2010年7月31日土曜日

7月のこれ一本

いよいよ本格的な夏ですね
ダルイ…ほんっとうにダルイ…
暑さがもうまったくもってダメな身としては、一日ひきこもってゲームと映画と惰眠してたいわあ
四季がはっきりしてる国って素晴らしいですが、夏の暑さとかチェンジ要請したいですね。Yes we can!
と、いい感じで空冷したところで、今月は「インセプション」がオススメってことで
設定のうさんくささすら分かった上で作られていて、色々と想像できるラストは秀逸でしたね

2010年7月30日金曜日

丹下左膳餘話 百萬両の壷 (1935/日)

監督:山中貞雄
出演:大河内伝次郎 / 喜代三 / 沢村国太郎 / 宗春太郎 / 花井蘭子 / 深水藤子 / 山本礼三郎 / 高勢実乗 / 清川荘司 / 鬼頭善一郎 / 磯川勝彦 / 坂東勝太郎 / 鳥羽陽之助








2004年版を観たんだから、ついでと言っちゃあアレだけど1935年版もうちにあったので鑑賞
ストーリーは2004、1935年版ともにほぼ同じ
しかし、この1935年版はちゃんと時代劇という形になってるってだけで面白みが幾分も増します
というか、当時、こんなストーリー性をもった作品を作ることじたいがすごいんじゃないかと言わざるえない
もちろん古い映画ゆえに今観るとキツイところもありますが、ビックリするくらい色あせてないから素敵です

そして、どうせならもう比べていってしまいますが、こうして旧版を観てると新版の良アレンジぶりが分かりますね
もともとよかったストーリーをさらにいい感じに味付け肉付けして、非常に観やすくなってるのが分かります
キャラと雰囲気は旧版、ストーリーの分かりやすさは新版といったところでしょうか
それでも話の骨子が旧版の時代に完成していたってだけで明らかに総合的な完成度は旧版の方が上かもしれません

とりあえず同じ内容なのに続けて観ても退屈感がなかったのは事実
ただ残念なのは幻の場面が復刻してあるにしろ、殺陣シーンがほとんど皆無だったこと
いったい当時の完全版フィルムではどうなってたのか気になります

個人的評価:85点
オススメ度:はいはい仇討ち仇討ち


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丹下左膳 百万両の壷 (2004/日)

監督:津田豊滋
出演:豊川悦司 / 和久井映見 / 野村宏伸 / 麻生久美子 / 武井証 / 金田明夫 / 坂本長利 / かつみ・さゆり / 柏原収史 / 山下徹大 / 渡辺篤史 / 荒木しげる / 渡辺裕之 / 堀内正美 / 豊原功補







隻眼、隻腕の浪人、丹下左膳は矢場の用心棒として雇われていた
ある日、子供を引き取ることになったことで、百万両の価値のある壷をめぐる騒動に巻き込まれる

僕らの悦司がコミカルさをウリにした丹下左膳に扮している作品
やっぱり渋い声というか、なんというか、棒読みと紙一重の演技がたまりませんね
そして、このコミカルな丹下左膳が実によく合っててビックリでした
「鳥刺し」とはうってかわって時代劇ドラマはドラマですが、エンターテインメント性重視の現代風の作風
殺陣よりストーリー重視で、スタイリッシュなチャンバラシーンもありますが全体的に軽い印象が強くて物語のオマケていどの存在でした

話的には財政難に悩む柳生の藩主が家に百万両の価値のある壷があると知ったものの、それはすでに婿養子にだした弟にくれてやってしまっていたと分かる
弟も汚い壷など売ってしまえと不要品買い取り業者に渡してしまい、兄弟そろって壷の価値に気づいた時には後の祭り状態で広い江戸の町で壷の捜索がはじまる
で、そこに偶然にも町の矢場で用心棒をしていた左膳が絡んできて、壷をめぐるすれちがいドタバタコメディの様相を見せ始める、と
メインである壷の話の他に細かいサイドストーリーが織り込まれてきて、単純な話だけど単調にはなってません

中盤以降は左膳のだだっ子状態とか、話のうまい絡まり方に退屈はしないんですが、とにかく序盤がひどい
かつみ・さゆりの映画の雰囲気を見事に壊す持ちネタ披露、狙いすぎてて寒気すらおぼえる効果音の使い方、この作品を時代劇という形でくくって観始めるとひどい苦痛を感じるでしょう
そこを乗り切って「そういうノリの映画なんだ」と思えるくらいに慣れてくると、じゃっかん楽しくなってきます
多少のおふざけ時代劇は許せる、という人でもこの序盤の流れはキツイんじゃないでしょうかね

とにかくホントにアクション部分の肝である殺陣はオマケ
終盤に向かって収束していく展開が重すぎず軽すぎず、微妙に人情味あふれてる感じの話が心地よい
物語を進める上での捨て設定や捨てキャラかと思ってたら、最後にきちんとそれなりな精算をしてくれたり、意外にちゃんとした作りになってましたね
まあ、でもぶっちゃけ二時間ドラマ枠でやるような雰囲気は隠し切れてませんけど
ようするになんだ、ほら、かなり微妙な作品だったなってことでひとつ

個人的評価:60点
オススメ度:これがツンデレってやつですか




丹下左膳 百万両の壷 予告



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2010年7月27日火曜日

あるスキャンダルの覚え書き (2006/英)

監督:リチャード・エアー
出演:ジュディ・デンチ / ケイト・ブランシェット / ビル・ナイ / アンドリュー・シンプソン / トム・ジョージソン / マイケル・マロニー / ジョアンナ・スキャンラン / ショーン・パークス / エマ・ケネディ / シリータ・クマール / フィル・デイヴィス / ウェンディ・ノッティンガム





