこる
それに主人公たち開発者チームが対抗する、という流れ
まさに夢の機械でありながら大きな問題点を抱えたDCミニ
じょじょに夢が現実の人間を支配していく
そのキャラたちのおかげなのか、事態はかなり深刻なんですぐが全体的にそこまでシリアスな感じがしなくていいですね

テーマは「夢」というわけで非現実的な映像表現がみどころではあるんですが、内容じたいもしっかりしているんで決して表面だけの作品じゃない
そのまんま睡眠状態で見る「夢」は言わずもがな、将来の夢みたいな意味合いとしての人間の願望としての「夢」もテーマとして含んでるんですよね
いろんな意味での「夢を見ること」というものを描いていて、そのことに観てる側が自然に気づかせてくれるさりげない誘導がよくできてておもしろい

難点があるとすれば、アニメ作品ゆえに夢の世界を描くこととすごい馴染むというか、非現実的な幻想表現があまり新鮮に感じないのがアレかもしれません
その組み合わせはぜったいハズレないよね、という感じで今まで観たことないような世界を期待できないみたいな
まあ、とりあえずはそう力まずに観られる娯楽作品としてはじゅうぶん楽しいから些細な問題かもしれませんが

「よーし、観るぞー!」と意気込むのではなく、思った以上に気軽に観る感じの一本ですね

個人的評価:80点
オススメ度:パプリカってスパイスじゃなく、どっちかというと彩りな気がしないでもないんだが




パプリカ 予告



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2013年5月13日月曜日

県庁おもてなし課 (2013/日)

監督:三宅喜重
出演:錦戸亮 / 堀北真希 / 関めぐみ / 松尾諭 / 甲本雅裕 / 高良健吾 / 船越英一郎

高知県の観光促進のために設けられた「おもてなし課」
職員の掛水は観光特使として作家の吉門を起用、そのアドバイスをもとにパンダ誘致計画について調べ始める

まあ、とにもかくにも船越英一郎の存在感がハンパないザ・船越映画
船越さんと高知の観光ものという印象しか残りません
あとは個人的なアレになるかもしれませんが、どうにも主人公に苛立ちを感じずにいられないわ
しかも作ってる方も主人公の性格の問題点を分かってるのに、そこを放置したまま終わっちゃってるからスッキリしない

観光特使として起用した作家の吉門の意見通り、パンダ誘致計画について調べる主人公の掛水
その中で県庁に出入りするアルバイトの女性、明神と知り合いおもてなし課で採用してもらうことに
そしてパンダ関連について調べていくと過去に県庁を騒がして辞めていった男、清遠という人物にいき当たる
で、ようするに県庁の黒歴史であることの中心人物である清遠の知恵を借りようって展開になり・・・という流れ
ホントに感覚的に高知観光という部分をのぞいて、この作品のドラマ部分のほとんどが清遠ファミリーのことが占めている感じですね

もう明らかに船越=清遠を主人公にした高知観光プロジェクトものとして描いた方がいいんじゃねえの、と言わざるえない脚本とキャラの立ちっぷり
一方、主人公の掛水は空気読めない、他人の意見にのっかってるだけ、一言多い、鈍感、常に受動的、笑顔に裏がある・・・もう最悪な印象しかない
うん、まあ、それはそれで主人公としてアリかもしれませんが、マジで最後までいっさい成長しないから困る

そんな主人公のマイナス部分ですが、劇中でも空気読めないとか鈍感とか登場人物からツッコミが入ってるんですよ
つまり作ってる側は主人公の性格の問題点を把握してるわけで、それなのに成長させることなく終わらせてる時点でダメだろ、と
「は?」とか「え?」とか主人公が言うたびにイラっとくるわ
最後の最後に見せ場がきたか、と思いきや「なんじゃそりゃ」な主張だし
おまけに知事の存在もまったく生きてないし、話的には良くも悪くも普通におもしろいのにダメな部分の印象の悪さが強すぎる

