2014年7月31日木曜日

リアリティのダンス (2013/チリ・仏)

監督:アレハンドロ・ホドロフスキー
出演:ブロンティス・ホドロフスキー / パメラ・フローレス / イェレミアス・ハースコビッツ / アレハンドロ・ホドロフスキー / バスティアン・ボーデンホーファー / クリストバル・ホドロフスキー / アダン・ホドロフスキー

チリの小さな町の少年アレハンドロ
優しい母サラと厳格な父ハイメによって育てられるのだった

監督自身の自伝的な話ではあるけど、その独特の世界観が素晴らしく魅力を感じずにいられない
逆に言えば、そんな世界観を許容できない人にとっては苦痛な作品かもしれませんが
ファンタジックでリアル、そして先の展開が読めない話がおもしろかったですね

神を信じ息子を父の生まれ変わりと思っている母
現実的で力を行使する厳格な父親
そんな家族の中で父親に男らしく教育されていく主人公の息子アレハンドロの姿を、彼に影響を与える人や物を交えて描いていく、という出だし
特になにもすごいことは起こらないんだけど、いかにも少年時代を思い出してイメージを投影したような幻想的でアバウトな描写がいい

それでいて強烈に印象に残ったことや、あとから伝え聞いたであろうことは妙にリアルのある想像として描かれており、そんな子供と大人の印象世界が混ざり合った感じが素敵です
温かくもあり、残酷でもあり、バカバカしくもあり、幻想的で現実的な画に引き込まれる
それでいてストーリー展開もどう転がるか読めないところがよかったですね

二極的であるけどどっちにも振り切らない絶妙なバランスが楽しかった一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:後半、どんどん脱ぎ(脱がされ)っぷりがよくなるな




リアリティのダンス 予告

2014年7月28日月曜日

GODZILLA (2014/米)

監督:ギャレス・エドワーズ
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン / 渡辺謙 / エリザベス・オルセン / ジュリエット・ビノシュ / サリー・ホーキンス / デビッド・ストラザーン / ブライアン・クランストン / 宝田明

採掘現場で見つかった謎の化石と蛹のような物体を調査する芹沢博士
同じ頃、日本のある原子炉で原因不明の局地的で一定間隔の地震を観測するのだった

新生ハリウッド版ゴジラ、思った通りというか「怪獣映画」ではなく「モンスターパニックもの」になってたのはアレですが、「日本のゴジラとは別もの」という意識は普通にあったのでそれなりに楽しめました
ただそれでも、もうちょっと怪獣王大暴れみたいな部分のウエイトを大きくとってほしかった気がしないでもない

発見された巨大生物の化石とふたつの蛹のようなもの
そして日本の原子炉を襲った揺れによる事故・・・そこから時は流れて、ことの真相を暴くためにジョーさんとフォードが退避区域へ侵入する
するってえと、そこには謎の生物的なのがあって、というようにけっこう設定を丁寧に説明しつつ話は展開していきます

そんな非現実的な出来事がリアルに起こっているような説明描写の強い描き方は個人的に好印象
よくありがちな「とにかくそういうものなんだよ」という設定押しつけよりはいい
ただそれによって話が長くなってしまい、人間側の描写に尺を多くさかざるえないのは仕方なしなのかな

加えて全体的に人間視点で描かれてる印象が強いために、言うほど「怪獣が大暴れしている」という直接的なシーンが体感として少なく感じた
「いよいよ怪獣側のハッスルタイムか?!」と思わせといての人間側の話に移行しちゃうパターンがちょっとイラっとくる

そんな感じで説明が長いわりにちょっと内容が薄い気がするけど、とりあえずゴジラさんの男前っぷりを堪能できただけでも楽しめた一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:ゲロの口移しにしか見えない私の心は汚れているんでしょうね




GODZILLA 予告

幕末高校生 (2014/日)

監督:李闘士男
出演:玉木宏 / 石原さとみ / 柄本時生 / 川口春奈 / 千葉雄大 / 谷村美月 / 吉田羊 / 渡辺邦斗 / 柄本明 / 隆大介 / 山崎銀之丞 / 伊武雅刀 / 石橋蓮司 / 佐藤浩市

高校教師の川辺未香子と生徒の3人はスマホのアプリの暴走により、幕末の世界へタイムスリップしてしまう
そこで勝海舟と出会うが、タイムスリップの影響か大幅に歴史が変化しようとしていた

