2010年3月31日水曜日

3月のこれ一本

というわけで、3月もフィニッシュなわけですが、いいよね、便利だよね「とりあえず」って言葉はさ。なんというか大人として、暗黙の了解として、なんか言っとけばなんとなく文がつながってる気がしてならないよね
それはそれとして、なんとも最近は花粉的なもとか風邪的なものか判別が難しい状態な体調不良でアレでナニな感じですが、そんな個人的な具合なんかどうでもいい、と

で、今月は「リアリズムの宿」をイチオシと
「エスター」もいいですが、なんか心に残るというか観賞後にも鮮明に印象が残るのは「リアリズム~」の方というわけで
そして、4月になるわけで、新生活をはじめる方もいらっしゃると思いますが、まあ、なんというか、この世は結局のとこ努力した者勝ちなんで、くれぐれも私のようなおっさんにならぬよう、ね
なんか微妙に心が痛くなりつつ今月はこんなとこで

2010年3月28日日曜日

カメレオン (2008/日)

監督:阪本順治
出演:藤原竜也 / 水川あさみ / 塩谷瞬 / 豊原功補 / 波岡一喜 / 柄本佑 / 西興一朗 / 街田しおん / 菅田俊 / 萩原聖人 / 平泉成 / 谷啓 / 犬塚弘 / 加藤治子 / 岸部一徳


とあるいわくありげな現場を目撃してしまった伍郎と仲間たち
後日、ニュースを見た彼らはとてつもない事態に巻き込まれてしまったと気づくのだった

いやあ、なんというかすっごい評価に困る作品ですね
個人的には、ホントに個人的にはすっごい面白いんですが、手放しで褒められる…と言い切れない所が情けない
一言でいえば古き良き昭和の時代の作品を観てるような感じで、おそらく目指してるところもそこら辺だと思います
現代作品ながら昭和映画をエミュレートしてるわけですが、多少の違和感はあるもののかなりその再現度は良い具合でしたね

冒頭の胡散臭い女占い師と胡散臭い客のやりとりから始まって、ある結婚式の場にチンピラが乱入、伍郎たちが怪しげな現場を目撃、なんかジジイとババアの一座と暮らす伍郎…しょうじきこの作品がどんなものか、どういう方向に向かうのかつかみきるまで時間がかかります
ですが、そんな観てる側の手探り状態は退屈や不安感より「どういう流れなんだ」と気になる好奇心の方が勝つため、作品になんともいえない吸引力があるのは確か
そんな複雑な話ではないんだけど、ひとつひとつの設定を拾っていって人物像なんかをあるていど行間を埋める感じで観る必要があるかもしれません
そういう意味で頭からっぽにして観るアクションというより、雰囲気や世界観に入れたもの勝ちな印象があります

レトロで昭和を意識してる、と完全に理解できる中盤の伍郎の屋内格闘シーン
スタイリッシュさや、過度の盛り上げ音楽、かっこいいカメラワークや決めポーズなんか一切なく、ホントに雑で武骨でいい感じな適当感が楽しくてしかたない
このシーンまで観てダメだと思った人は、完全にこの作品と合わないかもしれません
冒頭の伍郎と女占い師の絡み、中盤の格闘シーン、そしてまたもや盛り上がる音楽もなく淡々と描かれるカースタント、さらに終盤のバカ演出と紙一重の銃交換シーン、ここら辺が「なんか合わないなあ」と思う人も多いかも知れません
もちろん個人的にはすべて好きなシーンです

なんかすごい経歴があるようなないような伍郎だけど、そのスタイルは洗練されたものがない武骨できれい事のない暴力そのもの
そんな主人公の魅力がこの作品を支えてるんですが、ぶっちゃけ藤原竜也だと物足りなさを感じずにいられない
見た目は問題ないんだけど、昭和を意識した作品の中で彼だけが「作り物の昭和の演技をしてる」っぽさがありありしてて残念
あとヒロインもきれいすぎる
脇がかなり良い味だしてるだけに、よけいに主人公とヒロインがじゃっかん浮いてるかも

一見、無駄に見えたり強引に見えるシーンを、「ああ、なんか分かるわ」と懐かしむような見方ができる人にとっては楽しめる作品
逆にスタイリッシュでアップテンポなとりあえず派手派手なアクションがなきゃ!って人は退屈に思えるでしょうね
いや、これ本当に微妙な作品で、このギリギリ楽しいようなそうでもないようなっていう「良い意味での微妙さ」がなんか中毒的な感じで心地良い
何とも言えない喉にひっかかるこの感覚、繰り返ししつこいですが個人的には大好きです

個人的評価:85点
オススメ度:女が絡まないとブチキレない男、ゴーロ




カメレオン 予告



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ディセント2 (2009/英)

監督:ジョン・ハリス
出演:ショーナ・マクドナルド / ナタリー・ジャクソン・メンドーサ / クリステン・カミングス / ギャヴァン・オハーリヒー / ジョシュア・ダラス / アンナ・スケラーン / ダグラス・ホッジ


洞窟探検に向かった6人の女性パーティが行方不明になったとして捜索が行われる中、ひとりの女性・サラが生還する
サラは記憶を失っており、救助隊は記憶が戻るのを頼りに道案内として彼女を連れて他の生き残りを探すために地底に潜るのだった

隠れた(?)傑作ホラーの「ディセント」、その正統続編ですね
前作を引き継いだ形でいきなり始まるんで、こればかりは1を観てないと辛いかもしれません
途中途中の展開もけっこう前作がらみのものがある上に、いっさいそのことについて新たに説明がない「1を観ててとうぜん」な流れなんで注意がいります

じゃっかん人間関係が危うい救助隊+サラというパーティで再び地底にいくわけですが、序盤は前作の知識があるとあんまりどきどき感はないです
やはり続編というのは、1作目で感じた新鮮さがない上に問題の核心であるネタを踏まえた状態ではじまるのでしかたないかもしれませんが
そんな感じで前半はホントに普通のモンスターパニックホラーという展開
悪くはないけど目新しさはいっさいないという

しかし、このまま普通に終わっちゃうのかなあ、と思ってた終盤、ちょっとしたサプライズが用意されていて、そこから一気に面白くなります
まあ、それでも1の前半と後半でのギャップほどの驚きではないですが
それを言うのは酷というもので、この続編も「続編としては」楽しめるのでよし、と

