2014年10月27日月曜日

小野寺の弟・小野寺の姉 (2014/日)

監督:西田征史
出演:向井理 / 片桐はいり / 山本美月 / 及川光博 / ムロツヨシ / 寿美菜子 / 麻生久美子 / 大森南朋 / 木場勝巳 / モロ師岡 / 梅沢昌代 / 村松利史 / 秋本奈緒美 / 橋本じゅん

ふたり仲良く暮らす小野寺の姉と弟
そんなふたりの前に気になる異性が現れ…

独りよがりで自分に自信がなくて、優しく、不器用で空回りしている姉弟をコミカルながら温かく描いていて、個人的にかなり好みな作品でした
ほのかな残り香のような主張しすぎない昭和な雰囲気も好みに合ってました
ロマンスと縁のない姉弟が恋することで変化していく、みたいな要素以外に観るべきところがあるのか内容的にシンプルすぎて不安でしたが、見事にちょっぴり泣かされるしまつですよ
観ていて独りよがりなのは重々承知ながら「がんばれ、がんばれ」とふたりを思わず応援してましたね

基本はなんだかんだの日常のエピソードの中で姉の温かい思いを弟が知っていく、と同時にチャーミングな姉の姿を楽しむ話でした
そこに過去の恋愛を引きずる弟と、自分に自信の持てない姉の各々のロマンスがはじまりつつ、やっぱりそこからも姉弟の想いの絆が描かれておもしろい
ちょっと都合の良いロマンス要素だな、と途中で感じもしたけど最後まで観てみればそんな引っかかりも吹き飛びました

なにげない日常の中で隠された想いが浮き彫りになっていき、ふたりの過去が現状に結びついていく話の運びがいい
全体的にコメディタッチなんだけど、時に映し出された画としてはコミカルなものでもそこにいる人物の心情を考えると笑えないシーンのバランスの妙が素敵ですね

温かくて笑えて泣ける、感情をうまく誘導されていると分かっていても、どこか嫌な気分にはならない作品でした

個人的評価:90点
オススメ度:片桐はいりさんの魅力を引き出しまくってたわあ




小野寺の弟・小野寺の姉 予告

ヘラクレス (2014/米)

監督:ブレット・ラトナー
出演:ドウェイン・ジョンソン / イアン・マクシェーン / ルーファス・シーウェル / アクセル・ヘニー / イングリッド・ボルゾ・ベルダル / リース・リッチー / トビアス・サンテルマン / ジョセフ・ファインズ / ピーター・ミュラン / ジョン・ハート / レベッカ・フェルグソン / イリーナ・シェイク

ゼウスと人間の子という伝説の男ヘラクレス
彼が率いる傭兵たちはトラキア軍とともに内戦の首謀者レーソスの軍と戦うこととなる

またデミゴッドが主人公のファンタジーアクションか、という食傷気味なこっちの気分を見透かしたような作りでしでけっこう楽しめましたね
伝説の英雄として神の超常的なパワーで、この世のものではない怪物たち、異形の者たちに独り立ち向かうというのもいいけど、この映画のようなヘラクレス像も魅力的でいい
まあ、この話が真実かどうかはおいといて、人間くささにファンタジーのスパイスがほどよく足された感じがおもしろかった

もう冒頭で伝説的なバトルの数々が描きつくされ、「おまえたちが観たかったのはこれだろ?」という制作側の意図が小憎らしい
そこからは伝説を利用して傭兵稼業な、むっさい男ヘラクレスさんの現実的な戦いが描かれていくんですが・・・
しょうじき集団戦闘な戦での無双アクションは、最初こそ楽しめたけど「それだけかよ」と思わざるえなかった

しかし、そこら辺の退屈さも終盤の盛り上がりで一蹴されましたね
B級ではあるものの、単調になりすぎない展開はおもしろい
欲を言えばもっと仲間たちとのコンビネーションプレイが観たかった気がするけど、現実的なバトルにいい塩梅で加味されたファンタジー要素がうまく利いてる一本でした