ある学校の老齢の女性教師バーバラ
彼女の学校に新しく若い女性教師シーバが赴任してきて、色々と教えるうちにしだいに親しくなってくるのだったのだが

まあ、まんま家政婦が見たようなそうでもないような雰囲気の作品
こっちはけっこうババアがダークサイド版ですが
おもしろいんだけど、最近の刺激の強いサスペンスになれてしまっていると物足りなさを感じるかもしれません
TVドラマレベルとまでは言わないけど、そう強いガツンとくるものを求める内容でもない
じゃっかん悪い意味で使われる方向での「普通に」おもしろい映画な部類

ババアがシーバの秘密を知るんだけど、その自分が優位に立った状況を利用してうんたらかんたらって話
このババアが年の功を最大限に利用して人との距離感を狡猾に計り、相手の感情とリアクションをコントロールしながら、自分は目立たないポジションにおきつつ相手の一定の信頼を得る策士タイプで素敵
そのババアっぷりが話が進むにつれてどんどん現れてきて、じょじょに観てる側に「このババアの本性って…」と思わせてくれます
だけど、完璧にすべてをコントロールする超絶的な知略の持ち主ではないってのがポイントで、けっきょくはその行動には粗があるのが個人的にはよかった
完全なる狂気ではなくて、人間味も残してる分だけ逆に一番めんどくさいタイプの存在かもしれません

で、結局はこのババアってなんなんだよ、って話になるわけですが、シーバのスキャンダルと同じようなものじゃないか、と
冒頭で自分のことを客観的にとらえられてる感じがするんで、ようするに「分かっちゃいるけどやめられねえ」な理屈じゃない行為ってことで個人的には理解しました
浅いようで深い、でもやっぱり浅い…のか?というなんとも不思議な印象の残った内容でしたね

あとはラストは個人的にはイマイチ
しょうじき「結局ババアの思うつぼかよ」っていう所で終わってもらった方が意外性というかインパクトはあった気がしないでもない
変にまとめようとして、結果的に「普通さ」が強くなっちゃったかなと
あるていどの後味の悪さを含めた毒気を残して終わって欲しかったというのが素直なところ
まあ、でもそうガッカリ感はないんで観て損はなかった作品でした
別にこれといって得もしなかったですが

個人的評価:65点
オススメ度:ババア




あるスキャンダルの覚え書き 予告



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2010年7月25日日曜日

必死剣 鳥刺し (2010/日)

監督:平山秀幸
出演:豊川悦司 / 池脇千鶴 / 吉川晃司 / 戸田菜穂 / 村上淳 / 関めぐみ / 山田キヌヲ / 矢島健一 / 油井昌由樹 / つまみ枝豆 / 俊藤光利 / 村杉蝉之介 / 田中聡元 / 石山雄大 / 前田健 / 外波山文明 / 高橋和也 / 木野花 / 小日向文世 / 岸部一徳




仕える藩主の側室を斬って捨てた兼見三左ェ門
打ち首も覚悟していたその行為による刑は思ったより軽くすんだのだが

予想以上におもしろくて引き込まれる作品でしたね
地味すぎず、かといって大仰すぎず、まさにいい塩梅な味付けで全編描かれてます
アイドルやイケメン若手俳優が主役の中身すっかすか時代劇とはひと味以上違います
動と静、そこに謎と不穏な空気、男の生き様と女心を織り込んだ時代劇ドラマでした

側室を斬った主人公は、その刑として斬首も覚悟して望むけど、実際は驚くほど軽い刑ですむ
その自宅謹慎中に過去の側室の暴挙を思い起こしつつ、謹慎が終わったあともなお人を避け領内をぶらぶらしながら時によみがえる記憶を描いていきます
そんな中で今後の身の置き方や屋敷内での人間模様がありつつ、窮屈な現実がじょじょに主人公の体をしめつけてくる、という感じ
本筋じたいはそう新しい所はないんですが、そこは作品じたいの雰囲気でうまくカバーしてます

わりと必要以上に説明的な描写がなく、それゆえに自然な形で話を楽しめるかもしれません
「必要性がある無駄」な日本的なシーンも多く、ゆったりしんみり落ち着いて観るのに最適です
無意味にジャカジャカ鳴るBGMがないだけでも心地よいですが、それ以上にBGMがない状況でのシーンが退屈なだけになってないのはさすがだなあ、と
わびさびの精神っていうか、主人公である悦司の不器用っぽさがにじみ出てるのが最高やで

それまでのゆったり感から一転するクライマックス
もう最高としか言いようがない
ここでも華麗すぎず泥くさすぎない、なんともいえない絶妙な殺陣が気持ちいい
とにかく殺陣の間がよくて、もうラストのあれは「くるだろ」と分かってるのに、その予想の上をいく間でやってくれるので、まさに鳥肌もの
いっやあ、いいもん観させてもらったわあ
最初は悦司とかどうなんよ、と思ってたけど、この作品にはけっこうマッチしてたと言わざるえない

だけどやっぱりというかなんなのか、タイアップかもしれんけど邦画のED曲ってなんで本編の空気を読まないミスマッチな曲が多いんですかね
せっかくの良作なんだから渋いオフボーカルのでも流しておけばいいのに
それだけが残念だったけど、本編は心底たのしませてもらいました

個人的評価:90点
オススメ度:おじさまフェチ大歓喜




必死剣 鳥刺し 予告

2010年7月23日金曜日

借りぐらしのアリエッティ (2010/日)

監督:米林宏昌
出演:志田未来 / 神木隆之介 / 大竹しのぶ / 藤原竜也 / 三浦友和 / 竹下景子 / 樹木希林









体の悪い少年が一週間の療養に訪れた家
そこには人間に隠れ、物をこっそり借りて暮らす小人一家がいたのだった

まあ、びっくりするくらいファミリー向け
内容がなんたらとか語る要素はいっさいなく、ホントに小さな子供と「おかしいねえ」「こわいねえ」「ほら、見てごらん」とか言いながら観る作品でした
マジでおっさんがひとりで観るにはキツすぎましたね