ぶっちゃけ主人公の掛水とかいらない子だよね、としか思えない一本でした

個人的評価:65点
オススメ度:掛水って外面はいいけど内心では常に毒づいてるんだろうな



県庁おもてなし課 予告

探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点 (2013/日)

監督:橋本一
出演:大泉洋 / 松田龍平 / 尾野真千子 / ゴリ / 渡部篤郎 / 田口トモロヲ / 篠井英介 / 波岡一喜 / 近藤公園 / 筒井真理子 / 矢島健一 / 松重豊 / マギー / 池内万作 / 安藤玉恵 / 佐藤かよ / 麻美ゆま / 桝田徳寿 / 冨田佳輔 / 徳井優 / 片桐竜次

札幌はススキノのバーを拠点とする探偵
友人であるオカマのマサコが殺され、事件はいっこうに進展しない事態に探偵は捜査に乗り出す

個人的にどうも「まほろ駅前~」と記憶がごっちゃになってるこのシリーズ
でもいざ観はじめれば「ああ、そうだったそうだった」とキャラの記憶がよみがえってくる
で、今回もほどよくコミカルに、ほどよく過剰演出に、ほどよく大騒ぎに、そしてビシっとしめて楽しめました
どうにも主人公がアレだけにライトな探偵アクションっぽい印象をいまだに持ってる人はいるかもしれませんが、今回もけっこう昭和なハードボイルドさがあって良かったですね

話的には友人が殺され、事件の捜査がいっこうに進展しない中、主人公である探偵が自ら調査に乗り出す・・・というもの
その中で実はけっこう大きな影が事件の裏に見え隠れしはじめて、また同じ事件を独自に追っていたヒロインと出会う、と
ストーリー展開的には大筋の一本道で、謎を解くというより犯人をつるし上げる裏をとるために奔走する
で、それを邪魔するために色々な妨害を受けるっていう感じ

全体的に娯楽性が強く、テンポもいいしちょっとダラけてくる流れになると痛快なアクションパートがはじまって引き締めてくれます
話がシンプルゆえにあれこれ考えずに作品に集中できて、ギャグにニヤリとしてアクションに燃えることに専念できるのはいい
それでいてクライマックスからラストにかけて、そう単純じゃない事件の全体像が分かりやすく描かれてるから面白い

とにもかくにも難しく説明しようとすれば難しい言葉を並べていくらでもできることを、あえて簡単に分かりやすく説明してくれている
複雑な事情を簡潔に分かりやすく、実はこれって難しいことを難しく説明するよりよっぽど労力がいる
それをやってのけてくれて素晴らしい
ただ、やっぱり総じてクセのあるコミカルな演出が完全なる万人受けな作品にしてないかもしれません
好きな人は大好き、楽しめる人は超面白い、そんな一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:ザ・大人の探偵映画・・・?



探偵はBARにいる2 予告

2013年5月12日日曜日

フッテージ (2012/米)

監督:スコット・デリクソン
出演: イーサン・ホーク / ジュリエット・ライランス / フレッド・ダルトン・トンプソン / ジェームズ・ランソン / クレア・フォーリー / マイケル・ホール・ダダリオ / ヴィンセント・ドノフリオ

ある田舎の一軒家に越してきた作家とその家族
屋根裏で見つけたフィルムの数々には、そこに映る一家を惨たらしく殺害するシーンがあり・・・

いちおサスペンスホラーというジャンルですが、あえてどんなホラーなのかという部分は伏せておいた方がいいですね
かなりザックリ言うなら急にナニかが出てきたり、大きな音が鳴る感じのびっくり箱系、かな
けっこう油断してるところにワッとくるので、そういう間は上手いなと思いました
内容的にもどういう感じなのか観ながら手探りしていくように作られており、「そういうネタなのね」と理解した瞬間ちょっと冷めるけど、それでもけっこう最後まで緊張感は持続します
で、最後の最後ですべて台無しにして終わるギャフン作品ですわ