エンドロール中の伝説の裏側描写も粋な感じで、最後の最後までけっこう楽しませてもらいました

個人的評価:85点
オススメ度:テュデウスさんのキャラが個人的に素敵といわざるえない




ヘラクレス 予告

2014年10月26日日曜日

トム・アット・ザ・ファーム (2013/加・仏)

監督:グザビエ・ドラン
出演:グザビエ・ドラン / ピエール=イブ・カルディナル / リズ・ロワ / エブリーヌ・ブロシュ / マニュエル・タドロス

ギョームの葬儀のために農場へやってきたトム
しかし、そこでギョームの兄から母によけいなことを言うなと暴力的におどされる

公開前からけっこう期待してた作品で、途中まではすっごい楽しめてたんだけど、どうにも思ってたのと方向性が違ってましたね
狂気と秘密をはらんだ兄に、どこか危うい感じのする母、そこで暴力的に支配されていくトム・・・そんな雰囲気には満足でしたが、それだけな感じの作品

ゲイやバイセクシャルの要素を取り入れることで、兄弟愛やら親子愛、いろんな愛の形を複雑化してるけど、個人的にけっきょくぼんやりしたまま終わっちゃったという印象
キャラの内包する狂気や情欲がいっきに吐き出されるようなドラマを期待してただけに、ちょっと物足りなかった

フランシスの理不尽な暴力描写や、トムの心のゆらぎっぷりが楽しめる中盤あたりまではいいんだけど、サラが加わってからの盛り上がりがどうもノリきれなかった
もっと複雑で危険な内容かと思ったら、意外にもシンプルなところに落ち着いちゃったのに肩すかしをくらわざるえない

個人的評価:70点
オススメ度:レーザー搾乳機がじゃっかん気になる




トム・アット・ザ・ファーム 予告

イコライザー (2014/米)

監督:アントワン・フークア
出演:デンゼル・ワシントン / マートン・ソーカス / クロエ・グレース・モレッツ / デビッド・ハーバー / ビル・プルマン / メリッサ・レオ

ホームセンターで働くマッコールは深夜のダイナーである少女と出会う
その少女の抱えたトラブルを知るうちに、彼は悪をみすごせなくなり・・・

19秒でなんでも解決!みたいな特殊能力っぽいものをもった主人公が暴れるアクションです、ってな作品イメージを予告からうけたけどぜんぜん違うじゃないの
実際はそんなイメージとは真逆の内容で、あえてそういう思いこみをさせるために予告を作ったんじゃないかと疑うレベル
とりあえず派手なアクションで悪と戦うヒーロー(ダークヒーロー)ものを期待してると裏切られますね

昼はホームセンターで働く普通のおっさんな主人公が、出会った少女とロシアンマフィアとつながりのある男たちとトラブルにひとはだ脱ぐ、っていうような流れ
ありがちなつかみのアクションはなく、少女との出会い、組織とのトラブル、という話をいたって普通に淡々と描いていきます
ただ主人公の存在が普通のおっさんながら、どこか陰がある部分がちらつくので、派手さはかけるが退屈はしない

しょうじき個人的に「なんなんだろうな、この映画」と特にこれといった見所のなさに困惑したけど、それも鑑賞後には「これでよかった」とその地味さを楽しめた
なんでもない男がなんでもない顔をして悪と対していく様がじょじょにおもしろくなってくるんですよね
いったい主人公は何者なのか、なんでここまでの行動をするのか、そもそもこの映画ってなんなんだ、という問いこそ野暮ってもんなのかもしれん

主人公の戦いの果ての結末、そのためにここまでやらなくちゃらならかったのか、と不思議な満足感が得られた一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:ホームセンターは危険物でいっぱいだな




イコライザー 予告

2014年10月20日月曜日

THE NEXT GENERATION パトレイバー 第5章 (2014/日)

監督:辻本貴則 / 田口清隆
出演:真野恵里菜 / 筧利夫 / 福士誠治 / 太田莉菜 / 千葉繁 / 堀本能礼 / 田尻茂一 / しおつかこうへい / 藤木義勝 / 高島礼子 / 螢雪次朗 / 西島まどか

