2013年6月30日日曜日

6月のこれ一本

今月は個人的にちょいちょいテレビドラマを観てました
劇場版も行ってきた「ガリレオII」、なんとも評判通りというか一期ほどのワクワク感がなかったかな
一方で同じ曜日にやってた「確証」は突き抜けるナニかはなかったけど安定したおもしろさ
「でたらめヒーロー」はさらに安定しまくりの作りで、じゃっかん続きを作れるような逃げの置き設定で終わったのはアレだけど楽しかったですね
「雲の階段」は途中まですごいよかったのに、けっきょく終盤でぐずぐずになってる印象
「クロユリ団地」は1、2話の壊滅的なつまらなさをガマンしてむかえた3話から盛り返し、どんどん普通にJホラーとして覚醒していって映画版なんざ目じゃないデキになってました
そんな中でも個人的に一番よかったのは「間違われちゃった男」、最後の軟着陸っぷりが気にならなくはないけどホントに毎回たのしめた

6月の時点で終了してないけど「めしばな刑事タチバナ」は最初こそ「うーん?」だったけど、まあ、ゆるーく観る分にはちょうどいい内容
「みんな!エスパーだよ!」は主題歌とED曲が神、内容はクソ…というか現状まったくついていけない

そんなこんなで、ドラマ話はおいといて、今月の一本は「震度0」で
厳密には映画じゃなくてドラマなんだけどね
そういう意味では映画としてだったら「コードネーム:ジャッカル」も捨てがたい
というところで今年もいよいよ後半戦がスタート、このちょうしで色々と映画を観ていきたいですね

真夏の方程式 (2013/日)

監督:西谷弘
出演:福山雅治 / 吉高由里子 / 北村一輝 / 杏 / 山崎光 / 風吹ジュン / 前田吟 / 田中哲司 / 塩見三省 / 白竜 / 西田尚美

海底資源開発のアドバイザーとしてある海辺の町へやってきた科学者の湯川学
そこで同じ宿に泊まっていた男が死亡、これが他殺ではないかという疑いが浮かび上がり事件に巻き込まれていく

なんで夏にこうじっとりとスッキリしない映画を作ってくれたのか
ホントに「これでよかったのか」という何ともいえない後味の悪さを作中の登場人物をふくめ、観てる側にも与えてくれたもんだ
あくまで「解」ではなく「方程式」を描いた作品、ということでこの後味が狙ったものだっていうならよく出来てるとは思いましたね
いや、でも夏が舞台だけど内容的にはもっとしっとりできる秋とか冬に観たかったかな、と

明らかになんらかの闇を抱える海辺の町で宿を営む家族、そこに訳知りな感じの男がおとずれ、しかも次の日には死体となって発見される
当初は事故死とみられていたが、どうも他殺の疑いが浮上
同じ宿に泊まっていた主人公は知り合った男の子と、ひょんなことから夏休みの科学実験を行うことになる中、事件のトリックに気づき・・・
みたいな話ですが、まあ、しょうじき事件としてのミステリ部分は安っぽい
完全に二時間サスペンスレベルといってもいいかもしれませんね

この作品の肝としては、そんな安っぽいミステリ部分じゃなく人と人の行動と思惑が組合わさるドラマ部分を楽しんでほしいんだと思えます
過去から現在、主人公を巻き込んで未来へと次々に要素を組み込んで築き上げられる方程式ってのを作りたかった・・・のかな
確かにそういう作りとしてはおもしろいし、実際に最後まで観れば楽しめる
だけどその見せ方がどうにもイマイチかな

大事なこととして過去の出来事、ミステリとしての解決編に重きをおいて描くのはわかるけど、ちょっと時間をかけすぎな気がしますね
ぶっちゃけ安っぽい解決編はどれだけ回想をじっくり描いて丁寧にシーンを重ねてもどうにもならんでしょう
それよりももっとコンパクトにまとめて作品自体をシェイプした方がよかったんじゃなかろうか
あと「あそこでこのことに気づいたのか」というのは理解できるけど、もうちょいそこらを分かりやすく描いてくれた方が、ね

そんな感じで言わんとする部分はおもしろいんだけど、その作りがじゃっかん不親切な気がした一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:ED曲が空気読めてない




真夏の方程式 予告

震度0 (2007/日)

監督:水谷俊之
出演:上川隆也 / 國村隼 / 渡辺いっけい / 升毅 / 斉藤暁 / 矢島健一 / 平山あや / 朝加真由美 / 伊佐山ひろ子 / 原日出子 / 木下ほうか / 伊藤正之 / 大鷹明良 / 宇納佑 / 八十田勇一 / 瀬戸早妃 / 山崎裕太 / 藤木孝 / 佐藤二朗 / 石井正則 / 田中哲司 / 松重豊 / 戸田菜穂 / 西村雅彦 / 余貴美子

阪神淡路大震災がおきた朝、とある県警の課長が失踪する
震災のこともよそに幹部たちは課長のこの謎の失踪について捜査をはじめる

なにか秘密がありそうな本部長、将来有望なエリートの若手警備部長、現場叩き上げの刑事部長、その他の各部署の部長職の面々、そこにからむ婦人や愛人の女性陣、警察内部のどろどろしたものを描いたミステリですね
キャリアとノンキャリアの対峙をメインにし、天下り、出世、保身、欲望、警察スキャンダルネタのオンパレード
協力してるようで足の引っ張りあいばかりな登場人物たちが、震災で大変になってる現実をよそに失踪した課長の捜索に四苦八苦する内容がひじょうにおもしろい

単純な失踪事件かと思われた県警の課長の問題
しかし捜査を進めるほどに議員選、女関係、指名手配犯とのつながり、と謎ばかりが増えていく
しかしながら警察官僚の面々は己の保身と他部署へゆずれないメンツにより、まったく連携がとれないどころか足を引っ張りあうしまつ
そんな中でもじょじょにバラバラではあるけど情報が集まり始め・・・みたいな展開の作品
警察内部の権力闘争の道化っぷりをひじょうに分かりやすく描いてますね

そしてなによりミステリの部分とオチが良い
いきなりそれまでの流れをぶったぎって真相を知る人がかってにしゃべりだした時は「は?」とも思ったけど、ちゃんと最後まで真相を知ったあとには「なるほど」と思えるでしょう
最後の最後までちゃんと楽しめるミステリ要素、じゃっかんありきたりだけど警察内部の陰謀めいた部分の描写、それらがうまく絡まって非常に楽しめます