幕末の時代を最小限の有名人物と、分かりやすい出来事に限定した歴史に興味ない若者をターゲットにした青春ドラマっぽい作りなんだけど・・・
なんとも昭和の時代に作られたならまだしも、今この内容でやる意味が分からないくらいカビ臭さが漂う
それゆえに今の若い人たちにしてみても、この映画をおもしろいと受け入れられるとは思いづらいですね

現代から幕末へとタイムスリップしてきた高校教師の主人公と生徒たち
そこはまさに西郷さんが江戸へ攻めてくる直前で、勝さんによる和平がなされていない史実とはズレている状況だった
で、なんとか歴史を修正しつつ、バラバラになった生徒を探す主人公が奮闘していく、と
そんな中で自分のダメな部分に気づいて成長したり、というドラマもある
うん、オーソドックスすぎるくらいオーソドックスな内容

個人的に最初のタイムスリップの描写からして「あ、これは合わんな」と嫌な予感がしました
そんで、結局は最後までどうにもマイナス部分しか印象に残らない作品、というイメージで鑑賞終了
すべてのことがぼんやりとなんとなく解決してる感じで、現代の人たちと幕末の人たちが互いに影響しあった上でドラマを練り上げてる感も薄い
勝さんから未香子へ与えられるものばかりで、逆の要素がほとんどないからドラマ的に薄っぺらく感じざるえない

まあ、アレだ、キャストのファンならガマンして観れば良い所も発見できるかもしれんね

個人的評価:30点
オススメ度:無駄に揃えられた脇の渋い役者さん方はご苦労様でした





幕末高校生 予告

2014年7月27日日曜日

ダバング 大胆不敵 (2010/印)

監督:アビナウ・シン・カシュヤップ
出演:サルマーン・カーン / アルバーズ・カーン / ソーナークシー・シンハー / ソーヌー・スード / ビノード・カンナー / ディンプル・カパーディヤー / アヌパム・ケール / マライカー・アローラー・カーン

警察官のチュルブル・パンデーはある犯罪現場で犯人をこらしめ、ちゃっかり金を奪う
しかし、その金は実は政治家絡みの金で・・・

とびっきりのバカアクション、こんな近くにあったなんてね
ボリウッドとかうっすら聞いたことはあったけど、今までこのジャンルをスルーしてきた自分を恥じずにいられない
っていうくらいに個人的に好みな作りでした
無駄な過剰演出、いきなり歌って踊り出す人々、セクシーでちょい悪、無敵の強さに人心をつかむ魅力、そんな主人公にしびれるわあ

犯罪者から失敬した金が政治家絡みのものだった、ってんで狙われる立場になる主人公
そんなことはおいといて、とりあえず街でみかけた女性に猛アタックをかけたり、デキの悪い弟と仲の悪い父との問題やら、プライベートに大忙しなチュルブルさんでした
という感じでわりと日常パートが長く、最初こそ許容できるレベルだったけど、さすがにちょっとダレる

そんなプライベート部分のドラマのダルさを打ち消すくらいに素敵なのがミュージカルシーンとアクションシーン
特にアクションのコミカルでデタラメなチュルブルさんの強さがダサかっこよすぎて上等
まあ、どっかで観たような演出が多いのはアレだけど、グラサンをシャツの後ろ襟にひっかけて打撃技を主体に戦う姿は拝むに値する

ラストファイトのバカさ&熱さ、私の魂が燃え上がらざるえないくらいテンションがあがりましたね
ホントにもっとドラマ部分をそぎ落として、アクション主体な作りにしてくれたら個人的に何も言うことのなかったかな
ああ、あと、じゃっかんチュルブルさんがちょい悪にしては度が過ぎてるっぽいとこも引っかかるかも

個人的評価:85点
オススメ度:ダバング!ダバング!




ダバング 大胆不敵 予告

2014年7月21日月曜日

太秦ライムライト (2014/日)

監督:落合賢
出演:福本清三 / 山本千尋 / 本田博太郎 / 合田雅吏 / 萬田久子 / 小林稔侍 / 松方弘樹 / 峰蘭太郎 / 栗塚旭 / 木下通博 / 柴田善行 / 多井一晃 / 中島ボイル / 川嶋杏奈 / 尚玄 / 中村静香 / 市瀬秀和 / 海老瀬はな / 仁科貴 / 風間トオル / 中島貞夫 / 穂のか / 上西雄大 / 和泉ちぬ / 佐藤都輝子 / 鷲尾直彦 / 美琴 / 上野宝子 / 小堀正博 / 周防ゆう / 木戸聡彦 / 西本珀 / シロタケシ / 高橋俊次