来日したロシア要人を狙撃手から守るため、特車2課のカーシャに声がかかるエピソード8
欲に目がくらんで禁断の地下迷宮へ踏み込んでしまった整備班パーティを救出するエピソード9の2話で構成される

パトレイバーファンならおなじみのダンジョンシリーズの三作目ってんだから期待値もしぜんと高まる第5章
だけど個人的にはスナイパー話の方が楽しめました
ダンジョン話もおもしろいけど、そこは期待通りの範疇って感じで「ああ、やっぱそうなるよね」といったふうでした

まずはカーシャメインのエピソード8
なにげにこのTNGシリーズでは優遇されてるキャラな気がするカーシャの過去が明らかになりつつ、緊迫した話にいつにないシリアスムードがよかった
ベタではあるけどゴルゴネタで軽い笑い要素もありつつ、カーシャ関連の人間ドラマ、緊張感のあるスナイプバトルとバランスのよいエピソードでした

次に封印されたダンジョンのエピソード9
白いワニの生む20億の真珠に目がくらみ、ダンジョンの危うさを知らない若い世代が暴走する・・・と、まあ、もぐる理由はどうあれダンジョンでモンスターパニックな話ですね
ダンジョンRPGネタより人の欲望の部分の描写が大きく、レトロなゲームネタを期待してた部分は満足できなかったかな
過去のダンジョン話を踏襲するネタはあるので、「そんなのあった、あった」と懐かしむのはアリ

そんな感じで期待の範囲内のおもしろさだったエピソード9、期待以上に楽しめたエピソード8と、総じて言えば分かりやすいシリアスとコメディの二本立てが楽しめた第5章でした

個人的評価:75点
オススメ度:逃げまどう時のBGMはコミカル調がよかったな




THE NEXT GENERATION パトレイバー 第5章 予告

2014年10月19日日曜日

まほろ駅前狂騒曲 (2014/日)

監督:大森立嗣
出演:瑛太 / 松田龍平 / 高良健吾 / 真木よう子 / 本上まなみ / 奈良岡朋子 / 新井浩文 / 三浦誠己 / 古川雄輝 / 横山幸汰 / 岩崎未来 / 水澤紳吾 / 大西信満 / 原田麻由 / 宇野祥平 / 市川実和子 / 伊佐山ひろ子 / 麿赤兒岡 / 松尾スズキ / 大森南朋 / 岸部一徳 / 永瀬正敏

まほろ駅前で便利屋をやっている多田と行天
ある日、行天の元妻から子供をあずかってほしいと頼まれ・・・

間にTVドラマ版をはさんでるので、久しぶりな感じはしないけど前作の公開はけっこう前になるんですね
相変わらずのゆるいながらも危ういコンビっぷりを堪能させてもらいました
しょうじき話の流れじたいは予告をみて分かるくらいのものだけど、多田便利軒シリーズとしてはちょっとだけ踏み込んだ内容でした

子供が苦手な行天、その上にあずかるのは行天の元妻の子という事態に打ち明けられず悩む多田
一方で多田たちと因縁浅からぬヤクザは、元宗教団体の野菜栽培でやっかいごとを抱えていた
というふたつの話の流れが一本につながっていく感じの内容
多田たちが子供をあずかるうんぬんで、どんだけ話を盛り上げるんだと思わせつつ、けっこう観てて飽きることがないから困らない

「子供」をキーワードにして過去にそれぞれ問題を抱える多田と行天、ふたりの過去がかいまみえるという点でもシリーズの核となる部分をちょっと描いてる感じですね
大の大人が無邪気な子供に振り回される、というよりいい大人がやっと子供と向き合うというのも安直すぎることなくていい
ただ、やっぱりそれはシリーズとしてみればの話で、冷静にストーリーだけを追えばちょっと物足りない
さらにツッコミどころも多く、シリアスな場面でも「いやいや」と冷めてしまう部分も

どこか距離感のはかり方がぎくしゃくしてる多田と行天、そんなコンビに映画でまたあえたのが嬉しい、そんなシリーズファン向けな一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:バスジャックからの展開がツッコミどころ多すぎてじゃっかんひどいわな