多くのマジメでがんばっている警察官、その上に立つ者の正義の在処みたいななんともいえない描写が良い意味で後に残る一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:蒔いた種とか下ネタ禁止




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2013年6月25日火曜日

華麗なるギャツビー (2013/米)

監督:バズ・ラーマン
出演:レオナルド・ディカプリオ / トビー・マグワイア / キャリー・マリガン / ジョエル・エドガートン / アイラ・フィッシャー / ジェイソン・クラーク / アミターブ・バッチャン / エリザベス・デビッキ / アデレイド・クレメンス / マックス・カレン / カラン・マッコーリフ / ケイト・マルヴァニー

1922年ニューヨーク、投資の勉強をしているニックは従姉妹のデイジーとその富豪の夫とつき合いながら日々を送っていた
ある日、ニックの隣に建つ立派な城の主ギャツビーからパーティの招待状が届き・・・

とにもかくにもディカプリオに魅力を感じるか否かで、この映画の評価は大きく異なるかも
個人的にはディカプリオ=ギャツビーはハマってると思えるし、その魅力も十分に描けてると思えたので楽しめましたね
とりあえず序盤のギャツビーが画面に大きく映る満面の笑みのシーン、これが踏み画になるかと
ここでグッとくるか、ウゲェとくるかでその後も作品を楽しめるかどうか判断しましょう

話的にはデイジーとの間に秘密があるギャツビーが、彼女と親しくなるようにニックに取り持ってもらう
そうこうしているうちにギャツビーという存在そのものの怪しさ、人妻であるデイジーとの関係の危うさというのが描かれていく、と
けっこう話的には有名らしいですが、そこはほらいつものようににわかっぷりを言い訳に原作とか知らないんで、もっとギャツビーの輝かしい表の顔にかくれた闇の部分をサスペンスタッチで描いてる物語かと思ってました
実際にはけっこうシンプルなロマンスものだったんですね

気品があり、力強さがあり、優しさがあり、狡猾さがあり、変に真面目なところもありつつ、けっして完璧な人間じゃなくて抜けてる部分や子供っぽい部分もある
他人を寄せ付けない完璧な貴族っぽいキャラにならず、どこかつけいる隙のある、弱点が見えている点がなんとなく親しみやすい人をひきつける魅力として描かれてますね
そして、そんなギャツビーというキャラの感情や立ち位置にリンクして、時に華やかに時に暗く映し出す映像表現が特徴的

知人が語るギャツビー、本人が語るギャツビー、ニックの目に映るギャツビー、文章として書かれるギャツビー、いいたいギャツビーとは何者なのか、という引っかかりが頭のすみこびりつきつつ、デイジーとの関係に浮き沈みするロマンスドラマがシンプルだけどおもしろい
ただやっぱり、あえて描いてないのかもしれないけど闇の部分ももっと深く掘り下げてほしかったかな、と
あとはホントにディカプリオに対するイメージに大きく左右されるんで、けっしてすべての人に強くオススメできるような作品じゃないってのは残念ですね

個人的評価:85点
オススメ度:原作にちょっと興味わいた&サントラ欲しいわあ




華麗なるギャツビー 予告

コードネーム:ジャッカル (2012/韓)

監督:ペ・ヒョンジュン
出演:キム・ジェジュン / ソン・ジヒョ / ハン・サンジン / オ・ダルス / キム・ソンリョン

ジャッカルという呼び名の超一流殺し屋が引退前の仕事の予告を記す
そして舞台となるホテルにジャッカル、その標的の韓流スター、警察、そして謎の女まで現れ・・・

いや、ホントに「どうせアイドル映画だろ」となめて観た自分が恥ずかしくなるくらい作品としての内容はよくできてましたね
雰囲気的にはホテルというロケーションで、韓流スターのヒョン様を中心に、いろんなキャラがそれぞれの思惑のもとにドタバタと入り乱れる舞台劇を観ているよう
三谷幸喜作品に近いものがあるような気がしないでもないかも

殺し屋ジャッカルに狙われる韓流スターのヒョン様は、そうと知らずにホテルにやってくる
事前に予告を残していたことから警察の面々もホテルに到着し、地元の警察へ応援を要請
元はラブホに近いモーテルだったホテルの支配人もノリノリで金儲けのチャンスとはしゃぐ中、ヒョン様は突如として現れた謎の女に拘束されてしまう
話的にはジャッカルがヒョン様を狙う事件の中、さらに素人臭い別の女に狙われてしまうことで現場がカオスになっていく、みたいな感じ

基本はコメディテイストで、次々にクセのあるキャラが登場しては画面と話をしっちゃかめっちゃかに荒らしていく様子を楽しむ作品
そんな中でも話はラストに向かってキチンと収束していくため、コミカルさに肩の力をぬいて鑑賞できつつもちゃんと盛り上がりどころは外さないのが良いですね
個人的にはもっと事件外のキャラたちがラストに向けて無駄に集合してくれれば、もっともっとカオスで楽しかったかな、と思わなくもないですが
それでもクライマックスのジャッカルという点に収束していく話はおもしろかった

オチも含めてあくまでプロとして徹してるジャッカルさんの存在と、その標的であるヒョン様のもてあそばれっぷりがなんともいえない
とりあえず軽い感じで観てみたらどんどん引き込まれて、「なんだおもしろいじゃん」と思えた一本でした
舞台劇チックなドタバタコメディ、という部分が許容できる人なら楽しめるかも
逆に純粋なサスペンスを期待してると、ラストにいたるそのコミカルな道中に拒絶反応をおぼえるでしょうね

個人的評価:90点
オススメ度:縛られてる人はみんなそういう趣味という素敵な解釈




コードネーム:ジャッカル 予告

2013年6月23日日曜日

アフター・アース (2013/米)

監督:M・ナイト・シャマラン
出演:ウィル・スミス / ジェイデン・スミス / ソフィー・オコネドー / ゾーイ・クラヴィッツ / イザベル・ファーマン / グレン・モーシャワー

人類は地球を離れ、惑星ノヴァ・プライムでエイリアンと戦いながら生きていた
伝説の兵士サイファ将軍とその息子のレンジャー候補生キタイは、訓練地へ向かう途中の事故により人が住むには危険すぎる星になってしまった地球に不時着し・・・

