2018年2月25日日曜日

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ (2017/米)

監督:マイケル・ショウォルター
出演:クメイル・ナンジアニ / ゾーイ・カザン / ホリー・ハンター / レイ・ロマノ / アヌパム・カー / アディール・アクタル / ボー・バーナム / エイディー・ブライアント / ベラ・ラベル

芸人を目指すパキスタン人のクメイル
コメディライブ会場でエミリーと出会い、いっきに良い仲になっていくのだった

人種とか宗教による障害はきっかけにすぎず、けっきょくは人と人とのドラマになっているのがよかった
ちょっとクメイルのお調子者トークにクセがあるが、まあ芸人目指してるならそういうキャラでもいいのかなと思える
なんだかんだでエミリーの両親との話のウエイトも大きく、またこのエミリーパパ&ママともにどんどん魅力が引き出されてきて楽しい
肝心のドラマ部分も愛に目覚めた主人公がぜったい、というわけでなくクメイルの思いや言い分も、エミリーのそれも、それぞれの両親のそれも分かりすぎるほどに分かる
誰が正しいとか間違っているとかじゃなく、立場や問題を乗り越えていく上で変化した感じ方、その想いがよく伝わってくる
そして、なんだかんだで最後には自然に笑顔になれるし、気持ちの良い作品でした

個人的評価:80点
オススメ度:なにげにエミリーママがどんどんかわいらしくなっていく



ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ 予告

劇場版 Infini-T Force ガッチャマン さらば友よ (2018/日)

監督:松本淳
出演:関智一 / 櫻井孝宏 / 鈴村健一 / 斉藤壮馬 / 茅野愛衣 / 遠藤綾 / 鈴木一真 / 船越英一郎

それぞれの世界から次元を越えて集まったガッチャマン、ポリマー、テッカマン、キャシャーンらのヒーローたち
以前の戦いで縁のある少女、笑とともにある世界で強大なエネルギーが収束する特異点を消そうとするのだったが…

もうさんざん観てきたヒーローとかつての仲間の戦い、という流れで敵の目的&動機も含めて新鮮味はほとんどない
仲間同士たった者の戦いの果てにしては結末にぬるさがないのはよかったけど、観るべきところはそのくらい
マルチバースを扱うにしても、劇場版から登場のキャラでは感情が入りこめず、ガッチャマンという作品での重要な人物だってのは分かるけどそれはそれって感じ
せめてTVシリーズで登場し共闘したあのキャラが、ってなら盛り上がるんだろうけど
長い話の中からよりぬかれたひとつのエピソードという感じで、どうにもTVアニメを観ているような気持ちにしかならない
それぞれのヒーローの世界での戦い、その二週目くらいのタイミングでこの作品が挿入されていれば思うところもあったかもしれない

個人的評価:50点
オススメ度:雑な総集編も邪魔なだけ



劇場版 Infini-T Force ガッチャマン さらば友よ 予告

blank13 (2017/日)

監督:齊藤工
出演:高橋一生 / 松岡茉優 / 斎藤工 / 神野三鈴 / 大西利空 / 北藤遼 / 織本順吉 / 村上淳 / 神戸浩 / 伊藤沙莉 / 川瀬陽太 / 岡田将孝 / くっきー / 大水洋介 / 昼メシくん / 永野 / ミラクルひかる / 曇天三男坊 / 豪起 / 福士誠治 / 大竹浩一 / 細田香菜 / 小築舞衣 / 田中千空 / 蛭子能収 / 杉作J太郎 / 波岡一喜 / 森田哲矢 / 榊英雄 / 金子ノブアキ / 村中玲子 / 佐藤二朗 / リリー・フランキー

長い間、失踪していた父が病の末に亡くなり、兄たちと葬儀を進める松田コージ
その寂しい葬儀の様子と列席者を見つめるうち、コージは過去の父を思い起こす

似たような思いがある個人としては、本当に痛いほど分かる作品でした
その当時、子供だったゆえに深い理由がぼやけたままながら父に対する嫌悪がベースにあり、それでも短い思い出の中の楽しいひとときは輝いている
大嫌いなんだけど、死者に対する、父に対する対応が分からないもどかしさっぷりがおもしろい
なによりMC佐藤二朗ショーがはじまってからのカオスが感情とリンクし、ただ重苦しいだけでも笑えるだけでもない空気感が作品の魅力を引き上げている
大人になりながらもそれまでの人生経験のたらなさから、気持ちの整理をつけかねる主人公のコージのぼんやりっぷりもうまくあらわれていてよかった
いろんな意味で日本人的にゆれる感情が味わえて一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:まさに予告編に偽りなく、本編そのものをあらわしてましたね



blank13 予告

2018年2月21日水曜日

チェリーボーイズ (2018/日)