まほろ駅前狂騒曲 予告

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 (2013/仏)

監督:オリビエ・ダアン
出演:ニコール・キッドマン / ティム・ロス / フランク・ランジェラ / パス・ベガ / パーカー・ポージー / マイロ・ビンティミリア / デレク・ジャコビ / ロバート・リンゼイ / ジェラルディン・ソマービル / ニコラス・ファレル / アンドレ・ペンブルン / ロジャー・アシュトン=グリフィス / イブ・ジャック / オリビエ・ラブルダン / ジェーン・デル / フローラ・ニコルソン / ジャンヌ・バリバール

元アメリカ女優のモナコ公妃グレース・ケリー
その素性ゆえにモナコに馴染めきれずにいる中、フランスとの問題に国も揺るぎはじめる

超個人的な思いこみだけど、なんとも「おフランス映画」っぽい印象でした
グレース自身の悩みや滑稽さ、陰謀やサスペンス、政治的な重大事件、すべてが綺麗に装飾されて描かれている感じ
すました感じで抑揚をおさえた作りはわざとなのかしらんけど、どうにも個人的に一本調子すぎて睡魔との戦いに終始せざるえなかったですね

メリケンの卑しいビッチ女優の公妃とか、モナコ公国にふさわしくないザマス的な空気の中、自身も女優であることを捨てきれずに過ごすグレース
そんな中、フランスとの関係が悪化、いろんな問題が山積み状態でどうするよっていうお話
グレースが女優魂を有効利用して「公妃を演じる」ためにトレーニングをはじめたり、身内で陰謀めいたものがあったりところどころでおもしろい展開はあります

だけど、どんな展開になろうと作品のリズムは頑なに一定を保ち、その抑揚のなさっぷりになんかえらい事態になってるけど、それが伝わってこない
こういう作品だから、と言われれば仕方ないけど、もっと過剰演出があってもよかった気がしないでもない

話じたいはドラマティックでコミカルでスキャンダラスで盛り上げられる要素はたっぷりあるんですが、どうにもホントに個人的に乗り切れなかったですね

個人的評価:50点
オススメ度:言いたいことは分かるがあんまり「演じること」が響かない




グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 予告

2014年10月13日月曜日

蜩ノ記 (2014/日)

監督:小泉堯史
出演:役所広司 / 岡田准一 / 堀北真希 / 原田美枝子 / 青木崇高 / 寺島しのぶ / 三船史郎 / 井川比佐志 / 串田和美 / 吉田晴登

庄三郎は城内での斬り合い騒ぎの責めとして、幽閉の身である秋谷の手伝いをかねた見張りを命じられる
秋谷は3年後までに家譜を仕上げ切腹をする身であった

あれだろ?切腹が決まってるおっさんとふれ合ううちに、青年が武士の心根について悟っていくみたいな文学チックなドラマだろ?
という思いこみは外れてもいなかったけど、負のイメージを抱くほどのものではなかった
むしろ鑑賞後には前向きな正のイメージで満たされましたね

城内で斬り合い騒ぎをおこした庄三郎は家老の都合で切腹は免れ、そのかわりに不義の罪によって十年の間に家府を作成の後に切腹を命じられている秋谷の手伝いと見張りをすることになる
そんな中で庄三郎は秋谷の罪について調べるうちに、その秋谷の家族に思いが傾いていき…みたいな分かりやすいドラマ
庄三郎が秋谷のところへ来た時点で話の筋は分かりやすく描かれて、ひじょうに作品に入り込みやすい

かといって先が読めすぎて「何が描きたいのか予告を見るだけでじゅうぶん」な退屈さはなく、確かに秋谷の罪についての事実はすぐに分かるが、真実が分かるまでの過程が興味を持続させてくれます
さらに基本は静かな、それこそ情景や所作をじっくり楽しむ文学を映像にしたような作りながら、時おり殺陣や喧嘩、大立ち回りなどの動の要素が良いタイミングで差し込まれてくるのも飽きを緩和している
ドラマ部分も武士として理不尽に耐えて覚悟を決めざるえない締め付けられる部分だけでなく、観ててスカッとするシーンもあって良いですね