スーパーソルジャーな父親とその息子が、まるで原始の時代に戻ったかのような凶暴な生物にあふれる地球でサヴァイバル無双だZ!
という話じゃなかった
むしろアクションよりドラマ部分の比率の方が大きかった
親子であり将軍と候補生である人間関係と感情のありよう、みたいな部分の葛藤やら成長やらをかなり分かりやすく描いているファミリー映画といってもいいかもしれませんね
もしくは少年マンガというか、ゲーム的なノリがけっこうする成長物語

兵士としては超一流だけど父親としてはちょっとアレなサイファー、なまじ父が立派なだけにがんばりがからまわりばかりしてる&トラウマを抱えた息子のキタイ
視覚はないが人間の恐怖心をかぎつけて襲ってくるエイリアンのアーサ
という基本設定のもと、人が住むには危険すぎる星になり果てた地球を舞台に襲いくる生物や環境を相手にサヴァイバルアドベンチャー、という作品ですね
チート戦士な父ちゃんは大怪我を負ってしまうため、事実上ほぼ全編において息子の冒険になってます

とりあえずは地球でのサヴァイバルがはじまるまでの眠い設定解説描写を乗り切ることからはじまります
それをすぎて実際にアドベンチャーがはじまればけっこう盛り上がってくるのでガマン
ただし、危険生物とのバトルは意外に控えめになっているため、純粋なアクションを期待していると肩透かしをくらうかもしれません
あくまで親子、兵士としての成長ドラマです

あとは作りとしては分かりやすくっていいんだけど、やっぱり恐怖心をかぎつけるエイリアンってどうよ、とつっこまざるえない
視覚がない欠陥エネミーという設定の意味が分からんわ
冒頭の眠すぎる退屈な描写、どう贔屓目にも将軍には見えない父ちゃんの外見、ほぼ横になりっぱの伝説の兵士・・・内容的にはおもしろいんだけど、けっこうツッコミどころも多い一本ですね

個人的評価:75点
オススメ度:普通にゲームで作ればよかったんじゃねえの



アフター・アース 予告

2013年6月20日木曜日

フォーン・ブース (2002/米)

監督:ジョエル・シュマッカー
出演:コリン・ファレル / キーファー・サザーランド / フォレスト・ウィティカー / ラダ・ミッチェル / ケイティ・ホームズ / ポーラ・ジャイ・パーカー / アリアン・ワニング・アッシュ / ティア・テキサーダ / ジョン・イーノス3世 / リチャード・T・ジョーンズ / キース・ノブズ

携帯電話片手に見栄とハッタリだけで仕事をする宣伝マンのスチュ
いつものように不倫相手に公衆電話から連絡した後、ふいに鳴ったベルに出てしまい…

携帯電話をキーアイテムとしてあっちこっち走り回るサスペンス「セルラー」と対角にある作品
それなりに有名なんでけっこうな人は知ってる映画ですね
個人的に上記の「セルラー」と同じくらい好きでけっこうリピート鑑賞してる一本です
まあ、企画としてけっこう思いつくのは思いつくだろうけど、実際に「ほぼ電話ボックスから動かない」映画を作る勇気はすごいわあ
シンプルすぎるゆえに作り手の技量がもろに出る内容ですが、これがまた良くできてるから感嘆せざるえない

嘘つきで見栄っぱり、他人に対しては常に横柄な態度と言動ばかりな主人公スチュ
浮気相手に携帯から電話するのはマズイってんで、いつものように公衆電話からかけようとすると、なぜかそこにピザの出前がくる
めんどくさく配達人を追い払い、電話もすますと公衆電話のベルが鳴り、おもわず受話器をとるとスチュのことを調べあげた謎の人物から脅迫めいたことを言われる
そっからはもう電話ボックスでずっと話は展開していきます
電話口の犯人はライフルで主人公の命を狙いつつ、どんどん状況が悪くなるような命令をしてくる、という内容

電話を通じての騙し騙されの会話劇をメインに、主人公の状況はどんどん悪化していく様がホントにおもしろい
電話ボックスという狭い空間での犯人と主人公のやりとり、そしてその外側で起こるアクシデントやらなんやらが折り重なりあっていってカオスっぷりが加速していってまったく飽きず、というかむしろ楽しすぎて元々が短い尺ですがあっという間に最後まで観られます

ただ唯一個人的にちょっと残念だったのは犯人が単なるサイコ野郎にしか思えないっていう点
例えば誠意のない人間は殺してもいい、ただし無関係な人間はいっさい傷つけない・・・みたいなある条件は絶対に守るような偏ってはいてもボーダーのある人格なキャラならよかったのにな、と
なんかこの犯人は自分のことを棚に上げて、やりたいことのためなら誰を巻き込んで殺してもOKみたいなところがあるのが残念
あとさすがに犯人が主人公を狙う理由が弱いのもちょっと気になる

そんなマイナス要素すら上回る楽しさでかけぬけてラストを迎えるので、まあ、そこまで深く考えなければ最高に楽しめるサスペンス映画のひとつですね

個人的評価:90点
オススメ度:売女どもマジでうるさいわあ




フォーン・ブース 予告



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2013年6月17日月曜日

ハード・ラッシュ (2012/米)

監督:バルタザール・コルマウクル
出演:マーク・ウォールバーグ / ケイト・ベッキンセイル / ジョヴァンニ・リビシ / ベン・フォスター / ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ / J・K・シモンズ / ルーカス・ハース / ディエゴ・ルナ / デヴィッド・オハラ / ウィリアム・ラッキング / オラフル・ダッリ・オラフソン / ロバート・ウォールバーグ / ジャクリーヌ・フレミング / コナー・ヒル / ブライス・マクダニエル

船による密輸の元運び屋であるクリス
義弟が失敗した運び屋としての仕事の尻拭いのため、今回限りの運び屋に復帰することになり・・・

ストーリー、アクション、演出、すべてにおいて無難にまとまっている・・・というと聞こえは悪いけど、平均的に得点の高い優等生的な作品
突出した何かやとがった要素がないから目立たないけど、観てハズレと思うことはない、はず
まわりくどい言い方をやめるなら、DVD化された時に覚えてたら手にとって観てよって感じですかね
劇場まで足を運んで観ようぜ、ってとこまで推せないのがこの作品の欠点らしい欠点かもしれません

一芸に秀でながら引退した主人公が、やむをえずにいちど限りの復帰をする・・・というアクション映画の王道レパートリーのひとつ
もちろん計画はどんどん破綻していって、そのドタバタと緊張感を味わいつつラスボスにぎゃふんと言わせちゃる的な内容です
無理せず、かといって押さえすぎずに手堅く丁寧に作られている
反面、おもしろみを犠牲にしてる部分は否めないと

