2009年10月11日日曜日

カイジ(2009/日)

監督:佐藤東弥
出演:藤原竜也 / 天海祐希 / 香川照之 / 山本太郎 / 光石研 / 松山ケンイチ / 松尾スズキ / 佐藤慶


連帯保証人を引き受けた友人が失踪したため、高額の借金を背負うことになった伊藤開司
返すあてのない開司は、金融会社の社長から借金帳消しになるゲームの紹介を受ける

見る前からかなりの腐臭がしてて、ぜったい原作マンガ持ちの映画化としてだれた内容になってるだろ
と、思ってた過去の自分を叱ってやりたいですね
これは一本の映画としてけっこうよくできてます
しょうじきディープなカイジ好きな人にとっては物足りないデキかもしれませんが、そこはマイナス要因にはなりません
小説には小説の、マンガにはマンガの、アニメにはアニメの、映画には映画の作り方ってのがあって、「マンガはこうなのに、なんで映画だとああなんだよ。クソ映画だろ」という意見ももっともだけど、それとは別にして「映画として」ちょっと客観的にも見てみようよ、と
そういう意味で「映画として」はわりとよくできてる作品

冒頭から借金帳消しゲームに参加するまでの流れが非常にテンポよく、さっさと本題に入れよというツッコミをいれるまもなくゲームが始まります
そのゲーム、限られたカードにかかれた手札でジャンケンをする「限定ジャンケン」はびっくりするほどあっさり終わり、物足りなさは残るものの実はそこからが本編の始まりなんですね
いわば「限定ジャンケン」は物語のつかみにすぎない
原作マンガのような単純のようで実はかなりのかけひきが重要になる、なんてこともなく必要最低限のカイジというキャラを説明するためだけに徹しています

そんな「限定ジャンケン」なんかも原作マニアからすれば「原作レイプ」と言われるかもしれませんが、個人的にはこれでいいと思いますね
つべこべ言う奴は原作を後生大事に読んでろ、ファッキュー・・・すみません、ちょっと取り乱してました
で、その後の展開は詳しく書きませんが「ビールうめえ!」な円の10分の1の価値しかないアレの展開から、ビルの屋上で第二のゲームが始まります

個人的にはこの第二のゲームの必要性は分かるけど、やっぱりなんかリアルさが薄いというか、危機感があまり感じられなかったかなあ
危険な状況なのに握った手を突き放しても大丈夫だったり、延々と語り合ったり、あげくに全身で力一杯さけんだり、さすがにそりゃないだろうって感じ
でも、ゲームの内容はともかく、このゲームもきちんと本編を進める大事な要素のひとつになってるのも事実
カードゲームばかりで地味だから、ちょっと派手なの入れておこうぜ、って単純な展開じゃない

で、クライマックスですが、これもゲームの内容がイマイチ
というかケリの付き方がみえみえすぎて、ちょっと食いたらない
それでも作り手もそこはじゅうぶん承知で、ギリギリで退屈にならない演出はしてるんで、ダメだこりゃな感じはしないですが
個人的にそんな作り手の「自分たちのことをわかってる」感がとっても良い印象なんですよね
原作につぶされず、迷わされず、ちゃんと「映画」を作ってる姿勢は、最近の原作持ちの作品にしては珍しいと思います

キャラ的にはやっぱり利根川さんが素敵すぎてたまらない
大物っぽく見えてひどく小物な利根川さんの言葉、表情、しぐさがいちいち素敵
カイジの描き方もなまじヒーローになりすぎないように、押さえてたのはよかったですね
こういう映画ではキャラ設定とか作品の雰囲気を無視して、終盤にはダメ人間が超絶ヒーロー化して、そりゃねえよと萎えるのがお約束ですが、この映画のカイジの描き方はよくできてました

ということで、全体的に勝負のかけひきやトリックといった面はかなり薄味にできてます
変わりに有名な原作の映画化でありながら、原作知識がいっさいなくても楽しめる一本の映画としては上々な作り
じゃっかんライトな客層を狙ってる感じで、ダークさや痛さは極力排除して軽く観ていられるエンタテイメント作品といったふう
それって「カイジ」じゃないじゃん、と思ったり原作に根深い思い入れがある人はさけた方がいいかもしれませんね
いちお個人的には原作単行本をリアルタイムで追って楽しんでましたが、この作品も見終わってみると別にそんなに拒絶反応はありませんでした
さすがに実写で「ざわざわ」は吹きそうになりましたが

んで、こう書いてくると、一本の映画としてすっごい面白い作品かと思われるかもしれませんが、別にそうでもないのも事実
原作持ちの映画化にしてはよくできてる、って思うだけですので
個人的には、まあ、映画としてはクソをかすめる感じの普通な内容といった感想でひとつ
それでも最後まで退屈せずに見れたのは大きいかも

個人的評価:70点
オススメ度:カイジ独り言を口にだしすぎだろ




カイジ 予告

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