2013年10月31日木曜日

10月のこれ一本

Oh...どうにも世間様は11月に突入してるってのに、10月のまとめみたいのを書いてなかった事実に遅まきながら気づく
まあ、なんだ、この記事じたいが自分の中で「その月に印象に残った映画」をメモするていどの存在なんで、それこそチラシの裏にでも書いておけばいいって了見なんですけどね

それはそれとして、今月(10月)は面白い作品が多く「インポッシブル」「エリジウム」あたりも捨てがたいですが、あえて選ぶなら「サイド・エフェクト」ですね
難解そうでそうでもなく、起承転結しっかりしてる上にどこか大作くさくないのが個人的に好み
ホントにサスペンス系の海外ドラマとか大好きな日本人にとって、かなり楽しめる映画だと思いますね

って、ところでテキトーにまとめたところで今回はこれにて
11月は「大統領の料理人」からスタートして、「42」「SPEC」「2ガンズ」「キャリー」「清洲会議」…いよいよ年末に向けて面白そうな作品が大挙してきそうな予感で楽しみです

2013年10月27日日曜日

グランド・イリュージョン (2013/米)

監督:ルイ・レテリエ
出演:ジェシー・アイゼンバーグ / マーク・ラファロ / ウッディ・ハレルソン / メラニー・ロラン / アイラ・フィッシャー / デイブ・フランコ / コモン / マイケル・ケイン / モーガン・フリーマン

何者かに集められた4人のストリート・マジシャンたち
一年後、4人はフォー・ホースメンと名乗りマジックで銀行から金を盗み出すショーを行う

騙すとか騙されるとか、しょうじきそっち方面を期待してると「うん?」ってなるかもしれません
もっと肩の力を抜いて観る怪盗エンターテインメント、ルパンみたいな感じの作品と思ってた方がいいかも
トリックじたいも後出しじゃんけんだし、素直に展開されるショーを楽しんだ者勝ちですね
そういう意味でそこまで内容的には魅力はないけど、スタイリッシュでテンポよく展開するマジシャンたちの手口が爽快でした

ステージ上から離れた銀行の金庫の金を盗み出す、そんなショーを行う4人のマジシャン”フォー・ホースメン”
ショーは成功するものの、FBIやインターポールから追われることになってしまう
そんな捜査を得意なマジックでかわしつつ、捜査されている状況をもショーのひとつに取り入れてはじめる
といった感じの作品
日本人的には有名なアニメ作品であるルパン三世みたいなもんだと伝えるのが、乱暴だけどいちばんしっくりくるかもしれません

最初こそ「どんな騙し要素があるのかな?いっちょ見破ってやるぜ」って感じで描写される要素を検討しながら観てましたが、途中から明らかに「あ、これ単純にショーを楽しむ系だな」と分かります
トリックも次々に明らかになっていくし、しょうじきそれのどれもが後出しじゃんけんみたいな感じで、そこまでねられた仕掛けじゃないし

そんなこんなで結局のところ、頭をからっぽにして観るハリウッド的な派手作品好きな人にはかなり向いてる一本と言えるかもしれません
個人的には派手さで誤魔化してはいるけど、ちょっと内容そのものはデキの良い海外ドラマレベルかなという感が否めませんでしたが

個人的評価:75点
オススメ度:ぶっちゃけ誰が裏で糸引いてても成り立つオチだよね




グランド・イリュージョン 予告

蠢動 (2013/日)

監督:三上康雄
出演:平岳大 / 若林豪 / 目黒祐樹 / 中原丈雄 / さとう珠緒 / 栗塚旭 / 脇崎智史 / 細川純一 / 芝本正 / 楠年明 / 増田久美子

因幡藩につかわされた剣術指南役の松宮に藩の内情を探っている疑いがあった
一方、他藩へ剣術修行の願いをでる若き藩士の香川は松宮の許しをえたいものの心象が悪く・・・

時代劇エンターテインメントでもなく、時代劇風でもないホントに古き良き頃の時代劇といった感じでした
というほど時代劇に精通してるわけじゃないけど、ここまで今時の娯楽性事情に媚びない作りは個人的に好み
中途半端な横やりを排除し、自分がおもしろいと思うものを貫いて撮った力強さみたいのを感じずにいられません

藩が節制によって地道に隠し通してため込んだ資産、それを公儀からつかわされた剣術指南役にかぎつけられてしまう
城代の荒木と家老の舟瀬は藩としてこの問題に頭を抱える
一方、剣の実力もある若き藩士の香川は師範の原田に修行の願いをだすが、これには若宮の許しがいる
しかし、若宮の香川に対する印象はよくなかった
という中、藩の抱える問題と香川たち若き藩士たちのドラマが平行して描かれていく、と
で、それぞれの運命みたいのが収束していって・・・みたいなストーリー

登場人物それぞれの想いと皮肉な展開になっていく状況、それを地味すぎず過剰すぎずの良い安定感で描いてますね
BGMもほぼ環境音だけで、場面や人物で描きたい部分は画面から読みとるような作りになってて楽しめた
悲しい音楽がかかれば「そういう心情(シーン)なんだな」と自動的に感じるような作品ではなく、あくまで察することを楽しむものになってますね

ちゃんとクライマックスは盛り上げてくるし、全体的に泥臭さはあるけど斬りあいの場面も魅入るものがあります
それでもちょっと気になるのがじゃっかん一部の、特に若い役者さんの演技が不安定なところがある感じ
というかベテラン勢の超絶安定感の反動もあるだろうから難しいかもしれないけど、そこら辺について名優に負けない若手がそろってれば完璧だったかもしれません

と、不満なところもあることはありますが、現代では久々に純度の高い時代劇を観られて楽しませてもらいました

個人的評価:80点
オススメ度:原田さんのかっこよさの株の上がりっぷりは異常




蠢動 予告

2013年10月21日月曜日

サイド・エフェクト (2013/米)

