2016年1月31日日曜日

俳優 亀岡拓次 (2015/日)

監督:横浜聡子
出演:安田顕 / 麻生久美子 / 宇野祥平 / 新井浩文 / 染谷将太 / 浅香航大 / 杉田かおる / 工藤夕貴 / 三田佳子 / 山崎努 / 大森立嗣 / 野嵜好美 / 不破万作 / 戌井昭人 / 金子清文 / 平田薫 / 中沢青六 / 鈴木晋介 / 日向丈 / メラニー / ガルシア・リカルド

端役をそつなくこなす俳優の亀岡拓次
独り身の彼は寂しさから女性のことが気になるのだった

ザ・微妙、と言うと悪い意味にしか聞こえないけど、本当にこの映画に限っては誉め言葉として使いたい
酒と役者としての仕事、そして日常、そんな亀岡拓次の姿を見せられているだけなのにおもしろい
微妙なドラマ、微妙なシュールさ、微妙なロマンス、微妙なミラクル、残念俳優というかまさに亀岡拓次っぷりを完璧に映像に反映している
個人的に安田顕さんのファンなので、そういう意味で最初から最後までその存在を堪能し、楽しませてもらいました
けっこう配役も豪華なのに嫌みをいっさい感じないし、ドングリの話のごとくどんどん純粋にハマっていって、その微妙さとかどうでもよく思えてくるから不思議な魅力に満ちてますね
じゃっかん雰囲気映画っぽいところもあるんで、この空気感に合うか否かで人を選ぶかもしれない
キャラクターと人間味、その中間、良い意味でとかいう表現が妥当かどうか分からないけど、素敵に半端な亀岡拓次の魅力に酔わざるえない

個人的評価:80点
オススメ度:このおっさん臭さ、共感しまくり



俳優 亀岡拓次 予告

ブラック・スキャンダル (2015/米)

監督:スコット・クーパー
出演:ジョニー・デップ / ジョエル・エドガートン / ベネディクト・カンバーバッチ / ロリー・コクレイン / ジェシー・プレモンス / デビッド・ハーバー / ダコタ・ジョンソン / ジュリアンヌ・ニコルソン / ケビン・ベーコン / コリー・ストール / ピーター・サースガード / アダム・スコット / ジュノー・テンプル / ジェレミー・ストロング / ブラッド・カーター / W・アール・ブラウン

1975年、ボストンでギャングとして名が広まってきたジミー
そんな彼を昔から知るFBI捜査官ジョンはジミーの弟ビリーに接触するのだった

大物犯罪者、ギャングの抗争、FBI捜査官の不正、それらをあえて派手なドンパチや過剰演出にたよらず、グッとおさえたみせるドラマ
と言えば聞こえはいいけど、ちょっとおさえすぎて渋いというより地味な領域にハマリこんでる印象が強い
なんかけっきょくジミーが犯罪者としてビッグになっていく課程で、そのつど邪魔者を殺していくの繰り返し
最初こそ殺しのシーンに引き込まれるけど、だんだん飽きてくる
話の流れもけっこう淡々として運ばれていって、じょじょに眠気レベルもあがってくる
それでも時折、目が覚めるようなデップさんの迫真の演技&表情にドキリとさせられますね
デップさんのがんばりはすごいけど、さすがにそれだけのために、というほどとはいえない一本でした

個人的評価:65点
オススメ度:ベネカンさん、思ったより出番ないのね



ブラック・スキャンダル 予告

2016年1月25日月曜日

ザ・ウォーク (2015/米)

監督:ロバート・ゼメキス
出演:ジョセフ・ゴードン=レビット / ベン・キングズレー / シャルロット・ルボン / クレマン・シボニー / セザール・ドムボイ / ジェームズ・バッジ・デール

1973年、パリで綱渡り師をやっているフィリップは常に最高の舞台を探していた
そしてある日、たまたまアメリカで完成間近のワールドトレードセンターの記事を目にし・・・