人間に見つからないように、それでいて必需品を家からこっそり借りて生活しているアリエッティとその父母
急に訪れてきた少年にうっかり見つかってしまうけど、この少年は無害どころかアリエッティに好意的に接する
しかし、それでもすべてうまくいくわけではなく、じょじょにアリエッティたちは長年の住処にいずらくなってくる
といったシンプルな内容
とにかく序盤からして「これもっと尺を短くしようと思えばできるよね」みたいな感じで話の水増しっぷりがはんぱない
それゆえに中身がかなり薄味になってる印象

小さなアリエッティがすべてのスケールが大きい人間世界を冒険する・・・というだけのアドベンチャーでもない
病を患った少年とアリエッティの交流を描いたドラマ・・・ってだけでもない
人間と小人を比べて現代の人類になにげに警告をしてる説教アニメ・・・というわけでもない
すべてが中途半端で結局、なにが描きたかったのかよく分からないというのが素直な感想
最初の父ちゃんとアリエッティの冒険パートとか、終盤の少年とアリエッティの協力プレイは楽しかったけど、それだけ
もっと単純な冒険ものにするか、もしくは少年の病をからめた異種族間交流ドラマにするか、はっきりしてほしい

で、そんなことを気にせずに、小さな子と絵本を読む感覚で観るなら本当に最適な作品だと思いますね
難しいことも、厳しいこともおこらないし、ゆるーい感じで心がぬるまったくなるような内容なんで
良い意味でも悪い意味でもジブリオタクはばっさり切り捨ててる印象が強いです
もう昔のようなシンプルな冒険ものを求めるのは無理なのかもしれません

あとは個人的に少年がいきなり「滅びがなんたら」とか「心臓の一部がなんたら」とか言い出すのが違和感ありすぎて引きました
なんでいきなりそんなこと言ってるの?と思わざるえない
ラストもラストであっさりしすぎな上になんとも消化不良な感じがしたし・・・まあ、ようするにいい大人がひとりで楽しむアニメじゃねえってことだけは痛感した一本でした

個人的評価:30点
オススメ度:60分で十分にまとめられるだろ




借りぐらしのアリエッティ 予告

2010年7月20日火曜日

ウェス・クレイヴン’s カースド (2005/米)

監督:ウェス・クレイヴン
出演:クリスティナ・リッチ / ジョシュア・ジャクソン / ジェシー・アイゼンバーグ / ジュディ・グリア / ポーシャ・デ・ロッシ / スコット・バイオ / シャノン・エリザベス / マイケル・ローゼンバウム / ランス・ベース / マイア / エリック・ラディン






エリーとジミーのふたり姉弟は夜道を車で走ってる時に、獣と接触、対向車を巻き込んだ事故を起こしてしまう
相手を救出にむかうふたりだったが、そこに巨大な狼のような獣が再び現れ事故相手は死亡、姉弟も怪我を負ってしまうのだった

誰がどう見ても正真正銘B級ホラー
それでも「エルム街の悪夢」とか撮った監督さんだけに自主制作臭みたいな安っぽさがなくて、作品的にあるていど安定感があるので見た目で苦痛を感じることはないかもしれません
意外なほどクソっぽさを感じないです…ええ、ラストのオチを観るまでは

狼人間化してしまう呪いをかけられ、徐々に人間離れしていく自分の体にとまどいながらもちょっと楽しみつつ、姉は仕事と恋愛に、弟は学校と恋愛にいそしむ
ティーンズ向けラブコメってやつがあまり好きじゃないんですが、これはそこを意識しつつ、微妙にひねっている感じがしておもしろい
弟がオタク的な立場ながら学校のかわいこちゃんが気になるけど、ガチムチ系のバイオレンスボーイに「のび太のくせになまいきだぞう」されるお決まり展開
それが分かっていながら、バイオレンスボーイをギャフンと言わせたあとの展開もきちんと描いていいですね
自宅来訪から狼犬あたりの流れのシーンは個人的に楽しくてしかたなかった

で、こんな作品のどこにサスペンスの要素があるかといえば、姉弟の呪いを解くには元凶となった狼人間を殺っちゃう必要があって、しかもそいつは身近にいる誰かだってのがポイント
冒頭に無駄に主人公たち以外の人物描写があるのも納得できます
いちおう「おまえか?→そうでもない」演出とか、「おまえだったのか→でも実は」演出もあるにはあるんですが、ぶっちゃけどうでもいい
いや、楽しいけどね
B級映画な素敵要素的に考えて

個人的に一番テンションが上がったのがラスボス手前のバトル
あの一連の展開はまさにB級神が降り立ったかのようなおもしろさでした
姉弟を襲った犯人が判明→一般人を巻き込んでパニック&バトルという流れの所
弟が無駄に役立たずだったり、死体はぽんぽん飛ぶし、特にこの犯人との決着の付き方がもう最高にアホすぎて爆笑ものでしたね
まあ、こう書いても誰もこの作品は観ないでしょうから言っちゃいますけど、警官隊突入→狼人間隠れる→姉が悪口を言う
という中で狼人間さんがバッとあらわれ、どや顔しつつ中指立てるシーンは忘れられません
しかも普通に警官隊に撃ち殺される姿に敬礼を送らざるえない

そんな素敵な作品なのに、ラスボス戦があまりに普通すぎてひねりもなんにもないのが残念でならない
本当に蛇足ぎみに真相が明かされつつ解決してエンドみたいで、もうひと盛り上がりあるのかと期待してた心がいっきにしぼみます
作品全体の雰囲気的には「スペル」によく似た感じがするんですが、こっちの方が全体的に二段階くらい質が落ちる印象
B級クソ映画としてはけっこう素敵要素が詰まった内容だったかな、という一本でした

