2017年8月30日水曜日

パターソン (2016/米)

監督:ジム・ジャームッシュ
出演:アダム・ドライバー / ゴルシフテ・ファラハニ / バリー・シャバカ・ヘンリー / クリフ・スミス / チャステン・ハーモン / ウィリアム・ジャクソン・ハーパー / 永瀬正敏 / ネリー

妻と愛犬と暮らす街と同じ名を持つ男、パターソン
バスの運転手を勤めながら趣味で詩作に没頭する日々を送っているのだった

同じ日々の繰り返しで行ったりきたりな行動、主人公を通して詩的に優しく諭されている感じが胸にしみる
大きく変化することのない生活のルーティンなんだけど、その中でのわずかな刺激がクセになり、だんだん主人公の毎日を観ているのが楽しくなってきます
作品に彩りを与える詩も、そっち方面に興味や知識がなくても自然と感覚的に受け入れることができた
ドラマとしての抑揚もちゃんとあるため、芸術作品を気取っためんどくささ臭はうすい
めんどくさい奥さんに対して全許容な主人公、観ていてもやもやする代弁をマーヴィンがしてくれて気持ちもスッとする
詩的でユーモアもありドラマ性とテーマが優しく折り重なった、かみしめるほどに味わい深くなる一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:劇中で出てきた詩人の名に興味をもつも、やっぱり原文が読めないとなんともアレなんかもしれん



パターソン 予告

戦争のはらわた (1977/英・西独)

監督:サム・ペキンパー
出演:ジェームズ・コバーン / マクシミリアン・シェル / ジェームズ・メイソン / センタ・バーガー / デビッド・ワーナー

第二次世界大戦下、ロシア戦線で劣勢をしいられるドイツ軍
偵察小隊を率いるシュタイナー伍長のもとに、ソリの合わない上官がやってくるのだった

こういう男か、とカテゴライズしようとすると、そこからいとも簡単にはみ出る主人公のダンディさが魅力的すぎる
戦争の凄惨さと皮肉、そこら辺は十分に描かれながら「戦争映画」という型ありきでない、出来上がったものが戦争映画だったという濃さがたまらなくおもしろい
古い映画ながら「この当時からこういう画を撮ってたのか」というハッとさせられる部分も多く、本当に古いとか新しいとか観ているうちに気にならなくなる
苛烈な戦闘描写、中でも戦車の暴れまわりっぷりの印象が強烈
主人公たちの小隊、中隊の面々、敵兵たちの織りなすドラマも見応えがありアクション要素と相まって満腹感が味わえた
ただ男前な外見だけでなく、内面の複雑さにも目が離せないシュタイナーさんが素晴らしすぎる一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:小ぎれいな格好より薄汚れた軍服が一番かがやくシュタイナーさん



戦争のはらわた 予告

2017年8月27日日曜日

ワンダーウーマン (2017/米)

監督:パティ・ジェンキンス
出演:ガル・ギャドット / クリス・パイン / ロビン・ライト / ダニー・ヒューストン / デビッド・シューリス / コニー・ニールセン / エレナ・アナヤ / ユエン・ブレムナー / ルーシー・デイビス / リーサ・ローベン・コングスリ / ユージン・ブレイブ・ロック / サイード・タグマウイ

女性だけのアマゾン族の島で戦士として育ったダイアナ
ある日、その島へ飛行機が墜落、それに乗っていた男へ導かれるようにドイツ軍が襲いくるのだった

私服でもドレスでもバトルコスチュームでもチャーミングさに溢れ、上っ面だけじゃない芯から強さがにじみ出てる主人公が素敵すぎる
だけどしょうじきそんな御姿を堪能するのが作品を構成する要素の大部分をしめている感じ
意外とユーモラスな部分が少なく、変に真面目すぎる作りに動きがないシーンでは集中力が途切れる
強い女性の描き方は完璧なんだけど、ちょっと抜けてるところとか、微笑ましい方面の魅力が足りない
極端な話、大音量になって盛り上がってる部分だけ観ているのでも十分かもしれん
ダイアナさんの漢っぷりで熱いアクションシーンはたまらないけど、それ以外のところが個人的にじゃっかんしょんぼりだった一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:ゴルゴム…じゃなくアレスのしわざだ!