監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ジュード・ロウ / ルーニー・マーラ / キャサリン・ゼタ・ジョーンズ / チャニング・テイタム / アン・ダウド / ヴィネッサ・ショー / カルメン・ペラエス / マリン・アイルランド / ポリー・ドレイパー / ジェームズ・マルティネス / メイミー・ガマー / ケイティ・ロウズ / デヴィッド・コスタビル

出所した夫をむかえた妻のエミリーは、ある時、急に車を発進させ壁に突っ込ませてしまう
彼女を看た精神科医のジョンは相談に乗るとともに鬱の薬を処方するが、副作用の問題が起こり・・・

前半、中盤、後半と観る場面によってホントに作品の印象が異なる
なんていうか作り手の手のひらの上でうまく転がらされてる感が心地よい、個人的にそう感じずにいられない珍しい作品でしたね
かなり楽しめたゆえにしょうじきあまり深く書きたくない、そんなもどかしさでいっぱいです

出所してきた夫と幸せな暮らしがもどるかと思われたが、妻のエミリーに唐突に精神的な不安定さがあらわれてしまう
彼女のセラピーを受け持つこととなった精神科医のジョンは、過去にもエミリーは鬱の状態にあったことを知り、薬を処方していく
そんな薬を飲みつつ、夫の社会復帰へ協力するためにがんばるエミリーだったが、症状は悪化していき同時に薬の副作用にも悩まされる日々が続いてしまう
と、まあ、そんな話だってことでひとつ
ストーリー的にはこれ以上は語らない方が楽しめると思います

たいがいこういった作品では抽象的なラストを臭わす、「指針はしめすけどあとは観た人が判断すれば?」エンドになりがちだけど、この映画ではちゃんと最後まで描ききってるからおもしろい
途中途中で「ああ、そういう展開ね。じゃあ、あんな感じで終わるのかな」と予想していると、その先その先ときちんと描いてくれて、広げた風呂敷を店にでも並べるのかってくらいきちんとたたんでくれたのがうれしい
昨今の同じ系統の映画だと、けっこうちゃんと終わらせない打ち切るようなオチが多い中、きちんと最後まで語り尽くして作ってくれると逆に新鮮ですね

まあ、そんな感じでとりあえず「騙されたと思って観てみればいい」としか言いようのない一本でしたね

個人的評価:95点
オススメ度:自信ある自覚にみちみちてるわ




サイド・エフェクト 予告


※できるなら、この予告を見ずに本編を鑑賞することを個人的に”強く”おすすめします。


人類資金 (2013/日)

監督:阪本順治
出演:佐藤浩市 / 香取慎吾 / 森山未來 / 観月ありさ / 石橋蓮司 / 豊川悦司 / 寺島進 / 三浦誠己 / 岸部一徳 / オダギリジョー / ユ・ジテ / ヴィンセント・ギャロ / 仲代達矢

旧日本軍によって隠された莫大な金塊M資金を融資するという詐欺をはたらいていた真舟
しかし、そんな彼に本当にM資金を有する財団からコンタクトがあり…

上映開始のだいぶ前からバンバンCMを流し、これが今の日本映画界における大作っぽい印象を与えてるけど、実際にこれを撮った人にとってそれは本望だったのかな
私の周りにも「邦画とか洋画に比べて迫力ないし、つまんないから観ない」って人がいるんですが、そりゃこんな映画に引っかかって「これが邦画」だと思い込んで観ちゃったらそうも思うわな
ただでさえ一般的に映画館まで足を運ぶ人はそう多くないだろうし、たまの休日に大切な人や家族と「いまCMでけっこう流れてるから面白いのかな?」とこの作品をチョイスしようものなら邦画嫌いにもならざるえないでしょうね
もう、ホント、それくらいひどい

時価10兆円の隠し資産であるM資金
それを運用する財団の内輪もめに巻き込まれた詐欺師の真舟は、その詐欺テクニックで10兆円をだましとってほしいと謎の男から持ちかけられる
という流れから、天才詐欺師が口八丁手八丁で世界的な巨大財団を相手に頭脳戦を…というマネーゲームものかと思ってたんですが、ね…
なんというか実際の内容はしょうじき支離滅裂で、どうしようもなくしょぼいアクションとコント演技で投げやりに作られてる「よく分からん話」な作品です

ホントに言い過ぎでもなんでもなく、どこのシーンを切り取ってみても画面的な安っぽさが隠しきれなくてコントにしかみえない
やる気のかけらも見えない外国人エキストラ、凄みのまったく伝わってこない財団、加えて日本人の役者さんの中にも「そりゃねえよ」って演技をする人が…
莫大な金、世界をマネーゲームで牛耳る凄い財団、という設定だけで大作を気取った中身のまったくないストーリーとか、「なんで今、こんな展開になってんの?」と話の流れが分からない
どうでもいい所で名のある役者さんを使ったり、配役にも謎が多い

けっこうクソ映画に耐久性はある方だと自認してたけど、「ああ、はやく終わんねえかな」と心の底から本気で思ってしまった一本でした

個人的評価:20点
オススメ度:ぜったい命を狙われるだろ、というキャラをスルーしてくれる財団の謎殺人基準




人類資金 予告

2013年10月20日日曜日

ダイアナ (2013/英)

監督:オリバー・ヒルシュビーゲル
出演:ナオミ・ワッツ / ナビーン・アンドリュース / ダグラス・ホッジ / ジェラルディン・ジェームズ / チャールズ・エドワーズ / キャス・アンバー / ジュリエット・スティーブンソン