そしてラスト
「くるだろ、これ絶対くるだろ」という雰囲気の中、ちょっとひねったオチがくるので個人的にはアリ
しょうじきこのオチは賛否両論だろうし「は?」って感じになるのは確か
でも、そんなことを気にするような上品な作品じゃないだろ、と言いたい

それ以上に疑問点がいくつかあるのが気になる
1.冒頭で以前の鉱山がなんたら~という記者たちの質問の伏線が理解不能
2.サラが生還した道をたどって地底への入り口である場所を突き止めるが、あきらかにそこから脱出してきたとは思えない
3.地底内部で立ち入り禁止と塞いである板を破壊して進むが、生存者を探しにきてるのに塞いである先に人がいるとは思えない
4.捜索中、サラがいきなり救助隊を暴力的に振り切ってまで逃げ出した意味が分からない
2は最後のアレとの関係をからめて想像してみれば、なんとなく説明できなくもないけど他はホントに意味が分からない

というわけで、前作のファン向けに作られたファンディスク的なものと観れば楽しい作品
逆にいえば一本の映画として観ると普通なデキ
あと、ドラマ性がかなり物足りないので、そこらを期待して観ると裏切られるでしょう

個人的評価:75点
オススメ度:3を作る気まんまんな気配がしないでもない




ディセント2 予告



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2010年3月26日金曜日

アリーテ姫 (2000/日)

監督:片渕須直
出演:桑島法子 / 小山剛志 / 高山みなみ / 沼田祐介 / こおろぎさとみ / 竹本英史 / 森訓久 / 陶山章央 / 佐々木優子


とある国の幼い姫であるアリーテ
ずっと城の高い塔の中で過ごしてきた彼女の前に、ある魔法使いがあらわれる

ジブリのようでそうでもない、そんなテイストのアニメ映画
たまにはこういう作品で心を清めていった方がいいんじゃないでしょうか、ってことで
まあ、ちょっと対象年齢が低いような気がしないでもないですが、わりとファミリー向けでみんなで観ても安心して鑑賞にたえうるデキでした

ずっと塔の中で暮らしてたお姫様のところに、王によって彼女の伴侶になるに相応しいことを見極めるために試練を与えられた騎士たちが見事にそれを乗り越えてもどってくる
そんな騎士たちは野心まるだしでまだションベンくさ…愛らしくも幼い姫を口説くものの、いよいよ姫もMK5ってとこに謎の魔法使いのおっさんが「おまえたちのロリコン度などあまいわ!」というふうには言ってないけど、姫を嫁さんにしようとやってくる、と
ストーリーの説明のためにしかたないのかもしれませんが、そんな序盤の展開がじゃっかんタルいです
ようするに高貴な身分にあるゆえに窮屈感を抱いて、外の自由さにあこがれるというありふれた筋で

おもしろくなってくるのは魔法使いのおっさんと絡み、というかシンクロして話が進み出してきてからで、なんかすごい偉大なおっさんようで…という流れが楽しい
しかも、あとあとで分かるけど、けっこう伏線がはってあってオチまで観たら「ああ、だからああだったのか…」と納得しました
そこら辺の展開がなかったら並以下の退屈な作品だったけど、ちょっとひねってある様で確実に作品に対する印象がよくなる

で、肝心のラスト
そこまでは面白かったのに、かなり個人的な意見としてアリーテの最終的な決断は「ダメだ、こいつ」としか言いようがない
見かけよりはるかに知識もあって頭が良いくせに、なんで「そっちの道」を選ぶのか
自由と個性の尊重、大いにけっこう
とてもだいじなことだけど、自由ってのは「なにをやってもいい」と勘違いするな小娘が
「責任」をもてもしないのに自由だの個性だの、片腹痛いわ
いくら頭が良くても、子供ゆえにそこら辺を理解してなくて当然といえば当然だけど、そういう作品をつくった制作陣は「頭でっかちで愚かなガキ」を描きたいわけじゃないんでしょうから、ね

そんな最後のいきつく先が個人的には気に入らなかったけど、それ意外ではホントに癒されるいい作品でした
アリーテのクソガキっぷりも、ぶっちゃけ子供好き、もしくはニュートラルな心の持ち主なら許容できるレベル

個人的評価:70点
オススメ度:冒険活劇、ではないです

2010年3月21日日曜日

ファイナル・デッドサーキット 3D (2009/米)

監督:デヴィッド・R・エリス
出演:ボビー・カンポ / シャンテル・ヴァンサンテン / ミケルティ・ウィリアムソン / ヘイリー・ウェブ / ニック・ザーノ / クリスタ・アレン / アンドリュー・フィセラ / ジャスティン・ウェルボーン / ステファニー・ホノア / ララ・グライス / ジャクソン・ウォーカー / フィル・オースティン / ウィリアム・オギラード / ブレンダン・オギラード


ニックは友達とともにサーキットにレースを見に来ていた
そこで彼はレース中のクラッシュが原因で客席をまきこんだ大惨事がおこる予知を見るのだが

うーん…まあ、なというか、良く言えば水戸黄門ばりに安定感のある死に様ショーを楽しめるってことで
一度生還してからの死の連鎖に謎もドキドキもない状態で、いつものように「過去に同じようなことがあった」という一言で死の筋書きが進行していることと順番の法則性が解決しちゃうという…
それでもこのシリーズに期待するのは、3があんなだったんだからそろそろ法則性を観てる側が知ってることを利用した「それは予想外だ」と思える展開がほしい、というところなんですが…ね、まあ、どうなるかはネタバレになるから書きませんが察してください

ストーリーももう多く言うことはない感じで、生還者が次々死ぬ→俺には予知能力がある→法則性を知る→なかなか信じてもらえない…という流れ
しょうじき今作は3Dでちょっとグロイのを表現してみようぜ、っていうアトラクション性に特化してるんでホントにドラマがうっすいうっすい
ピタゴラのスピード感と、「こっちでくるのか?それともこっちか?」という楽しみ、さらになんか小粋な皮肉演出があったり、3よりはじゃっかんおもしろい
特にサーキットの大惨事のエグさから、生還者が死に始めるところまではかなり楽しめます
でも、そこから「予知についてちょっと調べてみたんだけど」という流れで「またか」といっきにテンションが落ちます