静と動、文学的描写と娯楽要素、バランスのとれた人間ドラマがとても楽しめました

個人的評価:85点
オススメ度:さりげなく成長していく庄三郎と秋谷親子、この三人組の男っぷりが素敵




蜩ノ記 予告

2014年10月12日日曜日

アバウト・タイム 愛おしい時間について (2013/英)

監督:リチャード・カーティス
出演:ドーナル・グリーソン / レイチェル・マクアダムス / ビル・ナイ / トム・ホランダー / マーゴット・ロビー / リディア・ウィルソン / リンゼイ・ダンカン / リチャード・コーデリー / ジョシュア・マクガイア / ウィル・メリック / バネッサ・カービー / トム・ヒューズ / キャサリン・ステッドマン / リチャード・E・グラント / リチャード・グリフィス

21歳になったティムは、父親から自分の過去に戻れるタイムトラベルの力が使えるようになったとしらされる
この能力をどう使うか考えたすえ、ティムは恋人探しに使うことにするのだった

ちょっと想像していたのと違い、全体的にさらっとストレスなく観られる心地の良い作品でした
時間を操れるという設定から思いつく負の部分とか、どろどろしがちなドラマっぽい要素はわりと薄め
コミカルな展開とチャーミングな登場人物たち、特にティム父ちゃんの存在感がハンパなく素敵でした

ちょっとした失敗も過去に戻ってやり直せるタイムトラベルの力
それを使って恋人をゲットしようとティムは画策するも、あっちをたてればこっちがたたず状態でなかなかにうまくいかない
という中で、なんだかんだ幸せをゲットしていく・・・みたな話ですね

とにかくティムのタイムトラベルの力の使い方、というキャラの性格じたいがすごい魅力的
せっかく力を使って個人的にうまくいったのに、悩むとかそういう計算なしで知人のために過去を変えて、自分の成功がなかったことになってもくじけない
けっきょくのところ力のありようも大きいけど、ティム自身の人間性が良いんでしょうね

力との正しい向き合い方を受け入れていく課程のドラマもおもしろいけど、家族との付き合い、特にティム父ちゃんとの話がホントにおもしろい
ある時は父と子、父と父、似たもの同士のダブル良い人キャラがすっごい癒される

鑑賞後にこみ上げてくる感動的でさわやかな気持ちよい感情に心の淀みが洗われざるえない作品でした

個人的評価:90点
オススメ度:あたりまえの日常の素晴らしさ、言葉や歌の詞にするとピンとこなくてもこの映画なら身にしみてわかる




アバウト・タイム 愛おしい時間について 予告

アルゲリッチ 私こそ、音楽! (2012/仏・スイス)

監督:ステファニー・アルゲリッチ
出演:マルタ・アルゲリッチ / スティーブン・コバセビッチ / シャルル・デュトワ / リダ・チェン / アニー・デュトワ

世界的なピアニスト、マルタ・アルゲリッチ
その娘が母と家族にせまるドキュメンタリー

とうぜんながら通常運転なにわかっぷりゆえに、ピアニストとしてのマルタさんについては知りませんでした
しかし、その冒頭の演奏シーンでいっきにもっていかれ、迫力というかそういう部分はガツンと感じられた
鑑賞後にCDを購入したくなる系の作品でしたね

ドキュメンタリーということでマルタさんの人柄みたいのから、アルゲリッチ家という部分を描きたかったんでしょう
そんな部分はけっこうすぐにつかめ、マルタさんはこういう人物だ、とかアルゲリッチ家はこういう事情なんだよっていうのはホントに序盤でまとまっている感じ
そんなわけで、なんか中盤以降はずっと同じことを繰り返し描いているようにしか思えなかった

いろんな時代の映像が「こんなのよく撮ってたな」という意味では貴重なシーンが多いけど、しょうじきホームビデオを見せられてる感じは否めない
家族や関係者にとっては超レア映像なのかもしれないが、個人的には「いや、そんなん見せられても」と言いたくなる
なんか意味がありそうな映像から得られる情報が退屈なんですよね