チャールズ皇太子との別居が話題になっているダイアナ妃
そんなある日、ダイアナは魅力的な心臓外科医と出会い・・・

王室のどろどろした部分やらをからめつつ、素顔的なところをドラマとして描いた映画かな、と思ってたらなんともオーソドックスな立場のある主人公のロマンスものでした
超セレブな暮らしをしてきた女と、けっこう庶民派なところがある男の恋模様みたいな感じですね
有名人ゆえにその恋路には障害がつきもので、そこら辺で恋人とすったもんだありつつ「やっぱり愛してる」みたいな・・・まあ、ホントによくある話のダイアナ主人公版

チャールズ皇太子と別居し、運命的に出会った心臓外科医と恋におちるダイアナ
世界の人々を相手にした務めを自分なりにしていく中、プライベートでは少女のような恋に安らぎを感じていくさまを描く、と
世界の誰もが知っている女性としての顔と、ひとりの女としてちょっと天然が入った恋の様子をドラマにしてるのはおもしろい
だけど、なんていうか全体的に淡泊な印象は否めないかな

とりあえず妃としての世界に向けて働きかけていくパートが思った以上に描写的に補足ていどしかないのが気になりました
ダイアナとか超有名人なんだから、この映画を観るんだったら公の顔は知ってて当たり前だろという制作スタンスなのかもしれませんね
ゆえにあまり知識がないとプライベート部分とのギャップをあまり楽しめないどころか、この作品じたいに魅力を感じることができないかもしれません

あと肝心の恋愛パートもなんか中途半端
情熱的で本格的な男と女のロマンスに徹しているっていうでもなく、かといってコミカルに描いてるでもなく、なんかどっちつかずな感じで総じて淡々と恋愛要素を消化してるっていう印象を受けました
個人的にはもっとプライベート部分をコミカルにして、世界のダイアナという常識としてみんな知ってるだろう部分ももっと丁寧に描けばひとつの作品の世界観として完成したんじゃなかろうか、と思わざるえない

主人公のダイアナとしての演技だけが良かった感じなそんな一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:皇太子とかパパラッチの部分を思ったよりつっこんで描いてないのも物足りない



ダイアナ 予告

インポッシブル (2012/スペイン)

監督:J・A・バヨナ
出演:ナオミ・ワッツ / ユアン・マクレガー / トム・ホランド / ジェラルディン・チャップリン / サミュエル・ジョスリン / オークリー・ペンダーガスト

夫と3人の息子たちとともにタイの浜辺にあるリゾート地にきたマリア
一家がプールで楽しく過ごす中、突如として巨大な津波が襲いかかり・・・

なんの前触れもなく襲いかかってきた巨大な津波に引き裂かれる家族、そんな自然災害ものなんて今どきテレビの再現ドラマでもよくあるテーマ
だけど、そんなよくあるって部分をふまえた上でも上映中に「がんばれ」と心から応援する感情がわきあがってきます
個人的にこんなに感情移入して主人公を励ました作品はないかもしれん

クリスマス休暇でタイのリゾート地にきたマリアと夫、そして3人の息子たち
巨大津波の発生によりすべてを飲み込み、引き裂き、マリアと息子のルーカスを残し、家族は散り散りになってしまう
いつ再び襲いくるかもしれない災害におびえ、大けがをおし、幼い被災者に手をさしのべつつもマリアとルーカスは懸命に生き延びようと前に進む・・・
という導入がありつつ、最初こそサバイバルものかなって印象だったけど、あくまで自然災害に対するマリアたち家族の物語になってますね

序盤のこれでもか、ってくらいの悲痛な展開に「おいおい、これラストちゃんと救われてくれよな」とのっけから作品に感情をもっていかれました
たいがいこういう作品では自然災害の描写が妙にビジュアル的に美しい方向の凄まじい感じに描かれるけど、この映画ではホントに凄惨な印象しかない
加えて痛々しくてしかたないけど、スクリーンから目を離すことができない力強さもありましたね

自然災害の凶暴さ、現場の混乱による人災、そんな中にもある人の暖かさと、とにかくマリアたちにおこる出来事を中心に時に厳しく時に優しくドラマをつづっていくのが良い
救われない描写が続く中で一筋の光明みたいな感動的なシーンもあり、いい感じで感情的にも塞がりっぱなしにならないから助かります
難を言えばもうちょっとラストに露骨に泣きを誘う過剰さがあってもいいかな、と思えなくもないけどまあ、これはこれで過剰演出すぎない感じが良いのかもしれませんね

ネタバレ回避のためにマリアたちがどうなるかは語れませんが、もうラストは「こいよ!こいよ!」とずっと励ましっぱなしな一本でした

個人的評価:95点
オススメ度:家族の影にうもれてる人たちのことも忘れてない姿勢は好印象




インポッシブル 予告

2013年10月14日月曜日

おしん (2013/日)

監督:冨樫森
出演:濱田ここね / 上戸彩 / 岸本加世子 / 井頭愛海 / 小林綾子 / 満島真之介 / 乃木涼介 / 吉村実子 / ガッツ石松 / 稲垣吾郎 / 泉ピン子

明治40年、雪国の貧しい家で育った7歳の幼い女の子、おしん
嫌がるおしんをよそに家族が食べていくために1年の奉公に出されることになり・・・

国民的な超有名ドラマを映画でリメイク、もとが長い物語ゆえに仕方ないかもしれませんがかなり駆け足で描かれてましたね
個人的に元のドラマ版は観てなかったですが、それでもかなり駆け足で重要な部分だけ描き、そぎ落とせるだけそぎ落としている印象を受けました
全体的に溜めが足りないために、そこだけ観れば確かに良いシーンだし「いい話だな」とも思え、けっこうな名セリフが描かれてると分かる・・・けど、それを感じることができないんですよね
目や耳には入ってくるけど心まで届かないというか