太秦の撮影所で時代劇の斬られ役を演じてきたベテラン演技者の香美山
しかし、撮影されていた唯一の時代劇作品が終了してしまうのだった

時代の流れの中での老兵の物語、という斬られ役の主人公にスポットをあてたドキュメンタリーっぽい作品かと思いきや、ベッタベタな人情ドラマ映画でした
だけど、そのベッタベタ感が良い
なにより男でも惚れざるえない主人公の香美山さんがそこにいるだけで画になる、そしてベテラン勢と大立ち回りを観られるだけで価値のある作品でしたね

時代劇の斬られ役として70歳になりながらも現役の主人公の香美山さん
しかし時の移り変わりはどうにもできず、ついには太秦で撮影されていた最後の一本の時代劇も終了してしまう
駆け出しの若手にまじって現代劇に出演したり、世代交代的なものを描きつつ、時に残酷で時に人情の暖かさを感じるドラマが展開していく、と

痺れるくらいに格好いい殺陣のシーン、そして師弟関係、撮影所関係者とのドラマの暖かみのおもしろさ
中でも劇場のスクリーンでチャンバラを観られる、という部分だけで個人的にジーンとしてしまいました
そして、人や時代の冷酷さを描くシーンでもとことんまで香美山さんを追いつめる容赦なさもいい
王道でコテコテながらおもいっきり作品世界に没入しちゃいました

言葉少ない香美山さん、その存在、眼力、演技、日陰での努力、挫折、奮起、個人的にホントに最高に楽しめた娯楽人情ドラマでした
ラストの大立ち回りも言うことなしだし、時代劇ファンはぜったいに観た方がいいし楽しめる一本でした

個人的評価:100点
オススメ度:アイドル主演のCG多用じゃない、新作チャンバラの需要はあると思うんだけどなあ




太秦ライムライト 予告

ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金 (2013/米)

監督:マイケル・ベイ
出演:マーク・ウォールバーグ / ドウェイン・ジョンソン / アンソニー・マッキー / トニー・シャルーブ / エド・ハリス

筋トレマニアのダニエルはトレーナーとしてあるていど成功したものの、自分に満足できずにいた
そこで仲間をさそって一攫千金の誘拐計画を実行しようとするのだが…

ロストエイジ的なトランスなんちゃらを想起せざるえないメンツだけど、思った通りというかなんというか、こっちの作品は地味でした
突き抜けたバカっぽさも微妙だし、かといって重くるしいほどのクライム感もあまりない
話の素材はそっごい楽しそうなのに、どうにも作り方がイマイチでけっきょく地味な埋もれっぱなし映画の仲間入り、みたいなね

中途半端に頭が回るのが災いしてる脳筋バカな主人公ダニエルが、なんだかんだで仲間をさそって誘拐をたくらむけどうまくいかない
それなりに計画を建ててはいるけど、けっきょくは出たとこ勝負&パワープレイで犯罪を実行していく
そんな筋肉バカが中途半端に頭つかってドタバタ騒ぎしつつ、計画を実行していく姿が見所だし楽しめる
だけど、それも最初だけですが
はじめは「バカが無駄に計画たててあたふたするクライムものか」、と面白そうな印象で期待もふくらむんだけど、ずっとそれで押し通されれば飽きもする

「これは面白い」というワンアイディアだけで、変化をつけることなくホントにそれだけでずっと描かれても観てて退屈感が増してくるだけ
いちおバカっぷりがどんどん加速していくんだけど、作ってる側がどこかで「これは犯罪を描いてる」という良心のブレーキがかかってるのか、その勢いが微妙に弾けない
悪事を過剰なまでにパフォーマンス化して、それこそ「この主人公、バカ格好いいぜ!」と思わせるくらいはっちゃけて描いてもよかったんじゃなかろうか
もちろんラストでちゃんと突き抜けた分だけ惨めに堕とすってのが前提ですが

とりあえず別のスタッフでもっとぶっとんだ描写にしたバージョンを観たいと思う一本でした

個人的評価:60点
オススメ度:そんなことよりパンプアップしようぜ






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思い出のマーニー (2014/日)

監督:米林宏昌
出演:高月彩良 / 有村架純 / 松嶋菜々子 / 寺島進 / 根岸季衣 / 森山良子 / 吉行和子 / 黒木瞳 / 森崎博之 / 安田顕 / 戸次重幸 / 大泉洋 / 音尾琢真