個人的評価:60点
オススメ度:ジッパーより下な弟って…




ウェス・クレイヴン’s カースド  予告



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2010年7月18日日曜日

インセプション (2010/米)

監督:クリストファー・ノーラン
出演:レオナルド・ディカプリオ / ジョセフ・ゴードン・レヴィット / 渡辺謙 / マリオン・コティヤール / エレン・ペイジ / キリアン・マーフィ / トム・ハーディ / ディリープ・ラオ / ルーカス・ハース / ピート・ポスルスウェイト / トム・ベレンジャー / マイケル・ケイン






夢の中に入り、その対象の隠し持つアイデアを盗みとるコブとアーサー
対象であるサイトーの夢の中、相手に悟られてしまい窮地におちいってしまうのだった

150分という長尺でしたが、本当にびっくりするほどあっという間にラストまで観られるほどずっと集中が切れませんでしたね
夢の中を扱った話なわけですが、そんな設定をうまく利用して「観てる側が夢の世界であることを認識している」ことを分かってる作りがおもしろい
とにかくきてれつな世界観を押しつけてくるSFファンタジーではなく、それはそれこれはこれとして「夢でありながら現実の中の非現実感」を描いているので、それほど軽い印象を受けませんでした

話的には夢の中でアイデアを盗めるなら、逆にアイデアを植え付けて潜在意識を都合のいいように書き換えてやろうぜって感じ
そこに主人公のコブが抱える問題、潜り込む対象が抱える問題、夢の世界での時間経過を利用したトリック、そして潜在意識に侵入されることに対する訓練といういろんな要素が絡みながら、そう小難しく複雑でもないシンプルなデキに見えるのはさすがだなあ、と
内容も別に観念的なものじゃなく、ほどよいドラマとほどよいサスペンス、そしてほどよいアクションが絶妙に合わさって作られていて、頭をまったく使わないわけでもないし、かといって肩肘はって構える必要もありません
けっこうシリアスな展開ながらもコミカルな描写もありますしね

夢の中では何段階かの階層があって、深く潜るほど現実での時間経過が遅く、しかも上部階層でのできごとが下部階層に影響を与えるという設定が複雑すぎないトリッキーさを演出していて飽きません
それぞれの階層が現実離れしすぎていないので、普通のサスペンスアクション映画を観る感覚で楽しめます
もちろん現実離れするところはきちんとそう描きますが、やりすぎっていう感じはしない
さらに夢の中で死ぬと現実に強制的に戻るってのもミソで、そこら辺の設定を利用した演出もうまくできてる

で、ラストね
これはもう投げっぱなしといえばそれまでですが、何通りも解釈できる終わり方はいいですね
単に曖昧に濁すんじゃなく、観てる側にいくつかの選択肢をきちんと提示して終わるのは好感が持てます
ネタバレOKなどこぞの掲示板でそれぞれの人の解釈をみてみたいものです
特に中二病をこじらせてるような人の独特な解釈を知りたいなあ、と感じずにいられない
もちろん明確な何かを感じなくても、それはそれで正解なんでサスペンスアクションと割り切って観ても十分に楽しめると思います

個人的評価:90点
オススメ度:サイトーさんのキャラが濃すぎて他の仲間の存在が薄い件




インセプション 予告

2010年7月16日金曜日

バッド・ルーテナント (2009/米)

監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
出演:ニコラス・ケイジ / エヴァ・メンデス / ヴァル・キルマー / イグジビット / フェアルザ・バルク / ショーン・ハトシー / ジェニファー・クーリッジ / トム・バウアー / ボンディ・カーティス・ホール / ブラッド・ダーリフ / デンゼル・ウィテカー / イルマ・P・ホール / シェイ・ウィガム / マイケル・シャノン / ブランディ・コールマン





ニューオーリンズのマクドノー警部補は非常に有能な刑事
しかし私生活ではギャンブルにのめり込み、さらに麻薬中毒者という一面もあるのだった

スターのわりには微妙な面構えで、シリアスものよりコメディ方面なキャラ臭がしてならない僕らのニコラス主演作品
そんなニコラス映画って言ってもいいくらいに、彼のキャラで引っぱっていくタイプの内容ですね
腰を痛めた優秀なジャンキー刑事…演技なのか素なのかそんな微妙な立ち居振る舞いが素敵です

一家五人の殺害事件を追うマクドノー、しかしギャンブル、ドラッグ、娼婦にどんどんはまりこんでいくうちに事態は悪くなっていく一方だった
という感じで進むんですが、最初に思っていた「悪徳警官が悪流の捜査で犯人を追いつめていく」というダークヒーロー的なものとは違い、本当に裏の顔はどうしようもないクズだけど刑事としては優秀さを保ってる…と、そんななんともいえない立ち位置が面白い
反面、悪には悪を、俺が法律だ、みたいな派手なアクションはないんでかなり地味な印象があるのも否めません

で、根幹的な部分は結局、殺害事件を追う普通の刑事ものなのか?と観ていくと…
じょじょにマクドノーの裏の顔が大きく彼を浸食してきて、事件じたいもむにゃむにゃって感じな展開になっていきます
ホントにクズ男を演じるにはニコラスは最適だなあ、と言わざるえない
そんなクズっぷりを観てるだけでも楽しいんですが、やっぱり一番の関心どころは「どうオチをつけるか」という点につきます
しょうじき思ってた方向と違うオチが待っていて、しかも微妙に物足りないと感じながらもそのオチに満足感がある不思議作品
じゃっかん作り手のオナニー感はあるけど、ギリギリ許せる範囲でした

