2013年4月30日火曜日

4月のこれ一本

毎年の言ってる気もしないでもないですが、世間で最大何日休みだの騒ごうがカレンダーの日付が赤かろうが、通常運転な歯車労働者なGWと書いてゴールデンウィーク
せっかくの楽しい連休って人が多いだろうから、あまりネガティブなことを言うのは野暮っつうわけでとっとと今月の一本を記してクソして寝るわあ
ボクとか連休を遊びまくる人を妬みながら枕ぬらすわあ

というわけで今月は「桜、ふたたびの加奈子」が一番印象に残る作品ですね
「シュガーマン」とか「遺体」とかインパクトのあるものが多くあったんですが、そんな中でも「桜~」があとに残るものがありました
ホントにすっげえ面白い、という映画でもないんですが、なんかジワジワとくるんですよね
一撃ガツンなハイパーインパクト作品もいいですが、こういうジワジワ系が個人的にけっこう好みだったりします
特に長い休みの中でノンビリと観るには最適かもしれません

というところで今月はここまで
また来月、5月はちょっと注目作品が控えめかもしれないけど、いろいろと観ていきたいですね

2013年4月29日月曜日

藁の楯 (2013/日)

監督:三池崇史
出演:大沢たかお / 松嶋菜々子 / 藤原竜也 / 岸谷五朗 / 伊武雅刀 / 永山絢斗 / 余貴美子 / 山崎努

連続幼女暴行殺人事件の犯人、清丸に「殺してくれたら10億円」という懸賞金がかけられる
このことにより警視庁はその護送に異例ともいえるSPの銘苅をつけることになり・・・

世界のMIIKE作品の中で予告や事前の印象で、「これは普通におもしろそう」とインパクトのあるものはたいがい実際の内容を観るとぎゃふんとなる確率が高い
と、最近ちょっと学習しつつあったんですが、意外にも(失礼)これは予告編から受ける印象まんまな内容になってました
たいがい途中までは普通におもしろいのに、なんかいきなり独特の世界観が展開して「なんじゃこりゃ」になるんですが、ほぼ全編おなじ雰囲気で統一されていて逆に意表をつかれた感じ

内容的には殺せば殺人という罪をかぶるけど10億もらえる、ってんで金銭的に追いつめられた人々が殺到
しかも未遂でも1億、さらに金を出す蜷川グループがその人物を雇用することで罪を償った後のフォローまでしてくれる
そんなもんで一般人はもとより、護送にあたって清丸に近しい人物たちまで目の色をかえる
誰が清丸の命を狙ってくるか分からない上に、内部に護送情報をリークしている人物がいるんじゃないかという疑念が浮かび上がり泥沼の混乱状態におちいっていく、と

みんながみんな怪しい感じに描かれることにより、ありがちながら誰が敵なのか誰を信じればいいのかカオスっぷりがおもしろい
それに加えて清丸のクズっぷりがホントに極まってて、仕事とはいえこれを守ることの皮肉さがよくあらわれていて、正論や正義が空しく響く

とにかく清丸のブレなさっぷりのために終始イヤな空気が流れ続けます
もちろん後味のいい作品じゃなく、観ててガチなクズ人間に振り回される空しさに耐えられない人とかマジでいるんじゃないかなあ
犯罪者に対して殺せば10億というネタだけの内容といえばそれまでで、もうちょい陰謀や裏側にある隠されたナニかがあればよかったって気もする
それでもそれなりに緊張感はあるし、ラストがどうなるのか最後まで気になり続ける求心力は作品としてもっている一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:清丸さんガチすぎてひくわあ



藁の楯 予告

図書館戦争 (2013/日)

監督:佐藤信介 / 下村勇二
出演:岡田准一 / 榮倉奈々 / 田中圭 / 福士蒼汰 / 西田尚美 / 橋本じゅん / 鈴木一真 / 相島一之 / 嶋田久作 / 児玉清 / 栗山千明 / 石坂浩二

メディア良化法により武力をもって本が不当に検閲されつつある日本
本を守る図書隊が設立され、過去に隊員に助けられたことのあこがれから笠原は女性隊員としてこれに入隊する

どうせアレだろ、銃弾とびかうのをバックに教官とヒロインでいちゃいちゃする乙女チック少女マンガなノリだろ
といういつものように偏見をもって観たんですが、これも思ってたのとちょっと違うシリーズにカテゴライズされる作品でしたね
ロマンス成分は思ってた以上に控えめで、どっちかというとずっと銃撃戦やってる印象が強く残ります
で、バンバン銃をぶっぱなしてるんだから画面的に派手ではあるんですが、なんというかえんえんとバキュラしか出てこないゼビウスをやってる「なんだかなあ」な気分がしないでもなかったです(分かりづらいか)

殺す気で武装して本を奪いにくる良化隊と、専守防衛で非殺の射撃しかできない図書隊の戦い、というしょうじきありえない設定をまずは受け入れることが重要ですね
そんな中でむかし助けてもらった隊員にあこがれて図書隊に入隊した男勝りな女の子、笠原が上官である堂上とぶつかりながら任務をまっとうしていく、と
訓練生(?)パートは意外にあっさり終わり、すぐに特殊部隊に配属された笠原の物語になり、あとは日常のちょっとした事件と派手な銃撃戦という内容

メインであるところの銃撃戦はがんばってると思う・・・んだけど、どうも単調な上に長い
さらに銃で撃ち合ってるのに不自然なほど負傷者の凄惨さはなく、死者とか重い描写はほとんどない
どことなくゲームっぽい撃ち合いをずっとやってるように感じずにいられないかな
あと、これだけはずっと引っかかりっぱなしなんですが、さすがに笠原が上官である堂上を開けっぴろげにナメすぎ
性格的なものってのは分からんでもないけど、もうちょい厳しい規律の中での話にしてほしかった

そんな感じで色々と粗はあるけど、クライマックスのアクションシーンは見応えあるし、じゃっかんの単調さをのぞけばエンターテインメントとして普通に楽しめる一本ですね
銃撃戦をコンパクトに描いて、もっと敵側のキャラとか訓練生時代を掘り下げてくれればなお個人的に好みな作りになったかもしれません