まだ7歳ながら家族を食べさせるために半ば無理矢理に奉公に出されるおしん
奉公先でのあたりや仕事は想像以上にきつく、それでもおしんは一生懸命に働くものの、ある事件をきっかけに心が折れてしまい・・・
という様々な人との関わりによって時に辛い、時に優しい世間を知っていき強く成長していく、っていうのを大多数の人がこの映画版には期待してるでしょう
だけど、実際に観た個人的な感想としては母親とのつながりみたいな部分を強調してる印象でした
それだけに奉公先でのどろどろした人間関係みたいなところは、意外なほどあっさり描かれていて、虐げられて虐げられて・・・だけど最後には受け入れてもらえる、みたいな要素は薄い

かなりいじわるでイヤな表現をするなら、おしんが奉公先と実家をいったりきたりしてるだけ
役者についてもそんなこだわりがない私ですが、それでもこの母親役は「母と子」を主軸に描くにしては力不足感が否めない
あとちょっと気になったのは楽曲の使い方がちょっとタイミング的におかしいような・・・?
テレビドラマ版を観てなくても知ってるメインテーマ、これが挿入されるタイミングと回数がちょっとしっくりこなかったですね

それでもひとつひとつのシーンとしてのドラマはおもしろいし、主役の演技も想像してたよりしっかりしてて浮いてない
それと個人的にカメラワークがけっこう凝ってるな、と思えました
続編があるのかどうか分かりませんが、続きはもうちょっと総集編臭がしない作りにしてもらえればな、と思った一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:物わかりの良いピン子なんてピン子じゃない(という個人的妄想)




おしん 予告

陽だまりの彼女 (2013/日)

監督:三木孝浩
出演:松本潤 / 上野樹里 / 玉山鉄二 / 大倉孝二 / 谷村美月 / 菅田将暉 / 夏木マリ / 北村匠海 / 葵わかな / 小藪千豊 / 西田尚美 / とよた真帆 / 木内みどり / 塩見三省

鉄道会社関連の広告業界で働く浩介
ある日、彼はクライアントの会社で働く昔なじみの女性、真緒と再会し・・・

単なるシャレオツな若者向け恋愛映画じゃない、というような作品の裏になんか秘密がある感じが予告から伝わってきたので鑑賞
しょうじきこういう感じのロマンスものは一番の苦手分野なんですが、はたしてやっぱり肌に合いませんでした
確かに「ほほう」となる単なる恋愛映画じゃないんだけど、その普通じゃない部分さえ肌に合わないとあっては楽しめようがない
というのはあくまで個人的な受け方で、好きな人にとってはたまらなくロマンチックで素敵で笑えて泣ける映画だってのも頭では理解できます

主人公の浩介が取引先の会社で出会った女性、真緒は彼が中学生の時の特別な人だった
最初の出会いからはじめこそぎくしゃくしてたものの、徐々にふたりは距離を縮めていき・・・
という展開の中で中学時代の描写が要所要所でさしこまれ、主人公ふたりの恋愛ドラマを描いていく、という典型的な作り
会社の同僚やら上司、主人公たち以外のキャラがかなりコミカルに描かれていて、なんとなくマンガをそのまま映像化したかのようなリアル路線とはちょっと違う演出がロマンス作品に慣れてない自分でも楽しめました

だけど、どうにも楽しめたのはそんなコミカルなシーンだけで、あとはちょっと・・・
物語の核となる部分もけっこう序盤から「ああ、そういうことね」と分かるし、伏線も深読みしなくても察せるくらい分かりやすくちりばめられてます
ここら辺も人によるでしょうが、個人的にはもっと終盤まで分からないようにしてほしかったかなあ
ミスリードを誘い、難病もの路線で引っ張っていって、ラストにきて「ああ、そういうことだったのか!」と思わせてほしかった

最初こそ笑えるシーンが多々あって、「こういう路線なら楽しめそうだ」と思ってたんですが、終盤になるにつれて変化球ではあるものの普通の難病ものシャレオツ恋愛映画の典型におさまっていってる感じ
それはそれで悪くはないんですが、さらにここで個人的にシリアスな展開の中での真緒の上司のストーカー描写の空気読めないギャグっぽさとか、唐突な子供のピンチシーンとか良いところでちょっと引いちゃう部分がダメでした・・・

そうなるともう個人的な感情部分がどんどん映画から離れていってしまい、最後にはかなり冷めた目で観てましたね
くどいかもしれませんが、ホントに個人的に肌に合わないってだけの作品なんで、ラブコメでしんみりしつつ良かったわあ、というロマンス作品が好きな人ならすっごい楽しめるんじゃないかな

個人的評価:65点
オススメ度:素敵なんじゃないですかね




陽だまりの彼女 予告

2013年10月13日日曜日

キッズ・リターン 再会の時 (2013/日)

監督:清水浩
出演:平岡祐太 / 三浦貴大 / 倉科カナ / 中尾明慶 / 市川しんぺー / 小倉久寛 / 池内博之 / 杉本哲太 / ベンガル

ボクサーをやめアルバイトの日々を送るシンジ
刑務所から出てきたものの組は解散状態のヤクザのマサル、そんなふたりが再び出会い・・・

とりあえずこれ「キッズ・リターン」ではないのよね
もちろんストーリー的には完全な続きなんだけど、個人的な印象だと前作でシンジがボクサーのマサルがヤクザの道を歩み始めた時点からのif世界を描いてる「もうひとつのキッズ・リターン」みたいな感じの作品
これはこれでシンジとマサルの生きる世界を描いてるんだけど、あまりに誰もが想像できうるふたりの生き方で普通すぎる内容かなあ
かつての親友同士がボクサーとヤクザの道を進むことになった、というドラマとしてはおもしろいんだけど、どうしても「キッズ・リターン」の続編とは観られない