あとはイグアナとかワニが出てくるんですが、その表現が滑稽でいて意味不明だけどこれも不思議な満足感をおぼえる
全体的にクールでシュールな雰囲気がありつつも、要するに主人公の自虐みたいなとらえ方をして観てたんですが、そこら辺はそれぞれ観た人の判断うんぬんってことで
クズたちと関わっていくクズ刑事に待っているこの結末ってやつは個人的には好きです
同時に、楽しめない人はぜんぜん面白く感じない映画だろうなあ、と思うのも確か
そしてなによりDVDのパッケージデザインがクソB級すぎるのは狙いすぎだと思うんだ

個人的評価:70点
オススメ度:は虫類嫌いは注意




バッド・ルーテナント 予告



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2010年7月14日水曜日

ミート・オブ・ザ・デッド (2004/アイルランド)

監督:コナー・マクマホン
出演:マリアン・アラージョ / デヴィッド・マラート / エオイン・ウェレン / デヴィッド・ライアン / エイミー・レッドモンド / キャスリン・トゥーラン / ネッド・デネヒー / ジョン・オコナー / アンソニー・リットン







狂牛病の変異が猛威をふるうアイルランドのある村を通りかかったマーティンとヘレナ
不注意により車で人をはねてしまったマーティンだが、死んだはずの男がふいに動き出すのだった

日本人ならみんな大好き、キワモノ同士が対決するVSシリーズとゾンビ感染でパニックするオブ・ザ・デッド(OTD)シリーズ
そんなOTDの中でも安定した質と肥溜めの中にも光る素敵さを提供してくれるアルバトロスのものはひと味違いますね
クソ映画にクソっぽさを求めて観ているこちら側のことをキチンと理解してくれてるアルバトロスは最高やで

内容的にはゾンビとファーストコンタクト、感染拡大、逃亡しながらゾンビショー、犠牲者をだしながら主人公が生き残る
そんな形通りの枠をいっさいはみださない安定感で多い日も安心
そんな中での設定でなんとか差別化をはかろうと無駄なあがきをする凡庸な作品とは違い、このOTDは素敵さをそこかしこにちりばめてくれているから楽しいですね
とりあえず主人公のヘレナさん、ゾンビに対する攻め方が独特で掃除機でゾンビの目を突いてバキューム、履いてるヒールを投げつける、などと微妙に微笑ましいことをしてくれます
そして、そんな攻撃でゾンビは死にます
素敵ですね

あとは途中で仲間になるおっさん
車で走行中に窓から身を乗り出してバットでゾンビの頭をぶっつぶしてヒャッハーするのが印象的です
同じく途中で仲間になる幼女
この手のホラーで仲間になる幼女は弱々しくて大人たちの足を引っぱるハンデになるけど、見た目の愛くるしさで観てる側に不快感を与えないものです
が、この作品にでてくる幼女は肥満体&ブタ顔な上に親切で車に乗せてくれたおっさんに「早くしろ」「ジジイ」と平気でおっしゃってしまうので観てて不快感が常にマキシマムです

素敵ポイントはゾンビたちにもあって、けっこうなバリエーションのゾンビがいます
フォーマルな装いで胸ポケットに花まであつらえた紳士ゾンビ、車いすで丘を下ろうと無茶をする車いすゾンビ、三角のパーティ帽をかぶったガキゾンビ
そんなゾンビたちが数に物を言わせて襲ってくるわけですが、車内にたてこもった主人公たちに群がるゾンビさんたちはしばらく窓をバンバン叩きますが、それが徒労だと分かると効率重視でポジティブ思考なのかさっさと散っていきます
さらにゾンビになっても立ったままですが夜は寝ます

そんな素敵さが満載なこの作品ですが、まあ、予想通りというかなんというか、最終的にこのゾンビ事件はいっさい解決することなく幕を閉じます
というか、生き延びたヒロインが他で拾われてきた人たちといっしょにトラックの荷台に家畜のように詰め込まれた所で終了します
ええ、なにか言いたいことがあってのラストなんでしょうが、そんな「ちょっとひねった終わり方で頭良さそう演出しつつ、冷静に考えれば特にひねりもなにもしてない」ところが素敵です

ね、どうですか、ここまでネタバレしても観たくてたまらないでしょう
人としての寛大さが鍛えられますよ

個人的評価:30点
オススメ度:準主役のデズモンドさんの印象が薄すぎる





ミート・オブ・ザ・デッド 予告



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2010年7月12日月曜日

二十日鼠と人間 (1992/米)

監督:ゲイリー・シニーズ
出演:ジョン・マルコヴィッチ / ゲイリー・シニーズ / レイ・ウォルストン / ケイシー・シーマズコ / シェリリン・フェン / ジョー・モートン








頭の弱いレニーと賢いジョージは、ある場所から逃走する
ふたりはささやかな夢を抱きつつ、新しい働き口のあてとしてソルダッドの牧場へやってくる

地味で飾りっ気のない作品
なのに、なんでこんなに見入ってしまうのか不思議な内容ですね
頭の弱い男が巻き起こすトラブルに辟易しながらも、けっして自分ひとりだけで楽な道はいかない賢い男との友情
新たな土地での牧場仕事の生活の中、ボスの息子とその嫁さんの危うい関係にまきこまれ、トラブルの火種は常にくすぶりながらも、日々を過ごしていくふたり
やがて牧童仲間ともうち解けはじめるのだが…みたいな牧場ライフストーリー

そんな牧場生活をただ描いてるだけなのに、なにか分からないが妙に作品に引き込まれるものがあるから困らない
牧場でのちょっとしたハプニングや各々のキャラのエピソード、そして徐々にレニーとジョージの間にあるものが描写されていくんですが、作品全体的にみて序盤から中盤に広がっていきラストでキチンとしめる展開は本当に観てて心地良い
描き方も泣きや笑い、友情、憎悪、感動の演出はさりげなく、「ここで泣け」という押しつけがましさがいっさいありません
それゆえに淡泊ではあるんですが、観終わった後に腹の底にずっしりと残るものがあるのも確か