ワンダーウーマン 予告

2017年8月23日水曜日

変態アニメーションナイト2017

監督:ソーバルダー・グンナーソン / ピーター・ミラード / ひめだまなぶ / ロバート・モーガン / リリ・カレ / トマス・レノルドナー / ダナ・シンク / エイミー・ロックハート / 冠木佐和子 / イマニュエル・ワーグナー / ブルース・ビックフォード / ホン・ハクスン

HENTAIではなくメタモルフォーゼな数々の短編アニメ集
気持ち悪く、意味不明で精神的にくる作品が次々に連続して攻めてくる不快感がたまらなくクセになる
人生における大いなる無駄を凝縮したようなひとときを堪能できますね
脱力オープニングが終わって早々にガッツリ精神をささくれだって荒れた指でなでられる感覚、ある意味で覚悟はしていたけれど劇場の大画面&大音響で観ると破壊力がすさまじい
個人的には「しとぬごまた」よりレッツコリツの耳にねっとり残滓をこすりつけてくる感じと、ボールシリーズのこの作品群の中では異質な洗練されっぷりが印象に残った
思ったより退屈しないバリエーションで最高まではいかないけど、素敵に「なるほど、分からない」と言わざるえない時間をドブにすてた一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:なんか観ている間は微妙だったWinkRabbiがじわじわくる



変態アニメーションナイト2017 予告

キングス・オブ・サマー (2013/米)

監督:ジョーダン・ボート=ロバーツ
出演:ニック・ロビンソン / ガブリエル・バッソ / モイセス・アリアス / メアリー・リン・ライスカブ / エリン・モリアーティ / マーク・エバン・ジャクソン / ミーガン・ムラリー / アリソン・ブリー / ニック・オファーマン

父親とのいがみ合いがたえないジョー
限界を感じた彼は友人のパトリック、知り合ったばかりのビアジオを誘って森に家を建てて暮らそうと提案する

青春映画は青春映画だけど、成長期うんぬんのドラマはありながら娯楽に満ちた楽しさいっぱいの作品でした
ポップなサウンドにコミカルな描写、そしてビアジオという異物かつ潤滑油キャラが軽快で肌で感じる感覚的な気持ちよさになっている
カラッと爽やかな夏、3人の少年の微笑ましい反抗と交流を観ているだけでも楽しめる
ちゃんと大人になりきれない少年たちのもやもや、という部分は描かれているので話としても青春ドラマの王道としていい感じ
とにもかくにもジョーと合わせても、パトリックと合わせても、単品でも一気におもしろさを加速させるビアジオ映画な気もしないでもない
親子とか親友同士の絆というベースはありながらも、一風変わった雰囲気の娯楽青春映画として良いものを観させてもらったと満足度の高い一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:どっちかというとパトリックの両親の方がキツい



キングス・オブ・サマー 予告

2017年8月20日日曜日

ベイビー・ドライバー (2017/米)

監督:エドガー・ライト
出演:アンセル・エルゴート / リリー・ジェームズ / ケビン・スペイシー / ジェイミー・フォックス / ジョン・ハム / エイザ・ゴンザレス / ジョン・バーンサル / CJ・ジョーンズ / フリー / スカイ・フェレイラ / ラニー・ジューン / ビッグ・ボーイ / キラー・マイク / ポール・ウィリアムズ / ジョン・スペンサー / ウォルター・ヒル