監督:西海謙一郎
出演:林遣都 / 栁俊太郎 / 前野朋哉 / 池田エライザ / 石垣佑磨 / 岡山天音 / 般若 / 山谷花純 / 松本メイ / 岸明日香 / 馬場良馬 / 吹越満 / 立石涼子

久しぶりに東京から地元へ帰ってきたクンニ
お互いにあだ名で呼び会うカウパーとビーチクとの再会の中、いまだに童貞な3人はどうにかセックスすると誓いあう

ひどい、本当にひどい、という褒め言葉をおくらざるえない、そしてこの映画をあえて劇場の大スクリーンで観たことがいろんな意味で心にしみた
というか逆に映画館で観ることに大きなナニかがある、気がしないでもない
ふつうに観ていて苛立つくらいに最低な性格のクンニと、そのクソみたいな内容と力入りすぎな迫真の演技の温度差がたまらなくおもしろい
ゆえに細かい力みや視線、表情の芝居を大画面で観る意味があるのだ、と自分に言い聞かせる
そんな主人公以外にもクズなプーチンやら、五木パイセンのスピリチュアルトークと、ふざけた話を大まじめに描いているから、批判的な意味での真正クソ映画になってない感じ
ふざけたおちゃらけ下ネタ作品とはちょっと違う、画面から感じる本気度がたまらなくバカっぽくてたまらない

個人的評価:70点
オススメ度:なにげに冒頭のシーンにどうつながるのか、観ていてちょっとしたお楽しみもある



チェリーボーイズ 予告

グレイテスト・ショーマン (2017/米)

監督:マイケル・グレイシー
出演:ヒュー・ジャックマンヒュー・ジャックマン / ザック・エフロン / ミシェル・ウィリアムズ / レベッカ・ファーガソン / ゼンデイヤ / キアラ・セトル / ヤヒヤ・アブドゥル=マティーン2世 / サム・ハンフリー / エリック・アンダーソン / ポール・スパークス / バイロン・ジェニングス / ベッツィ・アイデム

貧しい暮らしの日々を送りながらも妻と娘たちと幸せに過ごすバーナム
ある日、突拍子もない事業計画を実行に移し、つまずきながらもあきらめることなく彼は進み続けるのだった

夢とか愛とかのまばゆい波にのまれ、ノリや勢いだけに押されていると分かっていてもそれでもいいじゃないと思わされる作品でした
気付け代わりのオープニングから、テンポよく時も状況も進展し続け、あれよあれよという間にショーの成功まで続くスピード感は心地いい
とりあえず楽しさ重視の娯楽作品としてなんとなく感覚的に幸せになれればオッケー、という感じで
一応は波乱展開はあるものの、結果としてすべては主人公バーナムに好意的に乗り越えられていくため、締め付けられるような窮状から解き放たれるような全身総毛立つほどのものはなかった
それでも目と耳を強制的に盛り上げさせる作品として、刹那の楽しみの種火をポッと胸に与えてくれた一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:ヒューさんの若々しく感じるエネルギッシュさが逆に違和感



グレイテスト・ショーマン 予告

2018年2月18日日曜日

サニー/32 (2018/日)

監督:白石和彌
出演:北原里英 / ピエール瀧 / 門脇麦 / リリー・フランキー / 駿河太郎 / 音尾琢真 / 山崎銀之丞 / カトウシンスケ / 奥村佳恵 / 大津尋葵 / 加部亜門 / 松永拓野 / 蔵下穂波 / 蒼波純

ストーカーの影におびえる女性教師の藤井赤里
10年以上前におきた小学生女児による同級生刺殺事件の犯人、赤里がその成長した存在と信じる男たちに拉致されてしまうのだった