作家の主人公が執筆する作品のためにいわく付きの家にあえて越してきて、そこで数本のフィルムを見つける
そこにはフィルムの数だけ一家惨殺の決定的シーンが映っていて、主人公はそれをもとに自身の本を書くため調査をはじめる
そんな中でちょっとしたヒントを発見しては、それが新たな謎となり、さらに身の回りで怪しい動きが起きはじめ・・・みたいな内容
いったい何が起きたのか、何が起こっているのか、何が起ころうとしているのか、びっくりどっきり演出の中でじょじょに全体像がみえてきます

なにはともあれ殺人事件の謎と、主人公にふりかかる現象が単純ながら「この先どうなるんだろう」という期待値を上げていく
どんどんと風呂敷が広げられていき、その中身があらわになるわけですが、まあ、人にはよるかもしれませんが個人的にその中身としての核心要素はギリギリ「アリ」
なんだけど、ネタバレ後の風呂敷のたたみかたが雑すぎて残念感がラストにけちをつけてますね
なかなか着地点の模索が難しかったってのはわからないでもないけど、なんだかなあ・・・と

ホラーとしてもけっこう恐怖感の演出はよくできてるし、サスペンスとしても興味を持続できる良作なんだけど、最後の最後でガッカリせざるえない
なんというか「フォーガットン」の血脈いまだ受け継がれ続けるみたいな一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:どことなくJホラーテイストですな



フッテージ 予告

2013年5月9日木曜日

プレミアム・ラッシュ (2012/米)

監督:デヴィッド・コープ
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット / マイケル・シャノン / ダニア・ラミレス / ジェイミー・チャン / ローレン・アシュリー・カーター / ショーン・ケネディ / キンバリー・パーフェット / アシュリー・オースティン・モリス / アーシフ・マンドヴィ / チャールズ・ボーランド

自転車メッセンジャーのワイリー
ある日、あずかった一通の封筒を狙う怪しい男に執拗に追いかけられ…

ハイスピード自転車アクションで、走行中の車のすき間をぬって疾走するスリルとじょじょに謎が明らかになっていくサスペンスが売り
自転車乗りの人にとってはめちゃくちゃ楽しめる作品…ではないのが困りもの
走る車の間を罵声をあげつつすりぬけるのはデフォで、逆送、歩道走行、乗り入れ禁止場所への侵入、車に煽られたらミラーをぶっ壊す…暴走行為上等どころか「カッコイイだろ?」と本気で描いてるから残念でならない
のっぴきならない状況におちいっての暴走行為なら「まあ、しかたないかなあ」と思えなくもないけど、主人公をはじめ皆おなじ感じで暴走天国
せっかくの自転車アクションなのに純粋な自転車乗りの人にとっては「うーん…」と素直に楽しめないかもしれません

話的にはメッセンジャーの主人公があずかった荷物が発端になって、そのブツをめぐるいざこざに巻き込まれていく、というもの
その中で各キャラの関わりを描くために時に時間を巻き戻して話を展開する演出で、時間軸的にちょっといったりきたりしつつ全体像が見えてくるタイプの作品ですね
ブツを狙う謎の男にからまれ、自転車警官に目を付けられ、ライバルメッセンジャーにちょっかいを出され、 追われて追ってのハイスピードアクションが見どころ

なによりテンポと疾走感が心地よくて、飽きる間もあたえないくらいに走り抜けるがごとく場面が展開していくのが楽しい
そこに運んでる荷物とそれに関わる人物たちの背景がちょっとずつ見えてくる要素が良いアクセントになってて良いですね
だからといって、すっごいおもしろい内容でもない
主人公のバックボーンとかサスペンス部分の描き方が中途半端で、「なんか複雑に入り組んだ話がちょっとずつ見えてくる」という部分がイマイチ練り込み不足かな、と
そんなマイナス部分をとりあえずハイテンポで誤魔化してる感がしました