個人的評価:75点
オススメ度:いやいや、ドロップキックはあかん



図書館戦争 予告

2013年4月28日日曜日

ラストスタンド (2013/米)

監督:キム・ジウン
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー / フォレスト・ウィティカー / ジョニー・ノックスヴィル / ロドリゴ・サントロ / ジェイミー・アレクサンダー / ルイス・ガズマン / エドゥアルド・ノリエガ / ピーター・ストーメア / ザック・グリフォード / ジェネシス・ロドリゲス / クリス・ブローニング / ハリー・ディーン・スタントン

ある田舎町を守る正義感の強い老保安官レイ
そんな町へ脱走した大物麻薬王が向かっているとFBIから連絡が入り・・・

とにもかくにも完全にシュワちゃんで成り立ってる映画
ゆえにシュワちゃんが画面に映ってない、特に前半の場面の多くが退屈きわまりないんですよね
内容じたいと主演俳優、両方で高めあってひとつの作品としておもしろくなってるならよかったんですが、ちょっとシュワちゃん依存がすぎてる印象が強い
でも無理をして痛々しく描かれるシュワちゃんじゃなく、ちゃんと”今の”等身大のシュワちゃんがそこにいて、それがかっこいいからまだ救いがありますが

老保安官レイのおさめる小さな町で起こる殺人事件
時を同じくして大物の麻薬王が護送中に手下によって脱走、その逃走ルートからレイの町に向かっている可能性が出てくる
そんな中、レイは殺人事件と脱走犯につながりがあるのではと気づく
とりあえずブルース・ウィリスとはまた違う、年をとってなおがんばる主人公を演じるシュワちゃんを堪能しましょう
さすがの貫禄というか、体にちょっとは年相応のガタがきていても、どっしりと構えた重戦車のような力強さが画面からあふれ出てますね

そんなシュワちゃんをおがめる冒頭と中盤以降はいいんですが、序盤の麻薬王とFBIのやりとりが退屈すぎてつまらんわあ
そんな眠気ポイントさえ乗り切れれば、町を舞台に保安官たちがはっちゃける脱力系銃撃戦というお楽しみが待ってます
じゃっかん「ホット・ファズ」を思い出すようなドタバタ銃撃戦は素直におもしろい
そこからはもう「ザ・シュワちゃん」という流れで最後まで飽きません

ただし、あくまでB級映画としての「おもしろい」なので注意
雰囲気としては「シュワちゃんが昔に出演してた小粒なアクション映画」みたいな感じですかね
多くを望まず、御大いまだ健在なりというのを確認するための一本ということで
やっぱりもうちょい大作な感じのでババンと主演復帰してもらいたかった、という気がしないでもないのは否めないかな

個人的評価:65点
オススメ度:麻薬王さんの無駄なスーパードライバー設定とかどうなんよ



ラストスタンド 予告

アイアンマン3 (2013/米)

監督:シェーン・ブラック
出演:ロバート・ダウニー・Jr / グウィネス・パルトロー / ドン・チードル / ガイ・ピアース / レベッカ・ホール / ステファニー・ショスタク / ジェームズ・バッジ・デール / ジョン・ファヴロー / ベン・キングズレー

アベンジャーズの激しい戦い以来、精神的に不安定なトニー
一方、アメリカではテロ行為を繰り返すマンダリンと名乗る男が世間を騒がせていて・・・

なんつーか、ホントに「アベンジャーズ」の続きとして描かれてましたね
1、2、アベ、とシリーズとしてはけっこう変則的につながってるんで、これを観るならアベもチェックしとかないと楽しめないかもしれません
で、アベを観るなら・・・って感じで今からアイアンマンシリーズをキチンと追おうとするとめんどくさいかも
今後のソーとかキャプアメとかもそんな感じになるんかな

ストーリーとしては単純で、悪役としてマンダリン率いるテロ組織があらわれて、これと戦うと
悪役が入れ替わっただけで基本的な流れは同じ
だけど今回は主人公であるトニーさんのピンチが続くため、過去3作つづいてきた主人公にしては英雄化による安心感がなくて楽しめた
とはいえ都合悪く発作が起きる主人公、都合悪く機能が最初から万全じゃないアーマー、そこへ都合悪く敵が奇襲してくることでのピンチなんでかなり展開的には乱暴ですけどね

個人的に強さのインフレで悪役がどんどん強大になっていき、それに合わせてスーツを強化していく、みたいな単純なものじゃなかったのはよかった
しょうじきトニー自身もスーツもはなから万全である状態だったら、今回の敵はそこまで苦戦するような相手じゃない感じですね
かといって敵側に魅力がないってわけじゃなく、最初こそ「ちょっと地味?」と思ったけど、ラストバトルではけっこう存在感を主張してきて良キャラに描かれてます

前半のアイアンマンらしくない、苦戦続きのちょいシリアスな流れからじょじょにトニーさんの軽いノリも生きてきて、コミカルなシーンもあり、盛り上がるクライマックスと作品のバランス的には個人的にシリーズで一番いい感じと思えましたね
話の流れに引っかかりを感じるけど、そこはコミック的なヒーローものと割り切れば楽しめる
それでもシリーズとしてけっこう重要なことをさらっと流して描くラストはちょっとアレかもしれませんが

あと劇場に観にいく人はホントに最後の最後まで、場内の明かりが点くまで席を立たない方がいいかもしれません

個人的評価:85点
オススメ度:あの人の見た目が変わりすぎて、気づきづらいわ



アイアンマン3 予告

2013年4月26日金曜日

人情紙風船 (1937/日)

監督:山中貞雄
出演:中村翫右衛門 / 河原崎長十郎 / 山岸しづ江 / 助高屋助蔵 / 市川笑太郎 / 中村鶴蔵 / 坂東調右衛門 / 市川楽三郎 / 中村進五郎 / 市川莚司 / 嵐芳三郎 / 中村公三郎 / 市川岩五郎 / 市川菊之助 / 沢村比呂志