とりあえずこれ予告から受ける印象が悪すぎてもったいない、と言いたい
ビルの間で綱渡りをする、というだけの地味な映画なんかじゃなく、登場から退場までの一級品のショーとして楽しませてもらえました
実際にあったできごとの映画化といってもドキュメンタリー風な地味さはいっさいなく、主人公の軽快な口調とノリのいいBGMで本当にフィリップのショーにわくわくさせられっぱなし
しかし地味さはない、とは言ったものの、やはり劇場で3Dとして鑑賞するのが前提なのは否めない
などと言うとマイナス評価のようだけど、全編を通しての3Dを意識した映像はライブのショーを観劇する感覚で劇場で観ないともったいないかもしれない
綱渡りに挑むまでの前段階も娯楽描写を意識した作りになっていて退屈感はうすい
いざ、本番の綱渡りのシーンにおいても文字通り手に汗握らざるえない緊張感と、息抜きのバランスがよくて最後までフィリップのパフォーマンスを堪能させてもらいました

個人的評価:85点
オススメ度:さすがにフィリップを英雄視しすぎるのが鼻にはつくけどね


ザ・ウォーク 予告

2016年1月24日日曜日

PERSONA3 THE MOVIE #4 Winter of Rebirth (2016/日)

監督:田口智久
出演:石田彰 / 豊口めぐみ / 鳥海浩輔 / 田中理恵 / 緑川光 / 能登麻美子 / 坂本真綾 / 緒方恵美 / 中井和哉 / 田の中勇 / 沢城みゆき

望月綾時から知らされる事実に結城理たちは絶望におちいる
逃れられない死を前に各々は思い沈む日々を過ごすのだった

前作からいい感じでゲーム内容をなぞることに固執せず、それでいて脱線すぎずのバランスがよかったけど、それは今作でも継承されていて楽しめた
ゲーム版はゲーム版、アニメ版はアニメ版と割り切っていて初期のようなダイジェスト感がなくなってますね
前半のドラマパートと後半のアクションパートの構成も個人的には成功していると思う
ちょっと前半の陰鬱とした雰囲気が長々と苦痛に感じるけど、それがあったからこそクライマックスへ向けて盛り上がる
まあ、面々の心境のゆれ描写のクドさは否めないかもしれんけど
そんな部分もペルソナ戦闘が始まれば盛り上がりにかき消され、あとはもうラストまでつっぱしる
ラストの見せ方やBGMの使い方などゲーム版は、とかめんどくさい先入観は捨て、ホントにこれはこれとして観るのが一番楽しめる

個人的評価:75点
オススメ度:天田くんの力強い演技にグッとくる



PERSONA3 THE MOVIE #4 Winter of Rebirth 予告

白鯨との闘い (2015/米)

監督:ロン・ハワード
出演:クリス・ヘムズワース / ベンジャミン・ウォーカー / キリアン・マーフィ / ベン・ウィショー / トム・ホランド / ブレンダン・グリーソン

1850年、小説家のメルヴィルは次作の構想のため、漂流から生還した捕鯨船の乗組員の男をたずねる
最初はしぶっていたものの、男はエセックス号と船長、そして一等航海士チェイスの話を語り出す

最初こそ地味な出だしでちょい眠くもなったけど、海に出てからは迫力のあるシーンの連続にふるえっぱなし
散々いままで観てきた海上でのアクシデントもの、と分かっていても嵐、捕鯨、白鯨の画面から襲いかかってくるような迫力に目を奪われる
漂流シーンにしてもキャストの衰弱っぷり、そして隠してきた真実にいたる描写が秀逸で楽しめる
長い話の要点だけをかいつまんで描かれていて、どろどろした人間関係で気が滅入ることなくテンポもいい感じ
ちょっと白鯨周りの宗教くささがダメな人はアレかもしれないけど、なんか小難しいシリアスなドラマと構えずに見た目のインパクトだけでも十分に楽しめる作品ですね

個人的評価:80点
オススメ度:白鯨さんの希望を見いだすのみはからって、絶望におとす鬼畜っぷりに悪魔と言わざるえない



白鯨との闘い 予告

エージェント・ウルトラ (2015/米)