それでも終盤のじゃっかんカオスな流れになっていく様子や、登場人物たちを可能な限りいかそうとしてる作りはひじょうに好感がもてるしおもしろい
個人的にはもうちょいラスボスの登場を遅くして、かつその設定に深みをもたせてほしかったかなと思うようなそうでもないような
あと、残念ってほどじゃないけど、もうちょいアクション要素があってもよかったかな

「テッド」のヒットでとりあえず日本でも公開しようという大人の事情があったのかどうか知らんけど、確かにそんなウリがなかったらキャスト的に地味すぎて勝負にならんかったかもしれんね

個人的評価:85点
オススメ度:数年後、ド派手バージョンでリメイクしたらいいかも?(そうでもないか)



ハード・ラッシュ 予告

二流小説家 シリアリスト (2013/日)

監督:猪崎宣昭
出演:上川隆也 / 片瀬那奈 / 平山あや / 小池里奈 / 黒谷友香 / 賀来千香子 / でんでん / 高橋惠子 / 長嶋一茂 / 戸田恵子 / 中村嘉葎雄 / 佐々木すみ江 / 本田博太郎 / 伊武雅刀 / 武田真治

官能小説を書いて生計をたてる売れない二流小説家の赤羽
そんな彼のもとに拘置所の死刑囚、呉井から自分の犯した事件について小説を書いてほしいと手紙が届き・・・

話のネタとしておもしろいし、実際に初めて予告をみた時に「こいつは観にいくしかねえぜ」と思って鑑賞したんですが・・・
うーん、なんというか、クソつまんないわけじゃないんだけど、なんだかなあという印象しかないまさに二流映画でしたね
感じ的には少年誌とかに連載されるようなミステリもので、いっしょに推理しながら物語を追うというより解決編がはじまってオチが分かればいいやっていうタイプの作品

女性を殺し、その頭部を切断した上で飾り付けをほどこし写真を撮る
そんなシリアルフォトキラーである死刑囚の呉井
拘置所に入れられながらも頭部を遺棄した場所や犯行の細部について語らない呉井から、自分のことを小説に書けば話をしようともちかけられた二流小説家・赤羽のお話
で、実際に会って話を進めるうちに赤羽の周りでまるで呉井が実行したかのような殺人事件がおきはじめる、と
ようするに素人探偵ものの主人公パターンが「もしも二流小説家だったら」という作品ですね

しょうじきオチ的な意味ではある登場人物が出た時に「こいつアレだよな」とすぐにピンとくるんで、先が読めてあまりおもしろくない
話の流れもつながりが悪くて、ちょっと唐突すぎる展開と、現実的とは思えないキャラのリアクションに引っかかりを感じずにいられない
なにより全体的に雰囲気がチープ
少年マンガっぽいというかラノベっぽいというか、とりあえず本格的なミステリ風な重々しい空気感はない
重々しくなるように演出としてがんばってる部分はあるけど、実を結んでない残念さはある

超展開、とまでは言わないけどラストもラストでアレだし、もともとおもしろくないものを忠実に映像化しちゃった微妙な二流映画っていう感想が一番しっくりくる一本でしたね

個人的評価:60点
オススメ度:大家の娘と被害者の妹、ヒロインの扱いすら二流



二流小説家 予告

2013年6月16日日曜日

俺はまだ本気出してないだけ (2013/日)

監督:福田雄一
出演:堤真一 / 橋本愛 / 生瀬勝久 / 山田孝之 / 濱田岳 / 水野美紀 / 石橋蓮司 / 指原莉乃 / 賀来賢人 / ムロツヨシ / 川久保拓司 / 秋元黎 / ドナルド・アッシュ / 蛭子能収 / 尾上寛之 / 小柳心 / 村松利史 / 池田成志 / 佐藤二朗

仕事を辞めて自分探しと称して家でゲームばかりやっている42歳のシズオ
自分でもマズいと思いつつ日々を過ごす中、唐突に漫画家になることを決意する

ダメ人間のダメっぷりを「痛いほど分かるわあ」と堪能する作品
内容自体もそうだけど、劇中のシズオの姿を見て「下には下がいる」という安心感をもとに勇気をもらえます
シズオ以外にも宮田や市野沢という登場人物のかかえる悩みも、それぞれに良い感じで作品のアクセントになってますね
笑えるところはおもいっきり笑えて、しめるところはキチンとしめているんで、意外にも(?)色物映画っぽくありながらエンターテインメント作品としても楽しめます

父と娘と暮らすシズオは無職で朝からゲームばかりしてる42歳
このままじゃダメだと頭では分かってはいるけどやる気がともなわない日々を送る中、唐突に漫画家になることを決意
友人の宮田に話し相手になってもらいつつ、バイト先で知り合った若者の市野沢も巻き込んで時にやる気の片鱗をみせ、時に自堕落に暮らす日常を描く
基本はシズオのダメ人間っぷりをコミカルに描きつつ、それだけじゃなく現実の厳しさの描写も差し込んでくる作りはおもしろい

とりあえず登場人物たちのキャスティングが秀逸
原作は知らないで言うのもアレですが、ホントにそれぞれのキャラがいきいきしてる
特に主人公のシズオのキャラ立ちっぷりは素敵すぎる
そしてこれは個人的なことですが、ヨシヒコ組の役者さんたちがけっこう出演していて、そんな各人がどうみてもヨシヒコの演技の延長線上な感じになってるのが楽しめましたね

甘いだけじゃない、辛いだけじゃない、運だけでも実力だけでもない厳しい現実をベースに、悲壮感の薄いダメ人間なシズオの妙な魅力に引き込まれる一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:これは普通に原作を読みたくなるわあ



俺はまだ本気出してないだけ 予告

ファインド・アウト (2012/米)

監督:エイトール・ダリア
出演:アマンダ・セイフライド / ジェニファー・カーペンター / ダニエル・サンジャタ / セバスチャン・スタン / ウェス・ベントリー / キャサリン・メーニッヒ / エミリー・ウィッカーシャム / マイケル・パレ / ニック・サーシー / ソクラティス・オットー / ジョエル・デヴィッド・ムーア / テッド・ルーニー