新人王をとりながらもジムの会長の経営優先方針から、格上相手のかませ犬として利用されるだけ利用されて引退したボクサーのシンジ
一方、5年ぶりに刑務所から出てきたヤクザのマサルは警察のしめつけにより組としては解散状態にあり、それぞれが細々とビジネスにいそしむ現状になじめない
いまだに古いヤクザ気質を捨てられないマサルに気力を失って日々を流されて生きるシンジは再び出会うことで、もう一度ボクサーとして復帰する決心をする
という流れの中で時の流れの中で変わってしまった人と世の中にあらがうマサルとシンジの物語ですね

なんというかマサルの性格がじゃっかん変わってる気がしないでもないのがちょっと引っかかります
まあ、そこら辺は前作のラストからちょっと時が経っているということで・・・と、思いこもうとしてもなかなか受け入れづらいくらいのキャラの変容っぷり
話が進むほど前作の続きというイメージが瓦解していき、どんどん別ベクトルのif世界を描いたリメイクっぽい感覚が強くなってきます
演出やら描き方が北野武リスペクトな部分もあるし、ホントに個人的には「もうひとつのキッズ・リターン」というとらえ方が最終的な印象ですね

そんな感じでボクサーとヤクザの道をそれぞれ歩む若者たちの物語、という風に「キッズ・リターン」を頭のすみに追いやってみれば普通に楽しめるドラマ作品でした

個人的評価:80点
オススメ度:シンジの彼女(?)とか必要だったか?




キッズ・リターン 再会の時 予告

トランス (2013/米・英)

監督:ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・マカボイ / ロザリオ・ドーソン / バンサン・カッセル

ある競売の最中に盗まれた絵画
しかしサイモンの裏切りにより絵は紛失、しかも計画中のアクシデントによりサイモンは記憶を失ってしまい・・・

最初こそ記憶をなくした主人公と絵画の行方、そして催眠カウンセラーやボスたちの思惑とか良い感じで茶番劇が楽しかったんだけど・・・
なんていうか話が進むにつれて無駄にぐっちゃぐちゃに展開を引っかき回しすぎて、悪い意味でよく分からない内容になっちゃってるかな、と
よく分からない系の作品でも後々で「あの時のあれは・・・」とか考察するのが楽しいタイプはあるし、これもそんな映画に属する要素はあったけど、個人的にはもう鑑賞後にあれこれ考えるのがめんどくさくなっちゃいましたね

競売中に絵画を強奪せんと乱入した謎の男たち
主人公のサイモンは絵を守るためにタイマー式の金庫にこれをおさめようとするが、その途中で犯行グループのボスであるフランクに見つかってしまう
サイモンはフランクに襲いかかるものの返り討ちにあって頭を強打、そのまま絵は奪われてしまう
しかし絵がおさめられていると思われたバッグは空で、実は犯行グループの一味であったサイモンは責められるものの彼は頭を打ったショックで記憶喪失になっていた
で、そこで苦肉の策として催眠術をもちいたカウンセラーのエリザベスに看てもらうことになる・・・というお話

なんでサイモンは絵を隠そうとしたのか、そしてそれはどこにあるのか、という部分を軸にしてサイモン、フランク、エリザベスの人間関係も微妙に裏でなにかありそう、という謎を楽しむ内容ですね
見所はやっぱり、今描かれているシーンは催眠状態にあるキャラの心象風景なのか、それとも現実なのかという点
あきらかにイメージとして描かれてる部分もあれば、かなり曖昧に描かれているところもあり、後半になるにつれてどんどんカオスになっていきます

それはそれで現実か否か境界線を楽しめるんだけど、この作品はちょっとやりすぎじゃないのかな、と
あんまりにごちゃごちゃしすぎて、結局のところストーリーで勝負したいのか、ビジュアル的なイメージものとして勝負したいのかよく分からなくなってる感じ
感覚的に楽しむ系に特化するならもっとぶっとんだ表現をしてもいいと思うし、逆にストーリーをみせたいならもっと洗練して分かりやすくした方がいいんじゃないか、と個人的には思わざるえない

まあ、私の読解力が足りないから楽しめきれてない、っていう部分は否定しないけど
もうちょい、もうちょい序盤のノリみたいにシンプルに描いてくれた方がよかったんじゃないのかな・・・と言いたくなる一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:つまり同一人物だった?ってこと、なのか?




トランス 予告

レッド・ドーン (2012/米)

監督:ダン・ブラッドリー
出演:クリス・ヘムズワース / ジョシュ・ペック / ジョシュ・ハッチャーソン / エイドリアン・パリッキ / イザベル・ルーカス / コナー・クルーズ / エドウィン・ホッジ / ブレット・カレン / アリッサ・ディアス / ジュリアン・アルカラス / ジェフリー・ディーン・モーガン

突如として侵略してきた北朝鮮軍に占領されてしまうアメリカ
ジェドとマットの若い兄弟は難を逃れた若者たちをまとめ、街を取り戻すための抵抗勢力を組織する

しょうじき観る前までは話題性にしても設定にしても、かなりしょぼい映画なんだろうなと思ってました
まあ、実際にしょぼいんですが、思ってたより悪くないというのが個人的な印象
特に終盤の展開はけっこう好みで、なんというかもうちょい全体的に丁寧に作ればもっともっと光る作品になったんじゃないかな
とりあえず北朝鮮がアメリカの都市を占拠、という設定の時点で「は?」って感じですよね
あ、あと、そんなとんでも設定なクセにバカ映画ってわけじゃなく、シリアス路線で勝負してるのは驚きでした

北朝鮮兵が空から降ってきて街を占拠した
逃げ延びた若者たちは抵抗組織を作って味方と物資を集め、地の利をいかして北朝鮮兵に戦いを挑む
という導入部分がかなり無理があって、「ああ、なんかひどい映画はじまったわ」と感じずにいられない
これがコメディ要素の強いバカ映画ならいいけど、大まじめにやってるから「うーん・・?」となってしまいます
それでもアクションシーンはそこそこだし、戦闘やらストーリーの展開もそこそこなのでギリギリ退屈はしない

