2016年12月28日水曜日

幸せなひとりぼっち (2015/スウェーデン)

監督:ハンネス・ホルム
出演:ロルフ・ラスゴード / イーダ・エングボル / バハー・パール / フィリップ・バーグ / カタリナ・ラッソン

頑固で偏屈な老人オーヴェは妻も職も失い、生きていることに嫌気がさしつつあった
そんな時、新たな隣人が引っ越してきて…

堅く凝り固まった人間が、一見めんどくさい人たちと関わることで化学反応的に良い方向に変わっていく、というベースの物語はよくある
これもそんな感じだと思っていたけど、鑑賞を続けるうちに自分の偏見っぷりを見せつけられる作りに感嘆と同時に温かみを感じずにいられない
生きベタで死にベタなオーヴェのことが見えてくるにつれて、隣の奥さんと視点が重なっていき、多くの人生経験値を積んできたじいさんの深みに気づかされる
ありきたりな話をベースに味付けとトッピングで飽きのこない一品をだしてくるだろう、なんていう自分の浅さを痛感
人生を歩むことでのあれこれはありつつ、まったく芯の部分がブレない、近づきづらいけど懐に入ってしまえば粋なじいさんが魅力的でしかたない
まあ、リアルで近隣にいたらどうか、と聞かれたらなんとも言えないのが本音だけど

個人的評価:80点
オススメ度:国が違えど、人という部分に共感できるもんだ



幸せなひとりぼっち 予告

無垢の祈り (2016/日)

監督:亀井亨
出演:福田美姫 / BBゴロー / 下村愛 / サコイ / 三木くるみ / YOSHIHIRO / 平山夢明 / 幸将司 / 奈良聡美 / 綾乃テン / 河嶋遥伽 / シゲル / 高井理江

学校ではいじめられ、家では暴力をふるわれる日々の少女フミ
そんな彼女は巷を騒がす連続殺人事件のことを知り…

直接的な表現は控えめなはずなのに、ロケーション、演技、効果音が常に気持ち悪さを演出して「うわあ…」という気分に何度もおちいる
主人公であるフミの抱える孤独や重さがつのっていく様子が、それを言葉として表現するには自分では力不足なほど強烈に感覚的に伝わってきた
本当に直接的な虐待は最小限なんだけど、想像によって陰湿さが高められていく感じ
そしてすべてはゆっくりと首をしめられるようにラストへつながっていき、良い意味で観る側の取り方に委ねられたオチは秀逸
個人的にはその瞬間のフミについてしか思いよらなかったけど、上映後のトークショーによってそのごのフミについても大きく考えさせれた
本当によくよく思えば海外に持っていくには厳しいのがもったいない、逆に言えば邦画ならではの一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:鉄板ネタだろうDVゴロー、しかし伊達じゃないッスわ

※上映後のトークショーの様子
(左から監督の亀井亨さん、原作の平山夢明さん、出演のBBゴローさん)




無垢の祈り 予告

2016年12月25日日曜日

ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー (2016/米)

監督:ギャレス・エドワーズ
出演:フェリシティ・ジョーンズ / ディエゴ・ルナ / ドニー・イェン / ベン・メンデルソーン / マッツ・ミケルセン / アラン・テュディック / フォレスト・ウィテカー / チアン・ウェン / リズ・アーメッド / ジュネビーブ・オライリー

帝国軍から助けられ、反乱軍に父に縁のある者との仲介役を求められるジン
戦闘状態に突入しながらもジンは仲間たちに助けられながらも目標の人物に接触、メッセージを受け取るのだった

地味なメンツで予定調和な話をスター・ウォーズのネームバリューでごり押す作品、という想像がちらついていた自分が恥ずかしくなるくらい映画として完成度が高くて楽しめた
起承転結しっかりしつつも、希望のつながりとなるデキでアドベンチャー、ドラマ、アクション、様々な要素が織りなすかなり大きな物語を体感させられた
登場人物ひとりひとりに捨てキャラなどいなく、やっつけなところがないままにそれぞれの見せ場がきちんと描かれていて、最後には皆のことが愛おしくならざるえない
懐かし要素がチラリズムするサービスどころもちゃんとあるし、狭間の物語なのに狭苦しさの感じさせない広がりある世界に熱中して鑑賞させてもらえた

個人的評価:90点
オススメ度:現代風にアレンジしすぎてない美術デザインが秀逸すぎる



ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー 予告

2016年12月21日水曜日

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (2016/日)