心に闇をかかえて何かに怯えて暮らすジル
ある日、妹のモリーが家から忽然と姿を消したことから、ジルの恐怖の過去がよみがえり・・・

主人公のおかれた状況は妄想による戯言か、それとも本当に起こっていることなのか、というわりとよくあるタイプのサスペンスミステリー
しょうじきこの手の作品は途中の流れはどう作っても、それなりに緊張感があっておもしろくできると個人的には思えますね
ただし、そのオチにかかる期待値というのはハンパないものがある、と
誰でもお手軽に作れてそこそこおもしろい話だけど、ラストしだいで大きく評価が分かれるタイプ

日々を何かに怯えて暮らすジルは、妹のモリーが忽然と家から姿を消したことに半狂乱におちいる
警察に行って事情を話しても調書をとることもされず、まったく相手にされない
ジルは過去に森の中の深い穴に監禁誘拐された経験があり、命からがら逃げきったものの犯人は捕まっていない
しかしながら当時、彼女の証言をもとに大々的に捜査した警察はなんの痕跡も見つけられず、結果、精神病患者としてジルの妄想ということになっていた・・・
そんな中で再びの事件がおこり、必死に自己流で捜索するジル、逆にジルの行動から過激な危険人物として追う警察のお話ですね

ジルパートでは小さな手がかりから犯人(?)につながる道が見えてきて、警察パートでは精神病患者認定されているジルが銃をもちだして強引に独自捜査している彼女をなんとか逮捕しようと追う
そんな展開を観てる側は事件は彼女の妄想なのか、それとも本当に起こっていることなのか揺さぶられながら楽しむ、といった感じ
単調な捜査シーンだけじゃなく、要所要所にちょっとしたカーアクションかとはさんでくるんで途中経過に関しては飽きることなく楽しめますね

で、肝心のオチですが・・・
さすがにネタバレはしないけど、個人的には微妙に「これじゃないかな」という印象が否めない
このラストはちょっと素直すぎるんじゃないかなあ
もっと複雑に絡み合って「そういうことだったのか」「おまえだったのか」というのを期待してたけど、あんまりそういうのは感じられなかった
特に最後の手紙は蛇足すぎると言わざるえない
どうせなら家に戻った気持ちのままに貫いてほしかったかな

個人的評価:75点
オススメ度:新米刑事がイケメンすぎて存在感ありすぎな件



ファインド・アウト 予告

2013年6月13日木曜日

21ジャンプストリート (2012/米)

監督:フィル・ロード / クリストファー・ミラー
出演: ジョナ・ヒル / チャニング・テイタム / ブリー・ラーソン / デイヴ・フランコ / ロブ・リグル / アイス・キューブ / ダックス・フレイム / クリス・パーネル / エリー・ケンパー / ジェイク・ジョンソン / ニック・オファーマン / ホリー・ロビンソン・ピート / ピーター・デルイーズ / ジョニー・デップ

知能派シュミットと肉体派ジェンコの新米警官ふたりは21ジャンプストリート署に異動となる
そこでふたりに高校への潜入捜査の任務が与えられ…

デップさんのドラマ版は未見、という通常業務なにわかっぷりで鑑賞しました
ドラマ版とか別段みてなくても問題なく楽しめますね
どことなく「ホットファズ」っぽいイメージで、総じて中の上といったコメディ作品かな
「テッド」みたいなコメディがもてはやされるのに、こういう普通よりはおもしろいレベルのコメディ作品が埋もれてしまっている日本の現実はひじょうにもったいないことです
まあ、すっげえおもしろいってわけじゃないけど、ヒマつぶしにはもってこいな映画

間抜けなデコボココンビ警官のシュミットとジェンコ
見た目が若いっぽいという理由だけで高校へ潜入捜査させられることに
そこで出回っている新種のドラッグの元締めをつきとめろ、というミッションだがふたりは調子にのって高校生活をエンジョイしはじめる、という流れ
潜入先の高校でもふたりに与えられた高校生としての経歴をうっかり逆に演じてしまったり、オタク属性なシュミットが意外にもどんどん人気者になっていき、逆にモテ属性なジェンコはどんどんうだつがあがらなくなっていく

最初はコメディとしてもかなり微妙なネタばかりで、いきおい的にもイマイチはじけない
でもオタクなシュミットがはっちゃけはじめてからドタバタコメディが真価を発揮しだしますね
知性派なシュミットなはずがどんどんノリだけでバカをやるキャラになっていく様が楽しい
展開的にも主人公ふたりがあこがれてた警察もの映画の世界にあるカーチェイス、爆発、銃撃戦という派手な要素を経験することに

ホントにコメディ作品としては普通におもしろい、んですがちょっと個人的に気になることが
それはドタバタコメディはいいんだけど、中途半端にシリアス要素が入ってくるのが引っかかる
バカ騒ぎの中で普通に人がひどい死に方をしちゃってるシーンとか、あまりに軽く描かれすぎてて「え?人が死んでるのに、そんな軽いノリでいいの?」と思わざるえない
そこはファンタジーな感じで普通なら死んでるとこだけど、おちゃらけた感じで怪我ですんじゃってる描写でよかったんじゃないかな、と

個人的評価:75点
オススメ度:謎の韓国キリスト押しが理解不能




21ジャンプストリート 予告


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2013年6月10日月曜日

エンド・オブ・ホワイトハウス (2013/米)

監督:アントワン・フークア
出演:ジェラルド・バトラー / アーロン・エッカート / モーガン・フリーマン / アンジェラ・バセット / ロバート・フォースター / コール・ハウザー / フィンリー・ジェイコブセン / アシュレイ・ジャッド / メリッサ・レオ / ディラン・マクダーモット / ラダ・ミッチェル / リック・ユーン / フィル・オースティン

所属不明の戦闘機によりホワイトハウスは奇襲攻撃を受け、同時に勃発したテロにより陥落してしまう
元シークレット・サービスのマイクはホワイトハウスに潜入した唯一の存在として事態に対処する

あまり深いことを考えずにアクション映画はアクション映画として楽しめる、という自信がある私でも「は?」とツッコミを入れたくなる作品でした
その伏線とかキャラっていかすことなく消化しちゃっていいの?というのがほとんど
とりあえず盛り上がるのはホントに序盤のホワイトハウス陥落までで、びっくりすくらい話が進むほどつまらなくなっていきます
「おまえ難攻不落のホワイトハウスが陥落ってネタやりたかっただけじゃねえの」と言わざるえない