犯罪者の逃走を助けるドライバーの仕事をするベイビー
彼は雇い主に借金返済するため、最後の仕事を受けるのだった

最高にクールでエキサイティング、それでいて主人公を待つ近い未来がハッピーなものにならない予測、そのほどよい苦みがうまくミックスされてスカッと爽快アクションなだけにとどまらないおもしろさがあった
劇中で流れる曲と映像、効果音のシンクロがとてつもなく気持ちよく、さらに目線の誘導まで計算されたあざとさに酔いしれざるえない
話もストレートな展開からの急旋回もあり、登場人物たちも終盤にはどんどん自己主張と輝きが増して音楽以外の要素も十分に楽しめる
最初は無表情で微妙な主人公だな、と思わせといての恋や危機にビシッと決めてくる姿がたまらなく魅力的に思えてくる
状況が煮詰まってきてからの熱さも、ドライビングのスタイリッシュ&クールさも様々な歯車がうまくかみ合っていてる感じがよかった

個人的評価:90点
オススメ度:お気に入りの曲に身近な物をも利用して体をゆらす、という個人的な妄想を体現してくれるベイビーさんに夢中



ベイビー・ドライバー 予告

2017年8月16日水曜日

アトラクション 制圧 (2017/露)

監督:フョードル・ボンダルチュク
出演:イリーナ・ストラシェンバウム / アレクサンドル・ペトロフ

隕石雨に盛り上がるロシアのある都市、その上空に宇宙から謎の球体が飛来する
ユリアは彼氏と友人と隕石雨を楽しんでいた中、軍の攻撃によって球体が街の真ん中へ撃墜されてしまう

ハリウッド的なSF大作でもなければ、そうなりきれなかったガッカリ作品でもない、想像していたのと雰囲気が大きく異なってました
異星人の襲来と街を破壊しての墜落、という非日常世界をベースに若者たちが若さ故の愛憎やあれこれを暴走させるドラマでしたね
けっこうターゲットも若い層に向けられているようで、ハードSFやらエンターテインメントSFを期待していると求めていたものとの違いに戸惑うかもしれない
異星人側のビジュアルとかアニメやゲーム的でかっこいいし、墜落シーンの迫力は見応えはあった
だけど墜落シーンの派手さが描かれる中、「ああ、これで力尽きていっきにトーンダウンしなけりゃいいな」という個人的な心配が、その後の展開として実際にそうなってしまってテンションが下がらざるえない
あくまで個人的な映画趣味なところが大きいけど、ちょっと観ていて「これじゃない」感がずっとつきまとっていた
ロシア製という部分だけで、ふだんあまりお目にかかれない珍しいものを観たという印象が強い一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:ロシアンジョークは分かりやすくて普通に笑えるし、いっそコメディよりにしちゃえばいいのに



アトラクション 制圧 予告

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦 (2016/チェコ・英・仏)

監督:ショーン・エリス
出演:キリアン・マーフィ / ジェイミー・ドーナン / アンナ・ガイスレロバー / シャルロット・ルボン / トビー・ジョーンズ / ハリー・ロイド / アレナ・ミフロバー / ビル・ミルナー / マルチン・ドロチンスキー / ブライアン・カスペ

第二次世界大戦中、ナチスによって支配されたチェコに潜入するヨゼフとヤン
ふたりはある作戦を実行するために現地で連絡役を探すのだった

とにもかくにも圧倒的な絶望感、そして前半と後半の圧力差がすさまじかった
しょうじき気だるく抑揚のない前半で作品に失望しかけたけど、劇中での主人公ふたりの作戦後、そこからの本編でいっきに盛り返してますね
ナチスについては言うまでもないけど、犠牲を承知で暗殺という手段をとる主人公たちに戦争について思わされる部分が観ていて頭をちらつく
そして静かな前半や戦争うんぬんについての気持ちすべてを後半では物言わせぬ圧力で組み伏せ、絶望の濁流で押し流してくるクライマックスに食い入って観ているしかできない
そんなわずかな光明も見いだせない絶望感に奇妙な興奮をおぼえる
単純に主人公たちを英雄視せず、争い合うどちら側にも変にフィルターをかけすぎない描き方はよかった