で、ちょっと内容からそれて3Dについて
ソフト版なので付属の眼鏡をかけて観るわけですが、いわゆる赤と青のフィルムがはってある紙の眼鏡が4つ付いてきます
これをかけて観るわけですが…なんというか、あんまり立体感が味わえない上に暗いし色調がおかしくなるので、思ってた以上にどうしようもない感じでした
よくある表現の「3Dはおまけ」という言葉がピッタリ
イヤになって途中で通常ディスクに入れ替えて続きを鑑賞したんで、最後まで観ればすごい迫力なのかもしれませんが

そんな感じで良くも悪くもいつも通り、3をじゃっかんテンポよくした感じの内容
劇場できちんとした3D環境で観てれば、もっと評価が変わったかもれしないですが、その恩恵がない状態だといたって「普通」な印象でした

個人的評価:65点
オススメ度:ラストの展開も分からんでもないけど地味




ファイナル・デッドサーキット 3D 予告

2010年3月19日金曜日

ファイナル・デッドコースター (2006/米)

監督:ジェームズ・ウォン
出演:メアリー・エリザベス・ウィンステッド / ライアン・メリマン / アマンダ・クルー / クリス・レムチェ / アレックス・ジョンソン / サム・イーストン / テキサス・バトル / シャーラン・シモンズ / クリスタル・ロウ / ジェシー・モス / ジーナ・ホールデン / マギー・マー / トニー・トッド


卒業を前に友人達と遊園地に来ていた少女、ウエンディ
ジェットコースターに乗った彼女は、脱線事故によって死ぬ予知をし、これを阻止しようとするのだが

あいかわらず邦題のつけかたがアレな感じです
2でヘンテコな邦題つけたから後にひけないのは分かるけど、どうせならサブタイにファイナル~3とかつければいいんじゃないんですかね
シリーズ物でここまでナンバリングのつながりが分かりづらいのもホントに珍しい
わざと狙ってるにしてもセンスないとしか言いようがない

話的には前作までは1を受けての2、という流れでつながりがあったけど、今作ではほぼつながりがない完全な仕切り直し状態でできてます
だけど、予知の存在と死の順番の法則性だけは受け継いでて、劇中でも「過去にあった」こととして認識されてるので、基本設定だけは前提にあるもしもシリーズ化してしまいましたね
そんな中での死に様エンタテイメントとして、今回もイヤな死に方が次々と展開するわけで
今作では死の順番の入れ替わりも積極的にとりいれて、じゃっかん複雑化してるようで実はそうでもない展開で、けっきょくは頭からっぽにして観てもなんの問題もない

しょうじきこのシリーズは死に様が違うだけでいいかげんパターンがおんなじなので、3までくるとさすがに飽きる
ひとりひとりの死に様やメンタル的な描写は見応えはあるものの、1では「おお、そういう話か」2では「ああ、今回はこうくるか」というようなちょっとした驚きが3にはないんですよね
つまらないまではいかないけど、軽い退屈感はいなめない
謎の黒人もでてこないし、観てる側が「おい」と思わずつっこまずにはいられない、基本設定をこえた「何か」がないのは痛いですね

クライマックスとオチもちょっと派手になってておもしろかった
おもしろかったけど、なんか腑に落ちないというかパワープレイすぎるというか…
本当につまらない、というわけじゃないけど何かケチをつけたくなる、そんな作品でした

個人的評価:65点
オススメ度:びっくりするほど記憶に残りにくい




ファイナル・デッドコースター 予告

デッドコースター (2003/米)

監督:デビッド・リチャード・エリス
出演:アリ・ラーター / A・J・クック / マイケル・ランデス / トニー・トッド / T・C・カーソン / ジョナサン・チャリー / キーガン・コナー・トレイシー / リンダ・ボイド / ジェームズ・カーク / デヴィッド・ペイトコー / ジャスティナ・マカード / サラ・カーター


友達と車で遊びにいくことになった少女、キンバリー
その途中、ハイウェイで大規模な事故にあって死ぬリアルな予知を見て、これを防いだことにより常に死にまとわりつかれることになる

デッドサーキットがでるまでにシリーズを観ておこうとか思ったら、いつのまにか手元にデッドサーキットが届いてしまった現実
とりあえず先延ばし、という悪癖が・・・ということはおいておいて、「ファイナルデスティネーション」シリーズの2作目ですね
さんざん言われてるだろうけど、この邦題を考えたやつはなにを考えていたのかわからない
内容的にも普通にファイナル~2でいいじゃん、と

続編ものにしてはけっこう前作とのからみもうまいし、第二部という感じな内容でした
キンバリーが予知して、自らをふくめて数人が死の筋書きから外れ、だけどそのゆがみを修正するべく死の運命がつねにまとわりつく・・・しかも前作とのからみもあって、話的にもおもしろかったですね
死のピタゴラスイッチが展開する中、「こうなって死ぬのか」と思ってるとすかしてきたり、ちょっとしたミスリードも織り込んでいて「死に様エンタテイメント」作品としてはスピード感もあって楽しい

反面、どうも死に様を描くだけに特化しすぎてて深みというか、死がみょうに軽い印象なように受けます
もっと助け合うことで死の順番が入れ替わってうんぬんという複雑な流れにもっていってもよかった気がしないでもない
あとはせっかく前作の生き残りのクレアが出てきて、キンバリーたちの死の運命とクレアの死の運命のふたつが交錯するんだから、もっとそこらを絡めてほしかったかなあ
基本はホントに順番通りに死んでいくだけで、「俺の順番なのになんであいつが?」みたいなのがないのは物足りない
もっと観てる側をだましてもいいんじゃないかと思います

クライマックスもやらんとしてることはわかるけど、なんか盛り上がりがかけるというか・・・そもそもキンバリーの予知が有能すぎるのかもしれません
それでもラストのオチはおもしろかったですけどね
1を受けての2と考えると、しょうじき死の運命とか全世界に広がってるとしか思えない現実とか直接は描いてないけど、そんなリング的な広がりが楽しかったです
まあ、なにより頭をからっぽにして死に様を見届けてるだけでいいんじゃないかと、そんな感じなんでしょうが

個人的評価:75点
おすすめ度:コースターってなんだよ



デッドコースター 予告

NINE (2009/米)