実録事件風な過激バイオレンスを想像し、その覚悟で鑑賞したけど、どんどん予測できないトンデモ展開になっていくのがたまらない作品でした
拉致され、サニーと呼ばれ、容赦のない暴力が展開していよいよ本編はじまったと思わせつつ、本当に次々に作品の雰囲気が転調する謎映画っぷりが楽しすぎる
序盤の静電気やきゅうり話で「ん?」と感じた奇妙な違和感が、話が進むにつれてどんどん暴走していく感じは先が読めない
アイドル映画と言いつつ、脇を固める個性の強い役者さんたちの生き生き演技で作品の灰汁の強さが高まり、それでいてそんな空気感がアリだと思わせる不思議さがある
わりと変化球な作風な感じのため、あまり気負って真面目なサスペンスと観ると「これじゃない」と思ってしまう人もいるかもしれない
これおもしろいよね、と声をかけた誰かとの映画趣味のマッチング度をはかるにはちょうどいいかも、そうでもないかも

個人的評価:80点
オススメ度:キタコレしろよな茶番劇が楽しすぎる



サニー/32 予告

犬猿 (2018/日)

監督:吉田恵輔
出演:窪田正孝 / 新井浩文 / 江上敬子 / 筧美和子 / 阿部亮平 / 木村和貴 / 後藤剛範 / 土屋美穂子 / 健太郎 / 竹内愛紗 / 小林勝也 / 角替和枝

真面目にコツコツと働く和成のもとに、粗暴で自由気ままな兄の卓司が転がり込んでくる
一方、和成の仕事のつき合い先の会社には不美人だけど仕事のできる姉と、美人だけど要領の悪い妹の姉妹がいて…

二組の兄弟姉妹の身内喧嘩、ただそれだけの映画なのにあっと言う間にこの4人から目が離せなくなる
バカ騒ぎな喧嘩バトルにも、雨降って地固まるみたいな家族ドラマにも大きく傾くことはなく、時に大笑いさせられ時に絆が心にしみる
兄と弟、そして姉と妹という構成で互いにからむことで期待以上の面白味が増し、同時にちゃんと期待通りの展開を外さないのもいいですね
それぞれの悪いところと、ときおり見せる良いところ、どっちもどっちな関係が煮詰まっていく様が本当に楽しい
終盤の「まあ、そういう流れになるよな」って展開があるから、このガツンとしまるラストが強烈にいきていて印象に残る
本当にいい大人になった日本人の身内同士なんて、下手な他人よりどろどろだという、そんな感じが娯楽作品として楽しめた一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:ふだんシネコンで映画を観てる身として、本気で一瞬だまされた



犬猿 予告

リバーズ・エッジ (2018/日)

監督:行定勲
出演:二階堂ふみ / 吉沢亮 / 上杉柊平 / SUMIRE / 土居志央梨 / 森川葵

高校でいじめられている山田を助ける若草ハルナ
そんな彼から見せたいものがあると言われ、夜に呼び出されるのだった

表情や感情をあらわにする演技から、その登場人物の思いをくみとるのが楽しい作品でした
映画から与えられる情報は必要最低限で、どれも重要な要素ばかりのため、けっこう分かりやすい表現が多く意外と観ていて複雑に感じない
逆に言えば本筋から少し離れた、踏み込んだ深い部分まで各人のことを理解できたと思えないし、それを知りたいという欲求にもかられる
それでもキャラをとらえたと思った先に、さらに別の側面が見えてくる展開はおもしろく、そのとらえきれないもどかしさがいい
主人公の若草ハルナも、最初はクセが強いキャラだと思ってたけど、どんどん周りの灰汁の強い人々に埋もれ、それでも最後にはちゃんと存在を強く意識せざるえない
ただ、こういう感覚で味わう作品はけっこう好き嫌いが大きく分かれるかもしれない

個人的評価:80点
オススメ度:ネタ話にしてほくそえんでる自分が一番こわい



リバーズ・エッジ 予告

2018年2月16日金曜日

今夜、ロマンス劇場で (2018/日)

監督:武内英樹
出演:綾瀬はるか / 坂口健太郎 / 本田翼 / 北村一輝 / 中尾明慶 / 石橋杏奈 / 柄本明 / 加藤剛

映画助監督の牧野は閉館後の映画館でお気に入りの古いフィルムを上映して楽しんでいた
すると落雷とともに映画館が停電し、復旧するとそこには映画の中のヒロインがフィルム世界から抜け出してきていて…