マルタさんの演奏シーンこそ見応えはあったけど、ちょっとそれだけな感じの一本でした

個人的評価:45点
オススメ度:言葉や映像で説明できないなら、もっと演奏シーン中心にすればいいのに




アルゲリッチ 私こそ、音楽! 予告

2014年10月6日月曜日

ジャージー・ボーイズ (2014/米)

監督:クリント・イーストウッド
出演:ジョン・ロイド・ヤング / エリック・バーゲン / マイケル・ロメンダ / ビンセント・ピアッツァ / クリストファー・ウォーケン / マイク・ドイル / レネー・マリーノ / エリカ・ピッチニーニ / ジョセフ・ルッソ / ドニー・ケア / キャサリン・ナルドゥッチ

盗品を売買しつつバンドで演奏するトミーとニック
ある日、トミーはフランキーの歌声に目を付けて仲間に引き入れるのだった

個人的にフォーシーズンズのことは知らない身でしたが、流れてくる曲にはけっこう聴いたことのあるものも多く、洋楽とかの知識が乏しくても楽しめました
まあ、でも当時の事情とか知識があった方がホントの意味で楽しめるんでしょうね
夢を叶えていく様と挫折して堕ちていく様の両方を平等に描いていて、感動系のサクセスストーリーとはちょっと違う感じでした

粋がってる街のチンピラがバンドとして、紆余曲折ありながら成功をおさめていく様を描いている内容で、元がミュージカルだけどそんな要素は皆無な感じ
演奏シーンはふんだんにあるものの、そこは流れでステージのシーンを描いているだけで歌って踊って状況を描写するようなのではないですね

メンバー内の確執もあまりきれいごとな風に美化せず、人間的にちょっと悪い印象を与える部分もあえて描いていていい
バンドにとっての明と暗をはっきりと映し出している感じ
ただ、ちょっと個人的に話がダイジェストっぽく思えて、登場人物の独白もあってなんか外側からながめてる感がしました

良い時期も悪い時期も描くのはおもしろいけど、鑑賞後にトータルでは負の感情が多く残ったのもちょっと・・・
嘘でもファンタジーでもいいから、最終的には観てて抱えたストレスをすべて発散させてほしかった
やっぱりバンドのファンならば最後にはスッキリ晴れた心で観終えることができたのかなあ

個人的評価:75点
オススメ度:普通にサントラが欲しくなったのは言うまでもない




ジャージー・ボーイズ 予告

ミリオンダラー・アーム (2014/米)

監督:クレイグ・ギレスピー
出演:ジョン・ハム / アーシフ・マンドビ / ビル・パクストン / スラージ・シャルマ / マドゥル・ミッタル / レイク・ベル / アラン・アーキン / ピトバッシュ

スポーツ選手のエージェントをしているJB
経営的に崖っぷちの彼は最後の賭けとして、インドでの野球選手を発掘することにする

ビジネスよりな考えに傾きすぎてんじゃねえよ、みたいなけっこう日本人好みな話でしたね
リアル路線なドラマというより、人情系な感じで細かい辛い現実部分は気にせず、とりあえず気持ちを優先しようぜ、みたいなノリがファンタジーでおもしろい

長年かけてきた案件がポシャってしまったエージェントのJB
金銭的にも厳しい中、最後の描けとしてインドでのプロ野球選手発掘にのりだす中、そうそうことはうまくいかず・・・みたいな感じでカルチャーショックみたいなドタバタがありつつ話は進みます
なんだかんだでうまくいきかけてはハプニングやらで問題がおき、それを乗り越えていくことで人間としてのJBも成長していく、と

けっこう問題になる部分が分かりやすく、解決法もそう引きずりすぎないうちに見つかる
そこへインドとの文化の違いやらでコミカルな日常をはさみ、さらに偶然というかじゃっかんのファンタジー要素で味付けしてあります
とりあえず観ていてストレスがたまらない展開でいて、ゆるすぎない良い話なドラマが楽しめました