そんな全体的に悪い部分ばかり目に付くからかもしれませんが、個人的にクライマックスからの展開がおもしろく感じましたね
ラスボスとの決着の付け方、そこからの兄弟の絆の描写、ラストへ向けての成長、そんな終盤だけ切り取ってみると個人的にけっこう楽しめた
それだけにもっと味方と敵のキャラに魅力があれば、ロシアの特殊部隊とか戦いの部分に厚みがあれば、そもそも北朝鮮はねえだろ、というところがちゃんとしてればなあ
ま、そんな点をしっかりやってたら別作品になってるかもしれないけど

若者たちの反骨精神と友情、戦いの冷酷さ、人間としての成長ドラマの部分をもっと丁寧に描いていればけっこう個人的に好みな作品になってたかもしれません
もしくは主役と敵役にアクションものの大スターを起用すれば、それなりな見栄えになってたかもね

個人的評価:75点
オススメ度:観る前から分かる「俺たちの戦いは~」臭




レッド・ドーン 予告

キッズ・リターン (1996/日)

監督:北野武
出演:金子賢 / 安藤政信 / 森本レオ / 山谷初男 / 石橋凌 / 丘みつこ / 下絛正巳 / モロ師岡 / 大杉漣 / 平泉征 / 大家由祐子 / 柏谷享助 / 宮藤官九郎 / 水島新太郎

勉強もせず、たちの悪い悪戯と喧嘩に明け暮れる高校生のマサルとシンジ
ある日、マサルはボクシング経験者に打ちのめされたことによりシンジを誘ってボクサーへの道を歩みはじめるのだった

仲の良いふたり(コンビ)が別々の道を歩むことになり、その進む先は大きく明暗に分かれていく・・・
というよくあるドラマ、特に芸人としての経験がある人がコンビとしての明暗を見て肌で感じてきて、そこからよく作りがちなテーマの作品
ということをふまえた上で「そんなありきたりなの、つまんねーだろ?」って感じにひねくれた味付けをしてあるのがこの映画ですね
とりあえずまさかの続編が上映されると聞いて、昔に観たこの作品を再び鑑賞することに

学校にはくるものの、授業を受けるでもなく悪ふざけばかりしている高校生のマサルとシンジ
親分肌のマサルは一番の弟分と言えるシンジといつもつるんでいて、また数人の手下も抱えていた
ある日、喧嘩でボコった相手がボクシング経験者の知人を引っ張りだしてきて、はたしてマサルはあっけなく負けてしまう
悔しさからボクサーを目指して復讐に燃える中、マサルはシンジも同じジムに誘っていっしょにボクシングをはじめる
だが、才能を開花させたのはシンジの方で、再びの失意の中でマサルはさらに闇の世界に墜ちていく、というお話
ふたりの主人公の一方は光の道を、もう一方は闇の道を歩みはじめる感じの青春ドラマと言えばそんなジャンルですが、それだけにおさまらないからおもしろい

こういう作品ではどうしても主人公ふたりの対比という部分がメインのドラマになるものですが、この映画では主人公たち以外のサブキャラの人生も描いていて、それがいいエッセンスになっていきてますね
自分たちの世界だけで好き勝手やって生きてきた奴らの人生、そして不器用なほど真面目に生きてしまった奴の人生、そのふたつの人生のメインストーリーのそばによりそうサブストーリーがまた良い

というところで続編に向けて観なおしてみたけれど、今また再び鑑賞してみると昔とはまた違った点が分かっていいですね
というか、最初に観た当時は過激な描写ばかり期待していて、ドラマとか退屈なんだよというスタンスだったのが自分のことだけによく分かるわあ
ゆえに当時はしょうじきこの映画の印象って、地味でおもしろくないって感じだった
いやあ、いちお無駄に年を重ねているだけじゃない、っていうのが分かっただけでちょっと自分に自信がもてた一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:ブラックユーモア青春ドラマって感じなのかな




キッズ・リターン 予告


キッズ・リターン [DVD]
キッズ・リターン [DVD]
posted with amazlet at 13.10.12
バンダイビジュアル (2007-10-26)
売り上げランキング: 6,711


2013年10月7日月曜日

ランナウェイ 逃亡者 (2012/米)

監督:ロバート・レッドフォード
出演:ロバート・レッドフォード / シャイア・ラブーフ / ジュリー・クリスティ / サム・エリオット / ジャッキー・エヴァンコ / ブレンダン・グリーソン / テレンス・ハワード / リチャード・ジェンキンズ / アナ・ケンドリック / ブリット・マーリング / スタンリー・トゥッチ / ニック・ノルティ / クリス・クーパー / スーザン・サランドン

妻を亡くし小さな娘と暮らす弁護士のジム
そんな彼のもとに30年前にアメリカを騒がした過激派一味のひとりが逮捕された件で、新聞記者のベンがやってきて・・・

しかし「ランナウェイ 逃亡者」という邦題はあんまりにもかわいそうなタイトルですよね
おまえはアレか、90年代映画か、とツッコミを入れたくなるわな
内容がそんな感じで、90年代のサスペンスアクションになるように狙ったものなら生きてきますが、実際の作品内容はちょっと違いますからね
いや、まあ、最初こそ「おいおい、マジで90年代サスペンスアクションなノリな古くっさい映画か?」とも思ったけど、ちゃんと最後まで観ればそうじゃないと分かるはずです

30年前にアメリカをテロの恐怖で騒がせた過激派グループ”ウェザーマン”
そのひとりで銀行を襲って守衛を殺害したグループのひとりがFBIにより逮捕される
そんな彼女とつながりのあった男から主人公のジムは弁護の依頼を受けるがこれを拒否
一方、地方紙の記者であるベンはこの逮捕劇の真相を追ううちに、ジムの過去を探り当て・・・
という展開からFBIの追っ手から逃げながらのジムの行動と、ジムの過去からその関係者や隠された真実に触れつつ彼を追う記者ベンの物語ですね

