2018年3月25日日曜日

サイモン&タダタカシ (2017/日)

監督:小田学
出演:阪本一樹 / 須賀健太 / 間宮夕貴 / 井之脇海 / 田中日奈子 / 山本圭祐 / 大島蓉子 / 菅原大吉

親友のタダに秘めた恋心を抱くサイモン
そんなタダは見ず知らずの女性に会いにいくと言い出すのだった

男心と女心をコミカルに田舎描写を背景に展開する、というノリからいっきに「マジかよ」な流れになる愛すべきクソ映画でした
タダタカシのバカ丸だしな行動&言動、そこにちょっと天然な要素ありつつのクールなサモンの関係がおもしろい
そんなふたりの掛け合いに中途半端な田舎街の風景を観ているだけでも楽しいけど、やっぱり唐突にはじまるアニメやらなんやらの独特のクセがたまらない
なにげにブラックなところもあったり、ふつうにコメディとしても笑えるところも多い
このよく分からなさをまるっと飲み込んで、トータル的なバカっぷりにのりきれればいいけど、多少なりとも肌に合わない人がいるかもしれない

個人的評価:75点
オススメ度:本当に色々と良い意味でひどい



サイモン&タダタカシ 予告

BPM ビート・パー・ミニット (2017/仏)

監督:ロバン・カンピヨ
出演:ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート / アーノード・バロワ / アデル・エネル / アントワン・ライナルツ / フェリックス・マリトー / アリエル・ボランシュタイン / アロイーズ・ソバージュ / シモン・グエラ

ゲイやレズビアン、薬物常用者のエイズ患者に対する差別や対応の悪さに抗議運動をするコミュニティ、アクトアップ
そのメンバーでしばしば過激な行動をおこすショーンは、新たに参加したナタンと出会い…

ノリノリのBGMがどこか侘びしさを感じ、アクトアップの行動も、そしてショーンの愛も茶化すことなくまっすぐに描かれていた
病や活動の中で翻弄されながらも、ショーンとナタンの関係が強烈に生を主張して心に響く
活動メンバーの中でも摩擦があり、さらに病の進行も容赦ない、そんな中でのショーンの有り様がなんとも単純じゃなくて見応えがある
そしてなんと言っても彼を支えるナタンの存在が大きい
なんとなく作品を観て分かった風なことを言いたくもなるけど、個人的にはごちゃついた思考と感情に身をひたして、そこにあるだろう何かを模索するのが楽しく思える
余韻ありまくりなエンドロールに自分の内に深く潜れる一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:不思議と性的な場面もイヤな目線にならない



BPM ビート・パー・ミニット 予告

2018年3月23日金曜日

リメンバー・ミー (2017/米)

監督:リー・アンクリッチ
出演:アンソニー・ゴンサレス / ガエル・ガルシア・ベルナル / ベンジャミン・ブラット / アランナ・ウバック / レニー・ビクター / ジェイミー・カミル / アナ・オフェリア・ムルギア / ナタリア・コルドバ=バックリー / ソフィア・エスピノーサ / アルフォンソ・アラウ / ガブリエル・イグレシアス / エドワード・ジェームズ・オルモス / ロンバルド・ボイアー / ダイアナ・オルテッリ / ブランカ・アラセリ / チーチ・マリン / ルイス・バルデス / ジョン・ラッツェンバーガー

音楽を禁止された家庭で育った少年ミゲル
しかし有名なミュージシャンのデラクルスに憧れる彼は、なんとか自分の演奏を認めさせようとするのだが…

しょうじき予告を見たかぎりではファミリー映画寄りな印象が強く、鑑賞をスルーしようと思っていた
だけど映画は実際に自分の目で観てみないとはじまらず、果たしてなんともいえない喜びを与えてくれた作品に感謝の気持ちが満ちた
ファミリー映画に違いはないけど、家族愛と音楽の要素の融合が素晴らしくはまっている
ガイコツなキャラクターと子供狙いのコメディ、みたいなライトさはそれほど感じず、テンポのいい展開と躍動感ある登場人物たちの動きが見応えあった
音楽の要素を丁寧に、大事に描いているのもいい
話の展開も波の作り方が心地よく、観ていて感じる違和感とその解消の流れもよくできている
キャラや世界観の見た目も楽しく、音楽の扱いもいい感じで、家族愛のドラマも素晴らしい、どの目線でも楽しめる一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:日本人でもお盆的なアレで死者の日という設定を受け入れやすいですね