監督:ニマ・ヌリザデ
出演:ジェシー・アイゼンバーグ / クリステン・スチュワート / トファー・グレイス / コニー・ブリットン / ウォルトン・ゴギンズ / ジョン・レグイザモ / ビル・プルマン / トニー・ヘイル

美しい恋人と暮らすダメ男のマイク
そんな彼の前にCIAの女が接触してきて・・・

予告から予測してたノリノリなBGMで軽快に殺しあいまくり、っていうのはちょっと違いましたね
コメディよりシリアス分が多めで、思ったよりおとなしい作品な印象
木と自動車、アポロの話、主人公周りの設定がストーリー進行にあわせて展開していくので楽しめる
敵役のラファの存在もいい感じでイカレてて魅力的だし、主人公のバカっぷりと戦闘時のギャップもいい
だけど、どうにも個人的にもうちょっとハメをはずしてもよかった気がしないでもない
おバカな主人公をもっとふざけ度を上げて描き、内容じたいもノリと勢いにまかせてもよかったかも
長回しのバトルとか、主人公のマヌケな行動とか、ホントに良いセンスしてるなと感心するところがある反面、なんか弾けない感じがもったいない一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:そのタイミングか



エージェント・ウルトラ 予告

2016年1月17日日曜日

縁 The Bride of Izumo (2015/日)

監督:堀内博志
出演:佐々木希 / 井坂俊哉 / 平岡祐太 / 国広富之 / りりィ / 藤本敏史 / 根岸季衣 / いしだ壱成 / 佐野史郎 / 大桑マイミ / 能世あんな / 倉田あみ / 日野陽仁 / 小室ゆら / 波多野祐司 / 池田紋菜 / 上野凱 / 荒木英里 / 花風みらい / 西条美咲 / 阿武勇輝 / 松永ゆうま / 大川裕明 / 松田ぴろし / 深海哲哉 / 藤井武美

両親のいない真紀を育ててくれた祖母が亡くなる
その遺品を整理していると、白無垢とともに男の名前だけ書かれた婚姻届けを見つけ・・・

とにもかくにもひたすらに美しい画に圧倒される
景観的な美はもとより、出雲に生きる人たちの体温を感じることのできる温かさがあるのがいい
婚姻届けの男を探す主人公が出雲の地をめぐることで、ご当地愛を描いている作品、という序盤の印象通りでもじゅうぶんにおもしろい
だけどタイトル通りに縁がつながっていく中盤からの盛り上がりがドラマとして作品を肉付けしていって、しっかりとした内容のある映画となっている
しじみ漁師の充を軸に地元の人たちと主人公をつなげていく縁、またそこから派生していく縁、そして過去、現在、未来をつないでいく描写に満足せざるえない
出雲という舞台をいかしつつ、そのロケーションだけにたよりきらない中身のある作品を堪能させてもらいました

個人的評価:85点
オススメ度:嫌みになりすぎない、ほどよいあざとさが心地よい



縁 The Bride of Izumo 予告

の・ようなもの のようなもの (2016/日)

監督:杉山泰一
出演:松山ケンイチ / 北川景子 / 伊藤克信 / 尾藤イサオ / でんでん / 野村宏伸 / 鈴木亮平 / ピエール瀧 / 内海桂子 / 鈴木京香 / 佐々木蔵之介 / 塚地武雅 / 笹野高史 / 宮川一朗太 / 仲村トオル / 三田佳子

30歳の誕生日をむかえた売れない若手落語家の志ん田
ある日、師匠から行方不明になった志ん魚を探し出すように命じられるのだった

今になって「の・ようなもの」の続編が観られるなんて、まあなんとも言えない不安を感じつつも期待を胸に鑑賞
こういう時を経ての続きものってのは、どうにも気負いすぎてか前作の良さを打ち消してくれるのが多い気がするけど、この作品は良い感じで雰囲気を残してくれていて楽しめた
とは言っても「の・ようなもの」から自然に地続きになりすぎていて、あまりに古くさい作風はちょっと賛否が分かれるかもしれない
昭和臭うんぬん以前にホントに現代の映画を観ているのか、と思うほどに良い意味で古さがにじみ出ている
前作を意識したネタもあるけど、そこまでガッツリ意識しすぎてない力の抜け加減がいい
あくまで「のようなもの」である、ってな感じですね