監督:ロブ・マーシャル
出演:ダニエル・デイ・ルイス / マリオン・コティヤール / ペネロペ・クルス / ジュディ・デンチ / ニコール・キッドマン / ケイト・ハドソン / ソフィア・ローレン / ファーギー / リッキー・トニャッツィ / エリオ・ジェルマーノ / アンドレア・ディ・ステファノ


映画監督兼脚本家グイド・コンティーニは初期作品で成功をおさめたものの、ここ数作は悪評を受けるばかり
しかも彼は新作の制作を発表するも、脚本が1ページどころか出だしすらつかめない状態であった

個人的になんとなくミュージカルと相性がいいと知ってから、何作か観てたんでこの映画には前から期待してたました
映画監督もののミュージカルとかときめかざるえないじゃないですか
あとしょうじき豪華出演陣とかはどうでもよかったですね
個人的にホントに俳優さんや女優さんという中の人にはあんまり興味ないんで
映画ならその作品中の役で判断すればいいじゃない、と
セガールとかヴァンダムとかB級系は別ですけどね

過去の栄光も風前の灯火になりつつあるグイドが、さらにスランプを抱えて脚本がまったく書けない状態におちいる
彼に好意を寄せる女性たちにたよってみても事態は好転しないどころか、どんどんと悪化していく
そんな辛い現実のドラマパートと、夢ともいえる華やかなミュージカルパートが交錯しながら話が進みます
やっぱりミュージカルはいいですね
特に名前は思い出せないですが、グイドが子供時代に浜辺で出会った女性と、ヴォーグ誌の女性の曲は鳥肌ものだったですね
そしたら2曲ともEDでも使われてて、やっぱりこれを押してるんだなあ、と

ドラマパートも転落劇をコミカルに描くのかと思ったら、予想以上に重い感じで話が進んでましたね
なんだかんだで元気をもらえるミュージカル映画ってのではなく、スタイリッシュなカッコいい系の作風
全体的に暗い印象で、ミュージカルパートの華やかさも花火的な暗闇の中のきれいな光みたいな感じ
どんどん状況が悪化していって、にっちもさっちもいかない暗闇を突き進むしかない(ドラマパート)中で、ふいに頭上に光がきらめく(ミュージカルパート)、みたいな
じゃっかんドラマに飽きてきたところに、時にはそっと時にはガツンと曲が入ってくるので完全に飽きるとこまでいかない作りはいいですね

丁寧に転落劇を描き、そこからクライマックスの展開にむかうんですが、そんな終盤の展開がちょっと個人的には急すぎた印象がしました
まあ、ストーリー的には目新しいところはないんでネタバレ言っちゃいますが、底辺からの浮上の描きかたがちょっと、ね
どうせ急展開ならドラマで見せるより、そこはミュージカルでとにかく盛り上げて「俺はやるぜ!」みたいな流れの方がしっくりくる気がしないでもない

それでもラストのかっこよさはたまらない
いいかげんで、自己中で、女たらしで、空気がよめなくて、メンタルが弱い、どうしようもないグイドだけどなんか憎めなくてかっこいい
ちょっとファンタジーはいってるけど、テンションあがる曲やしんみりくる曲がかなり耳に残る作品でした

個人的評価:80点
おすすめ度:シネマ・イタリアーノ!




NINE 予告

2010年3月15日月曜日

エスター (2009/米・カナダ・独)

監督:ハウメ・コレット・セラ
出演:ヴェラ・ファーミガ / ピーター・サースガード / イザベル・ファーマン / CCH・パウンダー / ジミー・ベネット / アリアーナ・エンジニア / マーゴ・マーティンデール / カレル・ローデン / ローズマリー・ダンズモア


3人目の子供を身ごもりながら死産に終わってしまったケイトは、産まれてくるはずだった子にそそごうとしていた愛情の行き場を失う
そこで孤児院から養子をとることに決め、ロシアの少女エスターがやってくるのだがじょじょに平穏な日常がきしみはじめるのだった

いわゆる天使の顔した悪魔の子供が周りの人たちに牙をむく系のホラー
なんですが、殺意の衝動にまかせて人知れずデストロイゼムオールするようなのではなく、殺しは手段のひとつとしてもった上で心理戦や相手の立場を利用した恫喝までしかけてくる狡猾さが素敵です
なんとなく昔なつかしいようなクラシカルなテイストのホラー映画でした

ケイトの子供、その長男は普通の男の子、その妹は耳が不自由な障害をもつ女の子、そしてそこにエスターが入り込んでくる
理解のある素敵な旦那と子供たちに囲まれて平穏な日々を送ってたケイトだけど、エスターが加わったことで小さなささくれが家族の絆に次々たちはじめる、と
不可解な「事故」のそばにいつもいるエスター、じょじょに疑いの目が向けられるけどそれすら利用して「子供なんだから…」という周囲の同情を引き出す
そして、完全に家族をコントロール下におくと、とうとう表だって本性を現しはじめるわけですよ
そんな普通に怖いエスターなんだけど、観てて彼女に疑いをかける人物よりエスター自身を応援したくなるから不思議

エスターに翻弄される家族なんですが、それだけでなくケイトとその旦那にもちょっとした秘密があることで、作品自体の怪しさに一役買ってます
まあ、エスターの存在そのものが日常をいっきに不安定な空間に変質させてしまうオーラもってますが
ホントに終盤のエスターとかガチで怪しいし、かなり怖い
見た目とかもそうだけど心理的に怖い

そしてクライマックス
「そうきたか」と久々に思えておもしろかった
あのエスターの本性というかそこらへんが明かされることで、作品としてかなり面白くなってますね
単に善悪の分別があやふやなガキがはっちゃけてるだけの映画じゃないというかなんというか
しかもそんなエスターを理解すると、それまでのセリフとか行動がけっこう伏線になってることに気づけるように作ってあるから憎いわ

難をいえばじゃっかんおばあちゃんが放置ぎみで生かされてないのと、「くる?こない?」演出が中途半端でドキドキするところまでいかない点がちょっとアレだったかもしれません
特に「くる?こない?」は「スペル」を観た後だと子供だましレベルに感じてしまいます
まあ、そんな比較はけっこうどうでもいいんですが
昔のホラーを意識してるのか、雰囲気はよくできてるものの派手さはないんで、血がプシャーとか次はどんな殺し方するんだととかそこら辺を期待して観ると肩すかしをくうかもしれません