ベタで卑怯なほどの切なさとロマンチックさに酔いしれることができる素敵な映画でした
予告を見た時は安易な設定の薄っぺらいロマンスものだろ、と思ってたけどここまで心を満たされるとは
かなりファンタジーがはいってて、冷めた視点で語ればトンデモ展開が多く目に付くけど、そこに触れるのは本当に無粋なことだと言わざるえない
いろんな映画のおもしろ要素を寄せ集めて切り張りしてるようで、その裏側に作り手の嫌な思惑が感じられないから素直に楽しむことができた
ふたりのロマンスはもちろん、映画を楽しむこと、そして「泣かないで」からの怒濤の畳みかけにわきあがる感情が押さえきれなかった
予告編スルーしないで劇場で鑑賞して良かった素敵な映画でした

個人的評価:85点
オススメ度:主人公に軽薄さを感じてた観る前の自分を恥じたい



今夜、ロマンス劇場で 予告

ミッドナイト・バス (2017/日)

監督:竹下昌男
出演:原田泰造 / 山本未來 / 小西真奈美 / 遠藤雄弥 / 渡辺真起子 / 遠山俊也 / 佐藤恒治 / マギー / 舞川みやこ / 長谷川玲奈 / 葵わかな / 七瀬公 / 長塚京三

深夜の長距離バスの運転手をしている高宮
ある日、つきあっている女性を新潟の実家へ誘うのだったが…

とにもかくにも、人と人との距離間の描き方が秀逸すぎる作品でした
人間関係や物事に踏み込みすぎては傷を負い、踏み込みがたらなすぎて傷つける、そしてその先に道があったりなかったり、ゆれる登場人物たちを観ているのが本当に楽しい
親子や夫婦、恋人たちの関係にそこまで絶望的な溝があるでもなく、かといって簡単に歩み寄れないむずがゆさがいい感じ
そしてしっとりした雰囲気で心が満たされたところで、いい具合に雰囲気をぶち壊すマジワンや来ちゃった展開で緊張の心もほぐれます
配役の妙もあって、自然とこの作品の雰囲気に心身ともに心地よくつかれました

個人的評価:95点
オススメ度:マジワンの本当に統一感のなさが逆に興味を引く



ミッドナイト・バス 予告

2018年2月14日水曜日

ぼくの名前はズッキーニ (2016/スイス・仏)

監督:クロード・バラス
出演:ガスパール・シュラター / シクスティーヌ・ミュラ / ポーラン・ジャクー / ミシェル・ビュイエルモーズ / ラウル・リベラ / エステル・ヘナード / エリオット・サンチェス / ルー・ウィック / ブリジット・ロセ / モニカ・ブッディ / アドリアン・バラゾン / ベロニク・モンテル

とある理由から身よりのない子供たちが暮らす施設に入ることになったズッキーニ
しかしなかなか施設のみんなに心を開こうとしないのだった

子供は大人が思う以上に強かに生きているんだ、と希望に心が満たされる作品でした
しょうじき始まって早々に闇が深い流れで、いきなりのヘビーさにどんよりもした
そんな最初の印象と最後の印象の温度差が本当に気持ちいい
見た目からしてもけっこうクセが強そうな作品だけど、実際に観てみると子供たちに共感できる部分が多く、それぞれのキャラに愛着ももてる
主人公の枠の中で話を動かすズッキーニはもちろん、良い人すぎる大人なレイモンドさんや、フリーダムにマルチな役をこなすシモンの魅力も捨てがたい
なにか特別なものがあるわけじゃないけど、純粋に幸福を味わえる一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:子供向け感がないのもいい



ぼくの名前はズッキーニ 予告

THE PROMISE 君への誓い (2016/スペイン・米)

監督:テリー・ジョージ
出演:オスカー・アイザック / シャルロット・ルボン / クリスチャン・ベール / アンジェラ・サラフィアン / ジェームズ・クロムウェル / ジャン・レノ / ショーレ・アグダシュルー / ダニエル・ヒメネス・カチョ / マーワン・ケンザリ