ふたりのささやかな夢がむにゃむにゃっとなる流れでは、いっしょに「よかったなあ」「ええー」と観てて一喜一憂できます
そしてラストの描き方がもうたまらないわけですよ
最後がどうなるか観てる側に分からせた上で必要以上に引っぱらず、かといってうやむやにあっさり描くのでもなく、本当に絶妙なタイミングで終わりを向かえます
そこに至るまでの過程もきちんと伏線で描いてるし、必要な無駄はいっぱいあって必要のない無駄はいっさいないのがすごいなあ、と

ただ、まあ、なんというか、牧場主の息子の嫁さんがあんまりにも空気読めないビッチすぎたのが引っかかったといえば引っかかりましたが
そこら辺はささいなこととして、なんといったらいいか、こういう時にこの映画の良さをうまく表現できない自分が苛立たしいですね
観てて本当に面白い、けどそれを言葉にだせないもどかしさ
気になったら一度、暇な時にでも観ることをオススメします

個人的評価:90点
オススメ度:サノバビッチ




二十日鼠と人間 予告



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2010年7月11日日曜日

プレデターズ (2010/米)

監督:ニムロッド・アーントル
出演:エイドリアン・ブロディ / トファー・グレイス / アリス・ブラガ / ローレンス・フィッシュバーン / ダニー・トレホ / ウォルトン・ゴギンズ / ルーイ・オザワ・チャンチェン / オレッグ・タクタロフ / マハーシャラルハズバズ・アリ




目が覚めると上空から落ちている途中で、落ちた先は見知らぬジャングルだった
そして、訳の分からないまま同じ境遇の兵士たちがこのジャングルに集う

いちおうは続編ですが、内容的にはもう一度新たに作りなおしてみた「プレデター」みたいな感じ
続編にありがちな前作までの設定を知ってて当然というスタンスではなく、あくまで一から説明しなおしつつ話が進むのはいいですね

話的には見知らぬジャングルに集められた世界各地の名のある部隊の兵士たちと、囚人、ヤクザ、暗殺者、医者という面々が、とりあえず脱出を試みるうちに自分たちがとんでもない境遇におちいってることを知っていく・・・みたいな
開始早々いきなり上空から意識を失って落下してるところから始まり、ジャングルに降りたってそれぞれ様々な武装をした兵士たちと合流していくところは先を期待させてくれて楽しいですね
いわゆるRPGでいうところのバランスのとれたパーティ、FPSでいうところの役割と装備が違うチーム編成でまるでゲーム感覚みたいに描いてます

序盤はまずおかれた状況を把握
中盤はいよいよ狩りの始まり
って感じで非常にバランスよくできているんですが、いかんせん突出した何かがないんで「普通のサバイバルアクション」という印象しかない
さらに一から丁寧に作ってるのはいいけど、それゆえにプレデターさんが重い腰を上げて登場するまで長いこと長いこと
観てて退屈してきたところで派手なシーンをはさむのは飽きがこないんですが、最初のテンションを100として徐々に退屈さが出てきて70までテンションが落ち込んだ時、派手なシーンで盛りあがるんですが、90くらいまでしか回復しきれない
ようするに途中途中でビクンビクンと盛り上がるポイントはあるんですが、総じてみるとテンションが徐々に徐々に下降気味になります

しょうじき話自体も「とにかく逃げようぜ」というだけで、ほぼずっと逃走劇でしかない
せっかくタイトルの意味が分かったシーンでも、だからどうなのとしかいいようがない
せっかく個性的なキャラを集めたんだから、もっと狩られる側になったことによるドラマを深めてくれてもよかったのになあ、と
ぶっちゃけ普通のドンパチアクション以上のものはないです
というか、そんな極限でのドラマを描きたかったんじゃないのか、これ
なまじプレデターという看板が邪魔をして、窮屈な内容になっちゃってる気がしないでもない

ラストもラストでなんか普通だし・・・
時代劇ライクな決闘シーンとか、医者のエピソードとか、そんなはっちゃけた所をもっと広げていってくれてもぜんぜん問題なかったと思うんですが
みんなが知ってるプレデター以上のものがなにもないのが現実
つまらなくはないけど、ここがよかったって所も少ない、本当に普通のB級SFアクションでした

個人的評価:65点
オススメ度:ファックファック言い過ぎだろ。しゃぶれよ




プレデターズ 予告

2010年7月9日金曜日

アデル ファラオと復活の秘薬 (2010/仏)

監督:リュック・べッソン
出演:ルイーズ・ブルゴワン / マチュー・アマルリック / ジル・ルルーシュ / ジャン・ポール・ルーヴ / ニコラ・ジロー / フィリップ・ナオン / ジャッキー・ネルセシアン / ムーサ・マースクリ / ロール・ドゥ・クレルモン・トネール




卑怯を調査して本にするジャーナリスト、アデル
彼女は半死半生の妹を救う手だてを見つけ、エジプトに向かうのだった

ありのまま起こった的に言うなら、「アドベンチャーを観ていたはずがコメディだった」という感じ
ぶっちゃけ一般的に言えばクソ映画ですが、その期待の裏切り方が逆に個人的に楽しめましたね
すべて悪い方向へ期待を裏切って話が進むので、クソながらもちょっと光るものがある

妹を救うためにある人のミイラが必要なため、エジプトで墓あばきをするアデル
一方、パリではジュラ紀の翼竜がよみがえったとされる怪鳥さわぎが起こる
アデルのコミカルな冒険パートとパリでの無能な政府、警察関係者のコミカル捜査パートを序盤で描きつつ、ふたつのできごとは実はひとつにつながっている・・・といった展開に
そして重要なのは、その序盤のアデルのエジプト編で「この映画のアドベンチャーパートが終了」してしまうことでしょうね
もうネタバレかもしれませんが、これから観にいく人に警告の意味を込めて「この映画はアドベンチャー映画ではありません」と言わざるえない