そんな感じで、本当に派手さはないけど丁寧に作ってある怪人系ホラーでした
いや、マジでこういう作風は大好物ですね

個人的評価:95点
オススメ度:ファックの意味と正しい使い方のお勉強もできます




エスター 予告

2010年3月14日日曜日

シャーロック・ホームズ (2009/米)

監督:ガイ・リッチー
出演:ロバート・ダウニーJr. / ジュード・ロウ / レイチェル・マクアダムス / マーク・ストロング / ケリー・ライリー / ジェームズ・フォックス / エディ・マーサン / ジェラルディン・ジェームズ / ウィリアム・ヒューストン / ブロナー・ギャラガー / ハンス・マシソン / ロバート・マイレット / ウィリアム・ホープ / クライブ・ラッセル


イギリスの名探偵ホームとその助手で医者のワトソン
ふたりは巷を震撼させている、黒魔術の儀式によって連続殺人をおかしたブラックウッド卿を捕まえるのだった

スタイリッシュミステリーアクション
まさにそんな感じでかなりアクション要素に重きをおいて、堅苦しいイメージのホームズものをあっさりばっさりけれんみたっぷりで描いてます
とにもかくにもキャラたちの怪しさを楽しむ映画ですね

ブラックウッド卿が捕まり、いよいよもって死刑が執行されすべてかたがついたかと思ってた所に、ホームズが惚れ込んでいるビッチが人探しの依頼をもってくる
それと同時にブラックウッドが墓から抜け出して蘇ったと連絡がある、という筋
論理的な推理を得意とするホームズに魔術を体現してみせるブラックウッドという対決なんですが、そんな魔術とかそっち方面に話がいっちゃうのかと怪しみながら楽しめます

科学の実験が好きで、自分の世界に入り込み、洞察力と推理力が半端なく、それを応用して論理的格闘術に長け、基本ひきこもりなホームズさんが素敵すぎる
すごい所はものすごく、ダメな部分はとことんダメな人間として描く極端さがいいですね
ファッションとしてのダメ人間でホントはすごいんだぜ、って感じじゃなく、クズといってもいい部類のダメ人間かつ名探偵という風な描き方
そんなホームズとなんだかんだ言い争いながらも深い絆で結ばれた助手の常識人ワトソンとのやりとりもおもしろい

基本は謎解きしながらパワープレイで敵を追いつめたり窮地におちいったりした時にアクションで解決しつつ、ブラックウッドを追うという流れ
謎解きといっても華麗にトリックを説明するというより、とりあえず敵を追いつめて「こういう感じなんだろ?な?」みたいにミステリーの解決編の部分はわりとあっさり風味になってます
まあ、しょうじきトリック部分の種は金田一少年レベルなんで、メインは娯楽アクションかもしれません
そして、トリックとは別のストーリーの本筋部分があえて部分的な表現をちりばめるだけで、「実はああでこうでそうなんだよ」と丁寧に説明しないのは個人的には好印象でしたね
くどくど説明されるより、あえてまとめないことの方が観てる人自身に気づかせて「自分で理解した気持ちになれる」感をあたえてくれるんで

それでもやっぱりラストの「俺たちの戦いはこれからだ」という定番の流れはひどい
しかも終わりがけにちょっと話を出してきてそのままシャットアウトでエンドならまだしも、中途半端に引っ張って続きを期待させておきながら終わるのってどうよ
続編を作ってるのかどうか知らないですが、ブラックウッド編だけで気持ちよく終わってほしかった、としか言いようがない
まあ、ホームズ好きなら押さえておきたい展開といえばそうなんですが
あとは、作品全体的に抑揚がちょっと足りない気がしました
おもしろい、確かにおもしろい映画なんだけど、なんか微妙な退屈感があるんですよ
過激なアクションシーンも、ピンチにおちいってる時も、真相がわかった時も全部おなじテンションと味付けで、まるで刺身をおかずに寿司を食べてる感じ
おもしろさが均一的で、クライマックスがおとずれてもそんなに高揚感がないというかんというか

深く考えずに頭をからっぽにして観れるアクション主体のミステリー、なんか新しい気がしないでもないです
まあ、でもしょうじき多少スケールダウンしてもいいから、映画としてやるよりドラマでやった方がいいんじゃないのかな、と個人的に思える作品でした

個人的評価:80点
おすすめ度:ワトソンの男前イベントも素敵です




シャーロック・ホームズ 予告

2010年3月12日金曜日

デビル・ハザード (2009/米)

監督:ジェイソン・コネリー
出演:キューバ・グッディングJr. / レイ・ウィンストン / ロン・パールマン / ヴァレリー・クルス / タリン・マニング / ヘンリー・ロリンズ / フランキー・G / ブランドン・ジェイソン・ロンドン / サラ・アン・モリス / ミア・ミラー / ウェストン・ブレイクスリー


マック率いる7人の一流傭兵チームが集められる
その目的は砂漠にある地下遺跡からある人物を救出することだった

いやあ、こうまで腐臭を隠すことなくどうどうとしてるタイトルは珍しいんじゃないですかね
なんというか背中に「バカです」と書かれた紙を貼られているのを承知で、臆するこなく胸をフォッブス / ステファニー・ジェイコブセン / ビル・モーズリイ / ザック・ウォード / はって歩いてるようなタイトルセンス
「デビル・ハザード」とか、あんまり映画を観ないような人でも「これはB級だな」と分かるくらい鼻にツンときますね
しかもこれ、去年の秋に日本でも劇場公開されてるんだぜ…嘘みたいだろ?
私の通ってる映画館でもかかってたんですが、短期間な上に上映時間枠がへんぴすぎて観にいけなかったんですよね

内容的にはマックたち傭兵部隊とCIAの女の人が、極秘ミッションって感じで砂漠にある地下遺跡にウェスリー博士を捜しにいく、という感じで始まります
遺跡といってもウェスリー博士たちの調査団がそれなりに研究してたことから、内部は地下施設という感じの近代的な作り
そこで聖書を引用して説教してくる明らかに見た目が怪しいおっさんに襲われ、しかも傭兵チームのひとりがおっさんと共に勝手に行方をくらましてしまうんですね
マックさんは行方知れずになった仲間を追ううちに、この遺跡にはかつての調査団がプチ異形化してちょっとやそっとの銃撃にも死なない化け物になってることを知る、と
しょうじき「バイオハザードX」を思い出さずにいられない、そんな雰囲気が漂う作品