婚約者の持参金を利用し、故郷を離れて医科大学へ入るミカエル
居候先で気になる女性アナと出会う一方、国は第一次世界大戦の影が迫りつつあった

オスマン帝国によるアルメニア人の大量虐殺、その歴史的出来事を学ぶ学習素材の映画というより、ごく普通にドラマティックな内容に真摯に心がうたれる
しょうじき主人公より主人公らしい彼の周りの人物たちに、ミカエルさんもうちょっとしっかりしてほしいと思うところもあるけど、鑑賞後にはこんな男だからこそ作品としてよかったと考え直された
なにげに友情、愛情、悲しみや慈しみのドラマの要素が強く、さらにアクションシーンも要所要所にあるために堅苦しさを感じない
なにはともあれ虐待や虐殺描写はその陰惨さを十分に印象づけながら、観ていて気分が悪くなりすぎるほど鬱々としないのがいい
ただ内容的に歴史的背景の知識がなさすぎると、ドラマだけでも楽しめるとはいえちょっと気持ちが入りきらないかもしれないですね

個人的評価:85点
オススメ度:ジャン・レノさん、本当にいい感じで老けてるな



THE PROMISE 君への誓い 予告

2018年2月7日水曜日

羊の木 (2018/日)

監督:吉田大八
出演:錦戸亮 / 木村文乃 / 北村一輝 / 優香 / 市川実日子 / 水澤紳吾 / 田中泯 / 松田龍平 / 中村有志 / 安藤玉恵 / 細田善彦 / 北見敏之 / 松尾諭 / 山口美也子 / 鈴木晋介 / 深水三章 / 川瀬陽太 / 木原勝利 / 白神允 / 中沢青六 / 村上和成 / 江原政一 / 大矢敬典 / 西山清孝 / 中野剛 / 鈴木隆仁 / 山口尚子 / 白川朝海 / 船崎良 / 渡邉蒼 / 大智 / 三宅希空 / 川上凛子 / 安藤結埜

ある港町に転居してきた6人の男女
それぞれを担当することになった市の職員の月末は、6人全員が刑務所帰りだと知る

刑務所帰りの殺人犯、とひとくくりにするのは簡単だけど、あたまりまえながらそれぞれの生き方があることを再認識させれた
いつもの演技だけど松田龍平という役者をうまくいかしている感じで、悪く言えばその印象が強すぎて他の5人のキャラとエピソードがかすみがち
どこかきな臭い状況の下、人としてのつき合いやドラマが描かれ、これはこれでおもしろい、と思っていたところにいっきに加速する展開はよかった
6人6色、それぞれが出会った人たちと関わりがいい感じで、ちょっとドラマティックすぎる気はするけど月末と宮腰の関係の過程と顛末は心に残った
なんだかんだでみんなの暴走っぷりを楽しむ内容かと思ってた、そんな先入観が少しくつがえされて楽しめました

個人的評価:80点
オススメ度:じゃっかんクセのある作品で、好き嫌いが分かれるかもしれん



羊の木 予告

祈りの幕が下りる時 (2018/日)

監督:福澤克雄
出演:阿部寛 / 松嶋菜々子 / 溝端淳平 / 田中麗奈 / キムラ緑子 / 烏丸せつこ / 春風亭昇太 / 音尾琢真 / 飯豊まりえ / 上杉祥三 / 中島ひろ子 / 桜田ひより / 及川光博 / 伊藤蘭 / 小日向文世 / 山崎努

腐乱した絞殺死体が発見されるが、わずかな手がかりに捜査は進展しないでいた
そんな事件に助言していた刑事の加賀は、そこに自分の亡き母との関連を見いだす

主人公である加賀の母親が事件を複雑にし、同時に深みを与えていたシリーズ完結編でした
事件じたいは単純なようで、どんどん関連人物のつながりが広がっていくことで複雑になっていき、ぬるい邦画ミステリーだと決めつけてぼんやり観ていると置いていかれるかもしれない
でもじゃっかん訳が分からなくなったとしても、真相につながる過去からの話を丁寧に描いているのでお手上げ状態にはならないと思う
けっきょく事の真相は複雑なようで単純、というミステリーとは違っていろんな要素が引っかかってくるのがおもしろい
各役者さんたちの演技、その表情も巧みで映画としての重厚さもある
感動の泣き映画というより、悲しみや憎しみ、愛やぬくもりがぐるぐるとめぐって感情にうったえてくる一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:さりげなく豪華キャストでシリーズを追ってきた身には懐かしい



祈りの幕が下りる時 予告

2018年2月4日日曜日

アバウト・レイ 16歳の決断 (2015/米)