ではなんなのか、って言ったら「こてこてのフレンチコメディ」ですね、と
変なキャラがドタバタしつつ、おもしろおかしく場面をスタイリッシュにつなげながら、時には不意打ちで残酷シーンをはさんで話を展開させる
しょうじき脱獄シーンとか笑わせようとしてるんでしょうが、その笑いのセンスは理解できない
コメディというよりむしろ低質なコントレベル

そして問題はクライマックスにあって、というより「クライマックスがない」のがアレなわけで
観てたらいつのまにかエピローグだった・・・とった感じ
いや、ほら、いくらクソ映画でもそれなりに派手な盛り上がりシーンがあると思うでしょ?
そういった終盤の盛り上げがいっさいないのが逆に新鮮でしたね
もちろんB級脳的に考えて
だけど普通にこれ観にきた人は「はあ?」としか言いようがないんじゃないですかね

さらにエピローグもびっくりするくらい後味が悪くて、続編を狙ってるのかもしれないですが、それを考慮しても中途半端すぎる終わり方
さすがにエンドロール後にフォローあるだろうと観ていると、そのエンドロール途中で話が再開するんですが・・・
いやあ、まったくエピローグと無関係なコントを最後の最後にもってくるとかある意味で「いい度胸してんな、コノヤロー」と
で、結局、後味の悪いエピローグはそのまま
ここまですべてを投げっぱなしで終わってくれると、個人的に、あくまで個人的に逆におもしろい
まったくもってクソ映画だわ
リアルタイムで劇場で観てなければひとつずつネタバレしながら書きたいくらい素敵なクソ映画だわ

そんなわけで、アドベンチャー映画を期待してる人は敬遠した方がいいし、コメディといってもクソB級コメディなのでファミリー向けでもありません
じゃあ、どの層に向けた作品なんだよって感じですが、そら、こっちがベッさんに聞きたいわ

個人的評価:50点
オススメ度:犬と翼竜の愛情ストーリー




アデル ファラオと復活の秘薬 予告

2010年7月5日月曜日

アヒルと鴨のコインロッカー (2006/日)

監督:中村義洋
出演:濱田岳 / 瑛太 / 関めぐみ / 田村圭生 / 松田龍平 / 大塚寧々 / 関暁夫 / キムラ緑子 / なぎら健壱








大学生活のため東京から仙台にやってきた椎名
ある日、その引っ越し先のお隣さんである河崎から本屋襲撃に誘われるのだが

おもしろいおもしろいとは聞いてましたが、「フィッシュストーリー」が楽しめて「ゴールデンスランバー」にガッカリした身としては、どうも今まで手を出せないでいた作品
で、いよいよもって観たわけですが…なんというか、もっとはやく観ておけばよかった
けっこう荒削りな印象はありますが、かなりおもしろい
確かにこれはおもしろいですね

本屋襲撃という謎の行動をする河崎と出会うことで、つきあいきれないと思いながらもついつい巻き込まれてしまう椎名
そうこうしてるうちに河崎の話す隣の隣に住むブータン人、ドルジのエピソードを絡めて、ペットショップの店長まで物語に徐々にからんでくる
それぞれの人の言うことやエピソードに一貫性がなく、序盤は「なにがなにやら」といった印象を受けましたね
でも、その印象はけっして不快なものではなく、「どことなく気持ちよく騙されてる」ような感覚
「で、いったいこれどんな話なのよ」と思いながら観ていると徐々にすべてがつながってくる、と
ぶちまけられてわけのわからない散乱した話をみせておいて、実はうまい具合にすべて組み上げるとひとつの話ができる感じの個人的には好きなジャンルの内容でした

作品の性質上、あまり詳しくかくとネタバレにしかならないんでアレですが、気弱な椎名が河崎に巻き込まれていく「巻き込まれ型コメディ」として、肩肘はらずに観ていくのが一番たのしめるでしょう
そんなふうに観ていって楽しめたこの作品ですが、それでも中盤以降がじゃっかんダルイのも確か
もうちょっと簡潔にまとめてもいいんじゃないかってくらいひとつのシーンが長い
あとは冒頭の引き込みがじゃっかん弱いので、しょっぱなからグイグイ話にのめりこめる要素がないのが残念だったかなあ、と
楽しいんだけど、思わず「で?」って言いたくなる所もちらほらと

ラストのしめ方もよく考えれば「なるほどなあ」と思えるけど、しょうじき弱い気がしないでもない
観終わった後でジーンとくるものとか、そういうのが希薄というかなんというか
でも話じたいはうまくまとまってるので大きなマイナスにはなりませんが
そんなことより、全体的な話の気持ちよさに身をゆだねているうちにラストを迎えられたのが個人的には好感触な一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:イミダスってまだ出てるんですかね




アヒルと鴨のコインロッカー 予告



アヒルと鴨のコインロッカー [DVD]
アミューズソフトエンタテインメント (2008-01-25)
売り上げランキング: 3859

2010年7月4日日曜日

ザ・シューター 極大射程 (2007/米・カナダ)

監督:アントワン・フークア
出演:マーク・ウォールバーグ / マイケル・ペーニャ / ダニー・グローヴァー / ケイト・マーラ / イライアス・コティーズ / ローナ・ミトラ / ネッド・ビーティ / レイド・セルベッジア / ジャスティン・ルイス / テイト・ドノヴァン / ブライアン・マーキンソン / アラン・C・ピーターソン / トム・バトラー / レヴォン・ヘルム