そんな素敵な腐臭たっぷりな外観だけでなく、中身もしっかり予想を裏切らないクソっぷりでした
まあ、その…なんていうか、ぶっちゃけ話がよく分からない
もうめんどくさいからネタバレしつつ書いていきますが、地下遺跡の最深部に神の力によって封じられた堕天使がいて、そいつの精神攻撃を受けると堕天使側の化け物になって、そんな堕天使と戦う一族がCIAのお嬢ちゃんで、そんなお嬢ちゃんの目的は話が進むにつれて「実はホントの目的は」→「いや、でもホントのホントの目的は」…と無駄に複雑化してる上になんか破綻してる気がしないでもない
なんか色々と設定を考えたんでしょうが、説明がヘタすぎてまったく伝わってこない
いや、自分の理解力がアレなだけかもしれませんが

そうこうしてるうちに堕天使自ら派手に復活をとげて驚異のVFXで、すさまじいラストバトルが展開することはなく、堕天使の力を自身の体に封じ込めたウェスリーが暴走してマックさんとラストバトル
とはいえ基本は精神攻撃な上に、主人公補正で「これは幻覚だ!」と打ち破るマックさん&破られたとたんによくわかんないけど燃え上がって死ぬウェスリー博士
分からない…本当に分からない…
しかも最後のマックさんのセリフが「俺と堕天使の戦いはこれからだ」みたいな感じで分からない
もうこの映画の全てが分からない

ということで、自分自身のストーリー理解力がどんなものか計りたい人はぜひ観てください
そして意味が分かった人は私に教えてください
お願いします

個人的評価:30点
オススメ度:バイオハザードじゃねえから、これ




デビル・ハザード 予告

2010年3月9日火曜日

ジェネラル・ルージュの凱旋 (2009/日)

監督:中村義洋
出演:竹内結子 / 阿部寛 / 堺雅人 / 羽田美智子 / 高嶋政伸 / 山本太郎 / 貫地谷しほり / 玉山鉄二 / 尾美としのり / 林泰文 / 中林大樹 / 佐野史郎 / 野際陽子 / 平泉成 / 國村隼


バチスタ事件の後、倫理委員会の委員長に抜擢された田口
自ら分不相応だと思いながら働く彼女のもとに、救急救命センターのセンター長である速水が医療メーカーと癒着しているという告発文が届く

なにこの前作からの正統進化っぷり
前の作品で「個人的にはどうもなあ」と思ってた所がほとんどクリアされて、かなり完成度の高い作りになってて驚きました
じゃっかん役者さんの熱演に助けられてるところもありますが、満足度はホントに飛躍的にアップしてるから困らない

話的には告発文が届いた田口さんが、医院長からこの件について調査を命じられる中、ほぼ同内容の文面が厚生労働省の白鳥にも届きふたりが再びタッグを組む、といった流れ
その調査対象者の速水を演じるのが堺雅人さんなんですが、個人的なにわかな映画知識の中でも一番のびのびと演技してるなあと感じましたね
熱演というか、怪演というか、ホントにこの人のすごさをいかんなく発揮してる映画だなあ、と
それ以外にも他の出演者さんたちもかなりハマリ役で、役者としてのイメージからかけ離れない立ち位置で、それでいてちょっとひねてるような役をあててる感じがしないでもない
あんまり、ここら辺の役者と演技うんぬんを語る知識はないんでアレですが

バチスタの時は「自らの手で人の生死を左右するすごい展開なんだけど、ちょっと限定された密室空間での出来事」な感じでしたが、今作ではもっと病院内ぜんぶとは言わないまでもかなり広い舞台で話が展開するのがよかったですね
なにより作品的に白鳥のワンマンっぷりが薄れ、ちゃんと田口さんにもスポットがあたるような作りになってるのはよかった
その分、けっこうな事件が起きてるのにミステリー性がうすれて、院内のごたごたを描く内輪話っぽくなってるのは仕方ない…のかもしれません
やっぱり田口さんは田口さんであって、いきなり覚醒したような超推理はしてくれないということで

クライマックスに向けて展開が気持ちいいくらいにテンポよく流れ、ちゃんと映画的な盛り上がりもあるんでよかったですね
それでもやっぱり白鳥はまだ微妙に作品になじめてない感がするのは確か
しょうじき白鳥がでしゃばってこない方がおもしろい気がするのは自分だけなんでしょうか
なんか彼がでてくるシーンは盛り上がってた心がじゃっかんスリップしてしまう
あとは、これは今作がおもしろいだけに、あくまでこれが続編であることが悔やまれますね
今作はおもしろい、だけどやっぱり前作を観てないとノリきれない部分も多々あるのは事実で、これだけ観るとたぶん「おもしろいけど、ちょっと…」な引っかかる部分があるかと

そんな感じで、堺雅人さんって今まで何作か出演したの観ましたが、しょうじき微妙な役者さんだなあ、と思ってた自分を殴ってやりたいですね

個人的評価:90点
オススメ度:医療ドラマものにハマリそうです




ジェネラル・ルージュの凱旋 予告

チーム・バチスタの栄光 (2008/日)

監督:中村義洋
出演:竹内結子 / 阿部寛 / 吉川晃司 / 池内博之 / 玉山鉄二 / 井川遥 / 田口浩正 / 田中直樹 / 佐野史郎 / 野際陽子 / 平泉成 / 國村隼 / 山口良一


心臓手術の「バチスタ」を得意とする桐生とチーム・バチスタの面々
しかし立て続けの失敗を機に、第三者である田口に内々の調査が命じられる

この映画の名前は知ってましたが、しょうじき「医療ドラマものだろうなあ」としか思ってませんでした
そしたら、なんかこれミステリーものだっていうんで掌を返して鑑賞
わりとヤング向けなのかカジュアルでライトな雰囲気だったんで、あんまり肩に力を入れずに観れました