監督:三木孝浩
出演:福士蒼汰 / 小松菜奈 / 山田裕貴 / 清原果耶 / 東出昌大 / 大鷹明良 / 宮崎美子

大学生の高寿はある日、電車で見かけた女性に一目惚れしてしまう
勢いのままに声をかけ、ふたりはそれからデートを重ねるようになる

胸キュンスイーツ映画じゃない、という評判から実際に鑑賞してみたけど、なるほどけっこう苦みと切なさがあって心にしみた
最初はどこか乙女チックな主人公と、ミステリアスさをまき散らすヒロインの日常で流されるが、後々にその日々の数々をかみしめさせられるのがおもしろい
ヒロインの演技もその瞬間瞬間を分かりやすく上手に表現していて、観ていてもどんどん愛美に心が引きつけられていく
けっこう早い段階でネタ明かしはされるが、それでもラストへ向けての切なさは止められない
確かにじゃかん分かりにくい部分や、細かい疑問も浮かばなくもないけど、こういうものだと受け入れられた
ちょっと最後の最後がくどくって、個人的にはこのタイミング以外にも終幕に合ってるシーンがあった気がした
予告だけでは恋人向けのデート映画で、キャスト萌えな薄っぺらい内容かと思ってたけどすっかり世界観に飲み込まれた一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:ちゃんとエンドロール&エンディング曲もマッチしていて最後まで席を立てなかった


ぼくは明日、昨日のきみとデートする 予告

2016年12月18日日曜日

ドント・ブリーズ (2016/米)

監督:フェデ・アルバレス
出演:ジェーン・レビ / ディラン・ミネット / ダニエル・ゾバット / スティーブン・ラング

不法侵入しては盗みを働く3人の男女
次の標的として盲目の退役軍人の家を選ぶのだった

家に押し入った泥棒を盲目の退役軍人が逆にこらしめる、というスポーツ紙の片隅にありそうなネタながら、中身は本気で恐怖と緊張に満ちていました
殺人ショーによるグロ要素であおったり、妙な変化球で勝負せず、オーソドックスながら丁寧な昔ながらのやり方で作られている印象
先の展開を暗示させて緊張感をあおるシーンの描写、観客として状況が分かってるがゆえに理解できてない登場人物に対するハラハラ感が楽しめました
臭いや気配に敏感なのか鈍感なのかよく分からん盲目のおっちゃんのムラっ気がきになったけど、まあ演出として効果的なものを優先した大人の事情なんだろうと飲み込みましょう
ただ後半の逃げては捕まりの繰り返し鬼ごっこになってくると、それまでの息を殺すような緊張感がちょっと薄れてきてる気がしました
基本に忠実ゆえにおもしろい恐怖感、なにかひとつ飛び抜けているものが足りない気がしながらも同情できないもの同士の鬼ごっこを堪能できた一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:おっちゃんにしても飼い犬にしても完璧狩人じゃないのがいい



ドント・ブリーズ 予告

2016年12月14日水曜日

ミス・シェパードをお手本に (2015/英)

監督:ニコラス・ハイトナー
出演:マギー・スミス / アレックス・ジェニングス / ジム・ブロードベント / フランシス・デ・ラ・トゥーア / ロジャー・アラム

1970年代のロンドン、劇作家のベネットは引っ越し先でバンで暮らす老女シェパードと出会う
気むずかしい彼女の日々を追いながら、時に手伝って話のネタを増やしていくのだった

ただただ気難しいだけでかわいげのかけらもないブレないミス・シェパード、それでも嫌な気持ちにならない不思議な魅力があった
老女の数奇な運命、妄想、そこに劇作家の脚色が加わって、常に不安定でぐにゃぐにゃしているような雰囲気が個人的におもしろかった
しょうじきこの作品に何があるというわけではないけど、ミス・シェパードという変わり者のキャラだけでなっているわけでないのがいい
作品内でもベネットが作家と日常生活をおくるふたりがひとりの別人物として描かれ、物語の創作部分も内容に反映される劇中劇のような空気感がある
さらにラストのたたみかけは好き嫌いが分かれるだろうけど、個人的にはこのくらいクセのあるユーモアは好きですね
巷にあふれるハートフルなドラマへ傾けられるような要素を盛り込みながらそれにのっからない、四脚椅子の一本をスコンと打ち外されたようなふらつく感覚が気持ちよかった一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:シェパードというよりパグ



ミス・シェパードをお手本に 予告

2016年12月12日月曜日

海賊とよばれた男 (2016/日)