作戦中、部隊に戦場へ置き去りにされた狙撃手スワガー
それから3年、生き延びた彼は退役していたが、そこに大統領暗殺阻止の協力要請がくるのだった

極大射程とかふざけた素敵サブタイつけるファッキンジャップの感性を疑いつつ、あきらかにこの邦題は損してると言わざるえない
誰がどうみてもB級の限りなタイトルですが、中身はクソB級以上A級以下という普通よりちょっと面白い部類の作品でしたね
なによりがんばってサスペンスしようとしていた所は評価できます

内容的には一度、軍に裏切られたスワガーが退役後に「愛国心」という言葉を武器に、大統領暗殺計画に狙撃手として実行犯側の行動を推測してほしいと要請がある
そこから色々あって大きな陰謀に巻き込まれながら時には逃げ、時には反撃しつつ真相に迫っていく
そんな感じですが、最初は「そうはいっても脳筋アクションだろ」と思ってたら、けっこう序盤からサスペンスな展開で楽しめた
特にFBIの新人をからませてくるのがいいアクセントになって、話を多角的に描くことで厚みがでてます
しかし、話が進むにつれて不安になる展開もあるわけで
大きすぎる敵が最終目標になるような内容だと、どうしても収集がつかずに「俺たちの戦いはこれからだ」とお茶を濁す終わり方な作品も事実多いわけで
これもそんな感じになってしまうんじゃないかと思うわけで

でもそんなことは制作側も承知のようで、劇中でなんとなく「おまえごときでどうにかなる相手じゃない」みたいな流れになり、逆にそう描くことで「この作品ではキチンと最後までケリをつけてくれるのか?」と期待できます
そして前半の地味なサスペンス展開とかわって後半はアクションパートがはじまるわけですが、どうしてもゲームの「メタルギア・ソリッド」を思い起こすのは私だけでないかと
サバイバルの果てのスニーキングミッション、そして盛り上がった所で派手な戦闘
じゃっかんCG丸わかりで引くシーンもありますが、狙撃アクションはなんか新しい感じで楽しいですね

サスペンスとアクションの見事な融合だなあ、とラストに期待が高まる…まさにその時、やはりというかなんというか、微妙なガッカリ感が最後に待っているのは確か
なんでこの手の映画は最後の最後にパワープレイにたよるのか
収集つかなくなったら派手に暴れりゃいいもんじゃないだろ、と
しかもそのパワープレイで誤魔化してるけど、これ目先の解決だけして裏の巨大な存在なアレはなかったかのように振る舞ってるよね

そんなラストは普通のB級アクションのテンプレ展開ながら、途中まではけっこう楽しめるそんな作品でした

個人的評価:60点
オススメ度:大佐のすごさがわからない




ザ・シューター 極大射程 予告



ザ・シューター/極大射程 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2008-04-25)
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2010年7月2日金曜日

パーマネント野ばら (2010/日)

監督:吉田大八
出演:菅野美穂 / 小池栄子 / 池脇千鶴 / 畠山紬 / 宇崎竜童 / 夏木マリ / 江口洋介 / 加藤虎ノ介 / 山本浩司






夫と離婚して幼いひとり娘とともに故郷の田舎漁港の町に戻ってきたなおこ
母親のパーマ屋を手伝いながら、町に暮らす知人友人とつき合い、またひとりの男性と恋を楽しむのだった

出てくる男性がことごとくどうしようもない輩ばかりで、それに振り回されながらも強く生きる女性たちを主人公のなおこを中心に描いた作品
いわゆるガールズトーク系ですが、ナウなヤング向けというより中高年向けな感じ・・・がするけど、しょうじきラストのオチを考えると若い人の方が理解しやすいだろうなあ、と
なんともおもしろいながら、微妙にどの層を狙ってるのかわかりづらいけど「好きな人は好き」という人を選ぶ内容かもしれません

内容的にはなおこの友人、母親、店の常連客の女性たちの男問題をコミカルに描きつつ、主人公とほかの女性陣との絡みで展開していきます
出てくる男どもがホントにどうしようもない連中ばっかりで、変な信念を盾に浮気する父親、根っからのヒモ体質の男、ギャンブルにのめり込みすぎた男、剛胆ながらボケぎみのためにそれが逆に仇になっている男・・・
そんな男たちとつき合いながらもまた強く生きる女たちの姿をコミカルに描いてます
大爆笑の大げさコメディというより、ゆる系のクスクスコメディといった感じ

基本はゆるコメディですが、ちょうど飽きてくるタイミングで田舎ゆえに大問題には発展しないけど、よく考えたら大惨事な事件が起きてくれるので観てても眠くなりません
バスガイドのあんちゃんとか、何かを埋めるババアとか見方によってはブラックなネタを散りばめつつ、たくましく生きる女性たちの姿が楽しい
個人的には電柱おっさんがお気に入り
なんというか、博太郎さんにあこがれざるえない


(これからこの作品を観る人は、以下の駄文を読まずにのぞむか、完全に忘れた時に観た方が純粋に楽しめます
ネタバレするわけではないですが、「そういった印象を受けるのか」という心構えがない方が楽しめるでしょう)


そしてなにより、このラスト
まさに「そういうことか」と
そこまでの男性の描き方、映画じたいの作風、それらがすべて伏線で演出で「無駄がない」のがよく分かります
オチを受けてのパーマメント野ばらの面々のリアクションとか、それまでのシーンを振り返ってみても「あそこのアレは、なるほどなあ」と思いましたね
よくできてる、本当によくできてるわあ

でも、それでもなんか地味な印象があるのは否めない
おもしろい、本当におもしろいんだけど、あとほんのちょっとした突き出た何かがほしい気がするのも確か
秀作ではあるけど手放しでほめられるような隠れた名作といった風でもない感じで
個人的には好きですけど、こういう映画ってのは流行らないのが目に見えてるから、ね

個人的評価:85点
オススメ度:女の園で乱れ飛ぶチンコトーク




パーマネント野ばら 予告