リメンバー・ミー 予告

2018年3月20日火曜日

アイスと雨音 (2017/日)

監督:松居大悟
出演:森田想 / 田中怜子 / 田中偉登 / 青木柚 / 紅甘 / 戸塚丈太郎 / 若杉実森 / 門井一将 / 利重剛 / アフロ / UK

舞台公演のためにオーディションで選ばれた男女6人
一ヶ月後の本番に向けて稽古を始めるのだった

作品一本まるまるワンカット、しかも時間と日数の経過までその中で表現する、という作りはやはり見応えがある
さらには劇中歌の挿入の仕方も独特で、まったく知らない人でもファンまではいかなくても気になる存在になると思う
そんな特徴的な部分はもちろん、役者としての登場人物たちと劇中劇の交錯する展開もおもしろい
役と本人が時にダブり、まったく別質の劇が進みながらも互いにリンクして強い奔流になっていくのがなんともいえない
正しいとか間違ってるとかおいといて、若者たちの熱量にぐいぐいと引っ張られる
舞台作品のような映画、とはちょっと違うけどラストは本当に目の前に舞台があってそこに役者が立っているような錯覚をおぼえた

個人的評価:85点
オススメ度:ふいにこみ上げる、本当にみんなお疲れさまという気持ち



アイスと雨音 予告

ラッキー (2017/米)

監督:ジョン・キャロル・リンチ
出演:ハリー・ディーン・スタントン / デビッド・リンチ / ロン・リビングストン / エド・ベグリー・Jr. / トム・スケリット / ジェームズ・ダーレン / バリー・シャバカ・ヘンリージョー / ベス・グラント / ヒューゴ・アームストロング

年老いた身で日々、街を歩いて人々と関わりあって生きるラッキー
ある日、ふいに自宅で倒れ込んでしまったことから、彼の中に心境の変化がおこる

まさにハリー・ディーン・スタントンという人間、そして映画俳優のための作品でした
出演作品がらみの小ネタがありつつ、だけどファン映画なだけじゃない内容もちゃんと見応えがありました
孤独と一人暮らしは違う、まさにその言葉通りに、卑怯なほどに集束されたラッキーの最後の表情には身が震えざるえない
劇中で登場するラッキーの馴染みの人たち、さらに新たに出会う人たち、それぞれと関わりあう内に、その心境と背後にある人生が透けて見えてくるようでおもしろい
年老いた男ゆえの思いと、老いてなお成熟していく精神、ちょっとしたやんちゃっぽさも愛らしいラッキーの生きざまが素晴らしい
なんてことはない作品のようで不思議と晴れやかさに気持ちがよくなる一本でした

個人的評価:85点
オススメ度:枯れ格好いい、こんな老人になりたい



ラッキー 予告

ニワトリ★スター (2018/日)

監督:かなた狼
出演:井浦新 / 成田凌 / 紗羅マリー / 阿部亮平 / LiLiCo / 鳥肌実 / 津田寛治 / 奥田瑛二 / 山田スミ子 / 海原はるか / 海原かなた / ペ・ジョンミョン / ペロンヤス / 名倉央知花 / DAY / 佐藤太一郎 / 水橋研二 / 尚玄 / 辰巳蒼生 / 村上新悟 / 石橋穂乃香 / シャック / 中澤梓佐

マリファナを売りながら自堕落に生きる草太
そして彼の人生に大きく関わった人物、ニワトリスター楽人のことを語り出すのだった

ドラッグ的な映像とバイオレンスで押し切る、勢いだけの作品じゃないファンタジーな内容にどっぷりはまれた
唐突なアニメや刺激的なカット、セックスと暴力でぐいっと引き込んでおいてからのドラマ展開がよかった
映像センスはもちろんだけど、低空飛行にもがく主人公たちの姿が生々しく伝わってくる
ほどよく突飛に予測不能な展開で刺激的なスパイスがありつつ、草太と楽人のそれぞれのさりげなく深いドラマが素晴らしい
なにより最後まで鑑賞した後、なにげに劇中の楽人の動きに「あれは、そういうことだったのか」と思い知らされておもしろい
ドラッグなトリッキーさときちんと織り込まれたストーリーが見応えのあった一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:ファックなファンタジーに酔いしれる