個人的評価:75点
オススメ度:なんだかんだで志ん魚の魅力があふれまくってる


の・ようなもの のようなもの 予告

2016年1月11日月曜日

人生の約束 (2015/日)

監督:石橋冠
出演:竹野内豊 / 江口洋介 / 松坂桃李 / 優香 / 小池栄子 / 高橋ひかる / 美保純 / 市川実日子 / 立川志の輔 / 室井滋 / 柄本明 / ビートたけし / 西田敏行

東京の大手企業のワンマン社長、中原のもとに塩谷の名で幾度となく電話がかかってくる
何度目のすえにかけ直してみたものの、すぐに切られてしまったことを不審に思い中原は直接会うために富山へ向かう

日本の人情、心、魂、精神、そんなものが凝縮されて結晶になったような作品でした
田舎の口は悪いが人情味の厚い人たちは是であり、自分と金のことばかりの都会育ちは否である、分かりやすいくらいに白黒はっきり色分けされた感じに心が動かされそうで、なんか引っかかる
祭りを核として人の感情や言葉に熱を帯び、その熱量にうかれるままに身を委ねれば気持ちよいだろうけど、あまりに愚直に一方向に進む集団に危うさを感じる
主人公もふくめ登場人物が作中で言うところの突き進んでから考える中原タイプばかりで、考えてから走り出す塩谷タイプが目立たない
新春ドラマスペシャルみたいなTVを観る感覚ならアリかもしれないけど、映画としては欠けてる部分が大きすぎる気がする一本でした

個人的評価:60点
オススメ度:よく言えば昔なつかし、悪く言えば時代にそぐわない



人生の約束 予告

ブリッジ・オブ・スパイ (2015/米)

監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス / マーク・ライランス / スコット・シェパード / エイミー・ライアン / セバスチャン・コッホ / アラン・アルダ / オースティン・ストウェル / ミハイル・ゴアボイ / ウィル・ロジャース

東西冷戦時代のアメリカ、弁護士をやっているジムのもとにソ連のスパイの弁護をしてほしいと依頼がある
しかし、それはアメリカの司法の公正さを示すための表面上のパフォーマンスにすぎず出来レースのように状況は有罪へむかって進むのだった

なにはともあれ英語を聞き取れない私にしてみても、役者さんたちの演技に一発で魅入られる
スクリーン全体へと引き込まれるカメラの構図とあいまって、ひとときも退屈することなく最後まで作品を堪能させていただきました
鏡の使い方と人々の視点も特徴的で、それが「映画をよく観る人なら分かるでしょ」という気取った演出じゃなく、深く考えずに観てても感覚的にうったえてくる感じなのがいい
話じたいもとにかく万人に理解してもらえるように、ストーリー展開の加速度も調節されていて難しいこともない
重い展開が続けば、ちょっと力の抜ける描写で肩もこらず、とホントにひとつひとつのシーンが考えられて作られていると感じられた上質な映画でした

個人的評価:100点
オススメ度:難しさ、説教臭さ、意外なほどにめんどくさい要素がなくて誰が観ても楽しめる



ブリッジ・オブ・スパイ 予告

2016年1月10日日曜日

クリムゾン・ピーク (2015/米)

監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:ミア・ワシコウスカ / ジェシカ・チャステイン / トム・ヒドルストン / チャーリー・ハナム / ジム・ビーバー