江戸のあるボロ長屋に住む髪結いの新三と浪人の海野
日々さんざんな目にあいながら貧乏暮らしをする新三の一方、海野はなんとか仕官の道を切りひらこうとしていた

古い映画を観ようじゃねえのシリーズ
時代劇です
時代劇ですが派手な殺陣も地味な殺陣もない、そもそもチャンバラシーンじたいがない時代劇ドラマ…なのに面白い
現代の時代劇ではクライマックスを決めるためにちょっとしたものでも殺陣シーンがあるもんですが、この作品はストーリーだけで勝負してみごとに完成されてますね
フィルム状態やら見た目こそ古くさいですが、ホントに今でも十分に通用する作品です

調子が良く、ヤクザものに目を付けられ、あくどいことをやっては散々な目にあっているおちぶれ者の新三
浪人ながら侍として凛と振る舞い、父の遺した手紙とつてをたよりに仕官の口を頼み込むものの、なかなかうまくいかない海野
同じ長屋の隣同士という知り合いていどの付き合いであるふたり
そんなふたりのそれぞれの生き様を描いていく作品
別にふたりでなにをするってわけじゃなく、それぞれあるていどの共通項があるってだけで基本は別々の話が展開していきます
ようするにふたりの対比みたいのを楽しむ内容ですね

ホントにクズっぷりをいかんなく発揮する新三、落ちぶれながらもあがく海野
それぞれの物語を観ていてもしょうじきつまらなくはない、けど「なにが描きたいんだ?」と序盤は思わざるえない
そもそも最初のうちはどんな話なのかも分からない
だけどじょじょに「うん?あれ?」ってなっていき、鑑賞後には「なるほどな」となります
あまりつながりのないふたりだけど、最後にはある意味で交差する様がおもしろい

自分でもこんな刀を抜いてバッサバッサと斬りまくらない、ドラマだけの時代劇作品をここまで楽しめるとは思わなかった
ふたり別々の道を歩みながらもあるていど関連する人物がからんできて、それら脇をかためる登場人物も演出のための駒ではなくちゃんと「生きている」感があっていい
鑑賞後、振り返ってみれば必要な無駄にあふれている素敵な映画だと思える、そんな一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:ナイス意地




人情紙風船 [DVD]
人情紙風船 [DVD]
posted with amazlet at 13.04.24
コスモコンテンツ (2011-02-14)
売り上げランキング: 11,478

2013年4月22日月曜日

リンカーン (2012/米)

監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ダニエル・デイ・ルイス / サリー・フィールド / デヴィッド・ストラザーン / ジョセフ・ゴードン・レヴィット / ジェームズ・スペイダー / ハル・ホルブルック / トミー・リー・ジョーンズ / ジョン・ホークス / ジャッキー・アール・ヘイリー / ブルース・マクギル / ティム・ブレイク・ネルソン / ジョセフ・クロス / ジャレッド・ハリス / リー・ペイス / ピーター・マクロビー / ガリー・マクグラス / グロリア・リューベン / ジェレミー・ストロング / マイケル・スタールバーグ / ボリス・マッギヴァー / デヴィッド・コスタビル / スティーブン・スピネラ / ウォルトン・ゴギンズ / デヴィッド・ウォーショフスキー / デヴィッド・オイロウォ / ルーカス・ハース / ビル・キャンプ / エリザベス・マーヴェル / バイロン・ジェニングス / ジュリー・ホワイト / グレインジャー・ハインズ / ウェイン・デュヴァル / クリストファー・エヴァン・ウェルチ / S・エパサ・マーカーソン

1865年アメリカ、南北戦争勃発から4年
時の合衆国大統領リンカーンは戦争終結とともに、奴隷制度の廃止を目指し修正法案の可決を目指す

現代弁護士でもない吸血鬼狩人でもないノーマルな時の大統領としてのリンカーンもの
というかあえて言うならば、「あのスピルバーグ」が「なぜ今」リンカーンなのか、という感じがしないでもないですね
別に「リンカーンにはあまり知られていない顔がある」とか「新たな解釈で描かれる」とかいうわけじゃなく、ホントにまっとうにリンカーンを描いてる
それほど偉人ものを観てるわけじゃないですけど、個人的にわざわざ今スピルバーグ御大が作った映画としての意味が作品としてあらわれてないかな、と

話的には南北戦争を背景に、奴隷制度の廃止を目指し憲法修正第13条を下院で通そうとあれこれする感じ
ほぼ1865年の1月はじめから31日までの約一ヶ月間の内容で、修正13条の下院可決をめぐっての対民主党と身内の共和党の議員たちと駆け引きやらをしていく政治劇
そこにちょっとリンカーンの家庭事情と南北戦争の描写を加えてます
思ったほど戦争の凄惨さとかに尺を割いておらず、奴隷制度廃止をメインにかなりリンカーンという人物の限られた人生の一部を切り取って作られている印象

仕方ないと言えばそれまでですが、序盤の時代背景やらその後の話のためにまかれる種的な描写が退屈きわまりない
これを描きたいんだろうな、という部分に至るまでえんえん眠気と戦うはめに…
中盤にさしかかればお堅い政治劇の中にもコミカルさが出てきて、さらに理念や信念、感情的な表現も出てきておもしろくなってきます
おもしろくなってはくるんですが、良く言えば温かみが感じられる丁寧な作り、悪く言えば古くさいと思わざるえない
巨匠が描く作品ゆえの安定感と古くささがある感じ

しょうじきホントに「リンカーン大好き!」という思い入れがある人以外、別に特に今これを観てもそれほどグッとくるものはないんじゃないかな
とか生意気にも言っちゃっててアレですが、安定したおもしろさがあるのは確かな一本でした

個人的評価:75点
オススメ度:スティーヴンスさんの存在感だけはハンパない



リンカーン 予告

2013年4月21日日曜日

桜、ふたたびの加奈子 (2013/日)

監督:栗村実
出演:広末涼子 / 稲垣吾郎 / 福田麻由子 / 高田翔 / 江波杏子 / 吉岡麻由子 / 田中里衣 / 永井秀樹 / 岸健太朗 / 戸田みのり / 横溝菜帆 / 吉満蒼 / 安藤聖 / 山城秀之 / 富永凌平 / 増本庄一郎 / 岡野謙三 / 米谷澪 / 西岡航 / 太田しずく