病気の療養のために育ての親の親戚の家で過ごすことになる杏奈
そこでどこか見覚えのある廃屋になった洋館を見かけ・・・

とりあえずマーニーってなんだよ、という部分が一番の見所なんだろうけど、そのオチがなんとも言えない
微妙に分かりにくくもあるくせに、「そうだったのか」ってほどの驚きもない
大人も子供も家族そろって楽しめるという部分を狙ったら、どうも中途半端なところに落ちちゃった、みたいな感じ

表面上は素直だけど、いつも心の中で毒づいては壁を作って、またそんな自分のことも嫌いなめんどくさい性格の主人公の杏奈
喘息の療養のために親戚の家でしばらく暮らすことになる中、寂れた人の住んでいない洋館を見かける
そんな洋館にどこか見覚えのある杏奈は、やがて夢の中に出てくる少女マーニーと出会う
そんなマーニーとの幻想的な友達つきあいがはじまって、めんどくさい性格な杏奈がじょじょに・・・という短期間成長物語ものの青春ファンタジードラマですね

とりあえずいい年して、あからさまにその存在の怪しいマーニーを素直に受け入れる主人公は「そういう娘なんだろう」と自分の心が汚れてるんだと思うことに
とりあえずはマーニーとの幻想的な日々と、それに引きずられるようなマーニーのいない現実から、どういう状況なのかってのを推理しながら楽しめます

新たな登場人物が出てきては「実はこいつが・・・」とあれこれ思い巡らせるのがおもしろくはあるんですが、その先にあるものが初期の杏奈の性格みたいにめんどくさい
そういうことだったのか、と飲み込めることは飲み込めるんだけどスッキリ感は少ないかな
もともと超シンプルなものをこねくり回しすぎてる感もあるかも

個人的評価:65点
オススメ度:途中から喘息設定とか普通に忘れてました




思い出のマーニー 予告

砂の器 (1974/日)

監督:野村芳太郎
出演:丹波哲郎 / 森田健作 / 加藤剛 / 加藤嘉 / 春田和秀 / 島田陽子 / 佐分利信 / 山口果林 / 緒形拳 / 松山政路 / 内藤武敏 / 稲葉義男 / 穂積隆信 / 夏純子 / 松本克平 / 花沢徳衛 / 笠智衆 / 春川ますみ / 渥美清 / 菅井きん / 殿山泰司 / 野村昭子 / 浜村純

「カメダ」という言葉をたよりに殺人の捜査をする刑事の今西と吉村
今西はわずかな手がかりをたよりに日本各地を訪れる

サスペンス、音楽、ドラマ、情景そしてキャストすべてにおいて高レベルでバランスのとれている作品でした
単純なサスペンスじゃなくて、今のような灰色と緑色の二極化した描写の多い日本映画とは違う、各所の特色のある風景が描かれていて目にも楽しめる
そして、サスペンスやドラマといった作品の核はもちろんとして音楽で耳も満足でき、総合的な意味でおもしろいと言わざるえない

わずかな手がかりをもとに殺人の捜査をする今西刑事だが状況は難航
そんな中で観てる側には犯人と思われる人物はしめされ、さらになんとなく犯行の背景も早期に想像できる
そんな観てる側はなんとなく分かってるという状況の中、無駄足をふんだりちょっとずつ事件のヒントを得たりしていく刑事
その今西の熱意と日本各地の情景を観てるだけで序盤は十分におもしろい

で、いよいよ真相が解明されると、話はドラマよりにシフトされていき、先が読めているはずなのにまったく飽きるとこがない
さらに細かいところまで事件が見えてくると、さらに一段ふかい部分に気づかされる、と・・・本当に最後の最後まで楽しめましたね

古い作品だし、なんとなく先も読める、シンプルな映画だろとなめて観ていた自分がバカだったと思い知らされた一本でした

個人的評価:95点
オススメ度:丹波さんマジ格好いいわ




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2014年7月14日月曜日

オープン・グレイヴ 感染 (2013/米)