不定愁訴外来という要するに患者さんの愚痴を聞くこと専門の医師である田口が、エリートであるチーム・バチスタの面々の話を聞き、実際の手術に立ち会って何か一連の失敗に関係あることがないか調べる、といった出だし
そうこうしてるうちに事故ではなく殺人事件じゃないのか?という流れになってきて、そこにくせ者のお偉い役人である白鳥が調査に加わってくる、と
まあ、とりあえず皆が思うだろうけど、謎のほとんどは途中参加の白鳥が解いていくという感じで、田口さんがあまり活躍してないのはどうなんでしょうかね
いっけん役立たずと思いきや、最後に逆転のリサーチ能力を発揮して白鳥をもギャフンと言わせる超推理を展開する…なんてこともないですし
クセのある主人公を作品的に柔和させる目的で配置された、サポートキャラみたいな扱いの田口さんでしたね

謎解きの部分はほぼ全自動で白鳥がやってくれるんで、観てる側からしてみればいっしょになって推理するとかそういう気分にはなれないのは残念
あとはちょっと映画というよりドラマみたいな作風で、話はおもしろいけど映画としての華やかさはないですね
さらにチーム・バチスタ側のシリアス路線と白鳥のコミカル路線がかみ合ってなくて、じゃっかん違和感をおぼえるところも少々ありました

それ意外ではおおむね楽しめた作品だったんで、ライトなミステリーをのんびりと観る分にはいい感じで
クライマックスも「えー、そんな結末なの?」と思ってたところでもうひと山あるから満足できました
それこそホントにひとつひとつは弱い手札でも合わせれば役になるみたいな見本の作品かもしれません
これはすげえ、っていうレベルじゃないけど観て損した気分にはならない
そんな作品でした

個人的評価:70点
オススメ度:竹内結子と阿部寛の組み合わせは微妙




チーム・バチスタの栄光 予告

2010年3月7日日曜日

いけちゃんとぼく (2009/日)

監督:大岡俊彦
出演:蒼井優 / 深澤嵐 / ともさかりえ / 萩原聖人 / モト冬樹 / 蓮佛美沙子 / 柄本時生 / 岡村隆史 / 吉行和子


どこにでもいる幼い子供ヨシオ、そして他の人には見えないけどいつもそばにいる謎の生き物(?)いけちゃん
辛くて痛い現実を前に悩むヨシオとそれを支えるいけちゃんのある夏がはじまる

ああ、ダメだ
こういう単純な話には弱いわあ
ひじょうによくあるような設定のようで、ちょっとひねてる感じがたまらない
そりゃ泣くさ、ボロ泣きさ

最初っから主人公のヨシオが神様がなんたらとか、自分と関係なく世界は回ってるとか痛々しい発言にちょっと引きますが、観すすめていけば慣れてくる
とにかくこの主人公の子供っぽさ、素直さ、姑息さ、優しさ、傲慢さ、いじっぱりでかっこつけだけど強くてずるい…そんなキャラとしての型にはまらない心と身体のアンバランスさが面白い
大人からしてみると筋が通ってないことでも子供の理屈では成立してる不安定感がたまらない
リアルクソガキとはちょっと違う、大人が懐かしんで投影したリアルながら美化が入ってるファンタジークソガキって感じですね

話的には、いつも暴力を振るわれる町のガキ大将に屈しない意固地さはありながら、それでもいちどもケンカに勝てずに泥をなめるヨシオがいけちゃんとともにちょっとずつ強くなっていく、という感じで
ガキ大将の他にも頼りにならない友人、ちょっとした初恋の顛末、唐突に襲ってくる不幸な別れ、いじめる側に立つことの気持ち、背伸びをしても夢を抱いても見えてくるのはただそこにある現実だけ
いろんなことを経験していって現実を知っていくことで、いい方向に強くなっていくのが心地いい
リアルだけどファンタジー、そんな世界にひたればいいじゃない

いけちゃんの存在も予告とかで見たインパクトとは違って、普通に世界観にとけ込んでるから困らない
あんなCG丸出しのキャラでも、ホントにその口調が映画の世界とうまくマッチしてて、ヨシオとのやりとりもけっこう自然な感じで観ていられます
なんとなくだけど、ドラえもんに最終回的な意味で結末を描くならこんな感じなのかなあ、と

で、ラストですよ
ヨシオも一歩ふみだして強くなり、いけちゃんの正体も明かされ(まあ、これはそんなにたいそうな謎ではないですが)、いよいよふたりは…
単純、シンプル、こういうのってホントにいい
もういけちゃんに感情移入しまくりで泣きまくり
いけちゃんの立場からなにから混ざり合って、もう、なんともいえない感情があふれますね

そんな感じでたまにはこういう作品を観て、淀んで薄汚くなった心を少しは洗い流すのもいいかもしれません

個人的評価:95点
オススメ度:そんなことより野球しようぜ




いけちゃんとぼく 予告

2010年3月5日金曜日

リアリズムの宿 (2003/日)

監督:山下敦弘
出演:長塚圭史 / 山本浩司 / 尾野真千子 / サニー・フランシス / 康すおん / 山本剛史 / 山下敦弘


若手の映画監督と脚本家の木下と坪井は名前は知ってるていどの知り合い
共通の友人である舟木に誘われて田舎町にやってきたが、とうの舟木が遅刻してまだこないなか、ふたりはとりあえず宿へと向かうのだった

あらすじを見てもなにがおもしろいのか分からないと思いますが、これが本当に面白い
社交的ではあるけど実際に会うのは初めての相手にまで馴れ馴れしい態度はとれない舟木、やや内向的でへんに真面目かつ小心者の坪井、そんなふたりのぎこちない距離感と空気感が楽しくて楽しくてしかたない作品ですね
大笑いというより、しずかにくすくすと笑ってしまうタイプの良質コメディ

いわゆる「友だちの友だち」という微妙な立ち位置の二人が、土地勘もない田舎町の宿でいっしょの部屋に泊まることの気まずさがマジでリアル
個人的には小心者の木下の行動が分かりすぎて共感しまくり
で、話的には舟木と連絡がとれなくなって途方にくれてるところに、地元のいろんな人たちが絡んでくるという感じ
そんな絡んでくる人たちがいいキャラで困らない