桐原夫妻の幼い娘である加奈子の葬儀がすまされる
なかなか娘の死を受け入れられない妻の容子は、やがて加奈子はここにいると夫に本気で言いだし・・・

生まれ変わりとしか思えない子供との関わりの中、娘の死を乗り越えて夫とか周囲の愛によって妻が立ち直っていく・・・そんな姿を感動的に描く
という、おばさま方をターゲットにしたまあよくある邦画のお涙ちょうだいモノだろ、と思ってたら違ってた「思ってたのと違うじゃねえか」シリーズ
独特のカメラワークと醸し出される雰囲気は「これサスペンスホラーなのか?」と感じずにいられない
内容的にはおばさま方向けっぽいんだけど、作りはかなり若い人向けっぽく思えました

娘の死後も食卓に子供の分のごはんを用意し、空っぽの椅子に腕をのばし、手をつないでいる様を見せる妻の容子
夫は加奈子は死んだこと、そこには誰もいないことを説くが彼女は聞く耳をもたない
やがて飼い犬の突然の逃走事件をきっかけに、容子は若い妊婦である野口と出会うことで、加奈子の生まれ変わりうんぬんという言動まで飛び出してくる
そんな展開を寄せのカメラを中心に、短く切り替わるアングル、俯瞰、一人称視点、三人称視点という独特のカメラワークで描かれてます

さらに「なんかありそう」という謎めいた怪しさが作品全体にただよっており、最後まで良い意味で気を抜けずに緊張感をたもったままスクリーンに釘付けにされましたね
ちりばめられた伏線の回収のテンポもよくって、ホントにほとんど無駄な登場人物・描写がない
ラストも「うん、まあ悪くはないけど、こんな終わり方なのか」とじゃっかん物足りなく感じてたんですが・・・
観客に対し「こう感じてるでしょ?じゃあ、次はこんなシーンはどうだ」というような作り手の心意気がにくたらおもしろい

若い人向けの作風ゆえに、じゃっかんあざとさもあるカメラワークとか、落ち着いた感じで泣きたいお年をめした方にはちょっと辛い演出があるかもしれません
ただそんな点は些細な難で、私も含めちょっとひねたものが好きな人にとってはかなり楽しめる一本ですね

個人的評価:95点
オススメ度:感情の感じられない死んだ魚の目が似合う女優ナンバー1、広末



桜、ふたたびの加奈子 予告

2013年4月19日金曜日

ラ・パロマ (1974/スイス)

監督:ダニエル・シュミット
出演:イングリット・カーフェン / ペーター・ケルン / ペーター・シャテル / ビュル・オジエ

官能的な女ヴィオラのショーを観ていた男、イジドール
謎の男に体を触れられ、ヴィオラとの関係を想う

普段の自分ならぜったい手に取ることはなかった
けど映画「インターミッション」でそのタイトルを見て、どんな作品か調べるうちに興味をひいて今回観てみることに
なんというか、オーソドックスで退屈なロマンスかと思いきや、ひとクセもふたクセもあるまさにクセもの映画でしたね
褒め言葉的な意味で眠くなってきても寝かしてくれない、不快になる一歩手前のきわどさ、痛気持ちいい系のカメラワークと音の使い方が印象的でした

ショーを観ている主人公イジドール
”想像する力”という題目とともに現れた怪しい男にイジドールはそっと触れられると、過去を振り返るような、未来を予見するような、妄想が拡大するような想いの世界が展開していく
そこではヴィオラを愛するイジドールと、そんな女に向けられた”深い愛”のことを愛するヴィオラの物語が描かれます
右から左へ、手前へ、奥へ、ゆったりと動くカメラ
それにあわせて優雅に、力強く、怪しく、恐ろしく演じるキャストたち
そこに美しい曲が重ねられていく

だけど、そんなゆったりとしたカメラと曲に身を委ねていると、急に話は展開し神経を逆なでするようなちょっと不快な音が作品を支配します
そんな緩急が個人的にはおもしろかった
物語や娯楽性とは違う映画の表現としてのおもしろさがあるかな、と
まあ、素人の感じ方なんでそっち方面の知識豊富な人からすれば「なに言っちゃってるのコイツ」と思われるかもしれませんが

良い意味でも悪い意味でも「なんだこりゃ」という記憶に残らざるえない一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:知識としてないものは想い描けない

2013年4月15日月曜日

ライジング・ドラゴン (2012/香港)

監督:ジャッキー・チェン
出演:ジャッキー・チェン / クォン・サンウ / ジャン・ランシン / ヤオ・シントン / リャオ・ファン / ローラ・ワイスベッカー / アラー・サフィ / オリヴァー・プラット / ケニー・G / ヴィンセント・ツェ / チェン・ボーリン / ケン・ロー / ジョアン・リン / ダニエル・ウー / スー・チー

凄腕トレジャーハンターのJC
彼の率いるチームに十二支頭像の奪還依頼がくる

僕らのジャッキー最後のアクション大作・・・って、ちょっとショッキングですわあ
最後の、って部分もそうですが、それ以上にこの映画を「アクション大作」とか言っちゃう日本のコピーは頭おかしいと言わざるえない
でもなんかこの映画に僕らのジャッキーも満足してるような口振りだし、うーん、なんだかなあ・・・
アクションシーンは確かにすごいし、いわゆるジャッキーアクションも健在・・・なんだけど、それ以外の部分があまりに幼稚すぎやしないかい
デキの悪い子供向けアドベンチャー作品に薄っぺらいストーリーとどん引きギャグを付け加えた、どうにもこうにも残念すぎて見るに耐えない内容でしたね

いかにも悪者なボスの率いる組織から依頼を受け、JCたちは世界に散らばる十二支頭像という像を基本的に持ち主から盗み出す
この主人公、トレジャーハンターと言えば聞こえはいいけど、ぶっちゃけ金でなんでも盗みだす窃盗団だわな
特に悪に荷担するやむを得ない事情もなく、なにかしらの信念があるわけでもない、ホントに金で動く悪側のトレジャーハンターなんですよね
で、そんな主人公たちが「元は遙か昔に中国から奪われたモノなんだから、盗んでもOK」という理屈をガチで通して、おもしろハイテク機器を駆使し泥棒しまくる、と

