2009年10月16日金曜日

ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ (2009/日)

監督:根岸吉太郎
出演:松たか子 / 浅野忠信 / 室井滋 / 伊武雅刀 / 広末涼子 / 妻夫木聡 / 堤真一


ある日、作家で夫の大谷が盗みを働いた
貧乏暮らしをしていたその妻は、逃げた夫に代わり返済を約束するのだが

たまには文学おっさんを気取る感じでいってみようか
とかよこしまなにわかインテリポーズで観てきたわけですが
予想以上におもしろかったですね
文学小説とか国語の授業でより抜きで読んだ程度の知識ですが、映画全体的に言葉遣いから雰囲気から「いかにも文学っぽい」臭いがしてきます

だけど、そんな現代ドラマでは古くさい世界観、言い回しが新鮮に響いてきていい感じに
ただそれっぽい感じに作った雰囲気だけの上辺作品じゃなく、けっこう全体的に違和感がないというか、ファンタジー的な意味でしっくりきてますね

でてくる人物たちも古くさくて粗雑で大ざっぱで、それでいて下卑すぎない心暖かさをもった、下町人情あふれる人たちみたいな感じで作品が変な上品さをもってます
ヒロインの大谷の妻であるさちも、ダメ人間の夫を支える強い女という単純なキャラではなく、おしとやかさも艶やかさもひょうきんさも醜さもある血の通ったひとりの人間としてよく描かれていると思いました
しょうじき、夫の大谷もそう単純なキャラではなく、現代ドラマを見てる人ほど「そこでそういうことするの?」みたいな行動をとってくれて、それが不思議な魅力になってますね

内容的には生きていたくないけど、死にたくもない夫が起こす出来事の後始末を妻がしていくって感じ
作品の中からなにか意味を見いだそうと思えばできるかもしれませんが、もっと単純に雰囲気だけを楽しめばいいかもしれません
それだけでも十分におもしろいですし

そんな登場人物の中でも夫の愛人役の広末涼子は個人的にはまり役だった気がしてならない
びっくりするほど悪女ですが、男として魅力を感じずにはいられないというか小悪魔的で素敵です
あとは小料理屋の夫婦しかり、けっこう脇も雰囲気を壊さないいい感じのキャスティングだったかもしれません
なんて、ふだんあまり語らない役者のことうんぬんいうのも、ぶっちゃけ感想とか書きづらい映画なんですよね
マジで雰囲気映画って、それ以上とくに言うことないから困る
古株の夫婦とかそろって見に行ったら、また別のおもしろさが感じられるかもしれませんが

それはそれとして、けっこういい感じで楽しめていたこの作品ですが、ちょっとラストが弱い気がしてなりませんでした
言わんとしてることはわかるけど、まったく心に響いてこないというか、言葉に重みが感じられないというか
ちょっと気取りすぎで、「とか、言ってみました」感がしてしまうのは私だけでしょうか
もうちょっと泥臭いか、ひねった終わり方でもよかったと個人的には思いましたね
これって、結局、どういう終わらせ方するんだろう、と期待してたら「え?終わり?」みたいな印象

そんなわけで、おもしろいのはおもしろいが、別にとりわけ好んで見るほどのもんじゃなく、機会があったらそのときに見るくらいの感覚のおもしろさでした

個人的評価:70点
おすすめ度:人非人でもいいじゃない




ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ 予告

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