監督:山崎貴
出演:岡田准一 / 吉岡秀隆 / 染谷将太 / 鈴木亮平 / 野間口徹 / ピエール瀧 / 須田邦裕 / 飯田基祐 / 小林隆 / 矢島健一 / 黒木華 / 浅野和之 / 光石研 / 綾瀬はるか / 堤真一 / 近藤正臣 / 國村隼 / 小林薫

終戦後、会社の建て直しに奔走する國岡鐵造
石油の取引きもうまくいかず、自然と企業したばかりの頃を思い起こすのだった

どこか冷たい時代だからこそ勇ましい男にひかれ、熱い企業ドラマに心が躍る
分かってはいてもエピソードのいつくかにはうまくのせられ、たぎるものを感じずにいられない
過去話も含めてけっこう話はぶつ切りな感じがして、ひとつひとつは良いエピソードながら作品全体からするとそれらの寄せ集めな印象が強かったです
クライマックスも主人公を最後にもう一段階盛り上げるにはいたらないし、ラストもイマイチしっくりこない
家族ドラマなのか、企業ドラマなのか、人間ドラマなのか、すべての要素が作品内にあるのはいいけどまとまりきれてないような気がする
いっこずつより抜いてみれば良い話ばかりなので、裏でメインストーリーを進めつつの1エピソード完結なTVドラマ向けかもしれない

個人的評価:70点
オススメ度:困った時の社歌ぶっこみ



海賊とよばれた男 予告

2016年12月11日日曜日

マダム・フローレンス! 夢見るふたり (2016/英)

監督:スティーブン・フリアーズ
出演:メリル・ストリープ / ヒュー・グラント / サイモン・ヘルバーク / レベッカ・ファーガソン / ニナ・アリアンダ

1944年アメリカでクラブの創設者であるフローレンスは舞台に上がっていた
彼女はカーネギー・ホールのコンサートで聞いた歌声に感激し、自分も歌うためにレッスンをはじめる

音痴なマダムと一般人のピアニスト、音楽の本質としてふたりの友情が周りを感動に包んでいく、わけでもなかった
しょうじきカーネギーのくだりで「これで感動しろというのか?いや、無理だろ」と思ったけど、最後の最後でいっきにもっていかれた
マダムでもピアニストでもない、夫であるシンクレアさんの物語じゃないですか、これ
ラストシーンから作品内での彼のマダムに対する行動や言動が、良しも悪しもかけぬけるように思い起こされる
コメディタッチの友情、絆物語、音楽ってやっぱりいいよね、という内容とは違って最後の最後で評価が上がるけっこうトリッキーな作品かもしれない
むしろ個人的にはあまり音楽にこだわっている作りには思えなかった
名優の演技をぞんぶんに堪能できたし、最後には笑顔になれる一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:劇場の大音量で聞くマダムの歌声は本気でヤバイレベルの破壊力



マダム・フローレンス! 夢見るふたり 予告

2016年12月7日水曜日

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気 (2015/米)

監督:ピーター・ソレット
出演:ジュリアン・ムーア / エレン・ペイジ / マイケル・シャノン / スティーブ・カレル

優秀な刑事であるローレルはある日、出会ったステイシーと関係を深めていく
そしてふたりはパートナー法にのっとって暮らし始めるのだった

ただひたむきな愛、それだけではなく正義の強さが加わることで非常に見応えがあって心をふるわされた
さらっと主人公ふたりの関係を描きはじめ、なんか急な感じはしたものの、そんな考えこそ同性愛に対する偏見から説明を欲する自身の思考だと思い知った
パートナーとして法に認められながらも、地元の慣習、政治、細かな制度は主人公たちに優しくなく見えていない、見ようとしていなかった社会がみせつけられた
騒ぎが大きくなるにつれてパフォーマンス性が強くなり、偏見の影も表立つ中でのローレルとステイシーのひらぎない愛の世界の描写は素晴らしい
それに正義の信念が加わることでふたつの要素で感動に導かれる
ちょっと分かりやすすぎるくらい感動方面へ誘導させられている気もしないでもないけど、気持ちよいままにまかせてもいいかなと思えた

個人的評価:80点
オススメ度:ローレルの愛、衰弱、正義、その時々の演技による輝きが印象的



ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気 予告

古都 (2016/日)

監督:Yuki Saito
出演:松雪泰子 / 橋本愛 / 成海璃子 / 蒼れいな / 蒼あんな / 葉山奨之 / 栗塚旭 / 迫田孝也 / 伊原剛志 / 奥田瑛二