僕らのジャッキーが冷静に考えて普通に悪者側の人間ってのも違和感あるけど、それ以上にコントにしか見えないコメディパートが心底ヒドイ、いやヒドすぎる
日本語を交えて襲ってくる島の盗賊たちとか、そんなシーン必要か?と
普通に金持ちフランス人が雇った傭兵みたいのとガチアクションすればいいんじゃねえの
マジであの島での展開はこのヒドイ作品の中でも群を抜いてヒドイ

ストーリーも「その場で考えてるの?」ってくらい行き当たりばったりで稚拙で分かりづらい
家族愛みたいな要素も入れてるけど、ほんっとうにどうでもいい
序盤のダサカッコイイアクションとか、クライマックスからのジャッキーアクションっぷりは楽しいし、特にカメラアクションが個人的におもしろいんだけどなあ
ジャッキー映画のダメな意味でのコミカルさが濃くですぎてて、そっちの悪い印象ばかり目立つ

僕らのジャッキーが子孫に「これがジャッキー・チェンだ」とか言ってほしくないよ
いや、まあ、清濁あわせてって意味なら間違ってないけど、もっとビシっと良いモノを作って胸を張って終わってほしい、そう思わざるえない一本でした

個人的評価:40点
オススメ度:12個そろっても何が起きるわけじゃないのね



ライジング・ドラゴン 予告

舟を編む (2013/日)

監督:石井裕也
出演:松田龍平 / 宮崎あおい / オダギリジョー / 黒木華 / 渡辺美佐子 / 池脇千鶴 / 鶴見辰吾 / 宇野祥平 / 又吉直樹 / 波岡一喜 / 森岡龍 / 斎藤嘉樹 / 麻生久美子 / 伊佐山ひろ子 / 八千草薫 / 小林薫 / 加藤剛

営業部から辞書編集部へ引き抜かれた馬締
コミュニケーションに難はあるものの、独特のセンスをもつ彼は途方もなく時間のかかる辞書づくりにいそしむ

どうせアレだろ?なんだかんだマジメ人間のロマンス話が出しゃばってグダグダになるんだろ?
と、あんまり期待しないで観たんですが、そんなことはなくって、むしろロマンスパートは最小限に押さえられてましたね
あくまで辞書づくりというものを中心にすえて描かれていて、そこにいろんな人が関わってきつつおもしろおかしく話が展開していく内容・・・これは楽しかったと言わざるえない
地味なんだけどおもしろい、という典型的な作品

性格的にはクソマジメだけど、他人と話すことや理解しあうことが苦手で根暗な印象の男、馬締
完成までに20年はかかるのではないか、という辞書づくりの仕事をすることになる
馬締とは正反対な軽い先輩、老齢ながら現代的な物事に好奇心の枯れることのない監修の先生たちとともにコツコツ作業をすすめる
マジメ人間ゆえに天然っぽいボケをかます主人公のおもしろさ、さらに脇を固める他の登場人物たちのクセのある存在感、公私ともに問題の波をのりこえて辞書づくりの日常を描いてます
いや、ホントにただそれだけなんだけど、下手にいろんな要素に物語が傾かないからブレずに最後まで楽しめます

とにもかくにも地味すぎる作品なんだけど、途方もない目標にむかって艱難辛苦をのりこえていく登場人物たちの姿を真摯に、時にコミカルに描かれているのをみてるだけでおもしろい
こういう作品ってけっこう途中で眠くなる要素があるもんですが、個人的にはまったく眠くならず退屈することもなく最後まで観られました

ただ一点、時が急にすっ飛ばされた以降ちょっとドラマ的に軽いかなって感じがしないでもない
馬締が先輩になり、感性の違う後輩が入るのはいいんだけど、あんまりいかしきれないかな
同じく終盤の荒木さんの扱いもストーリー展開上おいておきました、みたいな気がしないでもない

まあ、それはそれとして、月並みだけど辞書づくりの大変さ、その一片だけでも触れられたし物語としても楽しめた一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:ギリジョーさん味のある役者さんになったなあ



舟を編む 予告

2013年4月14日日曜日

シュガーマン 奇跡に愛された男 (2012/スウェーデン・英)

監督:マリク・ベンジェルール
出演:ロドリゲス

アメリカでは散々なセールスで、国内では知る者すらわずかなミュージシャンのロドリゲス
焼身自殺、ライブ中の拳銃自殺がささやかれる彼の曲は、本人の知らぬ遠く離れた南アフリカでは大ヒットしており・・・

この映画の存在を知ってロドリゲスのアルバム2枚を購入、事前に曲は予習しておいたんですが、個人的にかなり好みな感じのサウンドですでに観る前から満たされてました
で、いざ本編を鑑賞してみると、またこれが良いんだわ
彼の曲に関わったすべての人、とは言えないかもしれないですが、とりあえず彼を知る人たちのハッピーな笑顔をみてるだけで「はあ、良いわあ」となる
さらに劇場のサウンドシステムで奏でられる曲にも満足

すごい奴がいる、と目をつけられてアルバムが作られたロドリゲスだったが、まったく売れずじまい
しかし偶然にも南アフリカに渡ったレコードが当時の時代背景にマッチし空前の大ヒットとなる
現地では謎に包まれたロドリゲスの死の真相にせまるため、その調査がはじめられる
ドキュメンタリーとはいってもがっちがちなお堅いものじゃなく、PV風の映像やらCGを随所に挿入、さらにちょこちょこロドリゲスの曲も流してくれるので娯楽的な作品としても楽しめる

ロドリゲスのデビューと南アでのヒット、だけどいったいロドリゲスってなんなんだという流れからの描き方を追いつつ、彼の曲を堪能する作品ですね
まあ、ちょっとフルで曲をやってくれないのがアレでしたが
どうせなら有志によるPVとかフルコーラスで作って挿入してくれても、というのはちょっと贅沢な要求ですかね
当時の南アのおかれた状況、アパルトヘイト政策とロドリゲスの曲との関連が奇跡的な流れの中でヒットしていく様子
そしてけっこういい加減だった当時のアメリカのカネの流れ
時代的な背景をみる分にもおもしろい