監督:ゴンサロ・ロペス=ギャレゴ
出演:シャルト・コプリー / トーマス・クレッチマン / ジョシー・ホー / ジョセフ・モーガン / エリン・リチャーズ

死体の山の中で目覚めた男は見知らぬ女に助けられる
記憶を失っていた男は一軒の家にたどりつき、そこで同じく記憶を失った4人の男女と彼を助けた女と出会う

副題に感染とかつけちゃうことで、いっきにB級感が増してますね
さらに安易に「まーたゾンビもの?もしくはパンデミックものか?」と思われてしまい、この作品は敬遠されちゃうんじゃないのかな
でも実際にはホントに観てて心配になるくらい延々と何が起こっているのかハッキリせず、真相が分かるラストまで緊張感が続く良作だと個人的に言わざるえない
それでもあくまで良作、すっげえおもしろかったってほどじゃないのがアレですが

ストーリーに関してはあまり書くとネタバレに直結しちゃうんで、簡単に言うなら記憶喪失な人たちが互いに疑心暗鬼な状況で、ちょっとずつ物や人を頼りに記憶を取り戻していくみたいな作品
何か知っているんだろうけど言葉は通じないし口もきけない女、数日後には何か起こる、森に張り付けられた死体、明らかに異常な行動をする拘束されている人、とヒントっぽいものから記憶の断片を思い起こしては次のヒントを得ていく、と

なにはともあれ、「けっきょく皆が何者で、それぞれどんんな状況でここにいて、周りでは何が起こっているんだ」というのを登場人物といっしょに手探りで探っていく緊張感がおもしろい
記憶の断片や得た情報から、なんとなくふわっとしたモノは推測できるけど、なかなかはっきりと真相が見えてこない作りはいいですね

ただ、作品としてオチを示した後でも、なんとなく推測で納得せざるえない部分とけっきょく分からない要素があって鑑賞後に完全にスッキリしない
超基本的な「感染」の部分は「そういう設定だから」と飲み込めなくはないけど、カカシの効果ははっきり説明してほしかったかな
マニアックな作品として隠れた名作、とまではいかないけど、埋もれがちなちょっとおもしろい作品くらいにはなってる一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:すべて揃ってる状態から問いを導く、みたいなね




オープン・グレイヴ 感染 予告

青鬼 (2014/日)

監督:小林大介
出演:入山杏奈 / 須賀健太 / 陳内将 / 聖也 / 古畑星夏 / 尾関陸

杏奈たち6人の男女はある廃屋に閉じこめられてしまう
そこでは不気味な物音などがして、明らかにナニモノかがいる気配がするのだった

ゲームや小説は知らないままに鑑賞
覚悟するほどクソB級ホラーなガッカリ感はなかったのは意外でしたね
だからといって諸手を上げておすすめできるほどの作品ではなく、けっこうツッコミ所や謎すぎるまま終わってる点も多い
話じたいはおもしろい部分もあるんだけど、細かい残念な点がそれを勝ってる感じ

杏奈はシュンと彼が作ったゲームで盛り上がる
そんなシュンがいじめっ子な卓郎と一緒に廃屋に向かう気配をなんとなく察知した杏奈はあとをつけることに
卓郎は仲間と合流してシュンを連れて廃屋に入り、その後に続いた杏奈を最後に怪現象によって閉じこめられてしまう
というシチュエーションの中でホラーものの定番で、ひとりまたひとりと犠牲者が、という作品

最初はなんで主人公の杏奈がシュンと卓郎のあとを追ってきたのか分からないし、そもそも卓郎が廃屋にきた理由も分からない
そんなもやもやした気持ちのままに話はガンガン進んでいって、青鬼さんの犠牲者も増えていきます
だけど、オチが分かった時点でとりあえずそこら辺の理由は説明されるんでちょっとスッキリ
そんなオチをふまえて思い返せば杏奈の言動や行動のちょっとした違和感も解消されて、ストーリー的には楽しめます

だけど、ラストのしめで結局はもやもやが再燃してそのまま終わっちゃうからなんとも、ね・・・
ヒントなしで脱出ルート進めるはずなのに鍵盤のパスコードを調べたり、携帯の着信の意味がよく分からなかったり、ひろしくんの存在意義とかツッコミ所も上げだしたらきりがない
あと青鬼さんのホラーモンスターのチラリズムを無視して、けっこう大っぴらに姿を現すところも賛否あるかもしれんね

そんな感じでおもしろさと残念さが入り交じった、総じて微妙なものになっちゃってる一本でした

個人的評価:60点
オススメ度:これ3Dで上映するの意識してたんかな




青鬼 予告

2014年7月13日日曜日

ダイバージェント (2014/米)