個人的評価:85点
オススメ度:思った以上に濃密で長い道のりの話を観ていた感覚



ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦 予告

クロージング・ナイト 地獄のゾンビ劇場 (2016/加)

監督:セベ・シュレンツ
出演:レン・ウォーカー / カズ・オーディン・ダルコ / マディソン・J・ルーズ / キャメロン・デント / モモナ・コマガタ / カースティ・ピータース

売却の決まったナイトクラブを経営するブルージーン
その最終日、訪れた炭坑夫たちの様子が急変するのだった

ゾンビもののバリエーションとしてストリッパーと組み合わせてみました、みたいな安易な作品ではなくて思いの外に楽しめた
なかなかに惨劇の幕が開かない序盤のもどかしさはお約束として、その待望のショッキングなシーンへの入りが前戯なしで挿入してくるのが独特でしたね
さあ、くるかくるかと気分をあおる演出なしの即死タイムがたまらない
ゾンビ映画というより人でなくなった怪物とのバトル、みたいなアクション要素が強いかもしれない
展開は大味ながら、なにげに最低限度の話の作りこみはしているので、クソB級ホラーの汚物の中に光る何かを見つける努力しなくても、普通に上物のクソB級ホラーとして楽しめました
最後の最後は蛇足な感じはするけど、ラストの胸くそ悪さを吹き飛ばす過去話でちょっとは心が軽くなった

個人的評価:75点
オススメ度:入手したアイテムは余すことなく使う



クロージング・ナイト 地獄のゾンビ劇場 予告

2017年8月13日日曜日

ケージ・ダイブ (2017/豪)

監督:ジェラルド・ラシオナト
出演:ジョエル・ホーガン / ミーガン・ペータ・ヒル / ジョシュ・ポソフ / ピート・バレー / マーク・フェル / クリストファー・カレン / タラ・ウライス / ティーガン・バージャー

海中から発見されたビデオカメラにうつっていたジョシュ、ジェフ、メーガンの3人の男女
彼らの身に起こったことをカメラの映像とともに関係者のインタビューと合わせた番組が進行する

海の中で檻に閉じこめられた状態で孤立、サメの恐怖と戦うみたいなのかと思ってたら違ってましたね
サメの恐怖うんぬんと3人、という本編がはじまってみたら、わりと普通の広い海で漂流する系でした
事故を番組の特集形式で流す形式、主人公たちのハッピーマックスなバカンスっぷり、そして事故の発端となる部分を最高潮に、どんどん平凡な作風になっていく
それでも3人のいがみあいや突発的&人為的なアクシデント、オチに至るまで精神にぞわぞわくるものはあった
サメの恐怖より3人の関係の崩壊の方が明らかに怖い
ただ手持ちのビデオカメラということもあり、暗闇になってからの何がおこってるのか分かりづらい画面はそういう演出なんだろうけど代わり映えしなさが退屈になる
怖いには怖いけどありふれたサメ映画にほんのちょっとだけ味付けされただけで、どんなベクトルでもいいから何かしら突き抜けたキラリと光ものがほしかった

個人的評価:60点
オススメ度:教科書通りのメーガンさんのビッチ化



ケージ・ダイブ 予告

サイゴン・ボディガード (2016/ベトナム)

監督:落合賢
出演:タイ・ホア / キム・リー / ベー・チャン / チー・プー / ジエム・ミー / クン・ガップ / ラム・アン

サイゴン・ボディーガード社につとめるビエンとトリンのふたり
ある日、次期社長候補の護衛をまかされが、その警護中に対象を誘拐されてしまう

どこか昭和日本ドラマのような、昔の香港映画のようなコテコテのギャグが全面に散りばめられたコメディ要素の強い作品でした
変にかっこつけすぎない作風のために思ったよりギャグに寒さは感じないけど、合わない人には合わない作りかもしれない
お調子者のビエンに生真面目なトリンというオーソドックスなバディものだけど、次から次へ場面がめまぐるしく切り替わっていくので単調さや退屈さはなかった
ちょっと唐突な展開が気になるところがあったのも否めですが
笑わせるポイントは「ここで笑って」とかなり露骨だけど、個人的にはこの作品の味として認識して楽しめた
アクションもしっかりしてるし、コメディパートとの融合もできてる感じはするけど、じゃっかんどっかで観たような映画のシーンで切り貼りされてるような気がしないでもなかった
爆発的な何かはアレだけど、ゆるく空気に流されてアハハと笑える一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:パンストマスクの昭和芸に懐かしさがこみあがる