あとは序盤から封筒をつけねらう謎の男の顛末とか「いや、さすがにやりすぎじゃねえの」と軽く引くシーンがけっこうあるんですよね
作品としてはかなりライトな雰囲気ですが、冷静に考えると「いや、ヤバイって」という違和感をおぼえるシーンがちょこちょこと
総じて期待せずに観ればまあ楽しめるかな、という感じの佳作な一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:自転車警官が不憫でならない




プレミアム・ラッシュ 予告


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2013年5月6日月曜日

L.A. ギャング ストーリー (2012/米)

監督:ルーベン・フライシャー
出演:ジョシュ・ブローリン / ライアン・ゴズリング / ショーン・ペン / ニック・ノルティ / エマ・ストーン / アンソニー・マッキー / ジョヴァンニ・リビシ / マイケル・ペーニャ / ロバート・パトリック / ミレイユ・イーノス / サリヴァン・ステイプルトン / ホルト・マッキャラニー

1949年ニューヨークはギャングのミッキー・コーエンによって牛耳られていた
ジョン・オマラ巡査部長は警察内部の圧力も意に介さず、ひとりコーエンの息のかかった場所へ踏み込む

もっとこうノスタルジックというか、渋いハードボイルドな世界観ものかと思いきや、ホントにザ・ハリウッドアクションみたいな娯楽作品でしたね
時代背景だけ設定されているだけで、ドンパチ&カーアクションなバイオレンスコップアクションですわ
やりたい放題の悪に対し、法と上層部の圧力が枷になって苦しい立場の警察官が、目には目をとあえて罪をかぶって暴力的な行動にでるって印象をもってただけに、けっこう軽い感じで「ああ、こういうノリなのね」と力抜いて観られて気楽でした

街を牛耳るギャング、ミッキー・コーエン
正義の漢である主人公のジョンは暗黙の了解である「コーエンの息のかかった場所には手を出すな」というのを無視して捜査を続ける
そして、そんな彼に秘密裏にミッキー・コーエンをぶっつぶす任務が与えられ、メンバーを集めることに・・・というお話
もうはなから悪には容赦ない暴力で対処するスタンスな主人公で、己の正義の無力さとか警察内部の腐食とかを悩んだりしません
周りから何を言われようが悪には正義の鉄槌をくだしていく姿は素敵ですね

そんな最初っからバイオレンス捜査かますような主人公なんで、ドラマ的な要素はほぼありません
けっこうもう序盤から「ファッキンミッキーぶっつぶせ!」「オッケイ!」というノリで、ちょっと地味な「エクスペンダブルズ」をイメージしてもらえればいいかも
いかにも無骨でいかつい主人公のジョンさん、女たらしで優男なジェリーさんのコンビもおもしろい
というかむしろこのふたりだけのコンビものでも良かったんじゃなかろうか

ミッキーの残忍さはそれなりに描かれるんだけど、どうにもなんか小者感が漂うのがちょっとアレなのと、主人公たちのメンバーが中途半端に多くて描き切れてないかな、というのが個人的に気になる難点かな
あと、これだけは断言できますが、娯楽作品としてのどごしが良すぎる内容になってるため、しばらくして「この作品ってどんなんだった?」と聞かれても思い出せる気がしません

大作でもなければ特にクセのあるものでもない、ごくごく普通に楽しい娯楽作品という感じがした一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:「L.A.ギャングストーリー リベンジ」とか作れそうだな、おい



L.A. ギャング ストーリー 予告

2013年5月5日日曜日

死霊のはらわた (2013/米)

監督:フェデ・アルバレス
出演:ジェーン・レヴィ / シャイロー・フェルナンデス / ジェシカ・ルーカス / ルー・テイラー・プッチ / エリザベス・ブラックモア

薬物中毒の少女ミアの治療のため、森の中の家に集まった兄と友人たち
ミアが禁断症状に苦しむ中、一同は地下に怪しい部屋を見つける

リメイク作品ですが、個人的に元のは観たような観てないようなちょっと記憶があいまい
あんまり気にしててもアレだって感じで、とりあえずありのままを受け入れればいいんじゃん、と
全体的にそつなく作ってあり、悪くいえばあんまり冒険してない印象が強い作品でしたね
とにもかくにも場面にほぼ変化がなく、それゆえに画面的にずっと変わり映えがしないのはツライかも