監督:ニール・バーガー
出演:シャイリーン・ウッドリー / テオ・ジェームズ / ケイト・ウィンスレット / マギー・Q / ジェイ・コートニー / メキー・ファイファー / ゾーイ・クラビッツ / クリスチャン・マドセン / エイミー・ニューボールド / マイルズ・テラー / ベン・ロイド=ヒューズ / アシュレイ・ジャッド / トニー・ゴールドウィン / アンセル・エルゴート / レイ・スティーブンソン

人を5つの適性に分けて各派閥で働いていくシステムが構築された世界
ベアトリスはどの適性でもない異端者という判定が下される

なんとなく鑑賞前は設定だけのガッカリB級SFなのかな、と期待してなかったんですが、そういう意味では思ってたのと異なってましたね
印象的には「ハンガーゲーム」みたいなアメリカンなヤングたちが好むんじゃないかな、って感じの恋愛要素が強いライトな作品でした
作品世界的にもそれほど広がりはないし、話の展開のわりに事件が小競り合いっぽく思えて盛り上がりはいまひとつだったかなあ

”無欲”の適性の家庭で育った主人公は、いざ自分の適性が決定する試験を受けたら何にも当てはまらない”異端者”判定だった
発見しだい処刑される運命の”異端者”ゆえに試験官の粋な計らいで”無欲”判定とデータを改竄してもらう
そんな主人公はいざ派閥を選ぶ段階では”勇敢”をチョイスするのだった
という自分から自分の立場を複雑化しちゃう主人公が一番の元凶なんじゃないか、と思えなくもない

そんなじゃっかん落ちこぼれな主人公が持ち前の”異端者”スピリッツで”勇敢”学園でのバトル試験と恋に青春をささげる、みたいな感じですね
しょうじき”勇敢”での生活での学園パート的な部分が思った以上に長々と続いてダレる
”異端者”である主人公が世界というシステムを相手に戦いを挑む、みたいな壮大さは感じられない

人の生き死にもちょっと軽い感じで、どんな悲劇が画面上では展開してても、あんまり悲壮感が観てて伝わってこないんですよね
観て満腹感は得られないけど、スナック感覚で小腹のすいた映画欲はそれなりに満たしてくれる一本かもしれません

個人的評価:65点
オススメ度:まーた、「俺たちの戦いは~」エンドですか




ダイバージェント 予告

THE NEXT GENERATION パトレイバー 第3章 (2014/日)

監督:押井守
出演:真野恵里菜 / 筧利夫 / 福士誠治 / 太田莉菜 / 千葉繁 / 堀本能礼 / 田尻茂一 / しおつかこうへい / 藤木義勝 / 波岡一喜 / 三元雅芸 / ベンガル / 松本圭未 / 奥田恵梨華 / 丹古母鬼馬二 / 森若香織 / 佐伯日菜子 / 隆大介 / 嶋田久作 / 冨永みーな / 古川登志夫

特車二課の面々がコンビニでの事件に巻き込まれるエピソード4
そして熱海での巨大海棲生物の対策本部に成り行きで関わることになったエピソード5の二編からなるオムニバス

今回も、というか予告と副題からイメージする内容といつも微妙にずらしてくる作り
まあ、ここらは私の個人的な想像力の面が大きく作用するんでしょうが、第2章の完全ネタエピソードな二編を観たあとの予告から今回も全力ネタものだと思ってたんですが・・・
まだ前編だけのエピソード5は別として、エピソード4はただバカ騒ぎしてるだけじゃなくて見応えがありましたね

コンビニに買い出しにいったら、怪しい二人組のおこした立てこもり事件に巻き込まれる特車二課の明
帰りの遅い彼女の様子をみるためにひとり、またひとりとコンビニへ向かってはミイラ取りがミイラになっていく、という内容のエピソード4
意外と事件らしい事件に遭遇した話で、それでいてこれまでのようなバカっぽいコメディ要素やネタも詰め込んできてます
さらに銃撃、格闘とアクション要素もあってバランスの良い回でしたね

次に熱海で怪獣騒ぎが勃発するエピソード5
そんな怪獣のはじめての目撃者たちの中に慰安旅行で訪れていた特車二課の隊員たちがいたため、対策本部に招かれてしまう、と
特撮怪獣ネタが強い話かと思いきや、怪獣出現によって盛り上がる周囲の人々をコミカルに描いている印象の方が強い
中でもやっぱり怪獣の脅威を観光に利用しようとする悪魔市長の存在が見所でしょうね
前編というだけあって顔見せだけの人物もいるし、そのオチを見届けるまでまだなんとも言えない