愛嬌あるリンクとディネシュのふたりとお調子者コーチ見習いも加わって、けっこう肩の力を抜いて観ていられますね
主人公のJBのビジネスライクに凝り固まった部分がどう変化していくか、って部分も急激に変わることなく描いているのもキャラが魅力的に映っていい
さらに彼らを支える周りの登場人物たちも素敵な人たちばかりで、自然と観ていて笑顔になれます

しょうじき爆発的なおもしろさってのはないけど、ゆったりと絆のつながりを楽しめるドラマでした

個人的評価:80点
オススメ度:じゃっかんインド人を見下してるように感じなくもない




ミリオンダラー・アーム 予告

記憶探偵と鍵のかかった少女 (2013/米)

監督:ホルヘ・ドラド
出演:マーク・ストロング / タイッサ・ファーミガ / ブライアン・コックス / サスキア・リーブス / リチャード・ディレイン / インディラ・バルマ / ノア・テイラー / アルベルト・アンマン

人の記憶を観ることができる能力をいかして仕事をするジョン
そんな彼は絶食している少女の記憶を観て、原因を取り除いてほしいという仕事を受ける

うーん、なんというか理解できるけどスッキリも納得もできない、そんな映画でしたね
いちおミステリ要素もあるんでネタバレはしないけど、オチを知っても「おお、そうだったのか」という驚きや、「あの時のあのシーンは・・・」みたいな伏線に感嘆することもない
つまらなくはないんだけど、観てていろいろ考えてた時間を返してとちょっと言いたくなりましたね

人の記憶を観る能力をもつ観察者として、同じ力を持つ者たちと会社で働くジョン
妻を亡くして復帰したばかりの彼は、ある少女の絶食の理由をさぐるために記憶を観ることになる
という中で、当の少女をふくめその家族もくせ者ぞろい、さらにトラウマ持ってる主人公に、記憶を観る能力という怪しい設定・・・どこかに仕掛けがあって騙してくるのだろうと思わざるえない

どんなトリックが展開し、真相はどうなのかって部分を映画に騙されないように考えながら観るのが楽しい
細部に怪しいシーンは点在しているので、ホントに観ているあいだは退屈することはない
現実か、記憶の中の出来事か、だんだん境界が怪しくなっていく意図的な作りがおもしろさを加速させていきます

だんだん頭が混乱してきて、オチでどんな感じでこのごちゃごちゃした感情をスッキリさせてくれるのかと期待してたんですけどね・・・
いろんな意見があるんでしょうが、とりあえず個人的にはなんか嫌な意味で肩透かしくらった感が強かった

個人的評価:70点
オススメ度:鍵のかかった少女とか意味深な邦題やめて




記憶探偵と鍵のかかった少女 予告

2014年10月5日日曜日

翠星のガルガンティア めぐる航路、遥か 前編 (2014/日)

監督:村田和也
出演:石川界人 / 金元寿子 / 水瀬いのり / 茅野愛衣 / 阿澄佳奈 / 伊藤静 / 大原さやか / 小西克幸 / 恒松あゆみ / 杉田智和

ガルガンティアでサルベージの仕事をするレド
そんな中、海底でほぼ無傷の船を発見、これをサルベージする大仕事が始まろうとしていた

今回の劇場公開にあわせ、取り急ぎテレビシリーズを観て予習ずみです
単純に襲いかかる敵と戦うロボットものと違い、日常描写が多くありシンプルなボーイミーツガールでな部分もおもしろい
で、この劇場版はまんまテレビシリーズの続きからはじまり、前編とはいえあるていど区切りはつくので、これ単作としてもとりあえずは楽しめる作りにはなってましたね

レドが見つけた船を引き上げることで盛り上がるガルガンティアの中、レドは過去の経験(エピソード)を思い出しつつ、今の新たな暮らしに生きていく、という話
なにか新しい動きがあるというより、日常を描くことでレドたちのリスタートを描いている感じですね

しょうじきテレビシリーズの後日談というかサイドストーリーみたいな感じは否めないけど、いちおこれからどうなるんだみたいな先が気になる要素もある
だけど、やっぱり基本は現状を描く部分に終始しているので、新たな展開みたいのを期待してると物足りないかもしれん
まあ、でも過去話を交えつつ元気でやってる主人公、そしてアクシデントがありつつのみんなとの関わりを描く作りは新たな成長みたいな感じで楽しめる