図式としてはけっこう分かりやすくて、過去に自分たちの主義に反して無関係な銀行の守衛を死にいたらしめてしまった一味、そしてそれを掘り起こしつつ記者として真実を追い求める男、っていう感じ
ともに自分たちの正義のもとに行動してるんだけど、意識的にも無意識的にも無関係な人間をなんたら~みたいなのを描いてます
けど、そっちは裏テーマみたいなもので、力を入れて描いてるものは単純に「おじいちゃん目線の家族愛」という部分ですね

あくまで「おじいちゃん目線」っていう印象が強く、父親目線みたいな縦に深いだけじゃなくて、横に広い愛があらわれてるかな、と
テーマ的なものじゃなく、映画としてあらわすならサスペンスアクションのアクション部分をそぎ落として、そこにドラマ性をあてはめた・・・と言っても分かりづらいですよね
うーん、自分の表現力の乏しさが憎らしいわあ

ただ、マジで、ホントに、半端じゃないくらい地味
しんみりともジーンともくるようなドラマでもないし、言いたいことは分かるけど、もうちょっとエンターテインメントな感動要素を追い求めてもよかったんじゃなかろうか、と個人的に思いました

個人的評価:75点
オススメ度:12歳の子供がいる父親役にロバートさんはさすがに無理が・・・




ランナウェイ 逃亡者 予告

そして父になる (2013/日)

監督:是枝裕和
出演:福山雅治 / 尾野真千子 / 真木よう子 / リリー・フランキー / 二宮慶多 / 黄升げん / 中村ゆり / 高橋和也 / 田中哲司 / ARATA / 風吹ジュン / 國村隼 / 樹木希林 / 夏八木勲

ひとり息子の慶多の小学校受験も仕事も順調な野々宮一家
そんなある日、慶多の生まれた病院から当時に赤ちゃんの取り違えがあったと連絡があり・・・

生みの親と育ての親、そして赤ちゃん取り違えの問題
そんな題材は古今東西、映画という手段を問わずに作られてきてるけど、「あえてなんで今これなんだ」という思いも杞憂に単純にドラマとしての完成度がすばらしかった
個人的にとりあえずクライマックスに大事件があって、それを乗り越えて「ザ・絆!!」みたいな感動の押しつけものは嫌い・・・じゃないけど、あえてそっちの方向性とは違うこの作品は純粋に楽しめました

唐突に自分の子供が病院で取り違えにあって、本当の血がつながった子供がその育ての親と目の前に現れる
主人公の野々宮良多は相手の家族と話し合い、とりあえずはそれぞれの子供を週末だけ交代して泊まらせることにする
取り違えとなれば起こりうる予測できた問題、そして予測できなかった問題の数々が主人公の前に突きつけられていく、と
しょうじき題材やらなんやらに新しいものはない
誰しも知っているものをいかに料理するか、というセンスの部分で勝負してる作品ですね

で、個人的にこういった問題と、それに立ち向かう登場人物たちの描写を淡々としていく演出はよかったと思います
「ここで泣けよ」みたいな過剰演出がないゆえにドラマ部分としての作品の内容に集中できました
黙って中身で勝負、という映画作りの姿勢は自信があってからこそだろうし、実際に完成したモノがおもしろいだけに素晴らしいと言わざるえない

なにより配役が非常によくて、子役を含めて全体的に演技がナチュラルでいいですね
どっちの父親が、どっちの母親が、どっちの家族がどうとかじゃなく、主人公の変化をおさえた感じでよく描けていたな、と思えた一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:やっぱり「凶悪」コンビがちょっと気にならざるえないわな




そして父になる 予告

2013年10月6日日曜日

タイピスト! (2012/仏)

監督:レジス・ロワンサル
出演:ロマン・デュリス / デボラ・フランソワ / ベレニス・ブジョ / ショーン・ベンソン / ミウ・ミウ / メラニー・ベルニエ / ニコラ・ブドス / エディ・ミッチェル / フレデリック・ピエロ / フェオドール・アトキーヌ / マリウス・コルッチ

50年代フランス、ローズはある保険会社で秘書として働くために面接することに
経営者のルイにそのタイプの腕を買われて試験採用されるが、タイプ以外のことが不器用なローズは本採用に際してタイピングの大会で勝ことを条件とだされ・・・

あるひとつの才能だけはある主人公が、周囲の人たちとあれこれしつつ逆境を乗り越えて成長していく・・・と、そんな「ある才能」のタイピング版
というとよくある感じですが、タイピングうんぬんというより、ローズとルイのロマンスの方がメインかもしれません
そこにシャレオツなエッセンス、古典映画のような演出が加わって単純ながら古くて新しい素敵なデキになってましたね

実家の雑貨屋を飛び出し、保険会社で秘書になろうと面接を受ける主人公のローズ
保険会社を営むルイはローズのタイピングの腕前をかって秘書として雇い入れるが、肝心の秘書として彼女はまったくむいてない
しかしながらタイピングの腕は磨けばまだまだ光ると考え、大会に出場させることに・・・
という序盤の展開ですが、しょうじき大会に出場させる流れが「え?なんで?」と思ってしまうくらい説明が不足している気がしてならない
そこだけが個人的にこの映画で唯一つまずいた点ですね

終盤まで観ていけばルイがローズにタイピストへの道を開こうと尽力する理由も分かるけど、もうちょっと序盤のうちに自然な流れで大会に出す感じに描いてほしかったかなあ、と
そんなちょっと強引とも感じるところをすぎれば、あとはもうおもしろおかしく、ちょっとジーンときて恋愛模様にときめく、素敵な映画が楽しめます
なによりどことなく昔の映画を観ているような作りが作品にマッチしていて、それでいて古くさくなりすぎないように現代風なところもあるからホントに古くて新しい感じ