話的にはアクション映画の典型的ストーリーパターンのひとつ、「テロ組織によって占拠された施設で、人質を救出しつつ単身戦いを挑む」というもの
占拠された施設を変えるだけで新作を作れる万能アクション映画設定ですね
まあ、それはそれでつまらなくなりすぎない安心のカレーみたいなパターンなんですが、さすがにこの作品は作りがヘタすぎる
まずい、まではいかないけどよくこんなおいしくないカレーを作れたもんだ、と

まずあまりに簡単に領空侵犯してホワイトハウスを攻撃する戦闘機に違和感をおぼえるところから始まります
さらにあっさりテロ組織によって陥落するホワイトハウスとか、さすがにメリケンさんたちはそこまで無能じゃねえだろ、と
さらに主人公は元シークレット・サービスなんですが、”元”がつくのに現在のホワイトハウスの設備の暗証番号やらセキュリティ要素を把握してるとかおかしいだろ
伏線的にも大統領の息子の扱いとか、もっと物語を盛り上げる要素として活用できたはず
主人公の恋人もなんのために出てきたか意味不明
なにより冒頭で主人公がシークレット・サービスだった時の話を描くのはいいけど、この描写ってあんまり本編にいかされてないよね

とりあえずホワイトハウスが陥落するまでの流れはツッコミどころはあるけど楽しめる
だけど、本編の救出ミッションがはじまるや単に屋内で戦う普通のアクション映画になりさがってる感じ
舞台はホワイトハウスなんだぜ、ってのをもっと感じさせてほしかったかな

個人的評価:65点
オススメ度:すっごいヤバイ状況なのに危機感があまりない



エンド・オブ・ホワイトハウス 予告

G.I.ジョー バック2リベンジ (2013/米)

監督:ジョン・M・チュウ
出演:チャニング・テイタム / ブルース・ウィリス / ドウェイン・ジョンソン / エイドリアン・パリッキ / レイ・スティーブンソン / D・J・コトローナ / イ・ビョンホン / レイ・パーク / ジョナサン・プライス / RZA / エロディ・ヤング / ファラン・タイール / アーノルド・ヴォスルー / ウォルトン・ゴギンズ / ジョゼフ・マゼロ / ジョー・クレスト / ジェームズ・カーヴィル / ロバート・カトリーニ / ライアン・ハンセン

戦闘のエキスパートたちで組織されたG.i.ジョー
コブラの残党の罠によりG.I.ジョーは壊滅の危機をむかえてしまう

スタイリッシュB級アクション、カッコイイけどB級くささはぬぐえない、そんなところが魅力な作品
確かに最初は「これだよ!これ」というくらいに期待通りのアクションが展開しますね
なんだけど、なんかどんどん流れがおかしくなっていって、彼我戦力のバランスが明らかにおかしくなってからはしょうじきイマイチ
ヒーローとヒールのパワーバランスは大事だなと再認識させてくれる作品でした

コブラの残党によりG.I.ジョーはほぼ壊滅
さらにアメリカに対する反逆者集団のレッテルまではられてしまう
なんとか生き残った彼らは再結集し、力を取り戻した悪の組織コブラの野望を砕くことができるのか
という続編としては王道なストーリー
だけどなんか作りが雑なんですよね、特に後半
B級だから許される、というギリギリのところで作ってる分には楽しめるんだけど、さすがに雑さを許容できる限界ってのはあると思うんだ

ヒーロー側はメインの主人公たち3人+忍者3人、さらにおまけで初代ジョー(とその仲間たち)
対するヒール側のコブラは戦闘には加わらない首領、変装の名人、虫爆弾使い、その他の戦闘員のみなさん
コブラ側でまともにバトれるのが虫爆弾使いだけってのはどうかと思うんだぜ?
しかもこのファイヤーフライのおっさん、存在じたいが微妙な上に実際の対人戦闘になると普通に体をはって戦うだけで、その爆弾使いっぷりを披露しないし

ヒール勢が貧弱すぎると、ヒーロー勢がいくらがんばっても輝かないんですよ
いくら魅力的なキャラたちでも戦闘員あいてなだけじゃ、なんともパッとしないでしょ
最後の1プッシュで爆発しちゃうのもさすがに投げやりすぎるわ
というかなによりも作品として、初代ジョーVS最強の敵(ストームシャドー)みたいな煽りやめてくれませんかね
いや、マジでそんな煽りとか実際に観たらガッカリするだけですから

個人的評価:70点
オススメ度:ストームシャドーさん、やられっぱなしじゃん



G.I.ジョー バック2リベンジ 予告

2013年6月9日日曜日

ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮 (2012/デンマーク・スウェーデン・チェコ)

監督:ニコライ・アーセル
出演:マッツ・ミケルセン / アリシア・ヴィキャンデル / ミケル・ボー・フォルスゴー / トリーネ・ディアホルム / ダヴィッド・デンシク / トーマス・W・ガブリエルソン / サイロン・メルヴィル / ベント・マイディング / ハリエット・ウォルター / ローラ・ブロ

1700年代後半のデンマーク、王妃としてクリスチャン7世のもとに嫁いだカトリーネ
王妃はけして円満ではない夫婦生活が続く中、気むずかしい王が唯一心を許す侍医と出会い・・・

王の侍医という身分違いの男との不倫ドラマ、といえばすっごい単純な説明になりますが、けっこう人間ドラマや政治劇の要素も入っていておもしろい
それでいてそこまで複雑な要素はなく、必要以上に無駄に重厚さもないので観ていても疲れることはない
あまり派手な部分はないけど、かえってそんなところがよい方向に作用して丁寧に作られているという印象が強くなってますね

精神的な問題を抱えてまるで子供のような王、そんな性格なところが無礼としかみえない伴侶に苦悩する王妃
最低限な王族のつとめを事務的におこなうだけの王妃に、王との関係は完全に冷えきっている
ある日、王の長期外遊を期に侍医を雇うことになり、それに町医者のヨハンが選ばれどんどん気むずかし屋なクリスチャンと仲を深めていき、同様にカトリーネともただならぬ関係におちいっていく、と
ひらたく言えば友情で結ばれた王とヨハン、そこにひとりの王妃との愛がうんぬんみたいな王宮青春(?)ロマンスドラマ、なのかな