幼い頃に母を亡くしてから幽霊を視ることのできるイーディス
彼女は父の仕事の関係から知り合ったトーマスにじょじょにひかれていき・・・

幽霊という存在、美術や時代の雰囲気、トーマスのミステリアスさ、どれをとっても目を楽しませてくれる要素に満ちている
だけど、多彩さゆえに特に序盤で目移りしてしまい視点が定まりきれない心地悪さを感じた
意外にゴースト的な成分がメインになってないのはそれはそれでいいんだけど、容姿端麗な登場人物とおぞましい姿の幽霊という対比をもっと織り込んであってもよかったかな、と
あとは全体的にもうちょいテンポよく話が進んでくれると個人的に好みかもしれない
序盤から中盤にかけてのセリフや描写がクライマックスに向けてピースとしてはまっていく様はおもしろく、単なる雰囲気ミステリ、サイコホラーというものじゃないっていう意気込みは強く感じる
クライマックスに向けてどんどんおもしろくなってくるし、プラスの印象も大きいんだけどどうにも細かいマイナス要素がもったいない感じがした一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:時代的なものなのか知らんけど、あまりに怪しすぎる雰囲気の嫁ぎ先にすぐに拒否反応を示さないイーディスさんに違和感



クリムゾン・ピーク 予告

ピンクとグレー (2015/日)

監督:行定勲
出演:中島裕翔 / 菅田将暉 / 夏帆 / 柳楽優弥 / 岸井ゆきの / 千葉哲也 / マキタスポーツ / 入江甚儀 / 橋本じゅん / 篠原ゆき子 / 矢柴俊博 / 宮崎美子

子供の頃からつきあいのある親友同士のごっち、りばちゃん
時は流れて芸能事務所に入ったふたりだったが、順調に名前を売っていくごっちとくすぶり続けるりばちゃんの関係に変化が表だってくる

親友が成功していく姿を幼なじみの女の子をまじえて描く、そんなありふれながらも王道すぎる青春ストーリーが展開しつつも冒頭のシーンの引っかかりがあるために退屈することなく引き込まれる
そんなぬるま湯な前半からいっきに冷や水を浴びせられる後半へ突入していくエッジのきいた流れがおもしろい
前半にしろ後半にしろ、「これはこれで」とそれぞれに味があっていい感じ
というふたつの味が楽しめる感だけでもお得ながら、ラストシーンでさらにワンランク上へ作品じたいが引き上げられるのがたまらない
しょうじき原作者関係であまり期待はしてなかったけど、一本の映画として大満足させてもらった作品でした

個人的評価:90点
オススメ度:キャストも絶妙だわ


ピンクとグレー 予告

2016年1月2日土曜日

独裁者と小さな孫 (2014/ジョージア・仏・英・独)

監督:モフセン・マフマルバフ
出演:ミシャ・ゴミアシュビリ / ダチ・オルウェラシュビリ / ラ・スキタシュビリ / グジャ・ブルデュリ / ズラ・ベガリシュビリ / ラシャ・ラミシュビリ

ある国で独裁政権をふるっていた大統領
しかし、その国で反体制勢力による革命がおき、大統領は小さな孫を連れて国外脱出に向けて逃避行をはじめるのだった

いきなり浮ついた感のする大統領と孫の描写がはじまった時は、想像より重い内容じゃないのかといぶかしく思った
話が進んでも所々でちょっと場違いな軽いノリもみられるし、どうにもイメージしていたものと違うのに戸惑う
だけど、そんな部分も含めた虚飾的なものがどんどんはがれ落ちていき、現実という地金の部分が顔を出してきておもしろい
権力者から一転して悲しみ憤る市民の現状を見せつけられる、とかそんな単純なものでなく革命がなったからこその問題やら、元からの問題が悪化したものやら、それらがからまりあって厳しい現実として展開するのがいい
そりゃ処世術としての立ち居振る舞いは学習するけど、大統領も大統領でなにげにブレないから魅力的に映る
とりあえず登場人物たちの演技に引き込まれるままに鑑賞してもじゅうぶん満足できる一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:観た人自身がどれだけ人間を信じてるかによってラストの見え方が変わってくるな



独裁者と小さな孫 予告

ベテラン (2015/韓)