まあ、なにはともあれロドリゲスの曲、そしてその人となり、周りの人の笑顔、これ以上に素敵なものはないでしょう
美談にしすぎ、という感じがじゃっかんしないでもないけど、音楽好きな人にイヤな奴はいない、と信じたい
終盤の展開はネタバレになるからさけるけど、開けられる窓を映すシーンとかマジでジーンとこみあげてくるものを押さえきれなかったわあ

とりあえず代表曲である「シュガーマン」を聴いてみて、いいねと思える人なら満足できる作品だと思いますね
音楽的な趣味はマジで多種多様なので、こればかりは万人にオススメできる一本じゃないですが、個人的には心の底から楽しめた作品でした

個人的評価:90点
オススメ度:さすがにスーツで出社まで真似できないけど、その心意気は肝に銘じておきたい



シュガーマン 奇跡に愛された男 予告

コズモポリス (2012/仏・加)

監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ロバート・パティンソン / ジュリエット・ビノシュ / サラ・ガドン / マチュー・アマルリック / ジェイ・バルシェル / ケヴィン・デュランド / ケイナーン / エミリー・ハンプ / サマンサ・モートン / ポール・ジアマッティ

特注のリムジンの車中、エリックは様々な人を招き入れる
床屋まで道中、車外の光景も移り変わり・・・

SF的な感じの作品かと思ってたら、ほぼ全編リムジンの中だけの描写での主人公と相対する人たちとの1対1の会話劇だったという
画面的に目立った動きなどなく、ホントに哲学的というか小難しい話に花咲かせる内容に、最初こそおもしろかったけど台詞の洪水とつかみづらい会話に眠気が・・・
それゆえキチンと内容が理解できるはずもなく、個人的にはちょっと楽しめる作品ではなかったです

預言者といわれるくらい物事の先が読めていたエリック、しかしあるチャートを作れないことから金銭的にも精神的にも不安定な状態におちいりつつあった・・・というストーリー、のはず
床屋までの車中で妻やら専属の医師やらを招き入れ、時にはホテルや飲食店に寄り道しつつ、それでも1対1の会話劇の形式はそのままにゆるゆると目的地に向かう、と
仕事の話やら体の話、音楽の話、性的な話とさまざまな会話が入り交じり画面的にはシンプル極まりないんだけど、内容はめちゃくちゃカオスでした

天才とアレは紙一重という存在を具現化したような主人公のエリックの言動と行動を楽しむ作品、だと思うんですがホントに多くを語れるほど理解してないので個人的にはよけいなことは言えないですね
理解はできてないんだけど、なんか変な魅力があるのは確か
そういう意味でちゃんと話が分かる人にとっては評価が変わるだろう、というわけで私的には50点という微妙な評価点にさせてください

原作もあるみたいだし、ちょっと手を出してみようかな
そうすれば理解できるかなあ・・・
いや、私の頭じゃ無理か?という感じの一本でした

個人的評価:50点
オススメ度:そんなことよりセックスしようぜ!



コズモポリス 予告

2013年4月11日木曜日

ミロクローゼ (2012/日)

監督:石橋義正
出演:山田孝之 / マイコ / 石橋杏奈 / 原田美枝子 / 鈴木清順 / 佐藤めぐみ / 岩佐真悠子 / 武藤敬司 / 奥田瑛二

偶然であった女性に惹かれる少年オブレネリ・ブレネリギャー、恋に悩む男性の相談に乗る熊谷ベッソン、盗賊にさらわれた恋人を探す浪人の多聞
3つの物語により愛が描かれる

これはまた思ってた以上に人を選ぶ作品ですね
ホントにおもしろいと思う人には最高だろうし、そうじゃない人にとってはまったく楽しめないような内容
自分が観てきた映画の中では「ミラクル・ペティント」が一番近いノリ・・・かなあ
すべってようが笑えようが、ださかろうがかっこよかろうが、とにかく照れ隠しすることなく全力で畳みかけてくるいさぎよさは個人的に好感がもてました
たいがいのコメディでは、ちょっと微妙なギャグをかましたあとに「てへ☆」的な照れ隠しという名のセーフティ要素を安全のために入れておくものなんですが、それがないってのはなかなかにチャレンジャーで良かったですね

しょうじきストーリー性は弱くて、なにより世界観とビジュアルを楽しむことに特化してる印象が強いかもしれません
いちお3人の異なる主人公による3つのストーリーが「愛」をテーマに展開するんですが、まあ、その映像的なインパクトはハンパないわあ
個人的には2つ目の熊谷ベッソン編が一番好きですね
もう深く考えることは放棄して、頭からっぽでヨダレたらしながらその世界にノってるだけで楽しかった

何はともあれ俳優、山田孝之があればこそ、山田孝之だからこそ、山田孝之のための、山田孝之作品といった感じ
どんな色にも染まれる、派手さはないけど堅実でどんな役もこなす役者っぷりは惚れるわあ
と、個人的にはひじょうに楽しめた作品ではあったんですが、難点があるとすれば「これ映画としては見れないかな」というところ
映像作品としてはOKだけど、「映画か?」と聞かれると「うーん・・・」って感じがしないでもない

まあ、とりあえずおもしろければ、楽しければオールOKって感じで何も考えずに観るには適してる一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:サントラ出てないんかな




ミロクローゼ 予告


ミロクローゼ スペシャル・エディション [DVD]
Happinet(SB)(D) (2013-04-02)
売り上げランキング: 6,358

2013年4月8日月曜日

遺体 明日への十日間 (2012/日)

監督:君塚良一
出演:西田敏行 / 緒形直人 / 勝地涼 / 國村隼 / 酒井若菜 / 佐藤浩市 / 佐野史郎 / 沢村一樹 / 志田未来 / 筒井道隆 / 柳葉敏郎

2011年3月11日、東北関東大震災直後の釜石市
臨時で中学校の体育館に設けられた遺体安置所で、かつて葬儀関連の仕事をしていた相葉はボランティアで活動をはじめる

当時、東北関東大震災で誰かを亡くしたわけでもなく、何かを失ったわけでもない自分にとって、この映画はただ圧倒されるものとして観ていることしかできない
おそらく、たぶん、そんな風に想像するしかない
そして、実際の被災者の方々にとってはそんな私の想像すら生ぬるいものを抱えているんだろう
でも観るだけでも、考えるだけでもやらなくては、しなくてはいけない、そう訴えてくる作品ですね