旧来の民衆に優しくない保守的な枢密院に対し、ヨハンは王を励まして国の改革を進める一方で、どんどんと王妃との関係が深みにはまっていく
そんな不倫物語の外郭にある部分の要素が良い味付けになっていて、思ってた以上に楽しめる
ヨハンもひとりの男ゆえに野心も抑えきれなくなるし、立場を弱体化される枢密院や貴族、軍はおもしろくない
友情、愛情、政治、それぞれのドラマが絡み合う作りこそみどころですね

とりあえず過剰な演出がなく、世界観も画的に違和感なく描けてます
そこに丁寧な役者さんたちの演技が加わって、全体的なクオリティを押し上げてる感じ
こういう異国の話に興味がないって人以外だったらけっこう楽しめる内容だと思う
なんか観たことで教養をえた気分にもなれるしね、なんとなくだけど

個人的評価:90点
オススメ度:マジで役者さんたちの演技はすごいわ



ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮 予告

2013年6月6日木曜日

ドラえもん おばあちゃんの思い出 (2000/日)

監督:渡辺歩
出演:大山のぶ代 / 小原乃梨子 / 高村章子 / 千々松幸子 / 野村道子 / たてかべ和也 / 肝付兼太 / 大本眞基子 / 佐久間レイ / くじら / 関智一

ある日、のび太はゴミ捨て場でボロボロの熊のぬいぐるみを見つける
それは長い間ほうっておいていたけれど、とても大切な思い出のものだった

ドラえもん屈指の名エピソードですね
あまりアニメとかくわしくない人でも「ドラえもんでのび太のおばあちゃんの話」と言われれば分かるレベルの認知度はあるんじゃないですかね
で、個人的にももちろん観たことはあるこの作品、久しぶりに鑑賞したくなってDVDを引っ張り出してきました
さすがに細部まで記憶に残っていなかったので、ある意味で新鮮な感じ
話としておもしろい、というのはもちろんですがいま観てみるとその脚本の完成度のすごさに驚かざるえない

物置の整理のためにママに捨てられてしまったのび太の大切な熊のぬいぐるみ
偶然にも見つけて家に持ち帰ったのび太は、そのぬいぐるみにまつわるおばあちゃんのことを思い出し、タイムマシンでひとめだけでも生前のおばあちゃんの姿を見たいと強く思い…
のび太が過去にいって自分自身の幼少期の思い出に「懐かしい」と感じる、さいしょこそ単純にそんな内容ですが、とにもかくにも細かい伏線の張り方と回収の仕方とテンポが秀逸すぎる
冒頭の花火の燃えカスからはじまり、幼少期のジャイアン&スネ夫の描写、なにげないシーンですがきちんとあとあとに意味を持つ作りの丁寧さが良いですね

短編作品という尺の中でこれだけの密度のある内容を描ける、ってのは今でも他にそうそうないんじゃないと思う
密度はあるけど濃すぎない、短編なのにすっごい「観たわあ」という満足感が得られます
30分の中に起承転結あり、さらに感情をゆさぶってきて泣ける要素まで盛り込んだ贅沢なこの一品、どうですか奥さん
それはさておき、万が一にも未鑑賞な方がいるなら観て損はない一本ですね
アニメ&ドラえもん嫌いっていうなら別ですが

個人的評価:95点
オススメ度:幼少期のスネ夫、関智一が演ってたのね






2013年6月3日月曜日

グランド・マスター (2013/香港)

監督:ウォン・カーウァイ
出演:トニー・レオン / チャン・ツィイー / チャン・チェン / チャン・ジン / ワン・チンシアン / ソン・ヘギョ / チャオ・ベンシャン / シャオ・シェンヤン / ユエン・ウーピン / ラウ・カーウィン / チャン・チーラム / カン・リー

1930年代の中国、大きく南北に流派の分かれた武術の使い手が佛山で手を合わせる
折しも日中戦争の勃発もあいまり、時代は大きく変わろうとしていた

様々な達人によるスタイリッシュカンフーアクション、誰もがそれを期待して観にいくでしょ、これ
そんな要素もあるんですが、でも実際は「スキル」としての武術そのものにスポットをあてた時代と人による武術ドラマでしたね
着眼点やあえて武術そのものの映画を撮ろうっていう姿勢はおもしろいし、個人的にはけっこうそんな気概も嫌いじゃない
だけど、いや、マジでこんな内容を期待して観にいく人とかいねえんじゃねえですかね

葉問は南の代表として戦うことになる
彼を認める者もいれば疎む者もいる中、時代は日中戦争勃発により大きく変化の渦にのみこまれていく
そんな中で継承問題をふくめ各流派はそれぞれ託された人物とともに散り散りに
堅実に流派を継承する者、変革を求める者、守る者、守れなかった者、違う道に利用する者・・・時代の流れと人の生きざまにより武術のありようも変化、あるいはありのままに継承されていく、と

最初の雨の中での戦いから、葉問に対する餞別バトルあたりまではスタイリッシュカンフーアクションっぽくて、観てる人も「かっちょいいぜ!」と楽しめると思う
そこから日中戦争により時代の流れパートがはじまると、とたんに「ん?」とちょっとおかしいなと感じるでしょう
さらに葉問さんの影がうすくなり、ヒロイン(?)のルオメイさんの物語がメインになってきて、アクション要素はしばしお休み
それでも思い出したかのようにいきなりバトルが始まるんで見所はないわけじゃない、かな

とりあえず話はどんどんルオメイさんよりになっていくし、葉問さんはすっかりわき役ポジションに
さらにカミソリさんにいたってはオマケとしか言いようがない立ち位置で、インパクトがあるだけに扱いがもったいない
最後なんかカミソリさん、どうみてもギャグキャラっぽくなってるし
それでいて主人公はあくまで「武術」そのもののため、全体的にカンフーアクションとしても、人間ドラマとしても中途半端になってる感は否めない

個人的評価:60点
オススメ度:最初っからルオメイさんメインで作りなおしたらいいんじゃないですかね



グランド・マスター 予告

バレット (2012/米)

監督:ウォルター・ヒル
出演:シルヴェスター・スタローン / サン・カン / サラ・シャヒ / アデウェール・アキノエ・アグバジェ / クリスチャン・スレーター / ジェイソン・モモア / ジョン・セダ / ホルト・マッカラニー / ブライアン・バン・ホルト / ヴェロニカ・ロサティ / デイン・ローデス

