2010年1月2日土曜日

子連れ狼 死に風に向う乳母車 (1972/日)

監督:三隅研次
出演:若山富三郎 / 富川昌宏 / 浜木綿子 / 山形勲 / 中谷一郎 / 浜村純 / 名和宏 / 加藤小夜子 / 草野大悟 / 梅津栄 / 伊達三郎 / 山谷初男 / 志賀勝 / 水島道太郎 / 加藤剛


乳母車に子を乗せて、柳生一族の追っ手と戦いつつ旅を続ける拝一刀
ある女郎に売られる女との出会いから、事態は血なまぐさい方向へと流れていくのだった

やっぱり正月は痛快娯楽時代劇でしょう
そんなわけでシリーズの中でもわりと評判のいい今作を観ることに
いやあ、もう渋くてカッコイイですわ
敵を斬り伏せてゆっくりと刀を鞘に収める一刀…しばしの静寂の後にババーンとくる子連れ狼のタイトル、もうしびれまくりですよ
画面を引き締める緊張感と役者たちの重い演技、そこには今の時代劇が置いてきてしまったいい部分がいっぱいありますね
と、えらそうに言うほど時代劇をそう見てるわけじゃありませんが

一方で本格時代劇というにはどうかと思うようなけれんみもあり、これがマイナスではなくプラスに働いていて「娯楽」時代劇として大きな要素になってます
例えば短筒使いとの戦いの顛末とか、各種乳母車の兵装、ある屋敷から出て行く際に後ろ手に抜刀しながらゆっくりと出て行く様など、ひじょうに胡散臭いながらもそれを上書きするような力強さがあって、作品がちっとも軽いものになってないのがすごい
ストーリーもどう考えても強引な運びなんですが、もう若山一刀が画面にでてくる存在感だけでなんか知らないけど許せてしまうんですよね

話のそのものはアレだけど、その運び方はわかってるなあ、と
最初は旅の途中で単発のイベントがちょこちょこ起こるだけなんですが、それらが実はぜんぶ無駄な尺かせぎじゃなくて、きちんとあとで伏線を回収していく丁寧さ
特に良かったのは、なんだかんだいってこの作品は「柳生一族との戦い」が主軸になってるシリーズなんで、そこらへんのけじめは「俺たちの戦いはまだまだ続く」なノリになってしまう…んですが、ちゃんとそれはそれとしてキチンとしたラストがあるのはいい
ストーリー的にすべてをしめた上で「俺たちの戦いは~」ってやられるとギャフンですが、「俺たちの戦いは~」となった後に「でもひとつやりのこしがあるよな」みたいな
かなり限定した言い方をすると「スクライド」でラスボス倒したあとに主人公二人が決着をつけるみたいな、ふたつの終わりを用意してる小憎らしさって感じ

そして燃えに燃えるクライマックスですよ
相手は百人はゆうにこえる軍勢、それに対する一刀ひとり
乳母車に隠された暗器を使い、長刀、槍、二刀流、あげくの果てにはあんな武器まで使う一刀さん、さすがやで
乳母車連射砲を使ってる時点で以外じゃないかもしれないけど、それでもあの武器を手に持った姿はシュールというか、ネタっぽいながらかっこよかったですね
けっきょくは若山一刀かっこいいね映画…だけど、そこがいいんだよ。それがいいんだよ、と

と、たまにはちゃんとした(?)娯楽時代劇を観て楽しんでもいいんじゃないでしょうか
画面に釘付けにする求心力は半端なかったですね

個人的評価:90点
オススメ度:武士道とは…

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