臨時の遺体安置所となった学校の体育館
大混乱の中、次々に遺体が運ばれてくるがただ運ばれてきて置かれてるだけという現状を見かね、葬儀関連の仕事の経験があり遺体との接し方を心得ている相葉はボランティアで安置所の管理をすることに、というお話
過剰演出でもなく、あまりにリアリティに特化しているでもなく、実状の一部を切り取って描いているという印象の作品でした
あまりにあんまりな出来事ゆえに感情が凍結してしまっている様子の描写がものすごく悲しくて痛い
それでいて目をそらしてはいけない画面的な力強さがある

しょうじき最初は相葉の言動や行動に対し「正論だけど、みんなそれどころじゃねえだろ」と思いもした
そしてなんでもっとみんな自分のエゴを、負の感情を表に出さないんだとも思った
だけどそんな風に思うのは何も失っていない傍観者ゆえの考えなんだな、と気づきましたね
肉体も疲れきっている、心もすり減りきっている当事者たちの何を分かってやれるというのか、と痛感

それぞれが「やってもやらなくても同じじゃないのか?」くらい本当に小さな小さな一歩を積み重ねることで、前に進んでいる以上それは決してそれは無意味なことじゃないというのがよく現れている
それすなわち私のような人間にもあてはまり、思うこと、考えること、伝えること、そこからでもいいから「自分なんか」と停滞しているより、動くことが大事なんだなと思い知らされた一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:日ごろ、言い訳探しばかりしてる自分が情けないわ



遺体 明日への十日間 予告

2013年4月7日日曜日

東ベルリンから来た女 (2012/独)

監督:クリスティアン・ペッツォルト
出演:ニーナ・ホス / ロナルト・ツェアフェルト / ライナー・ボック / ヤスナ・フリッツィー・バウアー / マルク・ヴァシュケ / クリスティーナ・ヘッケ / ヤニク・シューマン / アリツィア・フォン・リットベルク / ローザ・エンスカート / ズザンネ・ボーアマン

ベルリンから地方の小児科医院にとばされてきた女医師バルバラ
院内で孤立する彼女には理由があり・・・

しょうじき観おわった直後は「うーん、まあ、こんなもんか」という印象でしたが、時がたつにつれてじょじょにきますね
まさにスルメ的な作品
アレだ、「レイチェルの結婚」と似た個人的な後味がある
他人に勧められるか、と言われるとなんともな感じだけど個人的にはめちゃくちゃ好きなタイプの映画です

どこか裏がありそうなクールな女医師バルバラ、あえて孤立してる風な彼女が患者や同僚と接するうちに・・・という内容
そんな中で彼女のおかれた立場やら過去が分かってくる、と
主人公の心の変化を描いてる作品なんですが、とにかくよぶんな演出がない
淡々と描写される場面の中、音楽やカメラワークに頼らずシンプルに演技だけで物語を形作っている
素材の持ち味をいかしたシンプルな一品料理みたいな感じ

壁に隔てられていたドイツ、女性の扱われよう、東側の状況、医師として女として、いろんな要素が凝縮されている
ただあんまりに淡々と描いているので、じゃっかん眠たくなるのともの足らなさは否めない
観おわったあとにいっさい振り返らず、スルメをちょっとかじって丸飲みしちゃうタイプの人にはあっさりしすぎな「こんなもんか」映画にしか映らないと思う

かなり限定的ではあるけど、これけっこう口コミで評判が広がってもいい作品じゃないかな、と思える一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:まさか劇場スクリーンでアルバトロスのロゴを見るとは



東ベルリンから来た女 予告

ヒッチコック (2012/米)

監督:サーシャ・ガヴァシ
出演:アンソニー・ホプキンス / ヘレン・ミレン / スカーレット・ヨハンソン / トニ・コレット / ダニー・ヒューストン / ジェシカ・ビール / マイケル・スタールバーグ / ジェームズ・ダーシー / マイケル・ウィンコット / リチャード・ポートナウ / カートウッド・スミス / ラルフ・マッチオ / ウォーレス・ランガム / ポール・シャックマン / スペンサー・ギャレット / フランク・コリソン / ジュディス・ホーグ / カリー・グレアム / タラ・サマーズ / カイ・レノックス

60をこえてなお現役の超有名映画監督ヒッチコック
そんな彼が次回作に選んだのは、あまりの醜悪さゆえに周りから理解されることのない題材を扱った作品「サイコ」であった

映画マニアじゃなくても「あー、知ってる」と言うだろうヒッチコックの作品冒頭でのトーク&曲
ヒッチコックを扱う作品なら外せないそんなシーンから入るわけですが、定番すぎ作りな気もするけどやっぱりこう始まらなくちゃって感じですね
数々の作品を手がけたゆえに名作も駄作も抱えるヒッチだからこそ、周りからは引退を気にされたり、キツイ記事を書かれたり、若い映画監督の追い上げに悩まされる
そんな描写でいくのかと思ってたんですが、うーん、どうも途中から展開する夫婦間のアレコレが退屈すぎて眠かった

話的にはこれまでに作ってきた作品のようなものを期待する映画会社だけど、ヒッチが選んだのはあまりに挑戦的すぎる内容のもので、制作開始もままならないけど映画に対する情熱で乗り越えていく、みたいな感じ
しょうじき展開的に目新しさはない
でも後の名作と呼ばれるものの制作秘話みたいなもののテーマとして、ヒッチコックの「サイコ」をチョイスするなら映画作り映画として魅力を感じずにいられないでしょ
独特の存在感があるヒッチコック監督のキャラも相まって、スクリーン的な観てる側をひきつける力はある

だから素直に周りの雑音と情熱をふりしぼって戦うヒッチの姿を描いてくれてるだけでよかった
しょうもない夫婦間、しかも老齢な夫婦間での性的な問題は観てておもしろくもなんともないんだわ
コメディタッチで描いてくれればまだいいけど、なんか物語の中核めいたものにおかれてるからどうにも、ね

そんな夫婦間の問題が片づいてからのクライマックスとラストの展開はまた息を吹き返したようにおもしろくなるからまだ救われたかな
クライマックスのヒッチコック踊りに「そうそう、こういうのが観たかったんだよ」と思わざるえない
最後のヒッチコックのトークシーンも誰もが理解できる笑える作りになってるし、ホントに途中の退屈さがもったいなさすぎる印象の一本でした