個人的にあまりロマンス映画とは相性が良くないんですが、これはけっこうコミカルな要素が多かったこともあってすごく楽しめました
通ぶってこの映画を他の人にすすめれば、たぶん「へえ、けっこう良いセンスしてんじゃん」という印象をもたれる・・・かもしれない一本でした

個人的評価:95点
オススメ度:フランス人の恋愛はじゃっかんめんどくせえな




タイピスト! 予告

R100 (2013/日)

監督:松本人志
出演:大森南朋 / 大地真央 / 寺島しのぶ / 片桐はいり / 冨永愛 / 佐藤江梨子 / 渡辺直美 / 前田吟 / YOU / 西本晴紀 / 松本人志 / 松尾スズキ / 渡部篤郎

日常生活の中でのプレイをうたうSMクラブに入会する片山
あらゆる場所に呼び出されてはプレイに興じるうちに、だんだんとエスカレートしてきて・・・

個人的に松本人志監督作品はこれが初めて
いろいろと他の芸人監督とかと比べられたりしてるけど、この作品だけを観たかぎりでは「個人的にはおもしろかった」といった印象
これまでの作品を知らないからアレだけど、事前に抱いていて「なんかめんどくさそうな映画じゃないのかな」という点は良い意味で裏切られ、なんてことはないバカ映画として楽しむことができました

路上や店舗、車中など日常生活の中で呼び出された場所でプレイがおこなわれるSMクラブ
一年契約、途中退会なし、女王様へのタッチ厳禁、というルールの中、片山はそのプレイに喜びを味わう
で、そんな中で徐々に主人公の片山の日常部分の人間関係やら家庭環境が見えてきて、そんなプライベートな領域へとプレイが浸食してくる、と
まあ、しょうじき「どんな内容だよ」と観ててツッコミを入れたくなること必至ですが、それこそこの作品を現す部分なんですね

観てれば分かりますが、中盤にもなればこの映画との付き合い方もみえてくるし、そこからがホントにおもしろくなってくるポイントです
とりあえず「ああ、バカ映画だなあ」という心持ちを忘れないかぎり、けっこう楽しめる
逆にあまり前半のペースにのまれすぎて、かたいまま真面目に観てると「はあ?」という感想しかもてないと思われます

しょうじき笑いの部分にしてみても、その人の好みによって大きく左右されるだろうし、かなり人を選ぶ内容だなってのは否めないのも理解できますね
この笑いが理解できないうんぬんとかじゃなく、こういうバカ映画もあるんだ、という気持ちで観るのが一番たのしめる一本かもしれません

個人的評価:80点
オススメ度:公開するなよ




R100 予告

2013年10月1日火曜日

エリジウム (2013/米)

監督:ニール・ブロムカンプ
出演:マット・デイモン / ジョディ・フォスター / シャルト・コプリー / アリス・ブラガ / ディエゴ・ルナ / ワグネル・モウラ / ウィリアム・フィクナー / ファラン・タイール

2154年、一部の超富裕層はスペースコロニー”エリジウム”で不自由なく、その他の貧困層は汚染しつくされた地球で暮らしていた
そんな中、地球で貧乏暮らし暮らす元犯罪者のマックスは工場で働くうちに事故を起こし余命5日の宣告を受け、これを治療するためにはエリジウムに行くしかないと決意する

地べたをはって特権階級からは虐げられ貧しく暮らす人たち
何不自由なく地球を離れてスペースコロニーで暮らす金持ちたち
で、貧しい主人公はスペースコロニーを目指す…って、古今東西SF作品としてはありふれまくりな設定で、しょうじき「ああ、またこのネタね」と思わざるえない
しかしながら、実際の映画を観てみたら、そんなありきたり感なんかいっきに吹き飛びましたね
SF、アクション、ドラマ、どれをとっても一級品のエンターテインメント作品になってました

作業中の事故で致死量の照射線を浴びてしまう主人公のマックス
彼は生きるために治療機械があるエリジウムを目指すが、そこへ潜入するためにひとつの仕事を持ちかけられる
と、話としては非常にシンプル
そんな話のありきたりな設定とシンプルさが逆に分かりやすく描けていて、逆にあんまりこだわった設定にされるよりこっちの方が作品じたいのおもしろさに集中できて良いかもしれません

とりあえず主人公が分不相応な聖域とも言えるエリジウムを目指す理由が良い
愛、正義感、英雄願望、反骨精神、巻き込まれてなんとなく、そんなどれでもない単純に「生きたい」という理由が「おお、そういう理由で上を目指すか」と興味を引かれる
そして、そんな単純な主人公の思いがちゃんと後々にテーマとしていきてくるからにくいわあ
で、そんな主人公の思いをはじめ、ヒロインの思い、主人公に協力する人たちの思いと思惑、主人公を追う連中の思惑、エリジウム側の人間の思惑…それぞれがちゃんとした意志をもって行動しているさまがよく描けてる
土台がシンプルだけにその上に構築されていく要素のおもしろさが際だって、まったく飽きることなく最後まで楽しめます

で、黙って普通に作ってても十分なのに、そこにB級エッセンスを忘れずに加えてくるから、もう個人的にはテンションが上がらざるえないわけで
めちゃくちゃ日本のゲーム…とりわけ小島監督作品のこと好きなんだろうなあ、と思える描写もけっこうあるし、そういう意味でゲーマーな人もけっこう楽しめる
じゃっかん「男の世界」に偏った描き方がアレだけど、とにもかくにも「ちっともありきたりじゃねえ」と最初の自分の思いが恥ずかしくなった一本でした

個人的評価:100点
オススメ度:これからはサイボーグ(風)ニンジャが主流になる、のか?




エリジウム 予告