京都で夫とともに呉服屋を営む千重子
変わる町並みの中、娘がなにやら思い悩んでいる姿に気を止める

現旧が混在する今、その情景と人物をひじょうに分かりやすく描写されていました
美しい風景は美しく、違和感をおぼえる風景はそのように、視覚にうったえる撮り方はよくできていると思う
それに人物の心情も最小限の台詞だけであっても、その所作による演技で鈍い私にも伝わってくる
「これはこういうことを伝えたいんだ、こういう心境を描きたいんだ」という部分が本当に分かりやすく表現されている
逆に言えばそんな表現を含む場面ばかりで、けっきょくは説明台詞を聞かされている感覚になる
話も縦に横に織られる、ゆっくりゆっくりと織られていく中で分かりやすく丁寧に流れていく
純文学みたいな堅苦しさは最低限排除して、美しさだけはそのまま残したような雰囲気がある
その紡がれていく話が終わりをむかえた瞬間、完成した物語に良い作品を読了したような充実感がわきあがりました

個人的評価:80点
オススメ度:文系っぽい雰囲気のようで理系のような効率的な作り



古都 予告

2016年12月4日日曜日

PK (2014/印)

監督:ラージクマール・ヒラーニ
出演:アーミル・カーン / アヌシュカ・シャルマ / スシャント・シン・ラージプート / サンジャイ・ダット / ボーマン・イラニ / サウラブ・シュクラ / パリークシト・サーハニー / ランビール・カプール

ベルギーで失恋を経験して故郷のインドに戻ってきたジャグー
ある日、駅で神様を探しているという黄色ヘルメットの奇妙な男、PKと出会い彼に興味を抱くのだった

笑って泣けるとかそんな大仰な、インドの映画で日本人の自分が…なんて浅はかな思い込みだったとビンタされたように自然と笑顔がこぼれて泣かされた
インド映画の通常運転としての唐突な歌と踊りに分かりやすいキャラと演技、知識ゼロのPKが人とふれあうことでのドタバタがおもしろおかしい
そこへ宗教や信仰をブラックユーモアで、さらにロマンス要素や人と人の絆、ドラマとして心を揺り動かす物語が加わって本当に内容がてんこ盛りすぎて大満足
途中まではおもしろいけど飽きがきて、こんなもんなのかなと徐々にテンションが下がりそうになったけど終盤から一気に持っていかれた
伏線の回収もベストなタイミングでひろってくれて気持ちがいい
頭がおかしいヤツに見えなくもないPKのキャラクターとしてのチャーミングさはもちろん、中身もしっかりしていて楽しめた
冷静なツッコミはおいといてPKの行動や言動、思考に身を任せてもいいかなと思わせる存在感がありましたね

個人的評価:95点
オススメ度:目をむいてくっちゃくっちゃしてる姿が脳にこびりつきすぎる



PK 予告

RANMARU 神の舌を持つ男 鬼灯デスロード編 (2016/日)

監督:堤幸彦
出演:向井理 / 木村文乃 / 佐藤二朗 / 木村多江 / 市原隼人 / 財前直見 / 黒谷友香 / 岡本信人 / 渡辺哲 / 矢島健一 / 中野英雄 / 春海四方 / 落合モトキ / 永瀬匡

なめたものの成分を分析できる舌の持ち主、蘭丸は見知らぬ土地で行き倒れてしまう
鬼灯村の人たちに助けられた彼はその村で働くことになり、そこへなじみの旅の共である光と寛治が現れるのだった

キャラと演出と雰囲気がなじまないままにダラっと終わったドラマ版、そんなもんだからちょっと心配してたけど、この劇場版こそ本来やりたかったものなのかもと思えるおもしろさがあった
いい具合に独特の演出と登場人物たちが絡み、ギャグの空転も少なかった感じ
なにより意外といっては失礼かもしれないけど、ミステリーの要素もそれなりにしっかり描かれていて普通に観られる
そんな普通に観られる、というのがけっこうよくて分かりづらい&気づきづらい小ネタやストーリーがなくて適時ツッコミや解説があるので本当に鑑賞に易い
変なクセを出しすぎない良い意味でマイルドな作り、このノリがドラマ版からあればもっと話題になったかも
とりあえずドラマのストーリーもざっくり冒頭で説明してくれるし、しょうじき未見でもどうとでもなる作品なので劇場版単体でもじゅうぶん楽しめると思う

個人的評価:75点
オススメ度:今後は二時間ドラマ枠で簡潔にゆるゆるやってほしい



RANMARU 神の舌を持つ男 鬼灯デスロード編 予告