そんな感じで今回はわりと普通に(?)出動する特車二課の活躍(??)が楽しめた一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:ホントにチキンラーメンを買う明さんのメンタル




THE NEXT GENERATION パトレイバー 第3章 予告

2014年7月7日月曜日

三十九夜 (1935/英)

監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ロバート・ドーナット / ルーシー・マンハイム / ゴッドフリー・タール / ペギー・アシュクロフト / マデリーン・キャロル

ある女と出会ったことで国家機密をめぐる陰謀に巻き込まれたハネイ
彼女から得たわずかな手がかりをもとにスコットランドへ向かうのだった

たまには名作と呼ばれる古い映画も観たくなる、ということで鑑賞
いわゆるスパイ映画なんですが、とにかく話の転がり方がおもしろい
「いま観ても~」というフレーズは有り体すぎるけど、ホントに現在のスパイものと同等以上に楽しめました
派手さはないけど内容で勝負しているのが良いですね

主人公ハネイが出会った謎のスパイ女は「三十九夜」「小指の欠けた男」「スコットランド」というわずかな手がかりをもとに殺されてしまう
ハネイも同様に命を狙われる中、そのキーワードをたよりに行動を起こすものの、女の殺人容疑の濡れ衣をきせられて追われる立場になってしまう、と
警察や組織からまるでスパイになったように逃走しつつ、真相に近づいて潔白を証明しようとする話ですね

ヒロインかと思ってた謎の女が早々に退場したり、たどり着いた場所で待っていたものだったり、先読みの思いこみをかいくぐってくる作りはおもしろい
今の映画に慣れた感覚とのずれでそう思うのかもしれないけど、それだけじゃない純粋な展開の作り込みっぷりはある
それでもちょっと「さすがにその流れは」とかシーン的に間延びを感じる部分もあるのは否めない
まあ、でもそれも作品の古さという点にこじつければ飲み込めるレベルですが

個人的評価:90点
オススメ度:夜か階段か、どっちなんスかね




三十九夜 予告


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2014年7月6日日曜日

マレフィセント (2014/米)

監督:ロバート・ストロンバーグ
出演:アンジェリーナ・ジョリー / エル・ファニング / サム・ライリー / シャルト・コプリー / イメルダ・スタウントン / ジュノー・テンプル / レスリー・マンビル / ビビアン・ジョリー=ピット

妖精の国を守護するマレフィセントは、敵対する人間の国の男と恋に落ちるが裏切られてしまう
強い憎しみの闇におちた彼女は、かつて愛した男にできた赤ん坊に呪いをかけるのだった

とにもかくにもマレフィセントというキャラの画になるカッコイイ姿が素敵すぎる
慈愛にみちた面はもちろん、邪悪な面ですら惚れてしまう
話的にもベッタベタで展開が読めるのに、不思議と心が動かされましたね
形はちょっと違えど母と娘の山あり谷ありの物語を見守っているだけで楽しめる

主人公の妖精のマレフィセントが裏切った男に復讐するため、その娘に呪いをかけた
なんだけど、憎しみの闇におちたのもちょっと感情的になったゆえで、根は優しさの心は失っておらず、なにげに娘の成長を密かに見守ってゆく、という内容
序盤の純粋で勇敢な心をもつマレフィセント、邪悪に染まって己をおとしめるマレフィセント、なんだかんだでデレるマレフィセント、後悔と愛に悩むマレフィセント、様々な顔の彼女がスクリーンに力強くその姿を刻みます

なによりデレ姿の微笑ましさと、サーバントの烏との掛け合いはニマニマしてしまいますね
コミカルな要素が多いのはもちろんだけど、生ぬるいファミリー映画かと思いきや、けっこうアクションも力入っているし、醜い感情の部分もあって万人受けする作品かもしれません

先が読めすぎる展開ながら個人的にジーンとする場面もあって、基本的にすっごい楽しめたんですがラストバトルはちょっと蛇足な気がしないでもない
もうちょっとふんわりと軟着陸した感じでも良かったかな、と

個人的評価:90点
オススメ度:人間、しかも男の扱いの悪さは仕方ないか




マレフィセント 予告

オール・ユー・ニード・イズ・キル (2014/米)