サイゴン・ボディガード 予告

スパイダーマン ホームカミング (2017/米)

監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド / マイケル・キートン / ジョン・ファブロー / ゼンデイヤ / マリサ・トメイ / ロバート・ダウニー・Jr. / ドナルド・グローバー / タイン・デイリー / トニー・レボロリ / ローラ・ハリアー / ジェイコブ・バタロン / アンガーリー・ライス

スパイダーマンとしてアベンジャーズの戦いに参加できて舞い上がるピーター
日々を近隣の平和を守るために力を使うが、なかなか次の任務の連絡がこないのだった

いい感じで力が抜けていて、ポップな雰囲気が良い意味でアベンジャーズくさくなくて楽しめた
オタクで軟弱そうな外見ながら身体能力と心が強く、それでいて若さゆえの未熟っぷりをすべて魅力に変換している主人公が思った以上にはまってた
アベンジャーズシリーズに若い年齢層も取り込むことに成功してるし、それでいて新生スパイダーマンシリーズのオープニングとしても次に期待できる
あくまでご近所ヒーローなノリはおさえたまま、派手に盛り上がるシーンも盛り込まれ、この作品特有の色づけもできている感じ
完全無欠なスーパーヒーローではない、憎めない頼りなさの力強い未成熟ヒーローの心根にほれざるえない一本でした

個人的評価:85点
オススメ度;やはり早いだけのフラッシュはダメなんですね



スパイダーマン ホームカミング 予告

2017年8月9日水曜日

フィアー・インク (2016/米)

監督:ビンセント・マッシェル
出演:ルーカス・ネフ / ケイトリン・ステイシー / クリス・マークエット / ステファニー・ドレイク / マーク・モーゼス / アビゲイル・ブレスリン

逆玉の輿で仕事もせずに毎日を遊び暮らすジョー
ある日、彼女とデート中にホラー好きのジョーへ、恐怖体験をさせてくれる会社から連絡先の名刺をもらうのだった

これ一本で様々なホラー映画の要素を楽しめる、福袋のように細かいネタがつまった作品でした
とりあえずは主人公の本当にクズっぷりを隠しもしないキャラがウザ素敵で、ホラー好きゆえに恐怖体験にもノリノリなのがちょっとイラっとくるけどおもしろい
殺人鬼に監禁、デスゲームから虚実入り乱れる心理攻め、次から次へ映画の雰囲気が変わって飽きない
主人公だけでなく制作陣もホラー映画のお約束を熟知してる作りのため、先を読んでも微妙にすかされる感覚がいい
まあ、どうでとも転がせる話の流れなんで、ちょっとずるい気がしないでもないですが
いろいろと大きなツッコミどころはあるけど、このホラーネタで遊んでるんだかリスペクトしてるんだか、適度な雑さが持ち味の個人的にけっこう好きな作風の一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:殺人鬼に勃っちゃう系主人公



フィアー・インク 予告

静かなる復讐 (2016/スペイン)