SMものAVが大好きなタクシーの運ちゃん、金に汚い外国人のおっさん、あきらかに怪しいCDを売りさばく父子、死にかけ旦那の一家、そしてそこにふたりの前に唐突に現れるヒロインとの絡みがメインになってきます
そんな強烈なキャラたちとの絡み以上にやっぱり木下と坪井のなんともいえない、ぜったいにふたりで旅行するような仲じゃない距離感の付き合いしかない関係が楽しくて仕方ない
遠慮するような探るような、おもいっきりバカ話もできなく、腹が立ってもちょっと言い出しにくい…そういうあけっぴろげじゃない日本人気質どうしの絡みをうまく描いてますね

じゃっかんラストに向かっていくなかでインパクトが弱いシーンが続きますが、それでもそこまでに至る道のりがじゅうぶんすぎるほどにおもしろいので満足
「なんともいえない空気感」そんなのを味わいたい人にはオススメですね
最後の最後まで微妙な感じを楽しめます

個人的評価:90点
オススメ度:俺は童貞だが姉ちゃんのは見たことがある、ほぼ他人にそんな話ができる人間になりたい




リアリズムの宿 予告

鴨川ホルモー (2009/日)

監督:本木克英
出演:山田孝之 / 栗山千明 / 濱田岳 / 石田卓也 / 芦名星 / 斉藤祥太 / 斉藤慶太 / 佐藤めぐみ / 藤間宇宙 / 和田正人 / 渡部豪太 / オジンオズボーン / 笑福亭鶴光 / 荒川良々 / 石橋蓮司


二浪してようやく入った京都大学に通う安倍明
浮かれていたのも最初だけで、急に目標を失ってなにもかもやる気がなくなっていた時、怪しいサークル「青竜会」から誘いを受けるのだった

まあ、なんというか「やっちまった」感があふれる壮大にすべってるコメディでした
ギャグそのものは悪くないんだけど、テンポと演出が最悪に近い
バカでどうでもいい内容なのに、へんに気取ってリミッターがかかってる安全運転な作りが逆にもどかしくてまったく笑えないから困る
かといってクソ以下なZ級映画ってわけではなく、軽いノリでBGM代わりに「観ても観なくてもいい」状態で、何人か集まってわいわいやってる時にテレビに映しておけばいいんじゃね?レベル

主人公の安倍が青竜会に入るまでにぐだぐだっと展開があり、入ってからもぐだぐだなもんだから、いざ本編であるホルモーがはじまってもわりとどうでもいい感じが否めない
こんなバカ映画に丁寧に順序よく話を説明してくれなくていいですから
遠慮せずにもっと開始早々にぶっとんでもいいですから
そして、いざホルモー本編に入ってもまったく盛り上がらずに、バカでシュールなことやってるわりに観てる方はずっとフラットな気分のままってどうなんですかね

あとはキャラクター
それほど奇抜ではなく、そんなにぶっとんだことをしない、そんな地味さがとてもこの映画には合ってると思いますね。嫌味的な意味で
とんでも番長マンガなノリで、もっと変キャラてんこもりでバカバトルとかやるのかと思ってたのに、まったくもってそういう展開がないという肩すかし
あるのはどうでもいい恋愛話と常時すべりまくりな演出が弱いギャグだけという…

クライマックスの展開も本当にどうでもいい
臨場感があって熱くなれるでもなし、アホすぎる展開に大笑いできるでもなし、シリアスな流れにドキドキできるでもなし、特に感動するところもない
こういうフラットな作品がホントに一番こまる
ダメならダメなりに腹が立つほどくだらない映画な方がまだ楽しめる

なんか文句ばっかりですが、なんとも個人的に良い意味でも悪い意味でも「ここが」という点が思い浮かばないんですね
大人から子供まで、低刺激なコメディが観たいという人にはお勧めかもしれません

個人的評価:20点
オススメ度:ずっとモルホーと思ってたけど、そんなのどうでもいい



鴨川ホルモー 予告

2010年3月3日水曜日

吸血少女対少女フランケン (2009/日)

監督:友松直之 / 西村喜廣
出演:川村ゆきえ / 斎藤工 / 乙黒えり / 亀谷さやか / ジジ・ぶぅ / 西崎彩 / Erina / 紗代 / しいなえいひ / 津田寛治 / 清水崇


都立東京高校に通う水島樹権(みずしま・じゅごん)は、ある日、クラスでも目立たない少女の有角もなみ(あるかど・―)にバレンタインのチョコを渡される
しかし、もなみは吸血鬼であり樹権に渡したチョコには秘密があるのだった

久しぶりのVSもの
もう、とにかくすがすがしいほどにバカ
バカでスプラッターでびっくりするほど内容がない
それなのに、へんな所でこだわってくれるんで良い意味で並以上のバカB級映画になってます

とりあえずキャラ祭り状態で、登場人物それぞれが素敵バカばかり
厳格な規則第一の教師だけど実はストーカーなおっさん、フェロモン系保険医だけど実はシリアルキラーなお姉さん、ダメダメな教頭だけど実はフレンケンシュタインの後継者でカブキスタイルの男…もう、お腹いっぱいです
さらに劇中で本筋の息抜きのコメディ要素みたいな感じで、リストカット部やガングロ部が寸劇を繰り広げるんですが、まったく意味なくコメディ要素補充のためだけにある各部の話かと思いきや、ちゃんと後で伏線を回収してくれるから困らない

あとはもなみの下僕である用務員のおっさんイゴールもいいですね
あんまり捨てキャラがおらず、わりとあとで伏線を回収してくれるパターンが多いのも楽しい
とくにもなみと樹権のラブラブっぷりが思ってたのと違う方向にむかったのは驚いた
そう言われてみれば劇中でも不自然なところがあったなあ、と
単なるバカ映画にしては珍しく、ちょっとだけ頭を使って作られてる感じ

あとはラスボス、ね
こいつは、もう、この役を引き受けた人はちょっと断る勇気をもった方がいいんじゃないか、と思わざるえないくらいの汚れっぷり
東京タワーに飛んでいくところとか、ラスボスの最終形態とか、観てる分には面白いけど演じてる側からしたらどうなんでしょうか

そんなわけでかなりキてる楽曲センスというか、もうテーマ曲にメロメロになった時点で大満足な作品になりました
例によって強くオススメはできないですが、バカB級好きにはたまらない一本ですね

個人的評価:75点
オススメ度:ヴァイヴァイ




吸血少女対少女フランケン 予告