監督:ダグ・リーマン
出演:トム・クルーズ / エミリー・ブラント / ビル・パクストン / ブレンダン・グリーソン / ノア・テイラー / キック・ガリー / ドラゴミール・ムルジッチ / シャーロット・ライリー / ジョナス・アームストロング / フランツ・ドラメー / 羽田昌義 / トニー・ウェイ

人類がエイリアンによる侵攻を受ける中、軍の広報担当であるケイジは前線の撮影の命を受ける
自分は兵士ではないと命令を拒否する彼は、脱走兵扱いで戦場へ送られてしまうのだった

エイリアンによる侵略がやけに局地的で、世界規模の脅威という広がりは感じづらいけど、とりあえず観てる間はそれなりに楽しめます
良くも悪くも時間が巻き戻るという設定が飲み込み難い感じで、そこらへんを「まあ、そんなもんだろ」と受け入れられれば満足できるかもしれません
個人的には最後までじゃっかん「巻き戻り」の部分が引っかかってましたが

口が災いして軍のお偉い頑固ジジイを怒らせちゃった主人公、嘘つき脱走兵に仕立て上げられて戦場おくりにされてしまう
エイリアンとの戦いの中、死んだと思った彼の時間は戦闘直前まで巻き戻り、いくどとなく戦場へ送られ死を繰り返す、と
そんな中で事情を知るヒロインやらと知り合って、色々と試行錯誤しながら戦いに勝利するために敵の親玉を討つことを目標とする、という話ですね

しょうじき時間が戻るということじたいに違和感はあるし、復元ポイントもなんでそこなのかという感じもする
なによりなんども死ぬ(殺される)主人公のメンタルの強さがありえないだろ、と言わざるえない
それでも時間戻しがあるゆえの敵の罠とか、主人公の嘘とか想いの部分はおもしろい
戦いの流れも深く考えないで頭からっぽにして観てれば十分に娯楽作品として楽しめる

SFとして、時間操作ものとしての世界観の深みや展開のトリッキーさに多くを期待しなければ、B級SFアクションとしてそれなりに退屈しない一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:敵のアルファさんは賢いのかバカなのか、イマイチよく分からん




オール・ユー・ニード・イズ・キル 予告

2014年7月2日水曜日

オールド・ボーイ (2013/米)

監督:スパイク・リー
出演:ジョシュ・ブローリン / エリザベス・オルセン / シャルト・コプリー / サミュエル・L・ジャクソン / マイケル・インペリオリ / ポム・クレメンティフ

見知らぬホテルの一室で目覚めるジョー
食事は与えられるものの、外にでることができない監禁状態におちいり、また、元妻殺しの嫌疑もかけられてしまうのだった

しょうじき細かいツッコミどころは多く、まさしくB級な作り
後味も悪いし、とても愉快な作品ではないんですが、個人的にはけっこう好みな映画でした
まさに復習劇といった内容で、主人公と黒幕の対比が分かりやすすぎるほど明確で「この作品を理解できる俺ってカッコイイ」と自惚れられる気持ちよさがありますね

なんか知らんけど監禁された主人公は、外の世界では元妻殺しの疑いをかけられてまま、どうすることもできずに日々を重ねる
どんどん歳月は流れ、最後に残された娘への想いだけをより所に、監禁状態の中で自らを律して鍛え脱出の機会を伺う
という序盤の展開から、復讐を開始する第2部、謎解きゲームをする第3部といくつか作品の展開が途中途中で変化していって飽きません

やや長回しによる描写が特徴的で、特にアクションシーンでのベルトゲームのようなとこが強く印象に残りますね
あとは最初の頃のクズで主人公オーラほぼゼロな存在のジョーが、中盤以降どんどん魅力的な男に変貌していくのがおもしろい
なにより復讐という点で作り上げられた内容が個人的に素敵と感じずにいられない
エドモン・ダンテスとか小粋なワードをさりげなく入れてくるのも良いですね

しかし、あくまでこれは個人的に楽しめたという作品でしかないのも確か
好みうんぬんを抜きにすれば、監禁年月の長さがありえないし、しょうがないとはいえ初期の主人公が老けすぎだし、あまりに警察が無能すぎるし、なによりラストへもっていくために作り上げられた肉付けが見え見えなのもいただけない

それでも真相部分も含め分かりやすく単純化して、観てる側を楽しませようとしてる感じが個人的に好印象に感じとれました

個人的評価:85点
オススメ度:自宅警備員でも鍛えればここまで強くなれる、わけねえから




オールド・ボーイ 予告