監督:ラウール・アレバロ
出演:アントニオ・デ・ラ・トレ / ルイス・カイェホ / ルス・ディアス / ラウール・ヒメネス / マノロ・ソロ

物静かな男ホセはフアンホとその妹のアナと知り合い親しくなる
アナと親密になっていく中、彼女の恋人のクーロが8年の服役を経て出所してくるのだった

燃え尽きる寸前のくすぶる復讐の炎を宿す主人公の、その無表情ゆえにどう行動するか読みづらい様がおもしろい
最初から何かしら秘密を胸に抱えてるホセの姿から、フアンホたちファミリーの事情が見えてきつつもまったくほのぼの感がなく、ほどよくひきつった緊張感がいい
そしていよいよ復讐開始だ、ってなってもどこか滑稽なシーンが時折はさまれて息苦しすぎることもなかった
熱すぎるでもない、冷めすぎているでもないどこか素人くさい復讐劇ながら、その行動のひとつひとつから目が離せない
分かりにくいような分かりやすいような、特殊技能のない普通のおっさんゆえに魅力が感じられた一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:おそろいジャージのホモカップルっぷりが姿が素敵です



静かなる復讐 予告

2017年8月6日日曜日

すばらしき映画音楽たち (2016/米)

監督:マット・シュレイダー
出演:ハンス・ジマー / ダニー・エルフマン / ジョン・ウィリアムズ / ジェームズ・キャメロン / ランディ・ニューマン / クインシー・ジョーンズ / ハワード・ショア / パトリック・ドイル / ブライアン・タイラー / スティーブン・スピルバーグ / ゲイリー・マーシャル / クリストファー・ヤング / エルマー・バーンスタイン / バーナード・ハーマン / アルフレッド・ニューマン / マックス・スタイナー / アレクサンドル・デプラ / トレント・レズナー / ジャンキー・XL / ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ / スティーブ・ジャブロンスキー / ベアー・マクレアリー / トーマス・ニューマン / パトリック・ドイル / アティカス・ロス / ジョン・パウエル / マルコ・ベルトラミ / マーク・マザースボウ / トレバー・ラビン / ヘイター・ペレイラ / ジョン・デブニー / ダリオ・マリアネッリ / マイケル・ダナ / クリストフ・ベック

誰もが聴きおぼえのある映画で使用される音楽
その映画音楽を生み出す作曲家をはじめ、映画監督や関係者たちの言葉がインタビューにより語られる

本当にどんな人でも必ずひとつやふたつは知ってる映画で使われた音楽の昔と今がオーソドックスに語られていてドキュメンタリー慣れしてなくても楽に観られる
無声映画にオルガンの生演奏を重ねる古い時代のこと、そしてオーケストラ演奏とデジタル時代の変移と共生が難しい理屈なく思い出の映画と音楽にのせて頭に入る
映画音楽が感情にうったえるのはもちろん、シーンにおける目線の誘導など映画鑑賞の根っこの部分に大きくからんでいるのが分かった
ジャズやバンド、作曲家の出自という音楽としての転機はもちろん納期などビジネスとしての映画音楽という独特のものが描かれていておもしろい
さらにスピルバーグなどの名監督はもちろん、有名作曲家の映画音楽作りの貴重な映像が観れたのもよかった
確かに映画音楽という大きすぎるくくりをすべて消化してるとは思えないし、もっと深く掘り下げられる感じもするけど、これはこれで映画音楽についてちょっと興味がある人に間口が広く作られていて変に気取らずに鑑賞できていいですね
心療の先生はアレだけど、なにかしら引っかかる人物の名前を自分なりに深追いするのも楽しいかもしれない

個人的評価:85点
オススメ度:アルマゲドンタイマーはシャレにならんし



すばらしき映画音楽たち 予告

トランスフォーマー 最後の騎士王 (2017/米)

監督:マイケル・ベイ
出演:マーク・ウォールバーグ / ローラ・ハドック / ジョシュ・デュアメル / ジョン・タトゥーロ / スタンリー・トゥッチ / イザベラ・モナー / アンソニー・ホプキンス