ベテランの殺し屋ジミーは相棒を殺されてしまう
一方、刑事のテイラーは追っている事件とジミーの敵が共通することからふたりはやむをえず協力することになり・・・

うん、ホントによくあるデコボココンビもののアクションですね
ストーリーもビックリするくらい古くさくてありふれていて、しょうじき主演にそえられたスタローンがなければ成り立たない作品といっても過言じゃないかな
スタローンの代わりにジェイソン・ステイサムあたりのありがちキャスティングとかしてたら、間違いなく有象無象のアクション作品の山に埋もれるしかなかった映画でしょう

ベテランの殺し屋ジミーは相棒を殺された熱い怒りを心に、冷徹に関わった者を殺していく
一方でテイラーは携帯やPCを扱った情報戦で役立つが、あくまで法による裁きを主張する甘ちゃん
黒幕の下に中ボスが数人いて、情報を得てはぶっ殺していくという単純作業
で、真ボスと来いよベネットしてしめる、という往年のスタローンアクションっていえばそうなのかもしれませんね

だけどそこはそれ、けっこう制作側は「いま現在の」スタローンがかっこよく見えるポイントをよく分かってるからおもしろい
役柄にしても立ち居振る舞いにしても、「そうそう、いまのスタローンの見せ方はそうだよな」と納得のかっこよさ
「エクスペンダブルズ」ではちょっと残念なオーラを感じずにいられなかったけど、この作品を観てまだまだスタローン御大の威光は鈍ってねえな、と再認識せざるえないわ

なにはともあれスタローン、まさしくザ・スタローン
純度100%のスタローン映画ですね
ええ、はい、映画本編なんざオマケですんで期待してはいけません、ホント、マジで

個人的評価:75点
オススメ度:真ボスはいいけど、黒幕の小者っぷりがさすがにひどいだろ



バレット 予告

2013年6月2日日曜日

オブリビオン (2013/米)

監督:ジョセフ・コシンスキー
出演:トム・クルーズ / モーガン・フリーマン / オルガ・キュリレンコ / アンドレア・ライズボロー / ニコライ・コスター・ワルドー / メリッサ・レオ / ゾーイ・ベル

スカヴという謎の存在により世界は侵略され、からくも
人類は勝利するが地球は人の住めない状態になってしまう
地球外に脱出するため海水を汲み上げるプラントを警護するドローンのメンテをするジャックは、ある日、旧型の宇宙船が墜落する現場に居合わせ・・・

どことなくひとむかし前のSF小説のような設定、というのが第一印象
最初はイマイチかなと思ってたけど、観ているとけっこう個人的にSF作品としてけっこう楽しめるものでしたね
ツッコミどころはあるものの、話的にはまあまあ作り込まれてる方だと思います
主人公がメンテナンス要員じゃなく、もっと超人的なアピールをした方がいいんじゃないかとか、敵の目的はけっきょくなんだったんだよとか、まあそこら辺に目をつぶればけっこう楽しめる

謎の敵に勝利するものの争いの果てにボロボロになった地球
すでに人類は宇宙ステーションのような場所に移住しており、本格的に地球圏を離れるために海水をすべてプラントに汲み上げる作業に移っていた
地球に残り、敵であるスカヴの残党からプラントを守る無人防衛機ドローンを管理する主人公とそのパートナー
ふたりは間近にせまった地球脱出の日を前に、突如として墜落してきた宇宙船の問題に直面する
最初に世界観を与えられ、そこでいろいろと起こることがらから主人公は問題の核心に近づいていく、という感じの作品
劇中で大戦争やらそういったスペクタクル的なものがあるタイプではない

あまり派手さはない小粒で佳作なSF作品って感じは否めないけど、無理して派手派手なものにして大味になってないだけいいかもしれません
個人的にはこういう地味な作品は嫌いじゃないけど、まあ、しょうじきあまり記憶に残る映画にはならんかもしれんね
ホントに個人的にはおもしろいとは思うけど、だからといって誰かにすすめられるようなものでもないというか

主人公がドローンを率いるスーパーソルジャーみたいな存在の方が物語として成り立ってたんじゃないか、とも思うのは確か
そうすれば後々の展開的に言葉で説明されるより「ああ、そうか」と納得できたかも
あとはいろんなSF要素を取り入れるのはいいけど、もうちょっとまとまりをつけた方が・・・って、まるでつまらない作品にけちをつけてるみたいですね
でも個人的には好きですよ、この映画、いや、マジで

個人的評価:85点
オススメ度:どっちかといえばフォールアウトやね



オブリビオン 予告

リアル~完全なる首長竜の日~ (2013/日)

監督:黒沢清
出演:佐藤健 / 綾瀬はるか / 中谷美紀 / オダギリジョー / 染谷将太 / 堀部圭亮 / 松重豊 / 小泉今日子

自殺未遂により昏睡状態となった恋人を救うため、その意識化に入るセンシングという技術にたよる浩市
センシングは成功し、恋人と仮想世界で再会した浩市はそこで首長竜の画を探してほしいと言われ・・・

話としてのネタ、オチともにけっこう好みで悪くない
悪くないんだけど、なんというかクドいんですよね
しょうじきそこまで繰り返して真相を描くと、ホントに「いや、もう分かったから終わろうよ」と言いたくなる
さすがに最終的なオチまでは読めないけど、おおざっぱなネタはけっこう序盤で把握できてしまうのもちょっと、ね
「どうせ、こういう話なんだろ」という思いながら観てる物語ほど退屈なものはないかもしれんね

仮想世界で恋人の意識とつながる主人公
なんとか現実に引き戻そうと仮想および現実世界で、彼女の目覚める鍵を探しまわる
センシングという相手の意識に入り込む(共有する?)技術の副作用により、主人公までも恋人の意識を現実世界にまで引きずって幻覚が見えてしまう・・・うん、まあ、それはそれでいいんだけど、もうちょっとうまく描いてほしかったかな
観てれば分かるけど、明らかに・・・だよねって感じで設定が読めてしまうのはいただけない

それでもその先があって、ことの真相が分かってくる解明編があるのはいいですね
ホントにこの作品って「基本は良いんだけど、ただ・・・」って言いたくなる
クライマックスにしても「お、解決したか」と思ったらもう一段あり、という展開も悪くはない
ただ、同じ問題を繰り返してるだけなんで、そこまで繰り返さなくてもいいよ、と
無駄に物語をこねくりまわしすぎて、それがマイナス方向に作用しちゃってるかな

つまらなくはない
ホントにつまらなくはないんだけど「そりゃねえだろ」と言いたくなる一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:もう佐藤健は変身しちゃえばいいんじゃないですかね





リアル~完全なる首長竜の日~ 予告