ニワトリ★スター 予告

2018年3月18日日曜日

ブラックパンサー (2018/米)

監督:ライアン・クーグラー
出演:チャドウィック・ボーズマン / マイケル・B・ジョーダン / ルピタ・ニョンゴ / ダナイ・グリラ / マーティン・フリーマン / ダニエル・カルーヤ / レティーシャ・ライト / ウィンストン・デューク / アンジェラ・バセット / フォレスト・ウィテカー / アンディ・サーキス / フローレンス・カスンバ / ジョン・カニ / スターリング・K・ブラウン / アタンドワ・カニ / デンゼル・ウィテカー

超常の鉱石ヴィブラニウムの恩恵で栄えるワカンダ国
父である先王を継ぎ、その息子であるティ・チャラが王に、そして絶大な力を宿したブラックパンサーになるのだった

単独作品前にけっこうガッツリ他作品のヒーローと絡んでたが、良い意味で本編からアベンジャーズくささがなくて単品として楽しめた
ヒーローとしてのブラックパンサーのためのセレモニー作品を意識して、主人公の派手な見せ場だけで構成された内容でなく、土台のしっかりしている感じがした
大筋はけっこうシンプルなストーリーながら、その話の運びがうまいためにけっこう観ていて展開にハラハラする場面があるのもよかった
主人公であるブラックパンサーの戦いだけなら、どんなピンチでも安心して観ていられるが、その周りでの各キャラそれぞれの戦いが同時に描かれることで画面に緊張感があった
ブラックパンサーという映画の世界観に気持ちよく没入できた一方、もうちょいヒーローとして色気を感じるようフォーカスされてもよかった気がしないでもない

個人的評価:80点
オススメ度:腕クロスは分かるけど、フォーエヴァーというかけ声には違和感



ブラックパンサー 予告

2018年3月14日水曜日

ニッポン国VS泉南石綿村 (2017/日)

監督:原一男

大阪の泉南地域、そこで石綿工場により健康被害を受けた人たちが国を訴える
その様子を長年追いかけたドキュメンタリー

ドキュメンタリーとして、そこに描かれたものをそのまま飲み込み、扱われる問題や裁判、その被害者や関わった人々について知ることができた
という基本があった上で、作品をどう受け取るかという部分が考えさせられる作りでした
被害者たちの怒り、その感情に自然とひかれ、それでいて国の対応や目の前に立たない本当の怒りの矛先である相手に対する気持ちの空回りがもどかしい
裁判をおこしてからの8年以上もの年月、それがまるで人の半生を描いた期間のように長く思え、この間に憔悴、または死をむかえてしまった人たちの急変に心が痛む
この人たちは何をここまで高ぶっているのか、そんな自分の中の動きを止めつつあった感覚が激しく揺さぶられ動かされた一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:登場する人たちのときおり見せる微笑ましさもたまらない



ニッポン国VS泉南石綿村 予告

2018年3月11日日曜日

ナチュラルウーマン (2017/チリ・米・独・スペイン)

監督:セバスティアン・レリオ
出演:ダニエラ・ベガ / フランシスコ・レジェス / ルイス・ニェッコ / アリン・クーペンヘイム / ニコラス・サベドラ

トランスジェンダーのマリーナは誕生日の夜、つきあっているオルランドと楽しんでいた
しかし、急に彼が倒れマリーナは病院へと車を走らせるのだが…

実際のトランスジェンダー女優が主人公を演じる、仮にその事前知識がなくても彼女のまとうリアルな空気感に魅了せざるえない
恋人を失うまでの過程をともにすることで、そこからの彼女に対する差別的な仕打ちがじくじくと心に刺さる
マリーナへの理解不足や拒絶による辱めをする人たち、理解しているような口調でなでるように傷つける人たち、分かりやすい差別描写には考えさせられるものがある
そこへ彼女の恋人に対する心情のドラマが重なることで、作品に深みが出ている
外野からの言葉や暴力、内面の心の葛藤、その堪え忍び方と発散しかたが本当にリアルに感じられる一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:もの悲しいダンスシーンが心に残る