オプティマスは創造主に会うために地球を離れる
その地球ではすべての金属生命体を敵とみなし、ケイドは彼らトランスフォーマーを守るために戦っていた

このシリーズは映像技術の進歩を体感するためにある、というと身も蓋もないけど相変わらず画面がわちゃわちゃした中にも鑑賞後の刹那的なおもしろさは味わえた
しょうじきシリーズものだけど基本の部分を知ってれば、この作品内だけでじゅうぶんに楽しませてくれるので記憶に自信がなくても大丈夫ですね
逆に行えば細かい点で「あれはどうなった」とか感じる人はいるかもしれない
まあ、なにも考えずに提供された映像をむさぼり楽しんだもの勝ちですね
今回は味付けに中世の騎士要素を足してきたけど、後々になって「あの騎士のやつ」と言われた時に連想できるくらいの印象は残った
一応はシリーズ全体の流れとして重要な要素も埋め込んできて、さらに続きを期待させる作りは商売上手なやり方だなと感心せざるえない
ファンもアンチも単なる映画好き&それほどでもない人でも、小難しいことを考えなければ画面内で展開される迫力と盛り上がりにインスタントなおもしろさは与えてくれるんじゃないか、という一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:ブラックセイルズの次はアーサー王のドラマやってくれんかな



トランスフォーマー 最後の騎士王 予告

2017年8月2日水曜日

ZOOM (2016/ブラジル・加)

監督:ペドロ・モレッリ
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル / マリアナ・ヒメネス / アリソン・ピル / タイラー・ラビーン / ドン・マッケラー / ジェニファー・アーウィン / マイケル・エクランド / クレ・ベネット / リック・ロバーツ / ジェイソン・プリーストリー

エマは理想の男性像、映画監督エドワードを主人公にしたコミックを描く
そのエドワードは小説家のミッシェル主演の映画を撮り、ミッシェルはエマを主人公にした小説を書くのだった

最高に意味不明なクソ映画、という言葉を最大級の賛辞をもってラッピングしたい映画でした
創作物の主人公が連鎖して話が回っていく内容のため、ネタバレはしません、というかしたくない
めんどくさい新感覚要素にアートで気取った作風から、途中から個人的にツボにはまりまくりな流れになってテンションがどんどん上がりまくる
もう次の回が待ちきれないマンガやアニメに高揚してた男の子の心がよみがえり、エマ、エドワード、ミッシェルのそれぞれの話の続きが待ち遠しくなる
下ネタ歓迎、クソB級大好物、暴走大いにけっこうな私にとって、これ以上ないくらいに楽しみまくった
とにもかくにもそれぞれの主人公がからまりまくるギミックはもちろん、作品の展開に良い意味でもてあそばれる感じがたまらない一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:あれを両親のファックシーンだと気付ける人はいるのか



ZOOM 予告

ダイ・ビューティフル (2016/フィリピン)

監督:ジュン・ロブレス・ラナ
出演:パオロ・バレステロス / ジョエル・トーレ / グラディス・レイエス / アルビー・カシノ / ルイス・アランディ / クリスチャン・バブレスイナ・デ・ベレン / I・C・メンドーサ / セデリック・ジュアン / ルー・ベローゾ / イザ・カルザド / ユージン・ドミンゴ

ゲイのミスコン女王トリシャが亡くなり、日替わりでメイクを変える通夜が行われていた
親友、養女、知人友人が集まる中、彼女の過去が思い出される

ゲイの主人公と仲間たちの笑い飛ばせなくもない不幸話、そんな軽さで引き込んでおいて最後にはずっしりとトリシャの人生の重さを痛感させられる
思ったより泥臭い存在のトリシャが歩んできた人生、仲間たちと強かに進んできた道のり、最初はおもしろおかしく楽しめる
ちょっと時間軸の転換にクセがあって観づらい部分もあるけど、だんだんと慣れてくる
そして最初の軽かったイメージから大きく変わって味わいと重みを感じるようになっていった
要所要所で息苦しくなるくらいにヘビーなシーンを差し込んできて、主人公たちキャラものや設定ものなんかじゃないドラマとして心をつかまれる
押しつけがましくないほどよい感動に良い映画を観たと満足できた

個人的評価:85点
オススメ度:下トークが直球すぎる



ダイ・ビューティフル 予告