個人的評価:70点
オススメ度:それで節約してるつもりか、このブルジョワジーめと言いたい



ヒッチコック 予告

2013年4月4日木曜日

太陽を盗んだ男 (1979/日)

監督:長谷川和彦
出演:沢田研二 / 菅原文太 / 池上季実子 / 北村和夫 / 神山繁 / 佐藤慶 / 伊藤雄之助 / 風間杜夫 / 水谷豊

中学教師の城戸は学校ではやる気のないだらけた男だが、内に秘めたある計画があった
そんな中、バスジャック事件から勇敢な山下警部と出会い…

犯罪者には問答無用でためらうことなく発砲し、その命を奪うこともいとわない古き良き日本の西部(警察)時代っぽい作品
今となっては、その荒唐無稽っぷりをマジメにがんばって作ってた時代を懐かしみながら楽しむ感じの映画かもしれませんね
とはいえ当時の邦画としての日本産娯楽映画としてはかなり力入ってますし、 文太とジュリーという二大スターにおんぶにだっこな作りじゃなく、内容的にもエンターテインメント作品としておもしろい内容になってます

話的には前半の原爆製造パートと後半の城戸VS山下の戦いに大きく分かれてます
前半ではだらけた教師ながら原爆を作るために画策する怪しい男、城戸の存在を映しだしてるんですが、この主人公がまた妙な魅力があって良い
さすがジュリーという中の人の魅力も多分にあるけど、コミカルでストイックでだらけた所がありつつ変に情熱的でアグレッシブな面もある主人公を見てるだけでじゅうぶん楽しめます

そして、メインである城戸VS山下の後半
とにかく深いことを考えず、ふたりの言動や行動を頭からっぽにして楽しめます
感覚的にデスノートから頭脳戦を引いたキラとLの戦い、みたいな?よく分からんか
単純にカッコイイ文太、どこか怪しい魅力のあるジュリー、ふたりの共演による相乗効果はすさまじいもんがあるなあ、と思わざるえない
個人的に山下の「5億と言わず50億~」とか言っちゃうキャラは大好きですね
あと山下のタフすぎるくらいタフではっちゃける行動もいいわあ

あえて難点を言うなら主人公の内面というか、原爆を作る原動力になってる部分を描いてほしかったかなあ、と
あまり深く掘り下げることはしなくてもいいけど、「実はこういう過去があって…」みたいな何かしら匂わせる要素があってもいいんじゃないかな
まあ、そんなちょっと気になる部分もあるけど、城戸と山下の対決の行方やらクライマックスからオチまで、そのありえない展開っぷりを存分に楽しめた一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:金属プルトニウムには猫をひきつける何らかのアレがある…わけねえ




太陽を盗んだ男 予告



太陽を盗んだ男 [DVD]
太陽を盗んだ男 [DVD]
posted with amazlet at 13.04.03
ショウゲート (2006-06-23)
売り上げランキング: 2,254

2013年4月1日月曜日

DRAGON BALL Z 神と神 (2013/日)

監督:細田雅弘
出演:野沢雅子 / 山寺宏一 / 森田成一 / 佐藤正治 / 鶴ひろみ / 田中真弓 / 堀川りょう / 古川登志夫 / 古谷徹 / 緑川光 / 草尾毅 / 八奈見乗児 / 皆口裕子 / 石塚運昇 / 塩谷浩三 / 伊藤美紀 / 龍田直樹 / 渡辺菜生子 / 大友龍三郎 / 平野綾 / 千葉繁 / 山田栄子 / 玄田哲章 / 松本薫 / 中川翔子

破壊の神であるビルスの眠りからの目覚めに神経をとがらせる界王をよそに、悟空はその強さに興味津々
一方、ビルスも自信の予知夢でみた「スーパーサイヤ人ゴッド」に興味をもち、悟空と接触を試みようとしていた

ドラゴンボールの新作劇場版かあ、まあ、でも子供向けなオーソドックスな絆的なアレをからめたバトルものなんだろうな
と、思って観たけど、意外や意外におもしろい
というかまさに「これがドラゴンボールだよね」と懐かしさを感じて楽しかった
基本はコミカルでそんなに深刻さは感じないけど、ちゃんとバトルシーンは燃える作り
ラストも「へえ、そういう展開なんだ」と最後までおいしくいただけました

破壊の神であるビルスが予知夢でみた「スーパーサイヤ人ゴッド」という存在に興味をもち、悟空のもとを訪れてみるもそんなことを知る人はなし
そこで地球にまで聞き込みにきたが、そこではブルマの誕生パーティの真っ最中
ビルスの恐ろしさを知るベジータはなんとか気分を害させないようにプライドを捨てて気をまわす・・・みたいな流れ
とりあえず見た目がなんだかなあ、だったビルスのキャラがしゃべって動いてる所をみるとけっこう魅力あふれるドラゴンボールキャラになってて良かった

あとは影の主人公であるベジータもナイスすぎる
笑いも燃えも持ってて、単なる悟空の前座としてのヘタレキャラじゃないのに作り手の愛を感じるわあ
もちろん主人公の悟空も悟空らしくっていい
単なる戦闘バカってわけでもなく、中途半端に大人な対応と知恵をつけてる立ち回りが素敵すぎる
ビルスとの戦いの中での心情とかも悟空らしさが出てるし、その戦いの顛末の部分でもそこらへんがうまく表現されてましたね

これは仕方ないのかもしれませんが、昔のアニメ版ドラゴンボールで止まってるおっさんとしては、やっぱり声優さんの演技に引っかかりを感じる
諸事情で声優交代してるキャラはいたしかたないけど、変わらず演じてる方の声が微妙に「うん?」となる時が・・・
あとは話題性だけのゲストキャラとかいらんかったなあ
まあ、そんな些細なことは忘れて今のファンも昔のファンも楽しめるお祭り的な作品として、単なる企画ものじゃなく丁寧に作られてるのは好感をいだけた一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:まさに老若男女対応、ザ・ドラゴンボールでした



DRAGON BALL Z 神と神 予告