ナチュラルウーマン 予告

2018年3月7日水曜日

シェイプ・オブ・ウォーター (2017/米)

監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:サリー・ホーキンス / マイケル・シャノン / リチャード・ジェンキンス / ダグ・ジョーンズ / マイケル・スタールバーグ / オクタビア・スペンサー / デビッド・ヒューレット / ニック・サーシー / ナイジェル・ベネット / ローレン・リー・スミス / マーティン・ローチ / モーガン・ケリー

声を発することのできない女性イライザ
政府の施設で清掃係として働く彼女の職場に、頑強な水槽に閉じこめられた謎の生物が運び込まれてくるのだった

思いの外にしたたかなイライザと謎の生物の関係が、とにもかくにも素敵すぎて心地よいBGMとともに心が洗われる
人々のちょっとした傷やいびつさがアクセントになり、お行儀がいいだけじゃない部分が魅力になって映画の世界に引き込まれた
どんどんチャーミングになっていくイライザと、愛嬌のある謎の生物の交流には本当にほっこりさせられる
さらに主人公たちの周りの登場人物たちもひとりひとり劇中で生きている感じが伝わってきて、記号的なキャラとして配置されている風じゃないのがいい
話の展開もハラハラドキドキな娯楽性も高く、最後の最後までどっぷりと映画につかっていられた
映画作品として土台がしっかりしている感じで、それゆえにファンタジーながらふんわりしすぎず、しっかり質量を感じられた一本でした

個人的評価:90点
オススメ度:個人的にもちょっと頭部にアレしてもらいたい



シェイプ・オブ・ウォーター 予告

15時17分、パリ行き (2018/米)

監督:クリント・イーストウッド
出演:アンソニー・サドラー / アレク・スカラトス / スペンサー・ストーン / ジェナ・フィッシャー / ジュディ・グリア / レイ・コラサニ / P・J・バーン / トニー・ヘイル / トーマス・レノン / ポール=ミケル・ウィリアムズ / ブライス・ゲイザー / ウィリアム・ジェニングス

中学時代からの腐れ縁のスペンサー、アレク、アンソニーたち3人
ずっと互いに連絡を取り合いながら、それぞれの人生を歩んでいた

本人起用の再現ドラマ、なんてことを意識させることなくきちんと映画にしている完成度が素晴らしかった
やんちゃな子供時代、それぞれの道を時につまずきつつ歩む大人になった彼ら、そして無邪気に楽しむヨーロッパ旅行、なんてことない日常を観ているだけなのにまったく退屈しない
早く本編のテロ事件のシーンにならないかな、前置きが長すぎる、というネガティブな思いがいっさい浮かばない作り方が巧み
そうして最後にはこの映画を観ている傍観者な自分の人生も不思議と救われた気がする
作中では主人公たちが人々を救い、それを映画にした監督に自分の存在をちょっとだけ救われた気がする一本でした

個人的評価:80点
オススメ度:むっさい野郎どものセルフィが微笑ましい



15時17分、パリ行き 予告

2018年3月4日日曜日

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア (20017/英・アイルランド)

監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:コリン・ファレル / ニコール・キッドマン / バリー・コーガン / ラフィー・キャシディ / サニー・スリッチ / アリシア・シルバーストーン / ビル・キャンプ

医師のスティーブンは妻と子供たちとともに幸せに暮らしていた
ある日、彼は知り合いの少年マーティンを家へ招き、家族に紹介するのだった

最初から最後までなんとも言えない不安感の空気に包まれ、過剰なまでに聴覚にストレスを与えてくる独特な作品でした
なにげない日常の中でも初潮トークやら脇毛トークの異質さに、いちいち気持ちが引っかかって恐怖心がふくらんでいく
徐々に締め付けてくるような恐怖描写もいいけど、肝である設定が見えてきてからが本番でしたね
主人公スティーブンの感情はもちろん、彼に対する家族それぞれのアピールが本当にやばい
もう色々と煮詰まってきたからのスティーブンの選んだ行動とか、観ていて先行きの暗さに精神が削られる
ただ視覚的なショッキングさを期待していると、けっこう淡々と話が展開して物足りないかもしれないし、主張の強すぎるBGMとか合わない人には本当に合わない空気感だと思う

個人的評価:80点
オススメ度:体調万全で鑑賞しないとキツイ



聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア 予告