監督:リュ・スンワン
出演:ファン・ジョンミン / ユ・アイン / ユ・ヘジン / オ・ダルス / チャン・ユンジュ / オ・デファン / キム・シフ

刑事のドチョルはチームの面々と高級車の窃盗事件を追っていた
そしてロシアとのつながりをもつ実行犯たちを追いつめるのだった

分かりやすい善玉な主人公に、分かりやすい悪党な敵役
昨今の設定にこってリアル路線を進むものと逆行した、めんどくさい要素いっさいない
どこか昭和の刑事ドラマを想起させるコミカルな掛け合いに満ちている、というホントにライトな娯楽作品でした
まあ、しょうじきかなり好みは分かれるかもしれないですね
個人的には最初の古くさいギャグシーンの連発にちょっと引いたけど、大企業のバカ息子の悪党っぷりを展開するあたりでだんだん慣れてきて、「これはこれで」と楽しめるようになった
こういう昭和なズッコケコントありな映画と割り切って、非現実的なドラマの中の刑事たちを温かく見守れれば楽しめる
逆に言えば、序盤で完全に拒否反応をおこす人は最後まで鑑賞にはたえられないでしょうね

個人的評価:70点
オススメ度:ドチョルさん本気モード、と思わせての最後まで良い意味でズッコケっぷり



ベテラン 予告

2016年1月1日金曜日

ひつじ村の兄弟 (2015/アイスランド・デンマーク)

監督:グリームル・ハゥコーナルソン
出演:シグルヅル・シグルヨンソン / テオドル・ユーリウソン

牧羊家のグミーは羊の品評会で兄に破れてしまう
そんな兄の羊に異変を感じた彼は詳しく調べるのだった

そのタイトルと羊を扱う映画だからって、どこか牧歌的な内容だと思ったら火傷するかもしれん
とりあえずどんな内容なのか把握するまでちょっと時を有するけど、それが見えてくる頃にはけっこうなシリアスな流れに良い意味で戸惑う
とりあえず日本人的な人情ドラマを意識していたんですが、この兄弟に対してはそんなイメージは温すぎましたね
話が進むにつれてじょじょに兄弟関係、兄についての情報が開示されていき序盤で「?」と感じる部分が見事に溶けて消える
さらに問題老人なお兄ちゃんという概念が定着してきた頃に、終盤へ向けて見え方が変わってくるのがおもしろい
ラストは良くも悪くも余韻が残るというか、賛否が分かれるというか色々と意見はあるだろうけど、そういう意味では強く印象に残る作品として成功しているかもしれんね

個人的評価:85点
オススメ度:いろんな意味でサービスシーンが多いな



ひつじ村の兄弟 予告

リザとキツネと恋する死者たち (2014/ハンガリー)

監督:ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ
出演:モーニカ・バルシャイ / デビッド・サクライ / サボルチ・ベデ・ファゼカシュ / ガーボル・レビツキ / ピロシュカ・モルナール / ゾルターン・シュミエド

歌うトミー谷の亡霊を見ることができるリザ
30歳の誕生日をむかえた彼女はお気に入りの小説をもとに愛を求めるのだが・・・

日本人歌手の亡霊、キツネ憑き、殺人事件、もうそんなワードを聞いただけで鑑賞意欲が跳ね上がらざるえない
のっけからのトミー谷とリザの歌と踊りに一気に作品世界へ強烈に引き込まれる
うさんくさい日本要素すら分かっていてネタにしてる感じで、全体的にコメディの描写がすごく個人的に好みでツボに入るものばかりだった
最初こそあまりに珍妙で先が読めない作品におもしろく思いながらも困惑するけど、もうトミー谷無双に身をゆだねるだけで満足ですね
もちろんリザやゾルタンの魅力も申し分なく、時にブラックなコメディシーンに自然と笑いがあふれる
そんなバカバカしいだけの内容でなく、日本の昔話のような核となくストーリーじたいも楽しめる一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:トミー谷の歌以外の曲もすごい耳に残って心地よい



リザとキツネと恋する死者たち 予告