おそらく後編での急展開があるという中でのあえてゆるい描写だと思うので、希望的観測ではあるけど、作品のファンとして後編に期待したいですね

個人的評価:65点
オススメ度:サプライズはあまりないッス




翠星のガルガンティア めぐる航路、遥か 前編 予告

ファーナス 訣別の朝 (2013/米)

監督:スコット・クーパー
出演:クリスチャン・ベール / ウッディ・ハレルソン / ケイシー・アフレック / フォレスト・ウィテカー / ウィレム・デフォー / ゾーイ・サルダナ / サム・シェパード

病の父と面倒のかかる弟を持つラッセル
ある日、飲酒運転で自動車事故を起こしてしまい、服役することになるが塀の外では人も社会も微妙に変わっていき・・・

地味ながら積み木をひとつひとつ重ねていくような作りがじっくりと楽しませてくれる
ホントにゆっくりと話が進むため、起承転結のあるドラマを観ている充足感がある
なにより兄弟愛を軸にした主人公の存在が大きく、大げさになりすぎない人間くさい行動がいいですね

刑務所に入ることになった主人公が、刑期を終えて戻ってみると関わりのあった人たちが微妙に変容していた
という時の流れに取り残されて変わらない主人公と変わってしまった周り、特に弟とのあれこれを描いている作品
父親、恋人、知人、弟、前とちっとも変わらない部分と大きく変わってしまった部分、そんなところがじんわりとにじみ出てくるように描かれてます

どんな話かっていうと単純なんだけど、はじまりから本筋が見えてくるまでの積み重ねがおもしろく、つまるところ主人公がたどる道筋を楽しむ内容かもしれません
別にすごい過去があるわけでもない主人公が、あれこれと思い悩みつつ話が進んでいくのを観てるだけでじゅうぶんにおもしろい

弟に対する態度や言葉がさりげない愛に満ちてる感じがすごい伝わってくるのもいいですね
で、そこからのラストの展開がまたなんともいえない
観てる人の思い、いろんな解釈を引き受けるようなクライマックスの主人公が素晴らしい
こういう思いなんだろう、という観てる人の数だけどんな色にも染まる姿の描き方になってる感じ

物語の中にあって自分の答えを自由に当てはめることのできるおもしろい一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:またこの人、警官役かと思わざるえない




ファーナス 訣別の朝 予告

マザー (2014/日)

監督:楳図かずお
出演:片岡愛之助 / 舞羽美海 / 真行寺君枝 / 中川翔子

漫画家である楳図かずお、その生い立ちについて若草さくらは取材することになる
語られる過去の中、かずおの母が大きな存在であると分かってきて・・・

呪いとか精神的な訳の分からないJホラーとは違う、だけどおもいっきりB級臭いクセのある作品でした
オーソドックスでダイレクト、物理的な恐怖が襲いかかってくる感じは個人的にはアリだと思う
だけど、やっぱりどうにも安っぽいというか、ギャグっぽくみえちゃう点はご愛敬ってことなんでしょうね

生い立ちを取材される楳図かずお
画を描くことを教えてくれた母について語る中、母が語ってくれた夢が現実へとなっていく
一方、取材を続けるさくらも次々と怪しい出来事にあっていく、というような話
化け物のような怪しい母のエピソード、そして現実的な悲話の中の母のエピソード、現実と幻の中でイメージを変える姿がおもしろい

それでいてけっきょくはダイレクトにドーンと襲ってくる恐怖が今の時代では逆に新しいJホラーと思えなくもない
なんだかんだでうまくまとめきれてない感はあるけど、独特な楳図ワールドってことで個人的には楽しめました
が、やっぱり好き嫌いは大きく分かれるでしょうね

くる、これぜったいくるってポイントは絶対に外さないオーソドックスな描写が懐かしおもしろい一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:まあ、わかっちゃいるけどビックリせざるえないお化け屋敷みたいな、ね




マザー 予告