話的にはジャンキーのミアがクスリを断ち、その見届け人というか監視する目的もかねて友人と兄が森の一軒家に集まる
そんな中で怪しい地下室を発見し、そこで針金できつく縛られた一冊の本を手にする
その本の封印を解き、そこに記されていた呪文めいたものを読んでしまったことによって・・・みたいな展開
ジャンキーのミアが禁断症状をおこしてる状況、というために彼女の奇行が精神的なアレだとスルーされるのがミソ、ですかね

ホラー映画としてのグロさはまあまあで、恐怖的なものはそうでもない
外傷としての痛々しい描写がみどころ(?)で、あとは憑かれた人たちのおっかなカッコイイ見た目が印象的です
まあ、それよりなにより一番の見所は悪魔とか呪文とか儀式とかオカルトっぽいそっち系の流れの中、実際の対処法は「物理で殺る」というのが素敵だわ

一方、ずっと薄暗い部屋の中って印象が強く、やっぱり変わり映えしない画面を見つめ続けるのはツライ
飽きるとか飽きないとかの前に生理的に眠気が襲ってきます
登場人物が泣き叫んだり、奇声やらとがったSE&BGMが流れてくると意識が戻されるんだけど、どうにもすぐに意識が沈みそうになる
クライマックスのバトルはすっごい盛り上がるし、総じて観ればおもしろい
ただもうちょいビックリ箱要素とか画面のめりはりがほしかったかな、と思った一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:これもいちお最後の最後まで観ましょう



死霊のはらわた 予告

ビッグハンマー・マサカー 血しぶきの狂宴 (2010/米)

監督:ステイシー・デヴィッドソン
出演:アシュリー・ケイ / メラニー・ドニホー

ある廃工場に勝手に入り込んでパーティ会場へと改装する男女
先に来ているはずの仲間は行方不明ながら、準備を進めるうちひとりまたひとりと消えていき…

近未来のネオ神戸、サイバネティックアームの怪人の支配する工場に入り込んでしまった若者に超巨大ロケットハンマー、名匠「マサカー」をふるう殺人鬼に襲われる…ッ!
んな話なわけがなく、まあ、 いたって普通の退屈ホラーですわな
個人的にビッグハンマーと聞くとビフくんを想起せずにいられないけど、それもどうでもいい話
けっきょく、なんでこんなことを書いてるかというと、そうでもしないと特に感想とかねえから!と事情を察していただきたい

アホな若者たちが入っちゃダメってところへ入って、そこでひゃっほいしてたら殺人鬼に襲われちゃってオーマイガー…ザ・ホラーとも呼べるテンプレ作品ですね
今ではそんなテンプレを逆手にとって作ったり、色々と作り手が創意工夫するものもあるのにそんな努力はいっさい感じられない
さらに開き直ってバカ要素を充実させてるような作品でもなく、感じ的には「ちょっと音楽に自信があるんだが」な人が自分の中のオーソドックスなホラー映画像にのっけて作っちゃった、みたいなノリ

ゴア描写はそれなりに力が入ってて見応えはある
でもじわじわと責める恐怖感は皆無で、その武器である巨大ハンマーばりに大味に殺しまくるだけなのは残念
廃工場限定出没な殺人鬼の背景もいっさい掘り下げられることはなく、しかもその取り巻きの狂人たちについても説明なし
ホントに「そこに殺人鬼たちがいたから無惨に殺されました」ってだけ

クライマックスでの殺人鬼の立ち姿がちょっとカッコイイと思った以上の印象はこれといって残らない、そんな一本でした

個人的評価:30点
オススメ度:若者たちがクズばかりで感情移入できんわ




ビッグハンマー・マサカー 血しぶきの狂宴 予告


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