監督:ゲイビー・デラル
出演:エル・ファニング / ナオミ・ワッツ / スーザン・サランドン / テイト・ドノバン / リンダ・エモンド / サム・トラメル

女の体ながらホルモン療法で身も心も男になる道を選ぶ16歳のレイ
しかし、その治療にはずっと連絡をたっている父親のサインが必要だった

話の入口と出口はすごい近いのに、その間に本当に色々なことがある作品でした
話題の中心は常にレイにあるんだけど、話が進むほどに母親のマギーが前面に出てくる
そこからの祖父とマギー、そしてマギーとレイのダブル母子の関係とドラマがおもしろい
なんだかんだで最初から理解ありそうな祖父とマギーの本音が浮かび上がるたびに、ちょっとした衝突やらなんやら展開して、なかなか話が先に進まない
そんな流れに飽きてきそうになると、いきなりパンチのきいた急展開がきて、いっきに盛り返しておもしろくなりましたね
レズビアンとかトランスジェンダーとか性の問題をうだうだ語るでもない、家族のドラマが主体なのもよかった

個人的評価:75点
オススメ度:和ませ担当のドードーさんもじょじょに良い味をだしてくる



アバウト・レイ 16歳の決断 予告

スリー・ビルボード (2017/英)

監督:マーティン・マクドナー
出演:フランシス・マクドーマンド / ウッディ・ハレルソン / サム・ロックウェル / アビー・コーニッシュ / ジョン・ホークス / ピーター・ディンクレイジ / ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ / ケリー・コンドン / ルーカス・ヘッジズ / ジェリコ・イバネク / クラーク・ピータース / キャスリン・ニュートン / アマンダ・ウォーレン / ダレル・ブリット=ギブソン / サンディ・マーティン / サマラ・ウィービング

道路脇の広告看板に警察署長を避難するようなメッセージを掲げるミルドレッド
そこのことによって町は大きな騒動にのまれようとしていた

怒りと憎しみの行動と結果のズレ、頭の悪い人間たちの頭の悪い様がなんともむずむずする作品でした
小さな町ゆえにだいたいお互いの事情を知っている前提での戦争というのがおもしろく、また主人公をふくめ登場人物に対する印象が観ていくにつれて変化するのがいい感じ
苛立ちを他者にぶつける、作品中のそんな人の愚かさが自分の中にはねかえって、鑑賞後にはちょっと他人に対して態度を改めようという気になった
話じたいも因果の巡りっぷりが秀逸で、先が読めない展開と暴走っぷりがなんともいえない
けっこうシャレにならない事態になりながらも、それぞれのキャラがどこか愛嬌のあるバカっぷりをあわせ持っているからそこまで胸くそ悪さは感じなかった
まあ、でも3つの看板が引き起こした騒動と奇跡、みたいな気持ちがスッキリする内容じゃないので、観て嫌な気持ちになる人がいても不思議じゃないかもしれない

個人的評価:85点
オススメ度:良くも悪くも毒の強さがインパクトになってる



スリー・ビルボード 予告

スリープレス・ナイト (2017/米)

監督:バラン・ボー・オダー
出演:ジェイミー・フォックス / ミシェル・モナハン / ダーモット・マローニー / デビッド・ハーバー / ティップ・“T.I.”・ハリス / ガブリエル・ユニオン / スクート・マクネイリー

相棒とともに麻薬を強奪する警官のヴィンセント
しかし、そのことで謎の集団から銃撃を受け、さらに息子を誘拐されることになる

軽快なテンポで色々な登場人物の思惑がからむストーリーながら、ひじょうに分かりやすい描写で意外に頭を使わずに観ていられた
ヴィンセントを追うふたつの組織に女性警官、息子と麻薬の行方と複雑な設定のラインがはりめぐらされていくけど、話の展開に身を任せるだけで混線せずに把握できる作りは本当に優秀だと思う
アクションとサスペンスのバランスの取り方もうまく、最後まで画面に集中していられた
ただ、ちょっと複雑化をさけた副作用として先が読める展開と、そつない作りすぎて強烈なインパクトは薄いのが引っかかる
ヴィンセントとジェニファーの対比とか、ラストの引きとか、なんでまたリメイクをしようとしたのか鑑賞後にちょっと分かった気がする

個人的評価:80点
オススメ度:派手に銃をぶっぱなすだけのバディアクションな続編だけはカンベン



スリープレス・ナイト 予告